土屋政雄のレビュー一覧

  • クララとお日さま

    Posted by ブクログ

    静謐
    映画化良さそうじゃねと思った、、
    明言せずに設定を雰囲気とか背景で匂わせてくる本だった

    『でも、カパルディさんは探す場所を間違ったのだと思います。特別な何かはあります。ただ、それはジョジーの中ではなく、ジョジーを愛する人々の中にありました。』

    0
    2026年04月29日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

    Posted by ブクログ

    ノーベル文学賞受賞記念講演を文庫化したもの。
    イシグロ作品、2020年くらいまでに日本語で出版されたものについては全て読んでいるので、作品に関するちょっとした解説のようなものもご本人の口から聴くことができてとてもありがたかった。私なりの作品に対する解釈が大きく外れていないことも嬉しかった。
    イシグロ作品はどれも、語り手である主人公が根本的な部分で嘘をついていて、それ分かるとき深淵が顔を出す…という内容なのだけれども、どうしてこのスタイルで小説を描こうと考えたか、ヒントを得た別の作品(音楽や映画など)についても紹介しながら解説されていてとても面白かった。
    彼の中での『日本』という国についても言及されていて、5歳からイギリスで暮らしその後何十年も日本に帰らなかったイシグロの中で、彼だけの『日本』という国が作られていった、という話もとても興味深かった。
    『遠い山なみの光』『浮世の画家』に描かれる日本はどこか現実離れしている世界のように感じられたのだけど、この世界はイシグロだけのものだったからなんだなと腑に落ちた。
    『遠い山なみの光』は、映画でも長崎の風景がどことなく現実離れした絵のように見えた。監督の手腕に驚いた。

    翻訳はイシグロ作品『日の名残り』『わたしを離さないで』『忘れられた巨人』を訳された土屋政雄氏。
    カズオ・イシグロの世界観を味わえる素晴らしい翻訳だと感じた。

    0
    2026年04月05日
  • クララとお日さま

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    最初の方は読みやすくすらすら読めましたが、途中気が滅入ってしまいました。
    特に、リックとヘレン、その昔の恋人とのやり取りは、この物語の中でも特に醜悪なやり取りだったと思います。
    クララが純真で愛情深く謙虚なAFであるからこそ、そのやり取りがより醜く見えてしまい、そこから読み進めるのが億劫になってしまいました。
    また、その反面、クララのお日さまに対するあまりにも真っすぐな感情には、「そんなことで病気が治るわけがないのに……」という苛立ちのようなものを覚えてしまいました。
    なので、最後にジョジーの病気が治ったことにはとても驚きました。ご都合主義的というか、ファンタジーなシーンだと思いましたが、その先の展開は苦みの残るものだったなと思います。
    全体を通して、あまり楽しめなかったというのが正直なところですが、特別な何かはそれを愛する人の中にある、というフレーズはとても印象に残りました。

    0
    2026年03月24日
  • 夜想曲集

    Posted by ブクログ

    大きなドラマが待ち受けているわけではないが
    あとがきを読むと、カズオイシグロはチェーホフに大きく影響を受けているようなので
    なるほどと思う

    5篇目のチェリストにて
    まだ足を踏み入れたこともない庭園が遠くに見えました。
    という節がとても羨ましく思えた

    わたしもミス・マコーマックのような人からそのようなレッスンを受けてみたい
    まだ足を踏み入れたこともない庭園、そんな世界を私も自分の音で見てみたい


    0
    2026年02月26日
  • ダロウェイ夫人

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    視点の使い方が特徴的。
    クラリッサの視点かと思えば次のページではレーツィアに、はたまたメイジーに……それだけでなく一人称で語られたり三人称で語られたり……忙しさを感じる記述だった。
    これにより個人的には読みにくく感じたが、ひとつの物事を複数人の視点から見れるのは面白い。
    話の軸はクラリッサとセプティマスの2軸。
    終盤までこの軸は独立を保ったまま同時並行的に話が続いていく……
    正直、この2軸(幸福の中の不幸を見出す視点・不幸の中の幸福を見出す視点)は交わりようがあるのかと思いながらページをめくっていたが、交点を見つけた時は驚いた。
    パーティという幸福の象徴的なものの中に自殺という不幸の象徴的なものが入り込むことで、より一層対比が明らかとなり、彼らの感情が強調されていたように感じる。
    いちばん印象的だったのはセプティマスが自殺するシーンだった。
    冒頭ではレーツィアは彼がシェルショックによって心からの会話が出来ないことを嘆いていたが、中盤で一時的に回復したような様子を見せたことで深い喜びを感じていた。しかしその直後、「人間の本性」がやってきたことにより彼は自殺という結果に至ってしまった。この場面はレーツィアの心情を考えると胸が痛い。希望の見えない生活の中でようやく差した希望の光が一瞬にして潰えてしまった。そしてその様も惨いものであった。
    この話の後にピーター・ウォルシュが救急車のサイレンを聞いて「文明の勝利だ」なんて言って喜びに浸っているのも、この無惨さを強調させていると思う。

    0
    2026年02月18日
  • 月と六ペンス

    Posted by ブクログ

    10年以上前に読もうとして挫折してたけど、評価が高い名作なので再チャレンジ。
    最初なかなか読み進まなかったけど、徐々に面白くなってきた。

    ゴーギャンをモチーフに書かれた小説で、実際にここまで命を削りながら描いていたんだろうと思う。
    これほどまでに、自分に何が必要かを悟って、それ以外は一切不要と捨て去り生きていくことで見えてくるものがあるんだと思う。
    こんなふうに、他人の評価を一切気にしない生き方ができれば理想かもしれない。
    でもそれができない。

    0
    2026年02月07日
  • 夜想曲集

    Posted by ブクログ

    カズオ・イシグロに触れたのはほんの数冊(その内一冊は二十年近く前に読んでよく分からなかったというオチまである)なので今作の軽やかで、時に切なく、時に楽しいバラエティに富んだ内容なのは驚かされた。
    人生の出会いと別れ、それら一つ一つに悲しんでどうするのか。いつか必ず終わる一時のどんちゃん騒ぎ──そんな風に言われたようだった。
    文体も優しく包み込むような雰囲気があり、静かにジャズをかけながら浸りたい。

    0
    2025年12月22日
  • 夜想曲集

    Posted by ブクログ

    繊細な台詞と開かれた結末。読後、何日も心に残り続けるイメージが、まるで作品自体が語りかけてくるかのようだ。ただし、英語版で読んだほうがイタリアの情緒や登場人物の感情が’、より生々しく伝わったかも知れない。

    0
    2025年12月19日
  • ねじの回転

    Posted by ブクログ

    両親を亡くしたとある兄妹の家庭教師として、イギリスはエセックスの屋敷に赴任した主人公「わたし」の手記によって展開されるホラー小説。今作の興味深い点は何と言ってもやはり、「信頼できない語り手」の存在である。物語にて2人の幽霊が度々登場するのだが、唯一の語り手である主人公の「わたし」を除き、それらをはっきり見たとされる登場人物がいないため、そもそも幽霊がいるのかという疑問が読み進めていく中で湧いてくる。また、主人公と狡猾な兄妹との間で繰り広げられる緻密な心理戦も今作の見どころである。兄妹と幽霊の関係やマイルズの退学の理由など、主人公が対面する数々の謎は読者の興味を強くそそるに違いない。

    0
    2025年11月17日
  • ダロウェイ夫人

    Posted by ブクログ

    20世紀を代表するイギリス文学と評判こそ聞き知っていた作品。
    歴史的傑作をたっぷり読む! という目標のもと、今回入手して挑戦してみました。
    第一次世界大戦後のイギリスで上流階級のダロウェイ夫人が晩餐会を開く準備をしています。その一日を、数人の登場人物の内的独白に迫りながら描いています。
    物語は最初から最後まで章や切れ目がなく、一つの大きな塊として始まり終わります。ある人物の意識の流れを丹念に追いながら、そのあと別の人物の意識に移行し、筋は続いていきます。この作品には、2つの読み方があるようです。最初から最後までまとめて一回で読み終える。または少しずつ、描写を味わいながら読み、お気に入りの栞をはさんで次の日にまた物語に戻ってくる。―私はゆっくりと読むほうを選びました。
    ダロウェイ夫人は51歳。現在なら活気あふれるこの年齢も一世紀前だったら、人生の夕暮れ時を迎える世代でした。この作品は、読者もある程度の年齢にならないとわからない、最初はそう、断言していました。人生の経験を積んだ大人の女性のモノローグは、読む側の人生経験が浅いと、柔らかなひだが見えにくいはずです。
    けれど、後半になって思い出したのは個人的には若いころにはこんな「意識の流れ、ゆらぎ」を描いた作品群をむさぼるように読んでいたのです。若いころに読んでいたとしても何か感じるものはあったと思います。
    お酒が飲める年齢になったら読めますかね、この本は。味わい方をそれぞれ変えながら。

    0
    2025年10月27日
  • 忘れられた巨人

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    かなり読み終わるまで辛かった。難解。
    老夫婦が息子のの住む村に行く間のファンタジー?
    記憶が消されたり、夫婦が離れ離れになったり、とてもついていけなかった。
    老夫婦はその後どうなるのか?
    私の読解力のなさで、なんかモヤモヤ霧に包まれたように終わった。

    0
    2025年10月12日
  • イギリス人の患者

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    独特の文体に慣れるまですごく読みにくかった。

    あまりに読みにくいので、ChatGPTに相談したところ、作者が詩人だから明確にストーリーを追うよりは、文章のイメージに浸るように読むのがおすすめって言われて、確かにそのほうが読みやすかった。

    現代パートが自分には全然面白くなくて、序盤で挫折しそうになったけど、過去パートのエピソードが面白かったので中盤から持ち直しました。

    あと、戦争の話だけど、不倫の物語を美しく書くところが着地点なのはなんだかなという感じ。古き良き文学作品にはよくあることだけれど。

    0
    2025年10月10日
  • ねじの回転

    Posted by ブクログ

    購読している英語のテキストで紹介されていたので読みました。
    不思議な世界観でした。ちょっとずつ気味が悪くて、でも続きが気になる感じで、おもしろかったです。

    0
    2025年09月11日
  • 忘れられた巨人

    Posted by ブクログ

    難しかったけどなぜか読みきれた。

    「霧」は認知症のことなのかな、最後のボートの行き先は死後の世界なのかな、息子を探す旅は長い夫婦生活で起きることかな、と解釈した。

    あと「霧」は不幸なこととして捉えられてるけど、本当に不幸なだけなのかな。と思わされた。

    0
    2025年08月17日
  • 忘れられた巨人

    Posted by ブクログ

    3.5 なかなか読むのに苦戦しました。読んでも読んでも進まない感じ。大きな出来事も淡々と語られていく。世界観はファンタジーだが、モチーフは不変の愛はあるのか?がテーマかな。我が身を振り返ってしまう。最近、連れ合いには優しくしてないな。まあお互いにやけど。それでも読んで良かった。別の作品にも挑戦したい。

    0
    2025年08月09日
  • 月と六ペンス

    Posted by ブクログ

    ストリックランドは、馬鹿なのか?
    奥さん捨てて、人の妻を自殺に追い込んで、当の本人は絵画を描くことに夢中になってる。

    絵画芸術家って、こんな奴らが多いのか?
    もし多いなら、絵画を見たくない。

    0
    2025年04月28日
  • 夜想曲集

    Posted by ブクログ

    好きな作家の短編集。もう少し音楽に造詣が深ければ (背景が分かれば) より味わえるのだろうが、分かったのはABBAのdancing queenだけというお粗末な自分には少々 (?) レベルが高かった。音楽と男女の関係をモチーフに、時の流れの残酷さ (過去も未来も) と共にどこか「日の名残り」を連想させるノスタルジックな雰囲気や人間関係の機微を感じさせられる。

    全般読みやすい文章で、ハチャメチャなものから、コメディタッチなものまでテイストが違う作品も含めてサラッと楽しめるのは短編集ならでは。音楽に疎くても。

    0
    2025年04月20日
  • イギリス人の患者

    Posted by ブクログ

    漂うような不安定さ…が読後の第一の感想。
    美しくはあるけれど、時間も場所も目まぐるしく変わり、浮かぶ画像もゆらゆらと揺蕩うようで。

    この物語りは読むものを選ぶ。そう言われる所以が良くわかった。おそらくは、脈絡の無いような物語りと物語りが続き、かつ、過去と今とが入り乱れて、尚且つ、美しくはあるけれど難解な文章だ…読み始めて数ページで放り出したくなる人も多いと思う。

    忍耐はいる。

    映画化された「イングリッシュ・ペイシェント」はアカデミー賞を受賞し、一躍本書をも有名にしたようだが、原作とは大きく異なる点も多く、自分は見ないことにした。(アマプラでは吹き替え版が見られる)
    実を言うと…読み始めてすぐに「あー、えらいものに手を出したな…」と思い始めて少しでも理解を早めようと映像の冒頭を見た…見てしまった。

    本書ではすでに亡くなりミイラ化していると思われる「女」が、映像では眠っている?いや、注意すれば亡くなっていることはわかる…つまり、あたかも飛行中に亡くなった?或いは直近に…と思われる、姿形をとどめて、彼女の髪が風に乱れるシーンは美しいとさえ思える。。。そんな出だしであったので、あー、これは随分と違うのかな…と感じて…見るのをやめた。

    ならば、独力で、と読み終える覚悟を決めた…笑。


    好きか嫌いか、或いは、読めるか読めないか…
    二つに分かれるだろう、という多くの感想通りに、詩的ではあるものの、個人的にはイマイチでした。

    ブッカー賞の中のブッカー賞…というからには、、、との思い入れもあったので、そこは仕方なし。

    他にも秀作は沢山ある。
    カズオイシグロを抑えた…とは言えない…と、これもまた個人的には思います。

    まあ、「不倫」を美談にしている時点で相容れないものはありますが。。。

    0
    2025年04月05日
  • 夜想曲集

    Posted by ブクログ

    2024/6/9

    初イシグロ
    淡かった

    五個?の短編
    あのイギリス田舎の、ホテル勧める話が一番すき
    あと友達の家めちゃくちゃにする話もいいな

    内容というより、ジャズ聞にながら時間を楽しむ本だわ

    0
    2025年02月08日
  • 夜想曲集

    Posted by ブクログ

    カズオ・イシグロの短編集。

    音楽と夕暮れって、本当によく付けたタイトルだと思う。いわゆる人生の黄昏時を表現してるんだけど、短編の主人公5人とも自分とはかすりもしない人生を歩んでいながら、もう節々に「その気持ち分かるわー」と感心する時がある。

    カズオ・イシグロって、そういった誰の人生でも経験する言葉にし難い気持ちを文章に表現するのがすごく上手い。

    正直ストーリー的にはそれほど引き込まれなかったんだけど、その絶妙な文章に出会いたいために、また他の作品も読みたくなってしまうんですよ。

    0
    2024年09月28日