土屋政雄のレビュー一覧

  • 夜想曲集

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    5篇の短編からなる。
    「夜想曲」などに出てくるリンディーガードナーはカズオ・イシグロのお気に入りキャラだろう。
    天真爛漫なセレブに売り回されるミュージシャンたち。
    5篇の短編はすべて音楽に関係のあるストーリーで、切なく、ときにクスッと笑える要素を含む。

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    2025年02月02日
  • 月と六ペンス

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    ネタバレ

    月と六ペンス読みました。
    終盤のところが1番印象的で好きでした。
    生まれる場所を誤る人がいる、とゆう一文から始まる文章のところや、タヒチでのストリックランドの様子。
    物語中盤にストリックランドがブランチのことを、支配欲は激烈で魂の支配までする、ただ自分のものにしたかっただけだ、と言い放っていましたが、タヒチのアタは自分をほっといてくれるからこれ以上は望まないといい、最期をそこで過ごす。このふたりの対比は痛々しく、ブランチに同情してしまう私は似たものをどこかで持っているからなのかなと思ったり。
    世間はどうでもいいストリックランドと、ブランチの夫の他者に執着にも感じるような介入をしたがる様子との対

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    2025年01月20日
  • クララとお日さま

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    分厚くて最初分かりにくくて読みにくそうだな、と思っていました。
    しかし少し我慢して読み続けると、AIと人間という一言では表しきれない関係に魅了されました。
    最後はとても感動、、、ページ数に圧倒されて読んでいない人には是非読んで欲しいです。止まらなくなります。

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    2025年01月12日
  • イギリス人の患者

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    読んでいる際の雰囲気が池澤夏樹さん著の”夏の朝の成層圏”に似ている気がしました。
    両方ともなんとなくモヤモヤしている気持ちへの処方箋として良いのではと思います。

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    2024年11月30日
  • 夜想曲集

    購入済み

    副題から分かるように全ての短編に音楽の要素が出てきますが、もうひとつの「夕暮れ」はどういうことだろうと思いながら読んでいました。訳者あとがきにも書かれていましたが、音楽以外にももうひとつ男女関係・夫婦関係の危機というモチーフも全ての短編に共通しています。登場人物皆もう若くなく、ある人は結婚した時の状況とはお互いの関係や自分の感情や人生に求めるものが変わっていたり…。こういう人生の盛りを過ぎてそれでも残りの人生を生きていく人々を「夕暮れ」という言葉で表現しているのでしょうかね。思えば『日の名残り』もそのような意味合いでしたか。
    ひとつひとつ心にしんみりとした感覚を残す短編でおすすめです。

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    2024年08月17日
  • 日の名残り

    購入済み

    面白くてすんなり読めました

    サー・カズオイシグロの作品を読むのはこれが初めてでしたが、冒頭からすんなり読めて良かったです。
    大好きなドラマ「ダウントンアビー」の世界を楽しめました。主人公のドライブ中の描写も以前旅行した時のイギリスの田園風景が目に浮かぶようでした。
    どちらかというと主人公より元女中頭のミス・ケントンに感情移入して読後感はどことなく悲しかったですが、他の方のレビューを読むと主人公もミス・ケントンも過去を振り返った上で希望を持って未来に歩み出す物語なのかもと思います。なかなか深い物語です。

    #深い

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    2024年04月16日
  • イギリス人の患者

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    1992年のカナダ総督文学賞とブッカー賞受賞。2018年にブッカー賞50周年記念の歴代受賞作で最も優れた作品として、ゴールデン・マン・ブッカー賞受賞。『イングリッシュ・ペイシェント』の名で映画化され、アカデミー賞9部門受賞しています。

    著者はスリランカ生まれのカナダ在住。カナダ文学ですぐに思い浮かぶのは、モンゴメリやマーガレット・アトウッドくらいでしたが、こんな凄い作家がいたのですね。

    長らく新潮文庫で絶版でしたが、創元文芸文庫で復刊。東京創元社も、白背表紙の文芸文庫シリーズを始めて間もないので、ラインナップ充実を図ってのことでしょう。手に入りやすくなったのは喜ばしい限りです。

    さて、詩

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    2024年04月07日
  • イギリス人の患者

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    あー。すごい。すごい、これ。それ以外まず言葉が出ない。
    ブッカー賞を受賞した中でも最も素晴らしい作品を選ぶという企画の中で選ばれた本作。ブッカー賞オブブッカー賞。

    「イングリッシュ・ペーシェント」という題で映画化され、かつアカデミー賞も受賞したとのことだがその筋に疎い私はそんなことも知らず。
    この小説が最初ですべてだったわけだが、すごい。

    私が海外文学が好きな理由の一つに「絶対に日本人には書けない物語を書ける」ということがあるのだが(もちろんその理由で日本の文学も好きだけれども)、この小説は日本人には絶対書けない。
    第二次世界大戦が舞台で、かつ、ヒロシマナガサキの描写が物語のキーになっても

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    2024年03月10日
  • イギリス人の患者

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    ネタバレ

    マイケル・オンダーチェのゴールデン・マン・ブッカー賞受賞作。新潮文庫から版元を代えての復刊。

    第二次世界大戦終戦間際のイタリア。ドイツ軍が撤退した後、廃墟となった僧院に記憶がなく全身に火傷を負った患者と、その看護をする若い看護師が住んでいる。そこに看護師の父の友人と、爆弾の解体工が加わり、四人による生活が始まる。。。

    美しい。ただひたすらに美しい小説。
    詩的な文章により、四人の過去と主に北アフリカ地方の歴史が語られる。北アフリカの話は、描かれるほとんどに馴染みがないので理解できない描写も多いが、砂漠の幻想的な表現が非常に良く読んでいても飽きさせない。
    特にイギリス人の患者の過去がほんのりわ

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    2024年02月04日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    ノーベル文学賞をとってからもう6年か。もともとノーベル賞に興味はなかったけれど、当時、カズオイシグロの受賞を聞いたときはびっくりした。
    彼の作品は全部読んでいて、好きな作家の一人だったから。

    映画『日の名残り』を観たのがきっかけで、カズオイシグロを知り、原作を読んだ。
    そしていつものように、好きな作家の作品は出版された順番に読んでいきたいと思い、『遠い山なみの光』から順に読んでいった。
    読めば読むほどはまっていく。

    ノーベル文学賞受賞記念講演を収録した本作は、スピーチであるせいかとても読みやすい。でもぎゅっと大切なことが詰まっている。
    『日の名残り』のくだりでは、まさに私が一番好きな部分に

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    2023年06月12日
  • 千の輝く太陽

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    アフガニスタンの歴史を年表で見ながら読みたい本。マリアムの運命には涙が出てきた。同じ作家のカイトランナーも是非読みたい。

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    2023年05月27日
  • 守備の極意(下)

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    ハープーナズの快進撃とは逆で登場人物たちの関係はぎくしゃくしてうまく行かなくなります。自分の欲望のためではなく、あくまで自分の信じることを行っているので心地よい感じがします。世間一般でいわれる成功ではなく、自分の人生を生きた結果が小説の内容なのです。

    最後の墓場から湖へ向かうところは色んな意味で「くさい」表現となっています。のこった登場人物が本当のスタートをきるための儀式という感じです。

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    2023年04月07日
  • 守備の極意(上)

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    ウィスコンシン州にあるウェスティッシュ大学の硬式野球部が舞台となっています。小説の題名はアパリシオ・ロドリゲスという守備の名手が書いた本『守備の極意』から来ています。アパリシオは18シーズンセントルイス・カージナルスでプレーしたとあるので、実在した選手と思い込んで読んでいました。他の小説でもよくMLBの選手の名前がでてくるのでそう思ったのです。ここですこし考えました、作者が作り出した架空の選手ではないかと。フィクションなのでまったく問題ないのですが、そう考えると『守備の極意』の中身もちょっとおもしろいです。

    例えば、
    59「ゴロをさばくことは寛大な行動であり、理解の体現である。ボールに向かっ

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    2023年04月07日
  • ねじの回転

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    まずは自画自賛から

    いやー面白かった
    そしてこの物語を面白いと感じられる自分、なかなかの読書人ではなかろうか

    非常に読む側の技量を試される物語だと思いました
    読む側の技量って何か知らんけども

    多くのことを読み手の想像力に委ねてくるんです
    それでいて空白が少ないんですね
    非常に緻密に計算しつくした上で必要最小限のことしか語ってないんですが、とてもたくさんのことが込められていて、読者はその想像力の及ぶ範囲で様々なことが読み取れる文章に感じました

    読む人によって怪奇物語であったり、謎解きミステリーであったり、恋愛物語であったりとくるくると姿を変える物語
    そしてそれは全て意図して書かれている

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    2023年02月15日
  • ねじの回転

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    19世紀から20世紀にかけて活躍したヘンリー・ジェイムズ中期の傑作。ゴシックホラーの様式を借りながら、無意識や語られぬもの=幽霊を巡って狂わされていく家庭教師とその家の子供2人。
    Netflixでドラマ化されたように、単純にホラーとして読むことができる作品である一方で、怖いのは亡霊が出てくるからではなく、亡霊の出現を契機として破綻をきたしていく、家庭教師と2人の子供の顛末だろう。解説で言及されているように、それは19世紀末に登場したフロイト理論や心霊主義の影響を色濃く受けていて、どことなく亡霊によって狂わされていくマクベスを思い出させる。
    著者のヘンリー・ジェイムズのお兄さんは哲学者のウィリア

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    2023年01月23日
  • ねじの回転

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    セクシュアリティ、階級、社会構造をいろんな視点から見て、いろんな解釈を読者に与えるような本だと感じた。
    面白かった。

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    2022年11月14日
  • 夜想曲集

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    短編集。笑って、しみじみして、唸って、ため息ついてまた笑って。
    一番好きなのは「降っても晴れても」。
    どれもラストは僕好みだった。

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    2022年09月19日
  • 夜想曲集

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    カズオ・イシグロ(1954-)は、『日の名残り』(1989年)で、イギリスで最も権威ある賞「ブッカー賞」を受賞した、世界的作家。長崎県長崎市で、日本人の両親の元に生まれましたが、5歳でイギリスに移住。成人までは日本国籍、その後、イギリスに帰化しています。2010年に映画化された『わたしを離さないで』で、また、2012年4月に、NHKで「カズオ・イシグロを探して」と題したドキュメンタリーが放送され、日本でもより知られるようになりました。
    『夜想曲集』(2009年)は、「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」という副題が付いた、初の短編連作集。どの物語も、人生の後半や終盤にある人物が、自らの過去(=夕暮

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    2022年09月05日
  • 月と六ペンス

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    40代に入ってからすべてを捨てて絵を書き始め、後に伝説となった画家の生き様を若き作家を語り手として描く。

    天才と狂気を感じるストリックランドの絵描きとしての人生、傍若無人な彼が関わる3人の女性との関係、パリとタヒチという文化と自然の対比など、重層的な構造をもつ小説。単純に、若い作家視点で語られるストリックランドのエピソードは、ミステリアスで引き込まれるし、恋愛小説としても読みごたえがある。しかし人生について、どの世代の人にとっても非常に考えさせられる要素が散りばめられており、何度も読み返す価値のある味わい深い作品でもある。本当に幸せな人生とは……人生に何を見い出すか……。ストリックランドだけ

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    2022年07月07日
  • 月と六ペンス

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    今まで読んだ中で一番好きな本になった
    女性の描き方に時代を感じるが、人間の内面に存在するさまざまな矛盾を綺麗に描き出してたし、自分が最近感じることと同じことがいっぱい出てきて、こういう風に考えるのが自分だけじゃないんだと思えた。すごくよかった。
    あと、解説で語り手のストリックランドへの恋愛感情の解釈について掘り下げてて、読みながら自分もそう感じてた部分があったから綺麗に言語化されてて嬉しかった。
    出会えてよかった本。

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    2022年05月26日