土屋政雄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
表紙と、そして『音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』という副題から簡単に想像できる通り、この作品集には、人生の黄昏時の雰囲気漂う男女の別れを描いた短編が、五編収められている。
思えば夕暮れは、最もロマンチックな瞬間ではないだろうか。
一日で限られた特別な時間帯にだけ、目に映る独特の斜光。それは人によってはただの黄色い光線にしか映らないかもしれない。
だがよくよく考えてみると、その光線とそっくりそのままの夕陽が、将来再び僕らの下を訪れることは決してないのである。
そのような夕暮れ時に、同様にかけがえのない相手であったに違いない男女が、お互いに最後の別れを交わすのだ。
この作品集は、このような悲 -
Posted by ブクログ
アンソニー・ホプキンス主演の実写映画を鑑賞後、早速読んでみました。
英国貴族ダーリントン卿が住んでいた荘厳な邸宅は、今はアメリカ人の手に渡っていた。ダーリントン卿に何十年と仕えていた執事スティーブンスはお屋敷に残ったものの、当時のスタッフ達は離れていき人手不足に困り果てている。
そんな折、当時女中頭を務めていて結婚を機に屋敷を離れた元同僚ミス・ケントンからダーリントンホールでの日々が懐かしいと郷愁を滲ませる内容の手紙が届く。
ミス・ケントンがお屋敷に戻ってきてくれるのではという期待を込めて、スティーブンスは彼女に会いに行くことを決めたその道中、素晴らしい故郷の風景に -
Posted by ブクログ
ネタバレ第一次世界大戦を終えたイギリスの、6月のある1日を描き出す作品。
「ダロウェイ夫人」が中心に据えられているが、作品の視点は周囲の人の頭の中を飛び回るような、独特の浮遊感で移り変わっていく。
大勢を招いたパーティを開くくらい精力的で、魅力的でもあるようなクラリッサ(ダロウェイ夫人)が内面で仄暗いものを飼っていて、誰かわからない人の自殺を知りなにかしら自分の中に落とし込むくだり、表面的にはなにひとつ変わらないこのことを真に迫って伝えてくるのは正に小説の力だと思う。
一番印象的だったのはヒュー。「完全無欠」ながら、本を読まない、ものを考えないと切って捨てる人もいるけれど、本人は本人の価値の置く世