土屋政雄のレビュー一覧

  • 日本文学史 古代・中世篇三

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    いよいよ古代・中世篇のクライマックスともいえる「枕草子」と「源氏物語」が登場です。それにしても、1000年前が女性の才能をこれほど花開かせる社会だった、というのは、日本は女系社会だった、という証左でしょうか。

    おもしろかったのは、「説話文学」の章で述べられている日本的ヒーロー論。河合隼雄氏の浦島太郎論“このヒーローは英雄的な戦いで女性を獲得するのではなく、むしろ女性によって捕らえられる”を引用し、日本的ヒーローは受動的で、西洋人にとっては不完全と思われる、と述べています。これも、日本が女系社会だったということと関連していそう。

    西洋の視点からみた日本文学史っていうのも、この本の面白さの一つ

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    2013年12月02日
  • 日本文学史 古代・中世篇二

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    古代・中世篇一を読んで、ドナルド・キーン氏の吸引力に巻き込まれ、篇二を購読。そして、篇二を読み進めるうちに、その吸引力がキーン氏の論旨によるものというより、その文章・文体に端を発していることにハタと気が付く。そう、その訳文自体に心が持っていかれている。訳者は土屋政雄。調べてみると、その昔、麻薬のようにうっとりとさせられた「イギリス人の患者」の訳者だ。なんてことだろう。ホント、びっくりした。「イギリス人の患者」もストーリーよりも訳文の方にうっとりきてたのかも。

    閑話休題、古代・中世篇二は、古今和歌集に始まる勅撰和歌集と平安時代の日記文学。花といえば桜、桜といえば吉野といった、日本人の常識がこの

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    2013年09月17日
  • 日本文学史 古代・中世篇一

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    気軽な気持ちで何気なく手に取ったのに、著者の日本文学を愛する情熱に引きずり込まれて、なんだか全巻読まなければならいような気にさせられてしまった。といっても、全巻あわせると18巻にもなるから、とりあえず、古代・中世篇は購入しよう。おそるべし、ドナルド・キーン氏の吸引力。

    古代・中世篇一は、古事記から平安時代前期の漢文学まで。特に、山上憶良に対する見方が変わった。子煩悩なお父さんってだけではなく、社会派だったのね。あとは、空海。“文学史に空海?”って思ったけど、「三教指帰」という戯曲仕立ての著作について、扱われている分量としては少ないながら、その特異性が際立っている。まずは、司馬遼太郎の「空海の

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    2013年05月12日
  • ダロウェイ夫人

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    「意識の流れ」という手法と内容との関係についてを主に、
    作者であるウルフ自身の証言が載せられているのが良かった。
    これについては、必ずしも手法が先になってできたものではないということ、
    自殺する準主役は、後付けで生まれたキャラクターであることなど。

    非常に面白かった。

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    2013年05月06日
  • ダロウェイ夫人

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    シームレスで視点となる人物が切り替わり、想像力を刺激する豊かな表現。小川のせせらぎのように流れる文章で「わあ、キレイ」と、手を入れてみるとその冷たさに驚く物語。そう感じるのは、登場人物の誰もが、心の歯車の油が切れかかっているような人たちだからかもしれません。老いが生む寂しさや疎外感を嫌々受け入れつつもなんとか虚栄心を満たそうとしたり、過去に縛られて悪ぶったり、叶いそうにもない理想を求めたり、今にも崩れそうな危うい足元でぎりぎり持ちこたえている人たち。人類絶滅も地球滅亡もないけれど、終末感漂う小説でした。

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    2013年03月17日
  • ダロウェイ夫人

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    以前に「灯台へ」を読んでいたのでウルフの独特な文体については、一応免疫ができていると思う。その分、まだ入りやすかったのかなとは思うが、意識の流れで視点がどんどん変わっていく文体に、とりとめのないストーリー、かなり読みにくい小説である。

    このふわふわした文体、主人公である「クラリッサ」ダロウェイ夫人の、その日のパーティの成功だけを考えているような地に足のつかなさに、うまくマッチしているような気がする。

    「アンジェラの灰」「コールドマウンテン」「ダロウェイ夫人」と続いた土屋政雄さんの翻訳もの。これで小休止。

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    2012年09月09日
  • 月と六ペンス

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    話が激しく展開していくのとは裏腹に、読みながらゆったりまどろむような気持ちになって、まるで童話のようだった。

    男女の機微が随分ミステリアスに描かれていてかわいいなあ、と思っていたのですが最後の解説を見て腑に落ちました。まあそんなの抜きにしてもオトコとオンナのことは第三者が見てわけわかんないくらいの方が素敵だと思います。恋や愛を言葉で説明したってしょうがないや。

    しかしこの登場人物と読み手の間の絶妙な距離感はなんだろう。冗談でも「あーわかるわかる」なんて言えない彼らのシンプルな神々しさは。

    どの登場人物をとっても「このひとはきっとどこで何しててもこういう風にしか生きられなかったろうな」と思

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    2012年05月23日
  • ダロウェイ夫人

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    人々と意識、思考が交錯して複雑なものが流れているように思えもするんだけど、本の中に流れているリズムや意識にとってもリアリティを感じる。
    人の中に潜ったらこんな感じかなって。

    本を読み終えた時、もう一度読み返した時何を感じるか想像してしまうのは嬉しいことだ。
    生き物みたいな作品というものは存在するね。
    そういうものに出会えた時はとても興奮する。
    多面的とも少々違う。
    有形でありながら、可変。という感じか。

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    2012年01月22日
  • 夜想曲集

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    Nocturnes(2009年、英)。
    音楽をメインテーマとした短編集。チェーホフを彷彿とさせる哀切感漂う3編(奇数章)と、アメリカンコメディーのような2編(偶数章)で構成されている。

    「降っても晴れても」が一番好きだ。著者の作品としては例外的に軽妙に笑える。とはいえ、根源にあるのはやはり哀愁なのだが…。全編を通して私が最も好きな登場人物が、この物語の主人公、レイモンドなのである。他の人々が自分の才能を人に認めさせようと躍起になる中、彼だけは自分のアドバンテージを自ら放棄して、親友夫妻のために道化役を演じるのだ。それが本人の意図を超えて、何もそこまでやらんでも、というほど必要以上に道化になっ

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    2022年09月06日
  • 月と六ペンス

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    物語の展開が、ものすごくドラマチックな小説だと思った。
    この小説のストーリーテリングの巧みさは、最初から最後まで見事だった。そもそも、「月と六ペンス」というタイトルの付け方からしてスゴい。
    モームは、現代であれば名うての構成作家になるような人だったのだと思う。

    自伝的小説でありながら、本人の手による記録ではなく、それを観察する「私」の視点からの描写になっていることで、とても客観的にストリックランドという人物の特異性が浮かび上がるようになっている。
    「私」の考え方は、常識的で、大衆的で、大きく偏ったところがほとんどない。いわば、当時のヨーロッパの社会通念そのものを代表する立場として、ホームズを

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    2020年07月15日
  • 夜想曲集

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    大きなドラマが待ち受けているわけではないが
    あとがきを読むと、カズオイシグロはチェーホフに大きく影響を受けているようなので
    なるほどと思う

    5篇目のチェリストにて
    まだ足を踏み入れたこともない庭園が遠くに見えました。
    という節がとても羨ましく思えた

    わたしもミス・マコーマックのような人からそのようなレッスンを受けてみたい
    まだ足を踏み入れたこともない庭園、そんな世界を私も自分の音で見てみたい


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    2026年02月26日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    何かおかしい、なにかを隠されてる…と疑問だったけど、それが明かされても、特に反発もなく受け入れる。なんの隔たりもないような、向こう側の世界には、どうしても行けない。生まれながらに違う世界だから。自分の運命を、自分に課された役割を、目の前のことをこなすだけ。
    不思議な話だったけど、実際に生まれた環境や時代で、搾取される側の人は確実にいる。低賃金で死ぬまで働かされたり。でも、私達はそこは見て見ぬふり。人格や感情や鮮やかな人生があることを、知らない。その方が私たちの精神衛生上いいから。…そんなアイロニーかな。
    繊細な生き生きとした感情描写を読めば読むほど、なんか憐憫や哀れみが浮かんでくるのは、後ろめ

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    2026年02月24日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    ネタバレ

    昔観たドラマがすごく印象的で、当時から原作を読んでみたいなと思っていた作品。

    「提供者」として生み出されたクローンのお話。
    ヘールシャムは環境が整った人道的な施設だったかもしれないけど、行き着く先(提供者となる未来)が変わらないのなら「人間らしい感性」なんか育たないほうが幸せなんじゃないかと考えさせられる。
    ただ、作風なのかあえてなのかは分からないけど、登場人物の感情(死への不安や恐怖、愛する悲しみ等々)がほぼ描かれないから、終始淡々としていてちょっとつまらなく感じてしまった。

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    2026年02月20日
  • 日の名残り

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    カズオ・イシグロ氏の著書を一度読んでみたいと選んだ一冊 
    主人に忠実に仕える老執事の回想は頑なで陰鬱‥
    人生の夕暮れに半生を振り返り、これからどう生きるか?ということを考えさせられた

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    2026年02月19日
  • ダロウェイ夫人

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    ネタバレ

    視点の使い方が特徴的。
    クラリッサの視点かと思えば次のページではレーツィアに、はたまたメイジーに……それだけでなく一人称で語られたり三人称で語られたり……忙しさを感じる記述だった。
    これにより個人的には読みにくく感じたが、ひとつの物事を複数人の視点から見れるのは面白い。
    話の軸はクラリッサとセプティマスの2軸。
    終盤までこの軸は独立を保ったまま同時並行的に話が続いていく……
    正直、この2軸(幸福の中の不幸を見出す視点・不幸の中の幸福を見出す視点)は交わりようがあるのかと思いながらページをめくっていたが、交点を見つけた時は驚いた。
    パーティという幸福の象徴的なものの中に自殺という不幸の象徴的なも

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    2026年02月18日
  • 月と六ペンス

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    10年以上前に読もうとして挫折してたけど、評価が高い名作なので再チャレンジ。
    最初なかなか読み進まなかったけど、徐々に面白くなってきた。

    ゴーギャンをモチーフに書かれた小説で、実際にここまで命を削りながら描いていたんだろうと思う。
    これほどまでに、自分に何が必要かを悟って、それ以外は一切不要と捨て去り生きていくことで見えてくるものがあるんだと思う。
    こんなふうに、他人の評価を一切気にしない生き方ができれば理想かもしれない。
    でもそれができない。

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    2026年02月07日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    生命倫理・科学的な話と言うよりも、私たち誰もが感じる「もう二度と戻れない過去、思い出への回帰」が主題であると感じる。ラストのキャシーによるヘールシャムを探そうとは思わない、あの頃の思い出はあの頃のまま保存されているべきだ。といった語りが印象的であった。

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    2026年01月13日
  • 日の名残り

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    これぞカズオ・イシグロ!という名作。
    英国の美しい情景や伝統を描きながら、人間ってこうだよね…というリアルが詰め込まれている。

    英国の執事の一人称視点で物語が描かれる。
    人生をかけて仕えた主人への尊敬や、世間からの評判への後ろめたさ、後悔、恥辱、仕事への誇り、不器用な恋愛等、主人公の中で色んな感情がごちゃ混ぜになった結果、自分に不都合な事実や出来事に蓋をして、自分に都合の悪い部分を隠した主人公の語りが続く。

    そのため、話の核心にもやが掛かったような進行に気持ち悪いなあと思うのだが、これが人間のリアルだよね、ということなのだろう。

    日本にはない執事の文化が興味深かった。

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    2026年01月13日
  • クララとお日さま

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    ネタバレ

    評価は正確にいうと⭐︎3.5。
    学生時代に読んだ『わたしを離さないで』の世界観が好きだったので、あらすじから似たような雰囲気を察知してこちらも読んでみた。

    AIロボット視点で語られる美しくて精細な情景描写に対し不穏な気配が根底に漂っていて、そのアンバランスな雰囲気が本当に良かった。
    ただ、ディズニー的なファンタジー要素があるとは思ってなくて、そこだけちょっと拍子抜けだったかも。

    作中でたびたび登場する用語の意味を調べたときに、検索結果に出てきたAIによる要約で物語の核となる計画のネタバレを喰らってしまったことが本当に悔やまれる。
    それさえ無ければもっと衝撃を味わえたかもしれない。

    ラスト

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    2026年01月04日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    自分達のオリジナルのための人生。この世界の真実の方が私個人としては気になるが、その点に重きは置かれず青少年期からの人間関係がメインの小説でありました。あまり好きなタイプの小説ではありませんでしたが、まあまあ面白かったです。

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    2026年01月03日