土屋政雄のレビュー一覧
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英ガーディアン紙「史上最高の小説100選」より、ヘンリー・ジェイムズ/ねじの回転。
屋敷で亡霊を目撃した家庭教師が教え子を守ろうと奮闘するが、次第に彼女自身が…。
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すべては主観で語られ、亡霊なのか幻覚なのか曖昧さが増してゆく。孤立した状況の中、「子供を救う」という使命感が次第に独善的な狂気のようになる。
人間の強固な思い込みがいかに他者を無自覚に侵蝕していくか。
ガーディアン紙の100選は、文筆のプロたちにより選ばれたランキングとのこと。
幽霊を外敵ではなく人間の狂気・内面として描く、という心理サスペンス要素が当時画期的だったり、「主観の暴走」という現代にも通じるテーマ性によって、長く敬愛されている作品なんでしょうね。 -
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「読む人を選ぶ作品」というものに私は大体選ばれない読者なんですが、やはり選ばれなかったよう思います。
誰が誰の話をしてるのかわからない、現実の話なのか空想なのかつかめない。筋が追えない、そもそも筋が無いかもしれない。読むのに難儀しました。読み終わっても一度頭から読んでいたら少し楽になったので、何度も読める本かもしれません。
映画もみましたが、映画は小説とは別になっていてアルマーシ伯爵とキャサリンの不倫物語が大筋です。アルマーシ(レイフ・ファインズ)の執着を露わにした目が怖かったです。これでアカデミー賞を複数部門獲得した90年代はいくら恋愛至上主義時代だったとはいえ野蛮だったなと感じました -
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ノーベル文学賞受賞記念講演を文庫化したもの。
イシグロ作品、2020年くらいまでに日本語で出版されたものについては全て読んでいるので、作品に関するちょっとした解説のようなものもご本人の口から聴くことができてとてもありがたかった。私なりの作品に対する解釈が大きく外れていないことも嬉しかった。
イシグロ作品はどれも、語り手である主人公が根本的な部分で嘘をついていて、それ分かるとき深淵が顔を出す…という内容なのだけれども、どうしてこのスタイルで小説を描こうと考えたか、ヒントを得た別の作品(音楽や映画など)についても紹介しながら解説されていてとても面白かった。
彼の中での『日本』という国についても言及されていて、5歳からイギリスで暮らしその後何十年も日本に帰らなかったイシグロの中で、彼だけの『日本』という国が作られていった、という話もとても興味深かった。
『遠い山なみの光』『浮世の画家』に描かれる日本はどこか現実離れしている世界のように感じられたのだけど、この世界はイシグロだけのものだったからなんだなと腑に落ちた。
『遠い山なみの光』は、映画でも長崎の風景がどことなく現実離れした絵のように見えた。監督の手腕に驚いた。
翻訳はイシグロ作品『日の名残り』『わたしを離さないで』『忘れられた巨人』を訳された土屋政雄氏。
カズオ・イシグロの世界観を味わえる素晴らしい翻訳だと感じた。 -
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ネタバレ最初の方は読みやすくすらすら読めましたが、途中気が滅入ってしまいました。
特に、リックとヘレン、その昔の恋人とのやり取りは、この物語の中でも特に醜悪なやり取りだったと思います。
クララが純真で愛情深く謙虚なAFであるからこそ、そのやり取りがより醜く見えてしまい、そこから読み進めるのが億劫になってしまいました。
また、その反面、クララのお日さまに対するあまりにも真っすぐな感情には、「そんなことで病気が治るわけがないのに……」という苛立ちのようなものを覚えてしまいました。
なので、最後にジョジーの病気が治ったことにはとても驚きました。ご都合主義的というか、ファンタジーなシーンだと思いましたが、その先の展開は苦みの残るものだったなと思います。
全体を通して、あまり楽しめなかったというのが正直なところですが、特別な何かはそれを愛する人の中にある、というフレーズはとても印象に残りました。 -
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ネタバレ視点の使い方が特徴的。
クラリッサの視点かと思えば次のページではレーツィアに、はたまたメイジーに……それだけでなく一人称で語られたり三人称で語られたり……忙しさを感じる記述だった。
これにより個人的には読みにくく感じたが、ひとつの物事を複数人の視点から見れるのは面白い。
話の軸はクラリッサとセプティマスの2軸。
終盤までこの軸は独立を保ったまま同時並行的に話が続いていく……
正直、この2軸(幸福の中の不幸を見出す視点・不幸の中の幸福を見出す視点)は交わりようがあるのかと思いながらページをめくっていたが、交点を見つけた時は驚いた。
パーティという幸福の象徴的なものの中に自殺という不幸の象徴的なものが入り込むことで、より一層対比が明らかとなり、彼らの感情が強調されていたように感じる。
いちばん印象的だったのはセプティマスが自殺するシーンだった。
冒頭ではレーツィアは彼がシェルショックによって心からの会話が出来ないことを嘆いていたが、中盤で一時的に回復したような様子を見せたことで深い喜びを感じていた。しかしその直後、「人間の本性」がやってきたことにより彼は自殺という結果に至ってしまった。この場面はレーツィアの心情を考えると胸が痛い。希望の見えない生活の中でようやく差した希望の光が一瞬にして潰えてしまった。そしてその様も惨いものであった。
この話の後にピーター・ウォルシュが救急車のサイレンを聞いて「文明の勝利だ」なんて言って喜びに浸っているのも、この無惨さを強調させていると思う。 -
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両親を亡くしたとある兄妹の家庭教師として、イギリスはエセックスの屋敷に赴任した主人公「わたし」の手記によって展開されるホラー小説。今作の興味深い点は何と言ってもやはり、「信頼できない語り手」の存在である。物語にて2人の幽霊が度々登場するのだが、唯一の語り手である主人公の「わたし」を除き、それらをはっきり見たとされる登場人物がいないため、そもそも幽霊がいるのかという疑問が読み進めていく中で湧いてくる。また、主人公と狡猾な兄妹との間で繰り広げられる緻密な心理戦も今作の見どころである。兄妹と幽霊の関係やマイルズの退学の理由など、主人公が対面する数々の謎は読者の興味を強くそそるに違いない。
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20世紀を代表するイギリス文学と評判こそ聞き知っていた作品。
歴史的傑作をたっぷり読む! という目標のもと、今回入手して挑戦してみました。
第一次世界大戦後のイギリスで上流階級のダロウェイ夫人が晩餐会を開く準備をしています。その一日を、数人の登場人物の内的独白に迫りながら描いています。
物語は最初から最後まで章や切れ目がなく、一つの大きな塊として始まり終わります。ある人物の意識の流れを丹念に追いながら、そのあと別の人物の意識に移行し、筋は続いていきます。この作品には、2つの読み方があるようです。最初から最後までまとめて一回で読み終える。または少しずつ、描写を味わいながら読み、お気に入りの栞をはさんで次の日にまた物語に戻ってくる。―私はゆっくりと読むほうを選びました。
ダロウェイ夫人は51歳。現在なら活気あふれるこの年齢も一世紀前だったら、人生の夕暮れ時を迎える世代でした。この作品は、読者もある程度の年齢にならないとわからない、最初はそう、断言していました。人生の経験を積んだ大人の女性のモノローグは、読む側の人生経験が浅いと、柔らかなひだが見えにくいはずです。
けれど、後半になって思い出したのは個人的には若いころにはこんな「意識の流れ、ゆらぎ」を描いた作品群をむさぼるように読んでいたのです。若いころに読んでいたとしても何か感じるものはあったと思います。
お酒が飲める年齢になったら読めますかね、この本は。味わい方をそれぞれ変えながら。