土屋政雄のレビュー一覧

  • イギリス人の患者

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    ネタバレ

    マイケル・オンダーチェのゴールデン・マン・ブッカー賞受賞作。新潮文庫から版元を代えての復刊。

    第二次世界大戦終戦間際のイタリア。ドイツ軍が撤退した後、廃墟となった僧院に記憶がなく全身に火傷を負った患者と、その看護をする若い看護師が住んでいる。そこに看護師の父の友人と、爆弾の解体工が加わり、四人による生活が始まる。。。

    美しい。ただひたすらに美しい小説。
    詩的な文章により、四人の過去と主に北アフリカ地方の歴史が語られる。北アフリカの話は、描かれるほとんどに馴染みがないので理解できない描写も多いが、砂漠の幻想的な表現が非常に良く読んでいても飽きさせない。
    特にイギリス人の患者の過去がほんのりわ

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    2024年02月04日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    ノーベル文学賞をとってからもう6年か。もともとノーベル賞に興味はなかったけれど、当時、カズオイシグロの受賞を聞いたときはびっくりした。
    彼の作品は全部読んでいて、好きな作家の一人だったから。

    映画『日の名残り』を観たのがきっかけで、カズオイシグロを知り、原作を読んだ。
    そしていつものように、好きな作家の作品は出版された順番に読んでいきたいと思い、『遠い山なみの光』から順に読んでいった。
    読めば読むほどはまっていく。

    ノーベル文学賞受賞記念講演を収録した本作は、スピーチであるせいかとても読みやすい。でもぎゅっと大切なことが詰まっている。
    『日の名残り』のくだりでは、まさに私が一番好きな部分に

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    2023年06月12日
  • 千の輝く太陽

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    アフガニスタンの歴史を年表で見ながら読みたい本。マリアムの運命には涙が出てきた。同じ作家のカイトランナーも是非読みたい。

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    2023年05月27日
  • 守備の極意(下)

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    ハープーナズの快進撃とは逆で登場人物たちの関係はぎくしゃくしてうまく行かなくなります。自分の欲望のためではなく、あくまで自分の信じることを行っているので心地よい感じがします。世間一般でいわれる成功ではなく、自分の人生を生きた結果が小説の内容なのです。

    最後の墓場から湖へ向かうところは色んな意味で「くさい」表現となっています。のこった登場人物が本当のスタートをきるための儀式という感じです。

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    2023年04月07日
  • 守備の極意(上)

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    ウィスコンシン州にあるウェスティッシュ大学の硬式野球部が舞台となっています。小説の題名はアパリシオ・ロドリゲスという守備の名手が書いた本『守備の極意』から来ています。アパリシオは18シーズンセントルイス・カージナルスでプレーしたとあるので、実在した選手と思い込んで読んでいました。他の小説でもよくMLBの選手の名前がでてくるのでそう思ったのです。ここですこし考えました、作者が作り出した架空の選手ではないかと。フィクションなのでまったく問題ないのですが、そう考えると『守備の極意』の中身もちょっとおもしろいです。

    例えば、
    59「ゴロをさばくことは寛大な行動であり、理解の体現である。ボールに向かっ

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    2023年04月07日
  • ねじの回転

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    まずは自画自賛から

    いやー面白かった
    そしてこの物語を面白いと感じられる自分、なかなかの読書人ではなかろうか

    非常に読む側の技量を試される物語だと思いました
    読む側の技量って何か知らんけども

    多くのことを読み手の想像力に委ねてくるんです
    それでいて空白が少ないんですね
    非常に緻密に計算しつくした上で必要最小限のことしか語ってないんですが、とてもたくさんのことが込められていて、読者はその想像力の及ぶ範囲で様々なことが読み取れる文章に感じました

    読む人によって怪奇物語であったり、謎解きミステリーであったり、恋愛物語であったりとくるくると姿を変える物語
    そしてそれは全て意図して書かれている

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    2023年02月15日
  • ねじの回転

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    19世紀から20世紀にかけて活躍したヘンリー・ジェイムズ中期の傑作。ゴシックホラーの様式を借りながら、無意識や語られぬもの=幽霊を巡って狂わされていく家庭教師とその家の子供2人。
    Netflixでドラマ化されたように、単純にホラーとして読むことができる作品である一方で、怖いのは亡霊が出てくるからではなく、亡霊の出現を契機として破綻をきたしていく、家庭教師と2人の子供の顛末だろう。解説で言及されているように、それは19世紀末に登場したフロイト理論や心霊主義の影響を色濃く受けていて、どことなく亡霊によって狂わされていくマクベスを思い出させる。
    著者のヘンリー・ジェイムズのお兄さんは哲学者のウィリア

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    2023年01月23日
  • ねじの回転

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    セクシュアリティ、階級、社会構造をいろんな視点から見て、いろんな解釈を読者に与えるような本だと感じた。
    面白かった。

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    2022年11月14日
  • 夜想曲集

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    短編集。笑って、しみじみして、唸って、ため息ついてまた笑って。
    一番好きなのは「降っても晴れても」。
    どれもラストは僕好みだった。

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    2022年09月19日
  • 夜想曲集

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    カズオ・イシグロ(1954-)は、『日の名残り』(1989年)で、イギリスで最も権威ある賞「ブッカー賞」を受賞した、世界的作家。長崎県長崎市で、日本人の両親の元に生まれましたが、5歳でイギリスに移住。成人までは日本国籍、その後、イギリスに帰化しています。2010年に映画化された『わたしを離さないで』で、また、2012年4月に、NHKで「カズオ・イシグロを探して」と題したドキュメンタリーが放送され、日本でもより知られるようになりました。
    『夜想曲集』(2009年)は、「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」という副題が付いた、初の短編連作集。どの物語も、人生の後半や終盤にある人物が、自らの過去(=夕暮

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    2022年09月05日
  • 月と六ペンス

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    40代に入ってからすべてを捨てて絵を書き始め、後に伝説となった画家の生き様を若き作家を語り手として描く。

    天才と狂気を感じるストリックランドの絵描きとしての人生、傍若無人な彼が関わる3人の女性との関係、パリとタヒチという文化と自然の対比など、重層的な構造をもつ小説。単純に、若い作家視点で語られるストリックランドのエピソードは、ミステリアスで引き込まれるし、恋愛小説としても読みごたえがある。しかし人生について、どの世代の人にとっても非常に考えさせられる要素が散りばめられており、何度も読み返す価値のある味わい深い作品でもある。本当に幸せな人生とは……人生に何を見い出すか……。ストリックランドだけ

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    2022年07月07日
  • 月と六ペンス

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    今まで読んだ中で一番好きな本になった
    女性の描き方に時代を感じるが、人間の内面に存在するさまざまな矛盾を綺麗に描き出してたし、自分が最近感じることと同じことがいっぱい出てきて、こういう風に考えるのが自分だけじゃないんだと思えた。すごくよかった。
    あと、解説で語り手のストリックランドへの恋愛感情の解釈について掘り下げてて、読みながら自分もそう感じてた部分があったから綺麗に言語化されてて嬉しかった。
    出会えてよかった本。

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    2022年05月26日
  • 忘れられた巨人

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    読んでいくうちにこれは童話ではないか、と思うようになった。守り人と同じようなプロットである。挿絵がないだけで、漢字にルビを振れば子どもが読める本である。竜退治という最終目的とアーサー王の騎士が出てくるのでイギリスであるが、日本の子どもでも読める。

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    2022年05月05日
  • 月と六ペンス

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    四十歳にして全てをなげうち、画家になった男の物語。
    面白くってあっという間に読んでしまった。
    光文社古典新訳文庫は読みやすくていい。

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    2022年04月17日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

    購入済み

    淡々とした中にあるインパクト

    特殊な暮らしにおける日常の描写、心情が淡々と書かれているものの、ミステリーがちりばめられているよう不思議な小説でした。

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    2022年03月18日
  • 月と六ペンス

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    めちゃくちゃ面白い。
    これは本当に小説という媒体で表現されるべきもの、という感じがした。

    個人的には終盤、ブリュノ船長のエピソードが好き。

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    2022年03月06日
  • 日の名残り

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    スティーブンスが途中で「もしかしてダーリントン卿のもとでかつて働いていた執事かい?」と聞かれ、「いいえ。一度も。フィラディという方にお仕えしております。」と答えるシーンがある。

    これは決してダーリントン卿に仕えていたことを恥じて昔の関係を秘密にしているのではなく、イギリスでは執事と主人の関係は離婚歴のようなもので、前の主人のことを一切口にしないというのがマナーだということだった。しかし一方で、ダーリントン卿が主人だとはもう言うことが叶わないという哀しさが漂うシーンでもあり、個人的に好きなシーンだった。

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    2026年04月29日
  • 千の輝く太陽

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    本当によくできていて、大いに泣いたし、未来が少し明るくて慰められた。
    アフガニスタンの70年代から今を生きる2人の女性の物語。
    アフガニスタンに共産主義者居たんだという驚きや、どのように情勢が変わっていったかよく分かるし、その中で翻弄されていく女性達の痛みや苦しみがひしひし伝わる。
    遠い国の話だが、そんな彼女達の感情に共感できる事も多く、人間の普遍的なものを辿っていく小説でもある。
    昔は、各国の小説はそれぞれの文化や歴史の差異を読んでいたが、今は見た目・境遇がちがっても本質的には同じだ、という同質性を読む時代、らしい。それだけ多様化してグローバルな時代になったということなんだろう。
    所々に出て

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    2022年02月27日
  • 千の輝く太陽

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    人を想う強さ、愛する強さに心打たれました。アフガニスタンでタリバンが政権を奪取した2021年。改めて注目されてほしい作品だと思います。

    信仰や文化のため男尊女卑的な考えの残るアフガニスタンを舞台に、二人の女性が歴史や文化、そして暴力に虐げられながらもわずかな希望を信じ、強く生きようとする姿を描いた作品。

    お金持ちの主人とお手伝いの間の子として生まれ、現在は母と二人で粗末な小屋で暮らすマリアムが、何回りも年の離れた男と結婚させられ、さらなる悲劇に見舞われるまでを描いた第1部。

    女性の教育に対しても理解を示す父と、戦線に旅立った兄たちを想う母を持つライラ。兄の方ばかりを気にかける母に複雑な思

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    2022年02月12日
  • 月と六ペンス

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    ネタバレ

    男は自己充足のために、絵を描いていた。しかし、彼の死後に、作品は多くの人に評価され、消費される対象となった。富と名声は、彼が求めていたものだったのだろうか。

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    2021年11月13日