土屋政雄のレビュー一覧
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映画公開時に、映画を見て小説も読んだんだけどまったく理解してなかった、と思う。
カズオ・イシグロのノーベル賞受賞(受賞から数年経っちゃってるけど)でちゃんと読んでみることにした。
1956年、オックスフォードの由緒正しいお屋敷ダーリントンホールに勤める初老の執事スティーブンスは、今のご主人ファラディ氏の休暇に伴い小旅行を計画した。ダーリントンホールは以前は名門貴族ダーリントン卿の持ち物だったが、卿の死後アメリカ人富豪ファラディ氏が屋敷を買い取り、スティーブンスはそのまま新しいご主人に仕えている。政財界に携わり世界の情勢に影響力を持つイギリス人貴族と、戦後の自由なアメリカ人。ご主人の違いにも悩 -
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ネタバレ希望が砕け散り、真実が明らかになっても絶望せず、平穏な日々を送り続けるトミーとキャシー。
割と中盤で彼らはクローン人間で、臓器提供の為に作られたと明かされる。が、臓器提供の為に死ぬっておかしくね?ってなるはずなのにそのまま物語が進んでいくのが少し怖いまであった。
君たちはどれだけ恵まれた人間かを説くエミリが印象に残る。諦念を避けるために全てを教えないという意見は筋が通っているが冷酷で、むしろそっちの方がルーシー先生の意見よりも理論的ではと思った。
仲間の死を見届ける役割までもクローンにやらせるという自己完結性は彼らの制限された世界を象徴していると思う。(オリジナルによる良心の呵責や罪悪感 -
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カズオ・イシグロさんの『クララとお日様』を読みました。
物語は、AF(人工親友)であるクララの視点で語られます。
最初は聞き慣れない用語が多く出てきて少し戸惑いますが、丁寧な筆致を読み進めるうちに、徐々にこの世界の輪郭が見えてきます。
ハッキリとは描かれていませんが、科学技術が進歩しすぎたことで様々な分断が生まれている、そんな「ディストピア」な社会であることが想像できます。
そんな厳しい世界の中で、常に人に寄り添い、優しくあろうとするクララ。人間よりも、信仰心を持ち続ける彼女の方が、よほど人間味を感じられる点がとても印象的でした。最後にクララが見出した、「人間を人間たらしめるものは何か? -
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品格とは何かを問う素晴らしい小説。
主人公のスティーブンスは偉大なる執事として、感情を排した献身こそが品格であると信じ生きてきた。
しかし、幾つかの出来事が示す様に、その信念によって自らの人生を縛り、結果として取り返しのつかない後悔を生んでいった。
では彼は自らの心に誠実でなかったから、品格がなかったのか?そうは思えない。
もしここで彼が過去を否定し、失敗を他人のせいにし、感情を受け入れていなければ品格のない人間に成り下がっていたのかもしれない。
しかし、彼は旅の中で、自らの後悔を受け入れ、人生を投げ出さず、執事として生き続けることを選んだ。
自らが生きてきた人生に向き合い、後悔を受け -
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ネタバレキャシー、ルース、トミーの微妙な距離感は何なんだろう。ただの三角関係だろうか。トミーからキャシーまたはルースにアプローチする場面は印象に残っていない。であれば、トミーの魅力はどこにあったのだろう。目立つ子供ではあったが癇癪持ちで扱いにくく、ヘールシャムの生徒同士で尊敬を受けるバロメータである「どれだけいい作品を作れるか」という点ではからきしである。しかし、キャシーもルースも他の男性とも関係を持ちながら、最終的に大事に思っていたのはトミー。この点に限らず、本作は色々な問いを立てることができるように思う。
読書中の予想として「作品」は何かの犠牲者である生徒それぞれの記念品ではないかと考えていたが -
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ネタバレ前情報が「信用できない語り手」しか無く、この言葉を理解できていなかったため、変に期待して読み進めてしまったためあっさりとした読後感になった。
この本は、というかカズオイシグロというかキャシーは(トミー〜ヘームシャル含め)記憶をテーマにしていて、p426に一度だけ「これをお読みの方も」と出てくる。これは、私が途中から感じていたこの回想は誰に向けての語りだろうというものの終着点であると感じた。つまりキャシーに、ヘームシャルのことを、読者である私たちが教えてもらう体験型小説のような感覚のため、没入して読めたのかもしれない。
回想形式で進められて行くためたった1人の語り手であることに気付いてからそ -
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ネタバレ話の中で出てくる主人公の友達に対する複雑な感情は共感できるものもあり、共感できなくても何故か懐かしい気持ちにさせられた。ハッピーエンドとは言えず、決まった運命どおりの最後を迎えることになる。最後キャシーは自分の人生をどのように振り返ったのか。後悔したのだろうか。キャシーは3人でいることの関係を強く重視していたと思う。だから自分のトミーに対する思いを封じてでも、3人でいることを選んだ。自分も含め、誰かが1人だけ除け者になることを嫌がっていた。最後のシーン。キャシーは1度だけ空想を許した。これはもっと早くトミーと一緒になりたかったという空想だったのではないだろうか。3人でいることを重視したことを後
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執事という職業自体が私にとっては、外国文学の中でしか触れることのない職業で、執事がどんなものかは作品の中で想像するしかないが、このお話の主人公は第二次世界大戦前から大戦後までをイギリスの貴族のお屋敷で働いていた1人の執事。初めは、世界大戦中の、貴族や国の重要人物のお話だったら、もっと面白そうなのに、なんで、執事のお話なんだろう?と思って読んでいた。主人のダーリントン卿が出会う国の中枢の人物たちとの話が漏れ聞こえてきて、執事は、ダーリントン卿がいかに立派な考えを持っているかということを説明していく。でも、何せ、漏れ聞こえてくる情報だけしか私たちには知らされないから、なんだか、曖昧でもやがかかって