土屋政雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
人を想う強さ、愛する強さに心打たれました。アフガニスタンでタリバンが政権を奪取した2021年。改めて注目されてほしい作品だと思います。
信仰や文化のため男尊女卑的な考えの残るアフガニスタンを舞台に、二人の女性が歴史や文化、そして暴力に虐げられながらもわずかな希望を信じ、強く生きようとする姿を描いた作品。
お金持ちの主人とお手伝いの間の子として生まれ、現在は母と二人で粗末な小屋で暮らすマリアムが、何回りも年の離れた男と結婚させられ、さらなる悲劇に見舞われるまでを描いた第1部。
女性の教育に対しても理解を示す父と、戦線に旅立った兄たちを想う母を持つライラ。兄の方ばかりを気にかける母に複雑な思いを抱きつつも、初恋や父の教えに胸をときめかせるライラにアフガニスタンの内戦の影が忍び寄り……
そして第3部でこの二人の女性の人生が交わります。その理由というのも、男性は女性の所有物という男尊女卑的な考えの元で、女性の人格や自由なんてものは一顧だにされない。マリアムにも邪険にされ、孤独を極めるライラに兆した変化。それはマリアムの心情も変え、やがて二人は本当の母娘のような強い絆で結ばれていく。
この二人の関係性をめぐる変化、ライラの希望を持つ姿、マリアムの心情の変化、絶望の中でも女性の母性というか、優しさ、慈しみの心というものが描かれているようで本当に心打たれました。でも悲しいもので、この先このままではいかないだろうな、という思いもどこかにあって、幸せと不穏さの中で揺れているまま、ずっと読み進めている感覚はずっとあったかもしれない。
二人に訪れる希望、そして絶望。アフガニスタン、とりわけ女性をめぐる環境の劣悪さというものをまざまざと感じさせられ、そして迎える結末は……
ものすごく哀しい話ではあるけれど、それでもここまで女性の強さ、とりわけ人を想い、愛する強さを感じた小説はあまり記憶にありません。クライマックスは目頭が熱くなりました。でもそれは単なる感動という言葉では言い表せない。もっと神聖で心に染み入る何かが、胸の中にじわじわ広がっていったように思います。
作品の歴史は9.11後のテロとの戦いでタリバン政権が崩壊したところで終わります。しかし現実はフィクションのようにはいかない。2021年アメリカ軍撤退後、アフガニスタンは瞬く間にタリバン政権が復活しました。タリバンは女性の教育の機会の保証、また前政権やアメリカ軍協力者に対しての報復の禁止をうたっているものの、報道を見る限りではそれも信じられる状況ではなく……
アフガニスタンだけでなく全世界で、作中の二人の女性のように虐げられ続けている女性たちがいるかと思うと、本当に胸が痛くなります。自分にできることは想像し、祈ることしかできません。この作品のラストのような世界が訪れることを改めて、切に思いました。 -
Posted by ブクログ
昨今の情勢を受け、アフガニスタンに生きる人たちのことを知りたくなった。爆撃、難民、タリバン。。ニュースで聞くだけではぼんやりしてしまう、想像の範疇外のアフガニスタンのことを知るためにまず、あえて私にとって身近な小説という媒体を選んでみた。
この小説は、国連で難民支援のために働いていた著者によるもの。この小説には、政治情勢の変遷とともに主人公たちを取り巻く環境の変化、そしてその影響をどのように受けているのかが、ありありと描かれていた。
当たり前のように描かれる衝撃的な日常風景に、展開される主人公達の処遇。まずこの国のもともとの姿にもものすごく本当にびっくりした。でもその全ての驚きの根底には、日本を含む地球上のみなが心の奥底に持つ人間性そのものがあるということも強く感じた。
そして戦況の悪化、国内の混乱。。息をするのも忘れるほどにその世界を疑似体験した。
民間人の殺害、街の爆撃、流れ弾、処刑。
ニュースなどで聞くだけだとぼんやりもやがかっていた現実は、想像よりずっと突然起こることであり、あまりに無惨で、悲しすぎるものだった。
アフガニスタンの悪夢のような混沌の中でも、人は何かを食べて寝て子供を育て、各自の人生を、生きていかなくてはいけない。
しかし、女性にとっては、あまりに過酷で理不尽な環境だ。食べ物がないのに仕事もできない、ひとりでの外出すら許されない。
でもこの小説を通して、私が何よりも恐ろしかったのは戦争ではなかった。きっといつの時代にもどこにでもいる、ひとりの男性の人間性だった。
この小説は、過酷な運命に翻弄され、自らの運命を甘んじて耐え忍ぶ(きっとこの世界中にたくさん実在する)女性の生涯を、美化することなく描ききった。
結婚生活、妊娠出産、育児。
どれも真っ直ぐではないけれど、私にも通じるテーマばかりだった。
人の心は同じなのだと思った。
風景や心情の描写がとても美しかった。
私は主人公マリアムのことを生涯忘れない。
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ネタバレ 購入済み
人生の黄昏
一部ご紹介します。
・「わしはあんたの言うことが全部理解できているかどうかわからん。
だが、わしに言わせれば、あんたの態度は間違っとるよ。
いいかい、いつも後ろを振り向いていちゃいかんのだ。
後ろばかり向いているから、気が滅入るんだよ。
なんだって?昔ほどうまく仕事ができない?
みんな同じさ。いつか休む時が来るんだよ。
わしを見てごらん。隠退してから、楽しくて仕方がない。
そりゃ、あんたもわしも、必ずしももう若いとは言えんが、それでも前を向き続けなくちゃいかん」
「人生楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。
みんなにも尋ねてごらんよ。夕方が一日でいちばんいい時間だって言うよ」
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ネタバレ 購入済み
人生の尊厳
一部ご紹介します。
・「あなた方は教わっているようで、実は教わっていません。
形ばかり教わっていても、誰一人、本当に理解しているとは思えません」
「あなた方の人生はもう決まっています。これから大人になっていきますが、あなた方に老年はありません。
あなた方は一つの目的のためにこの世に産み出されていて、将来は決定済みです。ですから、無益な空想はもうやめなければなりません」
「みっともない人生にしないため、自分が何者で、先に何が待っているかを知っておいてください」
・「絵も、詩も、そういうものは全て、作った人の内部をさらけ出す。作った人の魂を見せる」
・すぐにも行動を起こさないと、機会は永遠に失われるかもしれない
・「あなた方はいい人生を送ってきました。教育も受けました。もちろん、もっとしてあげられなかったことに心残りはありますけれど」
「生徒たちを人道的で文化的な環境で育てれば、普通の人間と同じように、感受性豊かで理知的な人間に育ちうること、それを世界に示した」
「あなた方は、駒だとしても幸運な駒ですよ。追い風が吹くかに見えた時期もありましたが、それは去りました。
世の中とは、ときにそうしたものです。受け入れなければね。
人の考えや感情はあちらに行き、こちらに戻り、変わります。
あなた方は、変化する流れの中のいまに生まれたということです」
・「新しい世界が足早にやってくる。科学が発達して、効率もいい。
古い病気に新しい治療法が見つかる。すばらしい。でも、無慈悲で、残酷な世界でもある。
そこにこの少女がいた。目を固く閉じて、胸に古い世界をしっかり抱えている。
心の中では消えつつある世界だと分かっているのに、それを抱きしめて、離さないで、離さないでと懇願している」
・「俺はな、よく川の中の二人を考える。
どこかにある川で、凄く流れが速いんだ。で、その水の中に二人がいる。
互いに相手にしがみついている。必死でしがみついてるんだけど、結局、流れが強すぎて、最後は手を離して、別々に流される。
俺たちって、それと同じだろ?最後はな、永遠に一緒ってわけにはいかん」
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購入済み
抑圧される少女たちの姿に胸が痛くなります。
しかし、「暗い」「重い」というだけの話ではありません。
過酷な状況の中でも生きる強さ。何もかも奪われても大切な人に手を伸ばす優しさ。
周りがどんなに彼女たちを黒く塗りつぶそうとしても、彼女たちの命は輝いています。
カズオ・イシグロ作品の翻訳もされている土屋政雄さんの、読みやすくも格調高い翻訳が素晴らしい。 -
Posted by ブクログ
読んで良かった。
約半世紀に渡って、アフガニスタンで女性が置かれた過酷な状況について、どんなノンフィクションよりも雄弁に伝えているのではないかと想像する。同じ名前の女性が同じ場所に実際にいたわけではないはずだが、マリアムとライラに自分の人生を重ね合わせられるアフガニスタン女性がたくさんいるのだろう。
とにかく重い。
マリアムとライラに、そして彼女たちの子どもたちにも共通しているのは、幼い頃からそれが当たり前の状況の中で成長しているということ。まだ判断力のない幼い子どもたちにそのような思いをさせないために、大人はもっと思慮深くなければならないと思った。
重い話だがラストはとても感動的な余韻があった。