マイケル・オンダーチェの作品一覧

「マイケル・オンダーチェ」の「イギリス人の患者」ほか、ユーザーレビューをお届けします!

作品一覧

  • イギリス人の患者

    イギリス人の患者

    小説・文芸

    4.2
    1巻1,300円 (税込)
    王に名を消し去られた風、部族ひとつを溺れさせる砂の海、泳ぐ人々が壁一面に描かれた泉の洞窟――妖しくも美しい情景が、男の記憶には眠っていた。砂漠に墜落し燃え上がる飛行機から生き延びた彼は、顔も名前も失い、かつて野戦病院だった屋敷で暮らす。世界からとり残されたこの場所に、一人で男を看護する女性、両手の親指を失った泥棒、爆弾処理班の工兵と、戦争の癒えぬ傷を抱えた人人が留まり、男の物語に耳を傾ける。それぞれの哀しみは過去と現在を行き来し、記憶と交わりながら、豊饒な小説世界を展開していく。英国最高の文学賞、ブッカー賞五十年の歴史の頂点に輝く長編。/解説=石川美南

ユーザーレビュー

  • イギリス人の患者

    Posted by ブクログ

    第二次大戦末期、イタリアの元野戦病院であった廃墟のような屋敷で顔と名前の無い患者と看護する女性が暮らす。
    そこへ女性の父の友人、爆弾処理班の工兵が集まり4人での生活がはじまる。

    過去と現在、二つの愛、患者の正体、戦争の中で起きた様々な出来事、イギリスの事、爆弾、欧州とアジア様々な事象が絡み合い物語を成していく。

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    2026年06月27日
  • イギリス人の患者

    Posted by ブクログ

    オンダーチェは3冊目です。
    第二次大戦末期、砂漠に墜落し燃えた飛行機から生き延びた顔も名前も分からない患者とかつて野戦病院だった修道院で患者を看護する若い女性。2人の暮らしに外部からの来訪者が加わり、不思議な共同生活が始まる。
    博識な患者の話に耳を傾け、または図書室の本を患者に読み聞かせ、来訪者の1人、若い爆弾処理班の工兵と恋に落ちる看護師。
    登場人物の日常が描かれたと思えば波のように追想が始まり、患者の様々な古典についての語りがあり…風に揺れるカーテンのようにストーリーが移り変わって、何とも言えない不思議な心地良さの中読み進めました。
    解説によれば、オンダーチェは詩人でもあるとのこと。それでこのような展開なのだな、と納得です。
    読み始めて3ページくらいで、もう魅了されてしまった。久々の大満足読書でした。

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    2026年05月20日
  • イギリス人の患者

    Posted by ブクログ

    「教皇選挙」を観て、レイフ・ファインズ熱が再燃。
    自分的No.、最も美しく儚い姿だった「イングリッシュ・ペイシェント」を思い出した。
    原作は読んでいなかったな、ということで手に取る。

    本書の解説にもあるが、映画と小説はかなり別物であった。
    なので、映画が好みだからと言ってこちらも気にいるかは別問題。

    しかしながら、小説にはこの形式でないとできないだろう展開・発展があり、その揺らぎが文庫版の訳者曰く「読む人を選ぶ本」だそうだが、私には合っていてすぐこの世界感に没入した。
    話者がコロコロ変わる、時間が自在に行き来する、ということだったがその変化に反発せずについていけ、こちらも時間も空間も地図上の移動も自由に旅することができた。

    なんという想像力だろう、こういう作品にあと何回出会えるだろう、と思う類の読書体験。特別な作品だった。

    “飛行機屋”からしたら、そりゃないぜなエッセンスもあるだろうけど、そういうことを突っ込むのは野暮だろう。
    もしそこを突っ込んだとして、この本の価値はそこではないし、これをベースにして作られたあの映画も色褪せはしないと思う。

    冒頭から最後まで、脳内ではレイフ・ファインズが語り、あの美しい様々なシーンが絵になってあらわれた。
    ハナとキップ、砂漠の風景、皆が住む廃墟など、印象的なことをあげたらキリがない。
    映像になっていなかった要所も、まるで文字を追っている目と本の間にスクリーンが立ち上がり、映像が浮かぶような心を掴まれる描写ばかりで、行ったことのない砂漠の乾燥した熱風を受けたり、日陰では涼しく暗い洞窟で、水滴の垂れる音だけ聞こえているような静謐を感じたり、あらゆるものが五感に語りかけてくる本だった。

    映画のことを言えば、あの時レイフ・ファインズは33,34歳だったらしい。
    信じられない程の悩ましい色気!
    美しい青い瞳と最高に切ないあの眼差し。たまらないね。

    何がどうなったらあのような造形に仕上がるのか...
    ヴォルデモートの姿しか知らない人は、ぜひ観てほしい姿だわ

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    2025年05月09日
  • イギリス人の患者

    Posted by ブクログ

    読んでいる際の雰囲気が池澤夏樹さん著の”夏の朝の成層圏”に似ている気がしました。
    両方ともなんとなくモヤモヤしている気持ちへの処方箋として良いのではと思います。

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    2024年11月30日
  • イギリス人の患者

    Posted by ブクログ

    1992年のカナダ総督文学賞とブッカー賞受賞。2018年にブッカー賞50周年記念の歴代受賞作で最も優れた作品として、ゴールデン・マン・ブッカー賞受賞。『イングリッシュ・ペイシェント』の名で映画化され、アカデミー賞9部門受賞しています。

    著者はスリランカ生まれのカナダ在住。カナダ文学ですぐに思い浮かぶのは、モンゴメリやマーガレット・アトウッドくらいでしたが、こんな凄い作家がいたのですね。

    長らく新潮文庫で絶版でしたが、創元文芸文庫で復刊。東京創元社も、白背表紙の文芸文庫シリーズを始めて間もないので、ラインナップ充実を図ってのことでしょう。手に入りやすくなったのは喜ばしい限りです。

    さて、詩的な書き出しから始まる物語は、いきなり衝撃的な描写で、METALLICAの名曲”One”のPV『ジョニーは戦場に行った』のトラウマ映像が脳裏をよぎりましたが、目が見えるし会話もできるので、酷い状態ながらもとりあえず一安心。

    時は第二次世界大戦のイタリア。全身火傷を負った正体不明のイギリス人と思われる人物が、連合軍の野戦病院に運び込まれます。かつての尼僧院だった屋敷は、ドイツ軍が撤退する時に破壊し尽くし、建物内にも爆発物が残る危険な状態。負傷者と看護婦を安全な場所に移す決定が下されたとき、看護している若いカナダ人女性は、周囲の反対を聞かずにその廃墟のような屋敷に留まります。

    そこへ女性の少女時代を知る、女性の父親の友人のおじさんと、爆発物処理のインド人工兵の青年が加わり、屋敷での生活が始まります。4人は、少しずつ互いの過去を語ることにより、距離感が縮まり親密になっていきます。そして、次第に”イギリス人の患者”や登場人物たちの過去が明らかになっていき…

    戦争という特殊な状況の中で、異国で育った男女のそれぞれの過去が、まるで厳選された詩の言葉を織り交ぜたような美しい文章で綴られていき、時に時代を前後し、時に人物が入れ替わり、少しずつ少しずつ語られて行きます。そうして、印象的な場面が次々と現れて、次第に物語が積み上げられて明らかになって行く様や、美しい心象風景の描写の数々にとても引き込まれました。

    また、美しいだけでなく、時には、ヘロドトスの『歴史』を仲間の前で朗読する”イギリス人の患者”の過去に関係する女性の「ほのめかし」でドキドキしたり、おじさんの泥棒失敗談でクスりと笑ったり、”イギリス人の患者”の親友の後半でのエピソードでグッときて涙腺を刺激されたりもしました。あと、”イギリス人の患者”が、キプリング『キム』を朗読する看護婦への読書指導もいいですね。

    残念なところは、終盤での早急過ぎる変化。例えるなら,夏目漱石『虞美人草』の登場人物の性格が急変してエンディングに向かって行くようなと言えば伝わるでしょうか?伏線は散りばめられているだけに、もう少し繋がりが丁寧だといいのにと思いました。

    それと、性的な描写で少し引いてしまうような記述があるので、誰かにおすすめはしづらいのが難点かな。とは言え、個人的には他のブッカー賞受賞作、J.M.クッツェー『恥辱』『マイケル・K』やカズオ・イシグロ『日の名残り』を超えたかもしれない。やはり、ブッカー賞歴代1位は順当でしょうね。

    0
    2024年04月07日

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