土屋政雄のレビュー一覧

  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    純文学っぽい、文章に浸る感覚のある本だったと思う。
    最初はなんのお話かわからなかったけど、読み進めていくと徐々に明らかになっていく流れが面白かった。

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    2026年08月19日
  • クララとお日さま

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    ネタバレ

    良かった!!!さすがカズオイシグロ、全然裏切らない。
    病気の子どもをAIロボットに学習させて、もしも死んでしまったらそのロボットに成り切ってもらおう、という計画。その計画を巡って、その人たらしめる唯一無二の何かはあるのか?という疑問の答えが、その人自身にはないかもしれないけど、周りの人からのその人への想いは、絶対何にも代えられないものだ(だからロボットには代替できない)、という結論だったのが、何となくわかる気がするし、ジーンとしみじみ良いなあと思う。
    あとカズオイシグロの書く子どもは、ただ可愛いだけの存在ではないところが好きだ。子ども同士の微妙な関係とか、他の人の前では別人になってしまうところとか、すごくリアルだし子ども社会も残酷なのよ、と訴えてくる。わかる。子どもの絶対、は絶対では無いけど、その瞬間だけは絶対だという事も描かれてて、好きなポイントの一つだなあと思う。

    親になったらまた読みたいかも知れない。

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    2026年08月15日
  • ダロウェイ夫人

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    角川を途中まで読んで苦痛だったので新訳に切り替えました。
    めちゃくちゃ読みやすく、とても面白かった。登場人物一人ひとりがとても活き活き描かれていて面白い。
    伏線の回収からラストに向かって駆け上がっていく感じも素晴らしい。

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    2026年08月07日
  • 日の名残り

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    映画が好きで、この度原作も読んでみようと。
    最初はなかなか進まなかったけど、後半にかけてグンと惹き込まれた。

    映画では掴み切れなかったダーリントン卿の立場、それに対するスティーブンスの思いなんかも分かって、切なくなった。
    スティーブンスに対するイメージもかわったな。また映画もみなおしたい。

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    2026年08月07日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    ネタバレ

    解説に「細部まで抑制が効いた」とあるけど、本当にそんな感じ

    序盤のまだ何もわからない状態での一歩進んだと思ったらまた振り返ってみたいな文章が中々きつかったのですが、施設はなんなのか、そもそも彼等はなんなのかがわかってからはスラスラ読み進められた。

    読み終わってみたは彼等はしっかり「人間的」であったと思うし、ヘールシャムは「特別」だったと思う。

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    2026年08月05日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    ネタバレ

    昔に映画を見た作品。

    ようやくいまになってというのが悲しいと言うトミーの気持ちが、とてもつらい。嬉しいのに、悲しい。

    自分たちが提供者として育つことに何の疑問も持たない、当たり前となっている。受け入れている。誰も取り乱さない。
    クローンの性格はポシブルを反映しているのか。
    キャシーがこのまま提供者になることなく、寿命を全うするとしたらどうなるのだろう。そういった人はこれまでにいたのだろうか。

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    2026年08月01日
  • 日の名残り

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    英国の執事であるスティーブンスが、思い出を振り返りながら旅をする話。記憶の儚さとか、主人公の鈍感さなどが、人間らしくて興味深かった。

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    2026年07月22日
  • 日の名残り

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    30年ぶりの再読。素晴らしい本でした。若い頃は、女中頭の好意にまともに応えられない執事の臆病さを歯がゆく思いながらも、品格を追求する姿勢に共感して自分もそんな風でありたいと思ったものでした。それから30年が経って品格とは程遠い自分を見ながらこの本を読むと、この執事の臆病さと愚かさは自分と変わらないと感じてしまいます。
    旅に出て昔を回想しながら徐々に自分の過ちに気づき、最後に再会した女中頭との話のなかで自分の臆病さのせいで失ったものに気づいて涙する。しかし日の名残りの時こそが人生の最良の時だと思い至って、これからのことを前向きに考える。
    自分の気持ちに正直に自分の人生を一生懸命に生きる女中頭のミス・ケントンと比べて執事のスティーブンスは頭でこねくり回すばかりで何が大事かがわからないのですが、それでも2人ともがとても素晴らしい人生を生きている、と感じました。

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    2026年07月07日
  • クララとお日さま

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    AFのクララの語り口に時々違和感を感じ
    これがAIだからか、と思う。
    AIとの向き合い方をいろいろ考えた

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    2026年07月02日
  • 日の名残り

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    日本人作家による英国文学を読むのは初めてだ。著者がノーベル文学賞を受賞した際に話題となり、読もうと思いつつも長年積読状態だったが、ようやく読み終えた。

    まず感じたのは、翻訳の秀逸さである。翻訳文学特有のぎこちなさは皆無で、まるで日本語で書かれた物語を読んでいるかのようだった。

    本書は、執事スティーブンスが休暇中の旅を通して、自らの半生を一人称で振り返る物語である。序盤では、自らが立派な執事であったことを誇り高く語る。しかし回想が進むにつれ、その言葉の隙間から、動揺や疑念、そして決して表には出さなかった感情が静かに滲み出てくる。それは後悔なのか、それとも取り返しのつかない人生への失意なのか。読者に明確な答えは示されない。

    私はこの物語を、「仕事や信念に人生を捧げた結果、その人生は本当に幸福だったのか」という問いを投げかける小説として読んだ。

    今の私には、この問いに対する答えはまだない。人生経験を重ねたときに、もう一度読み返したくなる一冊なのかもしれない。

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    2026年06月28日
  • 日の名残り

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    ネタバレ

    戦前のイギリスの執事が、数日間のドライブでの旅を舞台に、自分の人生を振り返る。執事という仕事にささげてきた自分、父親、そして元女中頭のミス・ケントンなど、旅の場面場面で多くの回想を交えながら、誇りとやるせなさの混じったような気持ちを吐露していくような内容に、古い時代の異国の物語ながら、郷愁を感じてしまう作品でもあった。著者の作品は初読で、他の有名作も読んでみたい。

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    2026年06月07日
  • 日の名残り

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    イギリスの大きな屋敷で執事をしている主人公は、雇い主からの提案で小旅行をする。

    旅行中、
    以前の雇い主の元での様々な出来事を思い出し、
    読み手に語る。

    その語り口調がイギリス上流階級の、
    伝統を重んじるかんじで、
    主人公の真面目さを感じた。

    真面目さでいうと、
    ジョークをよく飛ばす今の雇い主への対応に
    気を揉んでいる様子が面白かった。

    ラジオや本を読んでどう冗談を言ったらいいか
    勉強して雇い主のジョークに適切に答えることを
    「新しい任務」として大真面目に頑張ったり、、

    冗談を冗談で上手く返して、
    雇い主を楽しませられないのは職務怠慢にあたるのではと考えたり、、

    架空のことをいつまでも考え続けるわけには
    いかない、人並みの幸せはある、もしかしたら
    人並み以上の幸せかもしれないということを
    早く気づいて感謝すべきでしたわ、
    という言葉が印象的だった。

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    2026年06月04日
  • クララとお日さま

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    ネタバレ

    AF(Artificial Friend:人工親友)の女の子であるクララの目線で語られる、未来の世界の物語。
    他のカズオ・イシグロ作品でもしばしば見られるように、柔らかく優しい語り口でとんでもないディストピアを描き出す。(好き!)

    クララは病弱な女の子、ジェシーの家に買い取られ、ジェシー、その母親および家政婦と共に暮らすようになる。ジェシーの"親友"としての役割に邁進するクララだが、ジェシーの病状は次第に悪化し、さらに家族の仄暗い秘密も明らかになっていく。
    物語の世界において当たり前に存在するらしい、優勢思想的な技術もストーリーに影を落とす。

    クララは非常に優れた人工知能を有しているが、人間と比較すればその思想は単純である。それでも、登場人物の中で、彼女が一番優しく、信心深く、そして正しく感じられる。しかし、ラストシーンで彼女がハッピーエンドを迎えられたわけでもない。

    知性の複雑さが正しさに直結するわけではないこと、そして正しくあることが幸せに直結するわけでもないことが見につまされる。
    愛、知性、信仰、倫理観、家族、友達…どこまでが人間だけのものなのか。愛、知性、幸せとは一体何なのか。読者の心に投げかける物語。

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    2026年05月24日
  • 日の名残り

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    最初から最後までなにもなく静かに流れていく日常
    でも世界は確実に動いていて、それをある執事の語り口から垣間見ていく不思議な体験でした。
    自分はスティーブンスはプロ意識の高い優れた人だとおもったけれど、感想を語った相手のAIが反論してきて少し面白かったです。
    わたしは歪んでいるのだろうか、、、

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    2026年05月23日
  • 忘れられた巨人

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    ネタバレ

    忘れられた巨人

    はじめての「カズオ イシグロ」でした。
    物語はアーサー王時代直後のイングランド。血で血を洗う争いが収まり、竜の吐息のせいで人々が諍いを忘れ平安に暮らしている。
    アクセルとベアトリスの老夫婦はある日忘却の彼方にある息子の元へ旅立とうと決意する。
    鬼を退治した戦士と鬼にさらわれて咬まれてしまったために村を追われた少年と旅を続けるうち、忘却の原因が竜の吐息のせいだと知り、その竜退治につきあうことになる。
    竜退治のために派遣され長年それを果たせずにいるドンキホーテのような騎士も加わりますが、騎士の本当の目的は・・・
    竜が退治され記憶が甦ることによって、甦る殺戮の記憶、そして復讐の念。
    戦いとは?平和とは?
    そのんなことを考えさせてくれる正統派の物語でした。
    英語は疑似古語で書かれているということで、そういった文体に直接触れたい場合は英文で読まなければならないようです・・・

    竹蔵

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    2026年05月11日
  • クララとお日さま

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    ネタバレ

    献身的なクララが運命を変える、的なハートフルな話と思いきや、かなりブラックな話だと感じた
    確かに、クララ目線ではジョジーが回復して、様々な体験ができてハッピーなのかもしれないが、実際は用済みとして廃棄されている
    途中にもところどころ、向上手術を受けたか受けていないかで格差が決定づけられている描写や、ジョジーの母親の言動に違和感しかないなどの要素が散りばめられており、現代の能力主義の行き着く先として、人の心の温かみが軽視され、誰もが取り替えのきく代用品になる暗い未来が描かれていると感じる

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    2026年05月01日
  • クララとお日さま

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    カズオ・イシグロの文章は主人公(語り手)が必ずしも正しいことを言っている訳では無いので、少し混乱する部分もあった。
    AIは優秀であり能力的には人間以上の働きができるが、特定の人間の代わりになることは出来ないという、人間の尊さが描かれている。
    その一方で、格差社会や心を失いつつある人間達への警鐘を鳴らすような面もあり、自分を見つめ直すきっかけになる作品だった。

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    2026年04月30日
  • 月と六ペンス

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    最初の3章はつまらなく感じて、なんの本を読んでいるのか分からなかった。
    でも、次第にほんの世界にのめり込んでいって結局夢中で読みました。
    時代も土地も違うから、俯瞰で読んでいる。なのにすごく想像ができる、不思議な本でした。
    画家はとんでもない人間で、周りの人々の人生をめちゃくちゃにする、とあらすじを(途中で)読んだので、ストリックランドには嫌悪感を覚えてこの本を読み終わるのだろうと思っていました。
    しかし、たしかにストリックランドはめちゃくちゃですが、とても魅力的に描かれていて、彼を嫌いだと思う暇はなかったです。

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    2026年04月17日
  • クララとお日さま

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    AFという存在が子どもにとってなくてはならない親友なのに、成長したら型落ちの廃品扱いなのが悲しい。
    どこかディストピア感があって、カズオイシグロらしい寂寥さがあちらこちらにあるのが良い。

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    2026年04月15日
  • 夜想曲集

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    「イシグロってこんな作品も書けるのか!」とにっこりしてしまう、小粋な短編集でした。

    私のお気に入りは「降っても晴れても」。
    妻の不機嫌を直してくれと旧友に頼まれ、とんでもない窮地に陥ってしまうさすらいの語学教師レイのどたばたぶりが笑えます。しかも、密かに好意を抱いていた友人の妻には「頭がおかしくなったとのでは」と思われてしまうという、哀しいおまけつき。
    レイのために、サラ・ボーンの唄う「パリの四月」がいつまでも終わりませんように。

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    2026年04月05日