土屋政雄のレビュー一覧

  • 月と六ペンス

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    富や名声、安定した生活。
    そういったものを投げ売ってでもやらねばならないことに取り憑かれた男の物語。

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    2021年07月01日
  • ねじの回転

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    オチは今となっては珍しく無いが、神に背くゴーストやモンスターを祓って終わり!ハッピー!な内容ではない。脅威が迫ってきているのに上手く行かない、守る子供も邪悪な幽霊に魅了されている絶望的な状況が終始主人公の視点で展開されていく。100年以上前の作品とは思えないほど状況は分かりやすく書かれていて読みやすい。

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    2021年05月24日
  • 月と六ペンス

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    明かすのも恥ずかしいが、途中まで実話だと思って読んでた。実在した画家と記者の話かと。もちろん、そうではないんだけど。
    まあ、それぐらいリアリティのある、描写豊かで人間臭さのある文章だということで、自分を慰めておこう。
    モームの本は初めて。
    主人公の記者は傍から見ればかなりのひねくれ者。実際、人はこれぐらい当たり前にひねくれ者だけど。対象の画家は、これまたビックリするほどの変わり者。いや、本当は羨ましい。こんなに自分に正直な人がいるのか?と疑ってしまう程に。
    日本では特に他人様に迷惑をかけないように言い聞かされて育つことが多いように感じるが、実際のところ何が迷惑なのかは分からない。自分だったら不

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    2021年04月18日
  • 月と六ペンス

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    ネタバレ

    語り手に一番共感した。若い人の感性はわからないしきっと素晴らしい物があるんだろうけど、きっと自分はそれが評価されなくなっても古い物にこだわり続けてる。それに絵のセンスも自分と全く一緒……。その辺通して、勝手にモームとお話出来たら絶対楽しいんだろうなあって想像してた!!
    ストルーブとその妻の話が一番面白かった。どうして妻がストリックランドを好いたのか最初全然わかんなかったし、むしろストルーブみたいな人と私も結婚出来たらなあって思ってたけれど、妊娠していた話を聞いて印象が一変。でもストルーブみたいな可哀想なくらい滑稽な人、確かにこういう人どこかに居るよね……ってなる、本当に描くの上手い。ストリック

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    2021年03月07日
  • 忘れられた巨人

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    ネタバレ

    雌龍の息によってさまざまな記憶を失った老夫婦が息子がすむ村を目指して旅をする。例によっていつまでも辿り着けず、そこはもう慣れたものであります。鬼とか妖精などが日常的に登場して、アーサー王のころの神話が舞台になっています。きっといろいろな伏線や神話との合致点があるのでしょうが、そこを楽しめないのが残念です。だから☆4つ。

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    2021年01月09日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    はじめて読んだカズオイシグロ。これで彼の作品を判断するなんてできないのですが、平坦でわかりやすい文章が意外だった。作品を読んでない分、この本への理解はかなり浅くなってしまうが、最後に書かれた、未来への普遍的かつ重要な願いを読んで、ノーベル文学賞を獲るような方の思想の本質はそこにあるのか! となかなかの発見があった。未来がもっと多様になること、そしてよりよく進歩すること。凡人の私でもその理想に突き進んでいきたいと強く思ったし、世界で評価される作品の本質はこうでなくちゃと勇気づけられた。ちゃんと彼の作品も読みます。

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    2020年08月15日
  • 日本文学史 古代・中世篇三

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    ちびちびと古代・中世編を読み進めています。

    この巻では、枕草子、源氏物語他、物語文学から説話集まで豪華な内容となっております。

    「光源氏は恋愛の天才であり、どの女性にも完璧な対応をしている。もし一夫一妻制が厳格に守られている社会に住んでいたらーーあるいは、紫上を理想的な妻と思い定め、他の女性に見向きもしなかったらーー世界はそれだけ貧しくなっていたはずである」

    なんかね、この言い回し。批判を浴びるかもしれませんが、好きです。

    「『宇津保物語』で語られる宮廷生活の様子は、ある意味で『源氏物語』よりリアルである。宴席では、貴族たちが酔って騒ぐし、名前を聞くだけで食欲を無くしそうな料理を食べる

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    2020年08月12日
  • 月と六ペンス

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    お~久しぶりに一冊の本を読みきった気がする…。
    「モームブーム」って何だか口に出したくなる言葉。解説読んで面白いな~とも思ったけど、もうちょっと深入りした論文的なの読んでみたくなった(っていっつもこういうこと言いながら調べていない)。言葉遣い、知らないことわざがいっぱいあって調べるの楽しかった。やっぱり外国語の本読んでると、原文が気になりますね!(と言って、これも調べない)

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    2020年06月23日
  • 月と六ペンス

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    題名に惹かれて読み始めた。エキセントリックな画家を、近くで見ている主人公の視点から描く。ゴーギャンをモデルとした画家のキャラクターが印象的。偏屈でぶっ飛んでいて、「こんな人現実には存在しない」と思わせる反面、生き生きとしたリアリティを持って描かれているため「作家とゴーギャンは知り合いだったのか?」と想像させられる。解説でモームが同性愛者であったことについて触れられていたが、画家を近くで見守り観察する主人公の視点にその片鱗が感じられるような気がした。

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    2020年05月05日
  • ダロウェイ夫人

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    ドイツの音楽家マックスリヒターが、ウルフ原作のバレエ音楽の作曲をしていて、この作品を知った。
    世界的に有名な女流作家といえば他にブロンテ姉妹やオースティン、パールバックなどがいるけれど、ウルフの作品からは最も純度が高く痛々しいほどの女を感じる。
    ブロンテ姉妹やオースティンの作品は、物語として筋が通っていて、長いながらも読者が型を見失わない作りになっている気がした。
    ダロウェイ夫人の場合、一つ一つの動作や空気感の描写が優れているがゆえに全体像が見えにくい。
    扱っている時間的な流れは小さいのに、絶えず繰り広げられる感情のスペクタクル。
    まさに、有機的で予測がつかない女性の繊細な心を表していると思う

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    2019年09月12日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    極めて明確に、簡潔に、美しく、イギリスの地で創作を開始した日本人の血を持つ作家が、半生を語った。ノーベル文学賞受賞記念講演。

    始まりの2冊は日本を舞台にした英語の文学だった。次は、きわめてイギリス的な話なのに、世界的な世界観を描いた。らしい。

    私はカズオ・イシグロの小説は読むまいとしてきた。人生は短く、読まなければならない本ははるかに多い。読み始めたならば、一冊だけで済むとは思えなかった。ただ、この小さな講演記録文章によって、世界基準とも言えるかもしれない文学を見渡す地図を貰った気がした。「遠い山なみの光」と「日の名残り」と「わたしを離さないで」を読んでもいいかもしれないと思い始めている。

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    2019年09月03日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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     途中で投げ出したりしないで、最後まで読んでほしい。一読に値します。2017年ノーベル文学賞受賞記念講演。英文と和訳が左右のページにそれぞれ掲載されています。英文は平易です。

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    2019年08月25日
  • 忘れられた巨人

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    母の本棚に残されていた一冊。
    「何を忘れ、何を記憶するのか」によって人や共同体の考え方は大きく影響される。読みながら、頭の中をモヤモヤとした霧がかかった中を少しずつ物語が進んでいく。少し読みにくい文章ではあるが、それもまたこの物語の雰囲気にあってたような気がする。
    自分の記憶しているものの上で、自分の人生は進んでいく。同じ事実でも記憶により別の人生が生まれる事を認識させてくれた作品。

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    2019年03月25日
  • ダロウェイ夫人

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    「意識の流れ」という手法を使った作品を読むのは初めてだったが、なかなか好感を持った。他の作品とは違った種類のいわく言い難い感動や恍惚感があったように思う。

    《クラリッサは、わたしを連れていって、と衝動的に思った。だが、次の瞬間、全五幕の芝居を見終わったような気分に変わった。とても感動的で興奮する芝居だった。自分もその中で一生を過ごした気分。ピーターと駆け落ちし、一緒に暮らした。でもその芝居も終わった。》P87
    こことか凄い感動してしまった。刹那的な想像のほとばしりとその満足感。そしてその満足感が人の生きるエネルギー(行動するエネルギー)を生み出している事実。それをこんなにも鮮烈に捉えるとは。

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    2018年10月09日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    マルセル・プルースト「失われた時を求めて」
    に影響される。
    語り手の思考の流れや漂流に従って話を展開する。

    個人の記憶と、国家や共同体の記憶。
    それらは同じか、違うのか。

    作家にとってのターニングポイントは、
    静かな花火としてやってくる。

    世界は正せない。
    せめて、文学という狭い世界からだけでも発信していこう。
    文学の多様性を保っていこう。

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    2018年09月01日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    丁寧な文を書く人だし、丁寧に話す人だ。こんなジェントルマンな風情の作者も若い頃はたくさん迷いがあったんだなあと。若者は意外と社会のムードとか流行とか空気とかにとらわれすぎていて、真に追い詰められないと自分の本当にやりたいことや欲していることが見えないことがある。この方にとってのそれは、自分の記憶の中の日本をそれが消えてしまう前に書き残すことであり、それが道しるべとなって作家の道を歩き出した。でも作家デビュー後も常に新しい表現対象や方法を思索しチャレンジする姿勢にはこの方の人生に対する真摯な態度が見て取れます。とてもしなやかでしっかりした人だなあという印象を持ちました。

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    2018年06月19日
  • 忘れられた巨人

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    静か。だ。霧が深いところも。霧が晴れてしまった後も。
    忘れるべき記憶とか、思い出さない方が良い過去とか、そういうのがテーマらしい。ある意味政治的ともいえる主題と、それに付随する読者のあーだこーだな五月蠅い解釈を、越え、貫かれる一本のしんとした静謐に、ただただ心を打たれた。

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    2018年06月14日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    ガスオ・イシグロのノーベル文学賞受賞記念講演を書籍化したもの。英語と日本語の対訳式なのは嬉しいが、99ページしかない本(つまり日本語はその半分)で1404円はさすがに高い。元を取るため英語でも読み直そうかな。
    ただし中身は短いながらも充実したもの。彼を日本人作家のように扱う風潮は批判されて当然だが、同時に彼の文学の根幹をなすものが「記憶の中の日本」というファクターであることが、本作を読むとよく分かる。創作に関わる面では、タイトルにもなっているハワード・ホークスの映画『特急二十世紀の夜』にからめ、「登場人物」にも増して「登場人物同士の関係性」が面白くないと、物語は面白くならないことに気づくくだり

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    2018年04月30日
  • 忘れられた巨人

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    世界観がすごい、というか、とにかく壮大だった。
    読んでいて思わず上橋菜穂子作品を読んでいる錯覚に陥りそうになる。壮大なファンタジー作品というべきか。
    老夫婦が遠方に住む息子を訪ねて旅に出る。その道程で出会った様々な人々や生き物。様々な風景。様々な出来事。
    人物の交わす会話の中に、文章の中に、いろんな意味や暗示が込められている。愛と復讐と裏切りと恨みと。。。それらを逃さず読まなきゃと一語一句必死で読み進めていたらやたらと時間がかかってしまい大変だった(笑)
    結末は、何とも言えない複雑な気持ちが残った。

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    2018年04月09日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    カズオイシグロ氏のノーベル賞受賞講演を翻訳、書き起こしたもの。左に英文、右に日本語訳が載っている。受賞時期にネットに毎日新聞の訳文が載っていたが、やはり本の方が読みやすく、文もこなれている感じがして購入。訳者はイシグロ氏の本を多数訳した土屋政雄さんだった。

    20代、30代、40代、の区切りをつけながら、小説を書くに至った経緯や書きながらの分岐点などが語られ、氏の歩んできた道と、文学に対する信頼や希望が語られ、改めて氏の人となりに好感を持った。

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    2018年08月30日