土屋政雄のレビュー一覧

  • 夜想曲集
    副題から分かるように全ての短編に音楽の要素が出てきますが、もうひとつの「夕暮れ」はどういうことだろうと思いながら読んでいました。訳者あとがきにも書かれていましたが、音楽以外にももうひとつ男女関係・夫婦関係の危機というモチーフも全ての短編に共通しています。登場人物皆もう若くなく、ある人は結婚した時の状...続きを読む
  • わたしを離さないで Never Let Me Go
    物語の全容を知らないということがこの作品を楽しむ上でとても重要で、私はできる限り多くの人にこの物語を楽しんで欲しいと思っているので、内容にはなるべく触れずにレビューをする。
    「介護人」キャシーの幼少時代から現在までをカズオ・イシグロお得意の回顧録形式で綴る。

    幼少期にはヘールシャムと呼ばれる学校で...続きを読む
  • 日の名残り

    面白くてすんなり読めました

    サー・カズオイシグロの作品を読むのはこれが初めてでしたが、冒頭からすんなり読めて良かったです。
    大好きなドラマ「ダウントンアビー」の世界を楽しめました。主人公のドライブ中の描写も以前旅行した時のイギリスの田園風景が目に浮かぶようでした。
    どちらかというと主人公より元女中頭のミス・ケントンに感情移入し...続きを読む
  • クララとお日さま
    筆者は作品についてのインタビューで、AIや機械の合理性と人間がもつ感情について、さまざまな視点からコメントを残しています。
    「中庸」
    AI(技術や合理性)が社会にもたらす善悪
    人間(感情や非合理性)が社会にもたらす善悪
    双方の面を咀嚼していかなければと感じました。
  • クララとお日さま
    AIの一人称視点で書かれているので、読み手がAIに同化していく感覚がおもしろい。『侍女の物語』のときも思ったが、情報量が少なくても、書き手が知ったことと読み手がもらえる情報が同量だと、フェアでストレスを感じにくい。
    人を人たらしめるものはなにか。感情を持ったAIは人と同じと言えるか。信仰を持ったAI...続きを読む
  • イギリス人の患者
    1992年のカナダ総督文学賞とブッカー賞受賞。2018年にブッカー賞50周年記念の歴代受賞作で最も優れた作品として、ゴールデン・マン・ブッカー賞受賞。『イングリッシュ・ペイシェント』の名で映画化され、アカデミー賞9部門受賞しています。

    著者はスリランカ生まれのカナダ在住。カナダ文学ですぐに思い浮か...続きを読む
  • クララとお日さま
    これを『ジョジョ・ラビット』『ボーイ』の監督が撮ると思うと胸が痛い。そしてどの役が監督なのかも大体わかった。
  • わたしを離さないで Never Let Me Go
    徐々に暗い運命を感じさせつつ、ヘールシャムの仲間との友情、愛、それぞれの感情が緻密に描かれている。提供者でない視点から読むと、運命の決まっている子どもたちの、儚い人生の物語のようにも読み取れるが、提供者の視点から読むと、その人生の彩りや生い立ちに意味や幸せはあったようにも思え、その中で運命の謎が明ら...続きを読む
  • イギリス人の患者
    あー。すごい。すごい、これ。それ以外まず言葉が出ない。
    ブッカー賞を受賞した中でも最も素晴らしい作品を選ぶという企画の中で選ばれた本作。ブッカー賞オブブッカー賞。

    「イングリッシュ・ペーシェント」という題で映画化され、かつアカデミー賞も受賞したとのことだがその筋に疎い私はそんなことも知らず。
    この...続きを読む
  • クララとお日さま
     物語は人工頭脳を搭載したクララというAF(人工親友)と病弱な少女ジョジーとの出会い、生活、再生、そして別れ。

     「わたし」としての語り手はクララが担う。
     クララ、ジョジーそしてリックの交流が子供の視点から語られるさまはほんのり心地よい。

     しかしその子どもたちを取り巻く社会は、人工知能と人間...続きを読む
  • クララとお日さま
    美しい言葉遣いと自分の役割を果たすことに全力を傾けるクララの姿勢に素直に感動と共感を覚えました。登場人物のこの後の人生が幸せであるように祈りたくなる作品でした。
  • クララとお日さま
    AIを主人公に、関わる人々の願いの機微を、AIの視点で捉えながら描かれている。お日さまに対する願いや、関わる人を何とか救いたい、という願いを持つAIはAIとしての心をすでに獲得しているように思った。また、継続、に関わるところで、心の全てを解析できた、とする人がいる一方、そこに全てはなく、その人の関わ...続きを読む
  • クララとお日さま
    AIロボットのクララと人間との交流を描いた作品。語りの視点がすべてクララであるところが非常に斬新さを感じる。一方で、人間とは機能や能力の差があるため、周囲から見た視点などを補いながら読む不都合さみたいなものはある。ただ読み終えた今では、その不都合さが逆に、読み手にあらゆる感じ方を与え、作品のすばらし...続きを読む
  • クララとお日さま
    カズオイシグロのトイストーリーの様
    AIと人々が恐る永遠の課題いつか人を超えて反旗を翻すこと。主人公AFのクララにはまったくそれがない。ましてや、疑うこと、邪な考え、悪気がまったくない。ある意味それが人間を構成するパーツだと気づく。そして永遠の様に見えて老いていくAFを勝手に捨てるのも人間。クララが...続きを読む
  • わたしを離さないで Never Let Me Go
    静かで淡々とした語り口。
    ゆっくりと徐々に徐々に明かされていく。
    静かなところで読みたくなる本でした。

    できるだけ何も知らない状態で、この本を読み始めることをおすすめします。
    知っていてもとっても面白かったです。
  • イギリス人の患者
    マイケル・オンダーチェのゴールデン・マン・ブッカー賞受賞作。新潮文庫から版元を代えての復刊。

    第二次世界大戦終戦間際のイタリア。ドイツ軍が撤退した後、廃墟となった僧院に記憶がなく全身に火傷を負った患者と、その看護をする若い看護師が住んでいる。そこに看護師の父の友人と、爆弾の解体工が加わり、四人によ...続きを読む
  • クララとお日さま
    人工知能搭載のロボット「クララ」の目線で描かれる、ある家族と、その周囲の人たちの物語。
    人間の心。知性。命。
    決して侵してはいけない領域に人類はこれから足を踏み入れようとしているのかもしれない。
    クララが健気にもジョジーの側に付き添い、祈る姿はロボットの域を越えているようにも思った。
    廃品置き場に置...続きを読む
  • クララとお日さま
    心が痛く苦しくなった。
    感情があるというのは厄介なのかもしれない。
    クララが本気で守ろうとした、守ったジョジーや母親にとって、クララとはどのような存在なのだろうか。
    無償の愛ほど怖いものはないなと感じた。
    店長さんに再会できてよかった。クララは決して不幸じゃない。

    AFと人間の間にある溝や裕福な人...続きを読む
  • クララとお日さま
    AIが主人公という本作、壮大なSFかと思いきや、心に迫り来るストーリー。
    死とは、生とは、人をその人として形作っているものはなんなのか、感情なのか情報なのか、心とはどこにあるのか?考えさせられました。
  • 日の名残り
    今現在就活中ということもあって、複雑な気持ちになった。あたたかくも痛く苦しくなる。スティーブンスの生き方は後悔するものではないと思うしらしくて好きだが、本人が涙を流すのもわからんでもない。
    最後のところ、何度でも読み返したいと思う。
    というか全体的に何度でも読み返したい。