土屋政雄のレビュー一覧

  • 月と六ペンス
    40代に入ってからすべてを捨てて絵を書き始め、後に伝説となった画家の生き様を若き作家を語り手として描く。

    天才と狂気を感じるストリックランドの絵描きとしての人生、傍若無人な彼が関わる3人の女性との関係、パリとタヒチという文化と自然の対比など、重層的な構造をもつ小説。単純に、若い作家視点で語られるス...続きを読む
  • 日の名残り
    カズオイシグロの中でも特におすすめ。主人公の執事が以前の主人との日々を旅しながら回想していく。品格を求める仕事人間の主人公。最後には何も残らず…
  • 月と六ペンス
    今まで読んだ中で一番好きな本になった
    女性の描き方に時代を感じるが、人間の内面に存在するさまざまな矛盾を綺麗に描き出してたし、自分が最近感じることと同じことがいっぱい出てきて、こういう風に考えるのが自分だけじゃないんだと思えた。すごくよかった。
    あと、解説で語り手のストリックランドへの恋愛感情の解釈...続きを読む
  • 忘れられた巨人
    読んでいくうちにこれは童話ではないか、と思うようになった。守り人と同じようなプロットである。挿絵がないだけで、漢字にルビを振れば子どもが読める本である。竜退治という最終目的とアーサー王の騎士が出てくるのでイギリスであるが、日本の子どもでも読める。
  • 月と六ペンス
    四十歳にして全てをなげうち、画家になった男の物語。
    面白くってあっという間に読んでしまった。
    光文社古典新訳文庫は読みやすくていい。
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

    淡々とした中にあるインパクト

    特殊な暮らしにおける日常の描写、心情が淡々と書かれているものの、ミステリーがちりばめられているよう不思議な小説でした。
  • 月と六ペンス
    めちゃくちゃ面白い。
    これは本当に小説という媒体で表現されるべきもの、という感じがした。

    個人的には終盤、ブリュノ船長のエピソードが好き。
  • 日の名残り
    スティーブンスが途中で「もしかしてダーリントン卿のもとでかつて働いていた執事かい?」と聞かれ、「いいえ。一度も。フィラディという方にお仕えしております。」と答えるシーンがある。

    これは決してダーリントン卿に仕えていたことを恥じて昔の関係を秘密にしているのではなく、イギリスでは執事と主人の関係は離婚...続きを読む
  • 千の輝く太陽
    本当によくできていて、大いに泣いたし、未来が少し明るくて慰められた。
    アフガニスタンの70年代から今を生きる2人の女性の物語。
    アフガニスタンに共産主義者居たんだという驚きや、どのように情勢が変わっていったかよく分かるし、その中で翻弄されていく女性達の痛みや苦しみがひしひし伝わる。
    遠い国の話だが、...続きを読む
  • 千の輝く太陽
    人を想う強さ、愛する強さに心打たれました。アフガニスタンでタリバンが政権を奪取した2021年。改めて注目されてほしい作品だと思います。

    信仰や文化のため男尊女卑的な考えの残るアフガニスタンを舞台に、二人の女性が歴史や文化、そして暴力に虐げられながらもわずかな希望を信じ、強く生きようとする姿を描いた...続きを読む
  • クララとお日さま
     AIロボットは友だちたりうるのか。友情や愛情など人間的な関係を結べるのかを問うたSF問題作。
              ◇
     クララは、病弱な少女・ジョジーのお友だちとして購入されたAIロボットだ。ジョジーのためになるようプログラムされたクララが、生活の中で学習を続け、ジョジーとの関係を深めていく。2人...続きを読む
  • 月と六ペンス
    男は自己充足のために、絵を描いていた。しかし、彼の死後に、作品は多くの人に評価され、消費される対象となった。富と名声は、彼が求めていたものだったのだろうか。
  • 千の輝く太陽
    昨今の情勢を受け、アフガニスタンに生きる人たちのことを知りたくなった。爆撃、難民、タリバン。。ニュースで聞くだけではぼんやりしてしまう、想像の範疇外のアフガニスタンのことを知るためにまず、あえて私にとって身近な小説という媒体を選んでみた。

    この小説は、国連で難民支援のために働いていた著者によるもの...続きを読む
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー
    カズオ・イシグロのノーベル賞受賞記念講演の日本語訳。
    毎日新聞のウェブサイトで英語・日本語訳の両方とも読めるので少し迷ったが、やはり、手元に置いておこうかなと。
    生い立ち、何に気をつけて小説を書いているか、今の時代とこれからの未来について思うこと、丁寧に語られています。
    I'll have to c...続きを読む
  • クララとお日さま

    やさしい

    この作品に対して言葉を尽くして感想を語ることは無粋な行いになってしまうのではないかと思うくらい、やさしい話だった。
    AF(人工友人)クララの視点で人間の女の子ジョジーとの物語が語られる。クララは子どものように純粋で好奇心に満ちていながら、成熟した大人のような知識があり思いやりができる。
    クララは対人...続きを読む
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー
    2017年12月7日ストックホルムでの
    スピーチを左ページに英語、右ページに翻訳
    を載せた本。

    1979年秋24歳から始まり、子供時代、
    自分の心の中の日本とそれを書くこと、
    プルーストや歌手などから作品に影響を受けたり、
    人間間の関係を書くことの大切さに
    気付いたり、現在の世界の状況を憂い、
    ...続きを読む
  • 日の名残り

    人生の黄昏

    一部ご紹介します。
    ・「わしはあんたの言うことが全部理解できているかどうかわからん。
    だが、わしに言わせれば、あんたの態度は間違っとるよ。
    いいかい、いつも後ろを振り向いていちゃいかんのだ。
    後ろばかり向いているから、気が滅入るんだよ。
    なんだって?昔ほどうまく仕事ができない?
    みんな同...続きを読む
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

    人生の尊厳

    一部ご紹介します。
    ・「あなた方は教わっているようで、実は教わっていません。
    形ばかり教わっていても、誰一人、本当に理解しているとは思えません」
    「あなた方の人生はもう決まっています。これから大人になっていきますが、あなた方に老年はありません。
    あなた方は一つの目的のためにこの世に産み出され...続きを読む
  • 月と六ペンス
    自分以外の何かに取り憑かれ、その衝動に従って生きることを余儀なくされる。その様子を目の当たりにするとき、憧れを抱きつつも、それが自身には不可能であることも悟っているからか、衝動は自分にも感じている、しかし、その衝動を乗り越えられるのが人間なのだという、結論ありきの理論を展開して自身を守ろうとしてしま...続きを読む
  • 夜想曲集
    なんかこう切ない雰囲気がとても好き。

    イシグロさんって、淡々と進む情景描写に、綺麗な色の哀愁を乗せるのがとても上手な作家なんだと思う。たぶん、情景と感情の絵をいつも思い描いている人。うまく色が溶け合わさせて、読者を癒してくれる。
    この本はそれがすごく出てる。

    サンマルコでいつかこんな音楽家に会え...続きを読む