土屋政雄のレビュー一覧

  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    マルセル・プルースト「失われた時を求めて」
    に影響される。
    語り手の思考の流れや漂流に従って話を展開する。

    個人の記憶と、国家や共同体の記憶。
    それらは同じか、違うのか。

    作家にとってのターニングポイントは、
    静かな花火としてやってくる。

    世界は正せない。
    せめて、文学という狭い世界からだけでも発信していこう。
    文学の多様性を保っていこう。

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    2018年09月01日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    丁寧な文を書く人だし、丁寧に話す人だ。こんなジェントルマンな風情の作者も若い頃はたくさん迷いがあったんだなあと。若者は意外と社会のムードとか流行とか空気とかにとらわれすぎていて、真に追い詰められないと自分の本当にやりたいことや欲していることが見えないことがある。この方にとってのそれは、自分の記憶の中の日本をそれが消えてしまう前に書き残すことであり、それが道しるべとなって作家の道を歩き出した。でも作家デビュー後も常に新しい表現対象や方法を思索しチャレンジする姿勢にはこの方の人生に対する真摯な態度が見て取れます。とてもしなやかでしっかりした人だなあという印象を持ちました。

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    2018年06月19日
  • 忘れられた巨人

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    静か。だ。霧が深いところも。霧が晴れてしまった後も。
    忘れるべき記憶とか、思い出さない方が良い過去とか、そういうのがテーマらしい。ある意味政治的ともいえる主題と、それに付随する読者のあーだこーだな五月蠅い解釈を、越え、貫かれる一本のしんとした静謐に、ただただ心を打たれた。

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    2018年06月14日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    ガスオ・イシグロのノーベル文学賞受賞記念講演を書籍化したもの。英語と日本語の対訳式なのは嬉しいが、99ページしかない本(つまり日本語はその半分)で1404円はさすがに高い。元を取るため英語でも読み直そうかな。
    ただし中身は短いながらも充実したもの。彼を日本人作家のように扱う風潮は批判されて当然だが、同時に彼の文学の根幹をなすものが「記憶の中の日本」というファクターであることが、本作を読むとよく分かる。創作に関わる面では、タイトルにもなっているハワード・ホークスの映画『特急二十世紀の夜』にからめ、「登場人物」にも増して「登場人物同士の関係性」が面白くないと、物語は面白くならないことに気づくくだり

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    2018年04月30日
  • 忘れられた巨人

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    世界観がすごい、というか、とにかく壮大だった。
    読んでいて思わず上橋菜穂子作品を読んでいる錯覚に陥りそうになる。壮大なファンタジー作品というべきか。
    老夫婦が遠方に住む息子を訪ねて旅に出る。その道程で出会った様々な人々や生き物。様々な風景。様々な出来事。
    人物の交わす会話の中に、文章の中に、いろんな意味や暗示が込められている。愛と復讐と裏切りと恨みと。。。それらを逃さず読まなきゃと一語一句必死で読み進めていたらやたらと時間がかかってしまい大変だった(笑)
    結末は、何とも言えない複雑な気持ちが残った。

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    2018年04月09日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    カズオイシグロ氏のノーベル賞受賞講演を翻訳、書き起こしたもの。左に英文、右に日本語訳が載っている。受賞時期にネットに毎日新聞の訳文が載っていたが、やはり本の方が読みやすく、文もこなれている感じがして購入。訳者はイシグロ氏の本を多数訳した土屋政雄さんだった。

    20代、30代、40代、の区切りをつけながら、小説を書くに至った経緯や書きながらの分岐点などが語られ、氏の歩んできた道と、文学に対する信頼や希望が語られ、改めて氏の人となりに好感を持った。

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    2018年08月30日
  • 忘れられた巨人

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    日本語タイトルは「忘れられた巨人」ですが、原語の意味は少し違うようです
    それは、今の日本そのものなのかもしれません

    訳本なので原作はどうか分かりませんが、とても読みやすい物語です
    舞台はあの有名ファンタジーを彷彿とさせますが、内容は作者の今までの作品との共通性を感じさせます
    物語の結末が明解にされないところもそうですね

    様々な人物が登場し、そちらの方が大きく変化していくのですが、主人公たちはどこか坦々と自分たちの人生を歩んでいきます
    しかし、その人生にも紆余曲折があったことが明かされていきます

    何かを得たようで、何を得たのか分からないそんな話でした

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    2018年03月08日
  • 忘れられた巨人

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    とうとう読みましたよ!
    今までのカズオ・イシグロさんの中では、一番読みやすかった。
    みんなで竜退治をしよう!というファンタジー。
    いや、もちろんディストピア小説ではあります。
    希望を持って読み進めていくんだけど、まただんだんいやーーな気持ちに(苦笑)

    「忘れられた巨人」とはなにか、わかったときにどーんとまたいやーーな気持ちに…

    浅いレビューですみません。(あずきこ)

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    2018年02月03日
  • 守備の極意(下)

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    上巻前半はどんどん成長していく気持ちいい物語やけど、途中からズブズブのドロ沼に。それも、誰も悪くない、自分がプレッシャーに負けてるだけっていう、なおさら救いのないドロ沼。しかも男女のゴタゴタからそうじゃない色恋沙汰から詰め込んだねー。最後はいちおうまとめるべきところにまとめて落とし込んだかな。

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    2017年12月13日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

    購入済み

    話題作

    ドラマ化され、世界的な有名な賞をとり、
    初めてですが読んで見ることにしました
    最初は、なんだか話がよくわからないなあ、、なんて
    思ってましたが、途中からページをめくる手が止まりませんでした
    自分には程遠い世界と思いがちですが、実際に起こっている世界とだといいことを
    認識していたいと思いました。一度は読んでおきたい作品だと思います

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    2017年10月16日
  • ダロウェイ夫人

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    アメリカの映画やドラマを見ていると、本好きの女性が必ずといっていいほど好きな作家にヴァージニア・ウルフを挙げるようなので、読んでみなければとずっと思っていて、やっと読んだんだけど。。。
    うーん、バカなわたしにはまったくといっていいほど、ピンとこなかった。「ダロウェイ夫人」はタイトルは昔から知ってはいたけれども、こんな話だったのか。。。上流階級のダロウェイ夫人の一日のうつろいゆく思い、みたいな感じで、ストーリーらしいストーリーがない。とりとめのない思いがとりとめなく描かれていて、あまり強い感情はない。一瞬、強く思ってもすぐほかのことに移っていく感じで。
    しかも、ダロウェイ夫人だけじゃなくて、登場

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    2017年06月15日
  • 忘れられた巨人

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    ネタバレ

    アーサー王伝説の舞台を借りたファンタジー。人々が物忘れをするようになり、おぼろげに息子のことを覚えている老夫婦が息子の住む村に向けて旅立ちます。旅の過程で、物忘れの原因を突き止め、断ち切ることに成功します。その結果記憶は戻ってきましたが当然幸せなことばかりではなく。そして「巨人」の意味も分かります。
    Buried giantが「忘れられた」に訳されているけど、これは読んでみて初めてわかるネタばれ。
    相変わらずイシグロらしい独特のじれったい語り口です。

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    2018年11月05日
  • ねじの回転

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    ネタバレ

    何回読んでも後味の悪い作品だぁ(誉めてます)
    物語はクリスマスイブの真夜中に行われたイギリス版百物語を発端として始まります。
    その中の一人が、その中で語られたどの物語よりも恐ろしい話を知っている。しかも手記があるということで、場を改めてその手記を朗読することに……。
    その手記はある屋敷に住んでいる兄妹の家庭教師になった女性が語ったことを記録したもの。
    天使のように美しく愛らしい、そして聡明な兄妹。それは本当の姿なのか、そして家庭教師が見た不審な人物は兄妹とどんな関係なのか?
    薄気味が悪いというのが初めて読んだ時の感想でした。
    改めて読み返すと、うむむ、という感じで視点を変えると全く違う考えも出

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    2015年07月16日
  • 日本文学史 古代・中世篇五

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    古代・中世篇 五 とは対照的に、馴染みのない作品ばかり。知っていたのは徒然草ぐらいで、聞いたことのない物語や日記文学、学校では習わなかった連歌など、敷居が高くて読むのに時間がかかりました。
    それにしても、古代・中世篇ものこすところ、1冊。土屋政雄氏の素晴らしい訳文が読めなくなると思うと、寂しいです。

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    2014年08月10日
  • 月と六ペンス

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    ゴーギャンをモデルにしてるとは言え、ゴーギャンはこんなに傲慢であったのかしら?どこまでをモデルにしたのかわからなかった。最後の癩病も調べたけどゴーギャンの死因が癩だと書かれてあるものは見つけられなかった。
    読みやすさは◎。光文社の古典リメイクはだいたい読みやすくていいと思う。新潮や角川ののバキバキに硬い翻訳もアレあれで味があるけど、なかなか取っ付きづらさもあったりして。

    因みに、最後の解説にあった「本書は同性愛小説である」には、納得出来ない。


    2018.11.10再読
    初読時に比べて内容は分かっていたので読むのが楽だった。今回初めて解説を読んだら、「ゴーギャンがモデル」というのは適切では

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    2018年11月11日
  • 日本文学史 古代・中世篇三

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    いよいよ古代・中世篇のクライマックスともいえる「枕草子」と「源氏物語」が登場です。それにしても、1000年前が女性の才能をこれほど花開かせる社会だった、というのは、日本は女系社会だった、という証左でしょうか。

    おもしろかったのは、「説話文学」の章で述べられている日本的ヒーロー論。河合隼雄氏の浦島太郎論“このヒーローは英雄的な戦いで女性を獲得するのではなく、むしろ女性によって捕らえられる”を引用し、日本的ヒーローは受動的で、西洋人にとっては不完全と思われる、と述べています。これも、日本が女系社会だったということと関連していそう。

    西洋の視点からみた日本文学史っていうのも、この本の面白さの一つ

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    2013年12月02日
  • 日本文学史 古代・中世篇二

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    古代・中世篇一を読んで、ドナルド・キーン氏の吸引力に巻き込まれ、篇二を購読。そして、篇二を読み進めるうちに、その吸引力がキーン氏の論旨によるものというより、その文章・文体に端を発していることにハタと気が付く。そう、その訳文自体に心が持っていかれている。訳者は土屋政雄。調べてみると、その昔、麻薬のようにうっとりとさせられた「イギリス人の患者」の訳者だ。なんてことだろう。ホント、びっくりした。「イギリス人の患者」もストーリーよりも訳文の方にうっとりきてたのかも。

    閑話休題、古代・中世篇二は、古今和歌集に始まる勅撰和歌集と平安時代の日記文学。花といえば桜、桜といえば吉野といった、日本人の常識がこの

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    2013年09月17日
  • 日本文学史 古代・中世篇一

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    気軽な気持ちで何気なく手に取ったのに、著者の日本文学を愛する情熱に引きずり込まれて、なんだか全巻読まなければならいような気にさせられてしまった。といっても、全巻あわせると18巻にもなるから、とりあえず、古代・中世篇は購入しよう。おそるべし、ドナルド・キーン氏の吸引力。

    古代・中世篇一は、古事記から平安時代前期の漢文学まで。特に、山上憶良に対する見方が変わった。子煩悩なお父さんってだけではなく、社会派だったのね。あとは、空海。“文学史に空海?”って思ったけど、「三教指帰」という戯曲仕立ての著作について、扱われている分量としては少ないながら、その特異性が際立っている。まずは、司馬遼太郎の「空海の

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    2013年05月12日
  • ダロウェイ夫人

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    「意識の流れ」という手法と内容との関係についてを主に、
    作者であるウルフ自身の証言が載せられているのが良かった。
    これについては、必ずしも手法が先になってできたものではないということ、
    自殺する準主役は、後付けで生まれたキャラクターであることなど。

    非常に面白かった。

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    2013年05月06日
  • ダロウェイ夫人

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    シームレスで視点となる人物が切り替わり、想像力を刺激する豊かな表現。小川のせせらぎのように流れる文章で「わあ、キレイ」と、手を入れてみるとその冷たさに驚く物語。そう感じるのは、登場人物の誰もが、心の歯車の油が切れかかっているような人たちだからかもしれません。老いが生む寂しさや疎外感を嫌々受け入れつつもなんとか虚栄心を満たそうとしたり、過去に縛られて悪ぶったり、叶いそうにもない理想を求めたり、今にも崩れそうな危うい足元でぎりぎり持ちこたえている人たち。人類絶滅も地球滅亡もないけれど、終末感漂う小説でした。

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    2013年03月17日