土屋政雄のレビュー一覧
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お堅いお仕事小説
脱線に次ぐ脱線がとても長い…ただ物語をつくりこむ執筆の凄さ、そして前作同様 静かな物語だったのを感じた
今作もイシグロ氏による回想、文学用語の信頼できない語り手 と呼ばれてる物語だった
わたしを離さないで から入った方が多いと思われる、今作物語はこちらも少し悲劇的に描かれてて、雇主だった者の過ち、女中の思いを気づけなかったなどが最後に想いにふけながら終わってく。しかし見知らぬ男との夕刻の話、つまりダーリントン卿との時間は素晴らしいものではあったのだと、イギリスの執事とはこれほどの仕事で素晴らしくあったのだとと思わせるような内容だった
誰にでも一生懸命のとき、じっくり考慮し -
Posted by ブクログ
自分の領分において他人との境界含め自分の関与すべき物事を徹底的に分別して、努力次第で自分の掌中に収まる目の前の物事をコツコツと行い、穏やかな生活を維持していくスティーブンス。
自分の範囲を限定するのではなく手を伸ばす意欲を持てば政治においても人間関係においても多くに触れられて自分で舵を切れるという見方もあるかもしれないが、自身の環境はコントロール不能な側面が多いため、知識の補填や強い意志でどうにかなるものではない(3日目夜ハリーの語る品格への疑念)。スティーブンスはあまりに頑固で枠内に収めることに気を取られすぎているので、関与すべき、関与できる範囲を自ら狭めているような気もするが。
ああすれば -
Posted by ブクログ
漂うような不安定さ…が読後の第一の感想。
美しくはあるけれど、時間も場所も目まぐるしく変わり、浮かぶ画像もゆらゆらと揺蕩うようで。
この物語りは読むものを選ぶ。そう言われる所以が良くわかった。おそらくは、脈絡の無いような物語りと物語りが続き、かつ、過去と今とが入り乱れて、尚且つ、美しくはあるけれど難解な文章だ…読み始めて数ページで放り出したくなる人も多いと思う。
忍耐はいる。
映画化された「イングリッシュ・ペイシェント」はアカデミー賞を受賞し、一躍本書をも有名にしたようだが、原作とは大きく異なる点も多く、自分は見ないことにした。(アマプラでは吹き替え版が見られる)
実を言うと…読み始めて -
Posted by ブクログ
ネタバレブッカー賞の一番(?)になったと聞いて,読んでみた。難しかったけど(何回イングリッシュ・ペイシェントのウィキペディアを見たことか),没入感がすごい。話としても面白かった。「原爆投下をラジオで聞いてぶち切れする」はないだろうと思ったけど,解説で言われてるみたいに知識の下地があったらあり得るかなとか,プレスコードは日本だけで外国では詳しくオープンにされてたのかな(むしろ成果を喧伝されてたのかな),と考えると面白かった。映画でバッサリ切られているらしいのもなるほどなという感じ。
映画を見たことがないのは,なんか官能的自伝的な感じで興味もてなかったからな気がするが,原作が先で良かったよナイスな判断だっ -
Posted by ブクログ
強いイメージをよびおこす美しい小説には違いないのだが、消化しきれなかったかも。詩的散文か。実はわたくしのように詩がわからない人のための詩なのかもしれないが
なお、フォーサイスの漏らしたという感想は、わたくしとしてもそんなこと言っても仕方ないよなと思いつつも共感するところで、そうしたリアリズム二の次なところは引っかかるといえば引っかかる
エジプトあたりが舞台であったり、エスピオナージュ風味であったり、多層的な語りであったり、アレクサンドリア四重奏を思い出す。あの本も読んだ直後は消化できなかったと思ったが、自分の中で長く余韻を引いている感じがある。この小説もそうなればうれしい
ところで訳者あ