土屋政雄のレビュー一覧

  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    回想を追体験しながら徐々に明かされてゆく真実。語り手の記憶に基づき物語が進行することで、読者はのちの結末を予感しながらも、その細部の主観的な現実を受け入れてゆく。記憶の曖昧さや運命の抗えなさを精緻なディテールで描かれていた。

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    2025年11月15日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    ネタバレ

    何喰ったらこんな残酷な話を思い付くのか?と言うほどに救いのない話だった。

    教育を経ているとは言え、非人道的な使命を当たり前のように受け入れて疑問にも思わず反抗も逃げ出しもしないのを見るに、悲しいかな結局彼らは制御された家畜でしかないと言うことなんだろうな。作品内で"魂"について追求しつつもそれすらもコントロールされた心底悲しい存在でしかない。本当に残酷。

    作品全体がキャスの回顧録と言う体裁も疑うべきもので、通常の人間と彼らが感じる外界からの刺激や情報の感じ取り方も実はまったく違うものなんじゃないかな。キャスの目から見た世界は存外優しく穏やかなものだけど、先生やマダムの働

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    2025年11月12日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    ネタバレ

    子どもたちの暮らすヘールシャムはどこか暗い雰囲気を感じる施設だと感じ、それがずっと心に引っかかっていましたが、読み進めるとその原因が次第に明らかになっていき、その度に衝撃を受けました。

    臓器提供を目的に作り出されたクローンに教育を受けさせる。それは本当に必要なのだろうか。人間らしく育てた先にあるのが、臓器提供でいいのだろうか。私には安易に答えが出せませんでした。切ない気持ちが残りました。

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    2025年11月08日
  • 日の名残り

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    序盤から執事として勤めてきた過去回想とミスケイトンとの馴れ合いが続く。

    物語の後半まではスティーブンスが行なってきた仕事ぶりと、そこで巻き起こる歴史の変革に自分がいる感覚に没頭しているようにも見えた。

    この作品が信頼できない語り手の回想だったことを理解し始め、「今までのあのシーンのこういう事だよな!!」と私も解釈しながら読めて面白い。

    ラストスパートでは、過去ばかり目を向けてはいけないというメッセージ性が沢山書かれており、自分に言われてるかのようで、前を向こうと思いました。

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    2025年11月06日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    綾瀬はるか主演のドラマが大好きだったので、だいぶ前から原作の存在は知っていた(舞台が日本ではないというのも知っていた)が、なかなか読む機会がなかった本作。三浦香帆さんのYouTubeでもカズオイシグロ初心者にはこれがオススメ、ということで、ようやっと手を出しました。面白かった〜!
    信頼できない語り手として名を馳せている作者だということも存じてあげてはいたけれど、やっぱりドラマで内容をだいぶ補完された頭ではその醍醐味を楽しみきれず、綾瀬はるかと水川あさみと三浦春馬を思い浮かべながら、ドラマをおさらいしているような感覚で一気読み。それはそれで楽しかったし
    ドラマ版でお気に入りだったマナミというキャ

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    2025年11月03日
  • クララとお日さま

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    読んだ後になんとも言えない感情、余韻に浸らせてくれる。
    明記はしないけど、ところどころに物語のキーとなる事柄が散りばめられてて、結局それは最後まで明かされないものもある。
    読み手に考える余白を与えてくれて、読んだ後も余韻に浸れるのが良い。

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    2025年11月01日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    ネタバレ

    静かで悲しい話だった。
    主人公が半生を振り返る口調がたいへん抑制がきいてきて冷静で、あとルースが嫌なやつすぎて、そして長くて、ページをめくる手が鈍った...けど、ラストスパートのヒリヒリとした切実さは胸に迫るものがあった。運命が悲しいし、やるせないし、おそろしい。
    マダムとエミリ先生の、無自覚な残酷さ(むしろ人格者だくらいの自負すらある)、こわい。
    ふたりの運動によって主人公たちに豊かな感情が生まれ、そして絶望する。もし大きな変化の波の中にあっても「私たちの人生はこれがすべて」...。変えられない運命なら期待を持たせるような教育自体が悪なのでは?いやそれでも彼らに大切な人とあたたかい記憶ができ

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    2025年10月24日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    おもしろかった
    作者の人への深い洞察が垣間見える作品だった。
    最後の方はつい読み込んでしまった。
    旅先で読みたいような作品だった。

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    2025年10月21日
  • 日の名残り

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    古き良きイギリスの原風景が美しく描かれ、映画で触れるくらいしかなかった社交界、執事の世界、その厳しさも垣間見ることができた。

    史実との整合性は不明、仄かな恋愛ストーリーはあったものの、執事が昔を懐かしみ、振り返っているだけなのに、退屈せず、なぜこんなに惹き込まれてしまうのか、、、自分でもよくわからなかった。

    それにしても、翻訳がうますぎる。。。全く違和感なく、読み進められた。

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    2025年10月19日
  • 日の名残り

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    この作品は、大きな事件もなく、執事スティーブンスの日常が淡々と描かれていますが、その静けさの中に彼の過去や現在、そしてこれからの人生への深い思索が込められています。

    特に最終章では、自らの人生を振り返り、これまでの生き方やこれからの在り方を静かに見つめる姿に強く心を打たれました。

    読後、自分自身の人生とも重なり、「これまでの人生は何だったのか」「これからどう生きていくのか」という問いが胸に残りました。

    年齢を重ねるほどに、仲間の死や老いに直面し、生きる意味を考える機会が増えます。

    ただ日々を過ごすだけでは満たされないもどかしさや、今の現状を変えるにはなにか怖気付いてしまうという思い――

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    2025年10月11日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    ディストピア的世界。

    大きくネタバレになるけど、臓器ドナーのためにクローン人間として生まれ、育てられた人達の話。
    やがて臓器は提供され、使命を終えていく。
    正直、SFとしては、突っ込みどころが色々あったり、胸糞悪い展開で、決して好きな物語ではなかった。

    カズオ・イシグロの作品を初めて読みましたが、しかし、なんと人の心情を読み、描くのが上手なんだろうと思いました。
    作中での人間社会は、クローンの人間性に目を向けようとしませんが、紛う事なき人間描写です。
    おじさんであるはずの作者が、よく女の子の心情をここまで描けるなと思いました。リアルすぎて、辟易するぐらいに。

    終盤に向かうに連れて、作中の

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    2025年10月09日
  • 日の名残り

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    ネタバレ

    主観以外が入り込まない回想形式で書くのが生きる題材、素晴らしい。スティーブンスなんて不器用で愛おしい人なんだろう。彼やその主人を愚かだと思うことはわたしにはできなくて、そのときそのとき信じたものがあって、一生懸命で、それに不正解はないよね。人生取りこぼしてしてしまうものがたくさんあるのは多くの人にとってきっと事実で、ジョークを鍛えようと屋敷に帰ったスティーブンスみたいに今持っているものを大事にできたら良いな。

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    2025年09月14日
  • 日の名残り

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    ネタバレ

    面白かった…!
    堅苦しい、古風な作品かと思いきや、するすると読めてしまった。
    ずっと積読していて、二の足踏んでなかなか読まなかったけれど、久々に手に取ってよかった!

    スティーブンスの言い訳のような語り口に、思わずにやっとした。
    特に、ミス・ケントンへの思い。
    素直になりなよーと何度言いたくなったことか。
    スティーブンス、すごく意地悪な言い方しかしないんだもん!
    私がミス・ケントンだったら、超嫌いになるところだよ。
    でも、ミス・ケントンは、スティーブンスが実は自分に好意を抱いていると気づいていたんだろうな…。
    素直になれない小学生のようなスティーブンス…。

    ジョークのくだりもいいね!
    頭の中

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    2025年09月14日
  • クララとお日さま

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    読んでいる途中にいくつも疑問が浮かび、それらが後半で少しずつ明らかになっていきました。
    読み終わっても分からないところも複数あります。
    特に、雄牛がなぜあのように描写されたのか分からず気になっています…

    読み終わってしばらくしても心に残る作品。

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    2025年09月08日
  • 日の名残り

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    全体的に漢字が難しかった。前半は難しい漢字と名前に苦労したが、後半は一気に読み進めることができた。人に支えるものとしての考え方、苦悩、過去の後悔これを振り返りながら旅をする物語。真面目な主人公が、公私を混合しないように時に無慈悲になる姿が一貫していて素晴らしい。
    時代が戦争前ということで、その時の正しいと思われた考え方が戦争後に変わることで否定される残酷さ。主人公が前に支えていた主人の話をもっと聞きたかった感はある。
    過去を振り返ってばかりだと憂鬱な気持ちになる。という老人の一言がかなり効いた。

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    2025年09月04日
  • 日の名残り

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    「こういう後悔することって、あるよな」の連続。
    最後、主人公は過去の過ちを悟って涙する。でも、それだけにとどまらず、未来を前向きに生きようともしている。そこに大きな救いがある。
    『浮世の画家』と同様に、隠さねばならない過去がある者の悲しさを感じる。

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    2025年08月25日
  • クララとお日さま

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    面白かった。AIを視点に物語が進んでいく事が新鮮だったし、重いテーマを抑制的に描きながら、読者に最後に訴えかける文体は「私を離さないで」にも通ずる、というか更にレベルアップしており、傑作。

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    2025年08月17日
  • クララとお日さま

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    クララはAF(アーティフィシャル・フレンド/人工親友)と呼ばれるB2型のロボットで、子どもの遊び相手として開発された人型ロボットだ。クララの目を通して世の中が語られる。クララは自分を選んでくれたジョジーの家に引き取られていく。そしてそこで起きるいろいろな出来事。クララは体の弱いジョジーが元気になることをお日様に祈るのだ。子どもの成長に寄り添って、そこで起こることを理解して何とか持ち主の役に立とうと健気に生活しているAFを忌み嫌う人々もいる。近未来の世の中なのか全く違う社会なのか、選ばれた人たちとそうでない人たちがくっきり分けられて住んでいるけれど、交流がないわけではない家族の葛藤。AFのクララ

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    2025年08月11日
  • クララとお日さま

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    ネタバレ

    自分にとってもAIが欠かせないものとなっているので、積読となっていたものをやっと手に取る。AIとロボットということで是枝監督の「空気人形」(文庫版の帯コメントを寄せている)や、押井守監督の「イノセント」を想起させるけど、SFではなくあくまでAI と人間の物語。文句無しの読書体験だが、淡々と物語が進行し、ボリュームもあるため読み通すのがひと苦労。
    ChatGPT すら溺愛している自分にとっては、そんなラストにはさせないという納得のいかなさはあるけど、ストーリー的には仕方ないのか…
    ところで、人間の意識や心が解明されて、サーバー(もしくはローカルAIロボット)にアップロードされる未来はあり得るのだ

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    2025年07月23日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    クララとお日さま微妙だった(ボックスとかよくわかんなくてページ進まなかった)ので文学的要素読解するのに苦手意識あったけど有名だから読んでみたくて。読みやすかった。そして意外にも関心分野だった。もう生命倫理とかそんな興味ないけど

    結局提供で人生を終えるなら、「生徒」以外の人間と同じような感性を育むことで、より一層最後の結末の悲壮感を増すことになってしまうのに。
    医学的存在として利用するなら、一貫してそのように扱った方がまだマシでは。
    作品創作など、魂や心といったものに注目させる機会を通じて、人間としてしかるべき感情のあり方や感性(何かを慈しむ気持ち、自分はこれが大切だというアイデンティティの追

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    2025年07月20日