土屋政雄のレビュー一覧
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ネタバレ良かった!!!さすがカズオイシグロ、全然裏切らない。
病気の子どもをAIロボットに学習させて、もしも死んでしまったらそのロボットに成り切ってもらおう、という計画。その計画を巡って、その人たらしめる唯一無二の何かはあるのか?という疑問の答えが、その人自身にはないかもしれないけど、周りの人からのその人への想いは、絶対何にも代えられないものだ(だからロボットには代替できない)、という結論だったのが、何となくわかる気がするし、ジーンとしみじみ良いなあと思う。
あとカズオイシグロの書く子どもは、ただ可愛いだけの存在ではないところが好きだ。子ども同士の微妙な関係とか、他の人の前では別人になってしまうところとか、すごくリアルだし子ども社会も残酷なのよ、と訴えてくる。わかる。子どもの絶対、は絶対では無いけど、その瞬間だけは絶対だという事も描かれてて、好きなポイントの一つだなあと思う。
親になったらまた読みたいかも知れない。
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30年ぶりの再読。素晴らしい本でした。若い頃は、女中頭の好意にまともに応えられない執事の臆病さを歯がゆく思いながらも、品格を追求する姿勢に共感して自分もそんな風でありたいと思ったものでした。それから30年が経って品格とは程遠い自分を見ながらこの本を読むと、この執事の臆病さと愚かさは自分と変わらないと感じてしまいます。
旅に出て昔を回想しながら徐々に自分の過ちに気づき、最後に再会した女中頭との話のなかで自分の臆病さのせいで失ったものに気づいて涙する。しかし日の名残りの時こそが人生の最良の時だと思い至って、これからのことを前向きに考える。
自分の気持ちに正直に自分の人生を一生懸命に生きる女中頭のミス・ケントンと比べて執事のスティーブンスは頭でこねくり回すばかりで何が大事かがわからないのですが、それでも2人ともがとても素晴らしい人生を生きている、と感じました。 -
Posted by ブクログ
日本人作家による英国文学を読むのは初めてだ。著者がノーベル文学賞を受賞した際に話題となり、読もうと思いつつも長年積読状態だったが、ようやく読み終えた。
まず感じたのは、翻訳の秀逸さである。翻訳文学特有のぎこちなさは皆無で、まるで日本語で書かれた物語を読んでいるかのようだった。
本書は、執事スティーブンスが休暇中の旅を通して、自らの半生を一人称で振り返る物語である。序盤では、自らが立派な執事であったことを誇り高く語る。しかし回想が進むにつれ、その言葉の隙間から、動揺や疑念、そして決して表には出さなかった感情が静かに滲み出てくる。それは後悔なのか、それとも取り返しのつかない人生への失意なのか。読者に明確な答えは示されない。
私はこの物語を、「仕事や信念に人生を捧げた結果、その人生は本当に幸福だったのか」という問いを投げかける小説として読んだ。
今の私には、この問いに対する答えはまだない。人生経験を重ねたときに、もう一度読み返したくなる一冊なのかもしれない。 -
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イギリスの大きな屋敷で執事をしている主人公は、雇い主からの提案で小旅行をする。
旅行中、
以前の雇い主の元での様々な出来事を思い出し、
読み手に語る。
その語り口調がイギリス上流階級の、
伝統を重んじるかんじで、
主人公の真面目さを感じた。
真面目さでいうと、
ジョークをよく飛ばす今の雇い主への対応に
気を揉んでいる様子が面白かった。
ラジオや本を読んでどう冗談を言ったらいいか
勉強して雇い主のジョークに適切に答えることを
「新しい任務」として大真面目に頑張ったり、、
冗談を冗談で上手く返して、
雇い主を楽しませられないのは職務怠慢にあたるのではと考えたり、、
架空のことをいつまでも考え続けるわけには
いかない、人並みの幸せはある、もしかしたら
人並み以上の幸せかもしれないということを
早く気づいて感謝すべきでしたわ、
という言葉が印象的だった。 -
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ネタバレAF(Artificial Friend:人工親友)の女の子であるクララの目線で語られる、未来の世界の物語。
他のカズオ・イシグロ作品でもしばしば見られるように、柔らかく優しい語り口でとんでもないディストピアを描き出す。(好き!)
クララは病弱な女の子、ジェシーの家に買い取られ、ジェシー、その母親および家政婦と共に暮らすようになる。ジェシーの"親友"としての役割に邁進するクララだが、ジェシーの病状は次第に悪化し、さらに家族の仄暗い秘密も明らかになっていく。
物語の世界において当たり前に存在するらしい、優勢思想的な技術もストーリーに影を落とす。
クララは非常に優れた人工知能を有しているが、人間と比較すればその思想は単純である。それでも、登場人物の中で、彼女が一番優しく、信心深く、そして正しく感じられる。しかし、ラストシーンで彼女がハッピーエンドを迎えられたわけでもない。
知性の複雑さが正しさに直結するわけではないこと、そして正しくあることが幸せに直結するわけでもないことが見につまされる。
愛、知性、信仰、倫理観、家族、友達…どこまでが人間だけのものなのか。愛、知性、幸せとは一体何なのか。読者の心に投げかける物語。 -
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ネタバレ忘れられた巨人
はじめての「カズオ イシグロ」でした。
物語はアーサー王時代直後のイングランド。血で血を洗う争いが収まり、竜の吐息のせいで人々が諍いを忘れ平安に暮らしている。
アクセルとベアトリスの老夫婦はある日忘却の彼方にある息子の元へ旅立とうと決意する。
鬼を退治した戦士と鬼にさらわれて咬まれてしまったために村を追われた少年と旅を続けるうち、忘却の原因が竜の吐息のせいだと知り、その竜退治につきあうことになる。
竜退治のために派遣され長年それを果たせずにいるドンキホーテのような騎士も加わりますが、騎士の本当の目的は・・・
竜が退治され記憶が甦ることによって、甦る殺戮の記憶、そして復讐の念。
戦いとは?平和とは?
そのんなことを考えさせてくれる正統派の物語でした。
英語は疑似古語で書かれているということで、そういった文体に直接触れたい場合は英文で読まなければならないようです・・・
竹蔵