土屋政雄のレビュー一覧
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ノーベル文学賞受賞後の第一作目の作品。
人工親友AFと呼ばれる太陽光エネルギーの人型ロボット、クララが販売店に陳列され、ジョジーという女の子に買い取られます。
物語はAFのクララ目線で回想されるところから始まります。
クララの語り口は優しく、常に敬語で、人間を敬っているのが読み取れます。そう開発されたのでしょう。それがいじらしく、切なく、親しみを抱きます。
ジョジーに愛され、ジョジーの困難を全力で救い、自分の身を犠牲にしていくクララ。きめ細かい気遣いを見せるクララ。ロボットでありながら感情も情緒もあるクララ。だからこそその姿勢は痛ましく、涙を誘います。
二人の関係は、あたかもドラえもん -
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すごい話だった...
優秀な介護人キャシーの1人語りで描かれる回想のストーリー。キャシーは誰に話しかけていたのかなあ
"提供者"という言葉、ヘールシャムでの講師陣の謎の発言など、平和な幼少時代の描写の隅々に少し不穏な空気が漂う。
どんどんキャシーたちの立ち位置が明らかになり、物語に引き込まれていった。
真相、物語の運び、全てが美しく整った完璧なフィクションだったと思う。
如何にも近い未来起こりそうな...倫理を考えさせられる話。
情景描写が細やかで、海外文学独特の読みにくさが無かった。すごく良い文章。
キャシーのトミーに対する態度・心情のすべてがもどかしい恋心に基づいた -
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スティーブンスは後悔したのだろうか?
彼が長年仕えたダーリントン卿は、歴史的には誤った判断をした人物として描かれる。利用されていたとも言える。
ミス・ケントンと再開し、昔の恋を打ち明けられた後、スティーブンスは「その瞬間、私の心は張り裂けんばかりに痛んでおりました。」と語る。
スティーブンスは後悔したのか? 何かを失ったのか? という問いだけで読むと、少しずれる気がする。
彼は、何かを犠牲にして職務に逃げたのではない。彼にとっては、職務をまっとうすることこそが、自分の人生をまっとうすることだった。主人が政治的失敗をおかしたとしても、ミス・ケントンとの愛を取り逃がしたのだとしても、だからとい -
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このお話を読んだのは何年前だろう。もう優に10年ぐらいは経っているのかもしれない。
そのせいでキャラクターの名前や、展開までもが朧げだ。それでもこの話の醸し出す空気感は今でも忘れられないままで、私が数冊本を選べと言われたらこれが出てくるだろう。
それぐらい当時の私にも、今の私にも強烈な印象を残している。
まず特色として感じたのは、主人公および世界が、正常を持ち合わせていないことだ。
よくある物語では、正常の中の異常が書かれる。
つまり、異常な出来事は異常として書かれる。
「そんなのおかしい!」みたいなことを、誰かは言ってくれる。
この物語ではそんな救済はほとんどない。
主人公たちがおかしいこ -
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語れるほど本を呼んでいないけれど、今まで読んだ本では一二を争うほどの作品でした!
カズオ・イシグロは「日の名残り」を読んでとても良かったと思ったのですが、これはそれを遥かに越えた読書体験でした!
自分と他人の心の動きや、繊細で不完全な人間関係の動きが、過剰なまでの記憶の詳細な描写から知らず知らずに身にしみて、ある時ぶわっと感情があふれる瞬間があって、泣いてしまったシーンや泣きそうになったシーンがいっぱいありました。
今までどこか登場人物と読者である自分の間に見えない壁があったような気がしましたが、この作品では、主人公のキャシーの体験を一緒に体験しているかのようで、余韻がすごく、忘れられない -
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オンダーチェは3冊目です。
第二次大戦末期、砂漠に墜落し燃えた飛行機から生き延びた顔も名前も分からない患者とかつて野戦病院だった修道院で患者を看護する若い女性。2人の暮らしに外部からの来訪者が加わり、不思議な共同生活が始まる。
博識な患者の話に耳を傾け、または図書室の本を患者に読み聞かせ、来訪者の1人、若い爆弾処理班の工兵と恋に落ちる看護師。
登場人物の日常が描かれたと思えば波のように追想が始まり、患者の様々な古典についての語りがあり…風に揺れるカーテンのようにストーリーが移り変わって、何とも言えない不思議な心地良さの中読み進めました。
解説によれば、オンダーチェは詩人でもあるとのこと。それで -
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とても素晴らしい作品だった!
同じくカズオイシグロの「わたしを離さないで」と通じるところがあって、生きるとは何か、その人らしさとは何か、それを問い続けることがカズオイシグロのテーマの1つなのだろう。
この作品でも、思いもかけないアプローチで生きることへの問いかけを試みている。
最後に再びクララの前に現れる店長の姿は何を物語っていたのだろう。あれはもしかしたら「わたしを離さないで」とリンクしているのかもしれない。
そして読後はもう、なんとも言えない気持ちに襲われてしまった。
AIであるクララの言葉が清らかで淡々としていて、そのことがより一層読み手の感情を揺さぶるのだろう。 -
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イギリス文学最高峰のブッカー賞を受賞したという本、ようやく読む機会ができました。忖度なしで面白かった。私は「クララとおひさま」ではじめてイシグロ氏の本に出会い、これが2冊目ではありますが、共通して感じるのは「静謐さの中にある感動」。本書で扱われている時代は2つの世界大戦をはさむ激動の時期なのですが、あえて舞台は牧歌的風景の広がる英国貴族の屋敷(その意味でドラマ「ダウントン・アビー」を彷彿させる)。しかも主人公はその貴族ではなく執事です。このアプローチは「クララとおひさま」にも共通していると思います。クララとおひさまでは、貴族にあたるのがジョジ―という少女で、執事にあたるのがAI搭載ロボットのク
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過剰なまでの遠慮ともてなしとこだわりには日本と通じるものを感じる。ただ翻訳文だからか、「執事なのにその言い方は無礼では!?」みたいな箇所もときどきある。日本とイギリスの文化の対称性の分析とかで深めるのも面白そう。
この本を読んで、品格は何に宿るのかを考えた。主人公が毎日こだわり抜いて磨いた銀器が要人の機嫌をよくするのに一役買ったことを、自分の仕事が世界情勢の好転に少しでも寄与したと誇っているシーンがあって、毎日積み重ねたこだわりや努力が実を結んだときにこう思えることこそが報いであって、そのために自分が是とすることを粛々と継続することは、どのような立場にあっても高貴なのだと思った。モットーと言い -
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愛と平和は、雌竜が吐く霧によって保たれている。夫婦の愛と社会の平和は、忘却によって保たれている。
雌竜の霧。いい表現だ。
それはともかくカズオ・イシグロが導き出す現実は、身も蓋もないぐらいに厳しい。『私を離さないで』を読んだ後、目の前が真っ暗になるような思いをしたが、この『忘れられた巨人』も同様の読後感を持った。アーサー王物語も古代ブリテンの歴史も知識がほとんどないまま、ファンタジー的な物語なのかと思って読み進めていたが、終盤の終盤に一気に心が鬱になりかけた。
夫婦の旅の目的地は、三途の川の向こうの死の世界だ、と私は読んだ。結局、死は一人で迎えるしかないものである。最後の場面、主人公の決 -
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ネタバレ自分のためじゃくてジョジーのためだけに全てを尽くすクララが持ってるのは、果たして人間的な心なのか。思いやりや憐憫は確かに心の一側面ではあるやろうけど、保身、嫉妬、依怗みたいな醜い感覚が排除されてるそれを心と呼んで良いのかは難しい。
とはいえそんなクララが、人間を特別たらしめるものを看破してるのが何よりも尊い。
お日さまとの約束とかいう、信仰に近い論理に心からの希望を見出してる感じ、映画『A.I.』と同じくSF作品の中でファンタジーに解決策を見出す矛盾と無力感があった。このパターン心が苦しいからやめて欲しい。
最後の店長の「B3型には愛情を感じられなかった」という言葉、人間に近づき過ぎたもの