土屋政雄のレビュー一覧

  • クララとお日さま

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    とても素晴らしい作品だった!

    同じくカズオイシグロの「わたしを離さないで」と通じるところがあって、生きるとは何か、その人らしさとは何か、それを問い続けることがカズオイシグロのテーマの1つなのだろう。

    この作品でも、思いもかけないアプローチで生きることへの問いかけを試みている。

    最後に再びクララの前に現れる店長の姿は何を物語っていたのだろう。あれはもしかしたら「わたしを離さないで」とリンクしているのかもしれない。

    そして読後はもう、なんとも言えない気持ちに襲われてしまった。
    AIであるクララの言葉が清らかで淡々としていて、そのことがより一層読み手の感情を揺さぶるのだろう。

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    2026年05月17日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    未来の話ではなく過去であるという設定がとても気に入った。歴史を学ぶとなぜそんなことが?ということが平気で起こっている。でもそれが現在に住んでいるということ。生活そのものが不条理に包まれていることを染み込ませられながら生きていく、そこから抜け出すという発想すら無に帰すどうしようもない空気はすごくクリーンな灰色で軽やか。

    キャシーは結局誰に話しかけていたんだろう。

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    2026年05月14日
  • 日の名残り

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    いいお話でした。
    スティーブンスの執事に徹した生き方は、それはそれで素晴らしいものだと思いました。

    「人生楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。」
    優しい言葉。

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    2026年05月10日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    カズオ・イシグロの本を読んだことがないなぁと思い、手に取ってみました。
    まったく何の前知識もなく読み始めたのですが、最初は、何のことを語っているのか分からない表現があり、頭の中に、すこし「?」をもちながら読み進めました。物語は、ある種の青春群像かなと思いながら、話に引き込まれていったのですが、物語後半で、彼らが何者であるか分かったときの、ショックというか、悲しさというか、虚しさというか…
    読後感は、必ずしもすごくいいものではないと思いますが、読書体験としては、他に代えがたいものがあるのではないかと思います。

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    2026年05月04日
  • 日の名残り

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    イギリス文学最高峰のブッカー賞を受賞したという本、ようやく読む機会ができました。忖度なしで面白かった。私は「クララとおひさま」ではじめてイシグロ氏の本に出会い、これが2冊目ではありますが、共通して感じるのは「静謐さの中にある感動」。本書で扱われている時代は2つの世界大戦をはさむ激動の時期なのですが、あえて舞台は牧歌的風景の広がる英国貴族の屋敷(その意味でドラマ「ダウントン・アビー」を彷彿させる)。しかも主人公はその貴族ではなく執事です。このアプローチは「クララとおひさま」にも共通していると思います。クララとおひさまでは、貴族にあたるのがジョジ―という少女で、執事にあたるのがAI搭載ロボットのク

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    2026年05月02日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    ヘールシャムやコテージでの生活を回想するパートが、丁寧ですごく好き。外の世界について想像を巡らせたり、ちょっとしたことで激しく動揺したり、友達と険悪になったり、保護官のあれこれについて仲間と議論し合ったり…。施設で育った主人公たちの描写がリアルで、辻村深月さんの「琥珀の夏」を思い出した。
    訳もきれいで、すっと入り込めて一気に読んでしまった。

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    2026年04月30日
  • 日の名残り

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    過剰なまでの遠慮ともてなしとこだわりには日本と通じるものを感じる。ただ翻訳文だからか、「執事なのにその言い方は無礼では!?」みたいな箇所もときどきある。日本とイギリスの文化の対称性の分析とかで深めるのも面白そう。
    この本を読んで、品格は何に宿るのかを考えた。主人公が毎日こだわり抜いて磨いた銀器が要人の機嫌をよくするのに一役買ったことを、自分の仕事が世界情勢の好転に少しでも寄与したと誇っているシーンがあって、毎日積み重ねたこだわりや努力が実を結んだときにこう思えることこそが報いであって、そのために自分が是とすることを粛々と継続することは、どのような立場にあっても高貴なのだと思った。モットーと言い

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    2026年04月21日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    苦しいほど切ない。
    作中、いくつも希望が生まれては消え、展示館を通じて提供までの猶予を得られるかもしれないという最大の希望がただの噂にすぎなかったと知る。
    主要な登場人物であるキャシー、トミー、ルースはそれぞれの性格が細部まで描かれており、漫画やアニメのキャラクターのような「仲良し3人組」になりきらない部分にリアルさを感じた。
    全員がとても人間臭い部分を持っていて、3人それぞれに自然と感情移入してしまう。
    だからこそ、終盤は物語を読み進めるのが辛くなってくる。
    ヘールシャムの生徒たちも、保護官も、マダムも登場人物が優しい人ばかりで、その優しさが社会の仕組みや時代の流れにかき消されてしまうという

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    2026年04月20日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    ネタバレ

    クローンとは言えど、提供者という抗えない運命に生まれた彼らを思うと、どうしても「最初から真実を伝えるべきだ」というルーシーの考えに共感してしまう。でも同時に、「せめて子ども時代だけは普通の幸せを」というエミリ先生の想いも否定しきれない。どちらも人間的で、だからこそ苦しい。

    キャシーとトミーも、もっと早く愛し合ってほしかったと悔やんでしまう。気づいたときにはもう遅い残酷さが胸に残る。

    しかし結局、彼らと我々は与えられた時間の長さと扱いが違うだけで、誰もが終わりに向かっている。だからこそ、日々の中で大切なことや想いを分かち合いながら生きたい。何も知らない、伝えないまま終わるのではなく、不完全で

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    2026年04月15日
  • 日の名残り

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    初めて手にした時には、展開の乏しさに、あえなく挫折。今回、リトライして、完読。引き込まれるには、かなり読み進める必要がある。
    時は1956年、舞台はイングランド。執事スティーブンスの6日間の小旅行、そこに15~35年前の出来事の回想がはさまる。
    スタイルがやや型にはまりすぎている気もする(執事らしさの演出なのかもしれない)。途中、ドーリントン邸での秘密裏の国際的会合など、どこかモームを思わせるところもある。何度も出てくる執事の品格の議論では、お茶大のあの先生の顔が浮かんでしまった。
    解説は丸谷才一。イギリス文学史とイギリスの時代的変化の文脈で本作品を論じている。恋愛小説として読んでしまったが、

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    2026年04月15日
  • 日の名残り

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    ネタバレ

    めっちゃ面白かった。一気に読んでしまった。
    三宅かほさんがYouTubeで言っていた、「カズオイシグロは時代に取り残された人の小説(ニュアンス)」の意味が分かった。
    言ってしまえば何も起こらない小説。
    翻訳が素晴らしかった。

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    2026年04月13日
  • クララとお日さま

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    AFという新たな存在が、成長段階の子どもに寄り添い家族全体のお守りをするという発想。薄々感じているが、ゲームやパソコンから移行しつつある何かがやはりAIでよいのか。人間同士では不可能なのか。人間に失われた信仰心を設定し、神秘的な秘密裏の行動をAIが成せるのか。思いもしなかった内容に引き込まれた。
    恋愛相談をAIにするという冗談のような話に笑っていられない。

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    2026年04月12日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    ネタバレ

    全く前知識なく読んだ方が良いです。
    これは。
    読めば読むほど、そういうこと?!と、
    色々なことが分かっていって、読むのが止まらない。
    本当に止まらなくなります。
    どんどん心の鉛が増えていく感じもあるけど、一生私の中に残り続けるだろうなという印象深いシーンもどんどん出てきて、カズオ・イシグロさんの天才的な表現力を痛感します。

    私の今年に読んで良かった本ベスト10に入ると思います。
    それどころか、もし誰かに「どういう本が好きなの?」と聞かれたら、「土屋政雄訳、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』」とまず答えてしまうかもしれないです。
    それくらい良かった。面白かった。
    本ってすごい。
    バケモノ

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    2026年04月11日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    豚や牛といった家畜が人間に食われるために生きていることを考えて暗い気持ちになりますが、この小説もそれに劣らぬ真っ暗な読後感を持ちました。読み終えて6年以上経つが、思い出して震えが止まらなくなる怖さがある。

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    2026年04月08日
  • 日の名残り

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    ネタバレ

    先日読んだ『わたしを離さないで』から2冊目のカズオイシグロ。免疫(?)がついた状態だったので語り手をかなり疑いながら読んでいました笑

    スティーブンスの自己イメージは完璧主義なプロフェッショナルなんだと思うけど、それとは裏腹に人間らしいところが垣間見れてなかなか愛おしいおじさんだった…ミス・ケントン惹かれていたらしい(スティーブンスの独白によるとだけど)のも理解できるかな。

    ラストのシーンは閉鎖的だった空間がひらけてふっと風が通り抜けるような感覚があり、かわいそうとも尊いとも笑いともつかない、色々な感情がないまぜになり泣けてしまった。

    イギリスとナチスドイツの関係やスエズ危機など、歴史に疎

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    2026年04月09日
  • クララとお日さま

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    個人的に、カズオイシグロ作品で1番好みの一冊。

    主人公であるロボットから語られる世界からは、穏やかながらも残酷に、確かに、すぎていく時の流れを感じます。
    またクララが太陽を頑なに信じる姿は、人間で言うところの信仰にも近いものを感じます。人とロボットの境目なんて考えようによっては、もはや存在しないのかもしれないですね。

    映画化が楽しみ!

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    2026年03月28日
  • 忘れられた巨人

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    愛と平和は、雌竜が吐く霧によって保たれている。夫婦の愛と社会の平和は、忘却によって保たれている。
     雌竜の霧。いい表現だ。
     それはともかくカズオ・イシグロが導き出す現実は、身も蓋もないぐらいに厳しい。『私を離さないで』を読んだ後、目の前が真っ暗になるような思いをしたが、この『忘れられた巨人』も同様の読後感を持った。アーサー王物語も古代ブリテンの歴史も知識がほとんどないまま、ファンタジー的な物語なのかと思って読み進めていたが、終盤の終盤に一気に心が鬱になりかけた。
     夫婦の旅の目的地は、三途の川の向こうの死の世界だ、と私は読んだ。結局、死は一人で迎えるしかないものである。最後の場面、主人公の決

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    2026年03月29日
  • クララとお日さま

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    病弱な少女のために神頼みをするAIクララ。終始悲壮感が漂っていて切ない物語だった。 クララの意図を理解して協力してくれた父親に好感を抱いた。

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    2026年03月27日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    数年前に買ったけど、いったい何を読まされて(聞かされて)るんだろう?となり積読だったが再読。
    今回はすいすいと読み進められた。語り手がサラッと言及する驚くべき事柄に足元がぐらつくような感覚。癖になるかも。カズオイシグロの特徴で、信頼できない語り手、というらしい。数年前に挫折する原因になった、話の見えにくさ、こそがこの本の面白さだったのかと…
    答えの出ないテーマだけど、ラストシーンは映像を見ているように印象に残る。
    面白さがわかるまで数年かかっちゃったけど、他の作品も読んでみたい。

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    2026年03月19日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    生まれた時から自分の使命が決まっている。見ず知らずの人のために生きて、覚悟して、自分で選択して終わりを迎える。どんな気持ちなのだろうか。
    私はこれまで、自分のことは全て自分で選択してきた。それがどれだけ恵まれている環境だったのかと改めて感じた。親にも、夫にも、感謝しかない。
    医学のために存在するクローンの人権についても考えさせられた。現代の医学では、「臓器だけ」だけ作る、よりも「人間」の方が作りやすいんだって。誰かが犠牲にならなくてはいけない世界。今後もより良くなることを願うばかり。研究者の方、日々ありがとうございます。

    キャシーとルースは、私と親友Aにとても似ていて何度も思い出さずにはいら

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    2026年02月28日