土屋政雄のレビュー一覧
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キャシーの回想から始まるこの小説。序盤から強く引き込まれる。介護人、提供者、どれも聞き慣れない言葉。
彼女達が幼い頃を過ごした学園。幼き頃の思い出はとても鮮やかなもの。些細なことで友人と喧嘩したり、仲良しグループで固まったり、実は気があることを悟られぬようようこっそり異性の友達と落ち合ったり、どこにでもある、私たちにでもあるような子供時代。だけどとこか私たちとは違う。
少しずつ浮き彫りになっていく学園と自分たちの未来の真実。
学園で過ごした側の立場と、運営側の立場の違い、それ故の残酷さが、なんとも言えなかった。人間らしく扱うことに意味があると思っている側と、だうせ提供されるのなら教育も道徳も無 -
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クララは子供の成長を手助けするAF(人工親友)として開発された人工知能搭載ロボット。
人間の言葉を理解できて、見た目で人間の年齢も推定し、人間の感情を理解しようと努める。
ショーウインドーから街ゆく人々や来店するお客を観察し、外の世界を学び続け、自分を買ってくれる人が現れるのを待っている。
ある日クララはジョジーという病弱な少女と出会い、この少女の家に買い取られてゆくのですが、それはとても感動的なシーンでした。
今やAIアプリなどの普及で「人工の友人」との関わりが身近になってきている時代。
新型のAFがどんどん開発され、お店で売られる日が本当に来るかもしれない…。
クララは献身的で感受性豊 -
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ノーベル文学賞受賞後の第一作目の作品。
人工親友AFと呼ばれる太陽光エネルギーの人型ロボット、クララが販売店に陳列され、ジョジーという女の子に買い取られます。
物語はAFのクララ目線で回想されるところから始まります。
その語り口は優しく、常に敬語で、人間を敬っているのが読み取れます。そう開発されたのでしょう。それがいじらしく、切なく、親しみを抱きます。
ジョジーに愛され、ジョジーの困難を全力で救い、自分の身を犠牲にしていくクララ。きめ細かい気遣いを見せるクララ。ロボットでありながら感情も情緒もあるクララ。だからこそその姿勢は痛ましく、涙を誘います。
二人の関係は、あたかもドラえもんとの -
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すごい話だった...
優秀な介護人キャシーの1人語りで描かれる回想のストーリー。キャシーは誰に話しかけていたのかなあ
"提供者"という言葉、ヘールシャムでの講師陣の謎の発言など、平和な幼少時代の描写の隅々に少し不穏な空気が漂う。
どんどんキャシーたちの立ち位置が明らかになり、物語に引き込まれていった。
真相、物語の運び、全てが美しく整った完璧なフィクションだったと思う。
如何にも近い未来起こりそうな...倫理を考えさせられる話。
情景描写が細やかで、海外文学独特の読みにくさが無かった。すごく良い文章。
キャシーのトミーに対する態度・心情のすべてがもどかしい恋心に基づいた -
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スティーブンスは後悔したのだろうか?
彼が長年仕えたダーリントン卿は、歴史的には誤った判断をした人物として描かれる。利用されていたとも言える。
ミス・ケントンと再開し、昔の恋を打ち明けられた後、スティーブンスは「その瞬間、私の心は張り裂けんばかりに痛んでおりました。」と語る。
スティーブンスは後悔したのか? 何かを失ったのか? という問いだけで読むと、少しずれる気がする。
彼は、何かを犠牲にして職務に逃げたのではない。彼にとっては、職務をまっとうすることこそが、自分の人生をまっとうすることだった。主人が政治的失敗をおかしたとしても、ミス・ケントンとの愛を取り逃がしたのだとしても、だからとい -
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このお話を読んだのは何年前だろう。もう優に10年ぐらいは経っているのかもしれない。
そのせいでキャラクターの名前や、展開までもが朧げだ。それでもこの話の醸し出す空気感は今でも忘れられないままで、私が数冊本を選べと言われたらこれが出てくるだろう。
それぐらい当時の私にも、今の私にも強烈な印象を残している。
まず特色として感じたのは、主人公および世界が、正常を持ち合わせていないことだ。
よくある物語では、正常の中の異常が書かれる。
つまり、異常な出来事は異常として書かれる。
「そんなのおかしい!」みたいなことを、誰かは言ってくれる。
この物語ではそんな救済はほとんどない。
主人公たちがおかしいこ -
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語れるほど本を呼んでいないけれど、今まで読んだ本では一二を争うほどの作品でした!
カズオ・イシグロは「日の名残り」を読んでとても良かったと思ったのですが、これはそれを遥かに越えた読書体験でした!
自分と他人の心の動きや、繊細で不完全な人間関係の動きが、過剰なまでの記憶の詳細な描写から知らず知らずに身にしみて、ある時ぶわっと感情があふれる瞬間があって、泣いてしまったシーンや泣きそうになったシーンがいっぱいありました。
今までどこか登場人物と読者である自分の間に見えない壁があったような気がしましたが、この作品では、主人公のキャシーの体験を一緒に体験しているかのようで、余韻がすごく、忘れられない -
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オンダーチェは3冊目です。
第二次大戦末期、砂漠に墜落し燃えた飛行機から生き延びた顔も名前も分からない患者とかつて野戦病院だった修道院で患者を看護する若い女性。2人の暮らしに外部からの来訪者が加わり、不思議な共同生活が始まる。
博識な患者の話に耳を傾け、または図書室の本を患者に読み聞かせ、来訪者の1人、若い爆弾処理班の工兵と恋に落ちる看護師。
登場人物の日常が描かれたと思えば波のように追想が始まり、患者の様々な古典についての語りがあり…風に揺れるカーテンのようにストーリーが移り変わって、何とも言えない不思議な心地良さの中読み進めました。
解説によれば、オンダーチェは詩人でもあるとのこと。それで -
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とても素晴らしい作品だった!
同じくカズオイシグロの「わたしを離さないで」と通じるところがあって、生きるとは何か、その人らしさとは何か、それを問い続けることがカズオイシグロのテーマの1つなのだろう。
この作品でも、思いもかけないアプローチで生きることへの問いかけを試みている。
最後に再びクララの前に現れる店長の姿は何を物語っていたのだろう。あれはもしかしたら「わたしを離さないで」とリンクしているのかもしれない。
そして読後はもう、なんとも言えない気持ちに襲われてしまった。
AIであるクララの言葉が清らかで淡々としていて、そのことがより一層読み手の感情を揺さぶるのだろう。 -
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イギリス文学最高峰のブッカー賞を受賞したという本、ようやく読む機会ができました。忖度なしで面白かった。私は「クララとおひさま」ではじめてイシグロ氏の本に出会い、これが2冊目ではありますが、共通して感じるのは「静謐さの中にある感動」。本書で扱われている時代は2つの世界大戦をはさむ激動の時期なのですが、あえて舞台は牧歌的風景の広がる英国貴族の屋敷(その意味でドラマ「ダウントン・アビー」を彷彿させる)。しかも主人公はその貴族ではなく執事です。このアプローチは「クララとおひさま」にも共通していると思います。クララとおひさまでは、貴族にあたるのがジョジ―という少女で、執事にあたるのがAI搭載ロボットのク