土屋政雄のレビュー一覧
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ちびちびと古代・中世編を読み進めています。
この巻では、枕草子、源氏物語他、物語文学から説話集まで豪華な内容となっております。
「光源氏は恋愛の天才であり、どの女性にも完璧な対応をしている。もし一夫一妻制が厳格に守られている社会に住んでいたらーーあるいは、紫上を理想的な妻と思い定め、他の女性に見向きもしなかったらーー世界はそれだけ貧しくなっていたはずである」
なんかね、この言い回し。批判を浴びるかもしれませんが、好きです。
「『宇津保物語』で語られる宮廷生活の様子は、ある意味で『源氏物語』よりリアルである。宴席では、貴族たちが酔って騒ぐし、名前を聞くだけで食欲を無くしそうな料理を食べる -
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ドイツの音楽家マックスリヒターが、ウルフ原作のバレエ音楽の作曲をしていて、この作品を知った。
世界的に有名な女流作家といえば他にブロンテ姉妹やオースティン、パールバックなどがいるけれど、ウルフの作品からは最も純度が高く痛々しいほどの女を感じる。
ブロンテ姉妹やオースティンの作品は、物語として筋が通っていて、長いながらも読者が型を見失わない作りになっている気がした。
ダロウェイ夫人の場合、一つ一つの動作や空気感の描写が優れているがゆえに全体像が見えにくい。
扱っている時間的な流れは小さいのに、絶えず繰り広げられる感情のスペクタクル。
まさに、有機的で予測がつかない女性の繊細な心を表していると思う -
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極めて明確に、簡潔に、美しく、イギリスの地で創作を開始した日本人の血を持つ作家が、半生を語った。ノーベル文学賞受賞記念講演。
始まりの2冊は日本を舞台にした英語の文学だった。次は、きわめてイギリス的な話なのに、世界的な世界観を描いた。らしい。
私はカズオ・イシグロの小説は読むまいとしてきた。人生は短く、読まなければならない本ははるかに多い。読み始めたならば、一冊だけで済むとは思えなかった。ただ、この小さな講演記録文章によって、世界基準とも言えるかもしれない文学を見渡す地図を貰った気がした。「遠い山なみの光」と「日の名残り」と「わたしを離さないで」を読んでもいいかもしれないと思い始めている。 -
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「意識の流れ」という手法を使った作品を読むのは初めてだったが、なかなか好感を持った。他の作品とは違った種類のいわく言い難い感動や恍惚感があったように思う。
《クラリッサは、わたしを連れていって、と衝動的に思った。だが、次の瞬間、全五幕の芝居を見終わったような気分に変わった。とても感動的で興奮する芝居だった。自分もその中で一生を過ごした気分。ピーターと駆け落ちし、一緒に暮らした。でもその芝居も終わった。》P87
こことか凄い感動してしまった。刹那的な想像のほとばしりとその満足感。そしてその満足感が人の生きるエネルギー(行動するエネルギー)を生み出している事実。それをこんなにも鮮烈に捉えるとは。 -
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丁寧な文を書く人だし、丁寧に話す人だ。こんなジェントルマンな風情の作者も若い頃はたくさん迷いがあったんだなあと。若者は意外と社会のムードとか流行とか空気とかにとらわれすぎていて、真に追い詰められないと自分の本当にやりたいことや欲していることが見えないことがある。この方にとってのそれは、自分の記憶の中の日本をそれが消えてしまう前に書き残すことであり、それが道しるべとなって作家の道を歩き出した。でも作家デビュー後も常に新しい表現対象や方法を思索しチャレンジする姿勢にはこの方の人生に対する真摯な態度が見て取れます。とてもしなやかでしっかりした人だなあという印象を持ちました。
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ガスオ・イシグロのノーベル文学賞受賞記念講演を書籍化したもの。英語と日本語の対訳式なのは嬉しいが、99ページしかない本(つまり日本語はその半分)で1404円はさすがに高い。元を取るため英語でも読み直そうかな。
ただし中身は短いながらも充実したもの。彼を日本人作家のように扱う風潮は批判されて当然だが、同時に彼の文学の根幹をなすものが「記憶の中の日本」というファクターであることが、本作を読むとよく分かる。創作に関わる面では、タイトルにもなっているハワード・ホークスの映画『特急二十世紀の夜』にからめ、「登場人物」にも増して「登場人物同士の関係性」が面白くないと、物語は面白くならないことに気づくくだり -
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日本語タイトルは「忘れられた巨人」ですが、原語の意味は少し違うようです
それは、今の日本そのものなのかもしれません
訳本なので原作はどうか分かりませんが、とても読みやすい物語です
舞台はあの有名ファンタジーを彷彿とさせますが、内容は作者の今までの作品との共通性を感じさせます
物語の結末が明解にされないところもそうですね
様々な人物が登場し、そちらの方が大きく変化していくのですが、主人公たちはどこか坦々と自分たちの人生を歩んでいきます
しかし、その人生にも紆余曲折があったことが明かされていきます
何かを得たようで、何を得たのか分からないそんな話でした