カズオ・イシグロのレビュー一覧

  • 日の名残り

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    ネタバレ

     時代は第二次世界大戦の後,1950年代。
     執事スティーブンスは、現在はアメリカ人の主人に仕えているのだが、主人が帰省する間、かつて同僚だった女中頭に会いにいくことになった。かつてかれらは、有力貴族ダーリントン卿に仕えていた。物語は大半は、旅中で想起される戦前の出来事(1920〜30年代くらい)が中心となっている。
     ダーリントン卿は、政界にコネを持ち、その屋敷は幾度のなく国際政治上の密会の場となっていた。そして、スティーブンスは主人に心酔していた。彼は、ダーリントン卿がいかに偉いか、ということを何度も回想している。
     と同時に、そのように高らかに誇張されることによって、その陰にあった(が実

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    2025年11月06日
  • 日の名残り

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    こーれはすごい
    まるで実在する執事が滔々と自らの職業人生を語っているかのようで、ノンフィクションの自伝を読んでいるような錯覚に陥りそうになる
    確かな構成力に加えて生真面目な執事が時折見せる人間臭さや登場人物の会話など、ここまでのリアリティと緻密さをもって細部まで描き切る著者の筆致の力量に圧倒された

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    2025年11月02日
  • クララとお日さま

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    人間よりもいつしかクララに共感する。彼女と祈り、彼女の代わりに胸を痛めるうちに、共感を行動に移す力を自分こそが手放しかけていることに気づかされる。

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    2025年10月24日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    ちょっと不思議な青春小説といった雰囲気で淡々と進むけれどゾッとする話。オカルトっぽくないから余計に怖い。
    ノーベル賞作家の作品って余り読んだことが無く期待もしていなかったけれど凄く面白かった。

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    2025年10月21日
  • クララとお日さま

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    AIが身近なロボットとして富裕層の家庭が手に入れられる時代があるならば、まさにこういう未来があるのではないかと非常にリアリティのある内容を、AI親友ロボットの一人称視点で語られる物語。
    今の世のAIが質問に何とか答えようとして情報を寄せ集め嘘をついてくることや、よく想像される人に取って代わるというような、興奮性の刺激となる流れでない。淡々と、静かに、しかし確かな川底に流れる熱さをもって、世や人間の美しさや不思議さ、愚かさ、差別、またAIのこころや信仰のような思考の波をとりあげていく。

    冒頭で、ショーウィンドウにいるAIロボットのクララが “コーヒーカップのご婦人とレインコートの老人” を見、

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    2025年10月21日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    深い。
    これは秘密にしたい後悔という「亡霊」の物語である。
    それは足元にからまった縄のように、私たちに気もつかぬうちに絡まりついている。

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    2025年10月18日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    ネタバレ

    なんて悲しい話なのか、と思いながら読んだ。主人公であるキャシーらは、臓器提供のために育てられたクローン人間である、という設定はそれ自体大変ショッキングな内容だが、読者としては、物語が進むにつれ、直接な言及はなくともなんとなく察せられるようになっていて、いつの間にかそれを知っている、ということになっている。それはまるで、主人公たちが、知るともなしにその事実を知って、いつのまにかその事実を受け入れているというストーリーをなぞっているようだ。そういう体験を、実に周到に用意しているように思う。そして、そのこと、つまり、自分たちがいつのまにかその事実を受け入れてしまうということが、とても残酷なことだと気

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    2025年10月11日
  • クララとお日さま

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    子供の良きAF(人工親友)になるべく開発された人型AIクララを語り手に、病弱な少女ジョジーとの出会いから別れまでが描かれる。

    クララは観察眼に優れ勉強熱心で優秀なAFだけど、人の心の機微には疎く淡々とした言動の描写からやはり人間とは違う存在なのだと改めて感じさせられる。観察と学習を繰り返した末に、人の心や感情は模倣できるのか。
    終盤、人間に作られた存在であるクララが文字通り自身を犠牲にして主人であるジョジーを救おうとする健気さに心打たれた。

    AIは人間の道具なのか、パートナーなのか。心とは、優しさとは。
    近い将来、こんな未来がくることもあり得るのだろうかと考えさせられる結末だった。
    機械が

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    2025年10月01日
  • 日の名残り

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    英国貴族のダーリントン卿と、その名家に仕える執事のスティーブンス、ミスケントンの3人を中心とした物語です。スティーブンスの回想録になっていて全て口語調で書かれています。そのため読みやすく、当時のダーリントン家で行われている会合や執事として働いている情景が鮮明に浮かんでくるため、没入感が素晴らしかったです。とにかく真面目で堅物なスティーブンスの人柄も良い味が出ています。

    この物語の最大の魅力としては、3人ともが自らの「人生」と深く向き合っていることです。それぞれが自らの信念のもと進む道を決断・選択しているのですが、上手くいかずに後悔、そして苦悩・・・といったシーンが描かれています。そのため、「

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    2025年09月23日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    ネタバレ

    主人公の女性は、本当にできた人だと思った。舅にも優しく、逆らわず、古い価値観にとらわれていることも受け入れて相手を立てている。自分勝手な知り合いの頼みごとも断らず、わがままな言動にも怒らずに付き合う。お金まで貸してあげる。とにかく怒るということがない。そういう姿に「なんてできた人なんだろう」と思った。
    でも、今の彼女の状況を知ると「あれ?」と思う。離婚し、外国人と再婚している。ピアノ教師には意地悪な嘘までつく。あの時、舅に合わせていたのも本心じゃなかったのかもしれない。夫との離婚の理由も、恵子に何があったのかも明かされないままだ。
    それでも、ニキの新しい価値観には理解を示していて、そこには相変

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    2025年09月22日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    ネタバレ

    映画に比べて全てがぼんやりしていた。悦子は確かにいい母親ではなかったのかもしれない。でも、母親だからといって、自分のための選択ができないのはおかしい。とにかくこの時代は特にみんなが傷を負っていて、大人も大人のままではいられなくて、現代なら受け入れられる選択も景子を追い詰めたのだと思う。景子視点、二朗視点、景子の父親視点も気になる。

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    2025年09月21日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    【文学の森】2025年9月クールのテーマ作品。

    戦後の世の中、価値観の違う人たちが精一杯生きる姿を静かに描いている。
    わからない部分もあったので、平野啓一郎さんの解説を聞いたあと、再読したい。

    翻訳物は基本的に苦手だが、本作に関しては全く違和感なく、素晴らしいと感じた。日本語の表現の多彩さを考えると、原作より表現が豊かになっているのではないかと思った(原作は読んでないけど)。

    石川監督の映画も気になる。

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    2025年09月22日
  • 日の名残り

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    素晴らしい作品だった。雇主が戦前戦後の欧米各国の思惑に翻弄され失意の中で去る話、女中頭の過去と現在の話。最終的には、執事も前を向いてジョークにまず向き合おうとこの旅を経て思えた事、何もかもが素敵なストーリー。
    カズオ・イシグロの本の中で、マイベストです。

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    2025年09月19日
  • 日の名残り

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    ネタバレ

    ある屋敷に長年執事として勤めた人物の回想と現在、これからの話。

    屋敷の主が亡くなり、スティーブンスは新しい主人の執事となったが、ノリがうまく合わずジョークすらうまくできないと思い悩んでいる。その主人の勧めで小旅行をすることなり、屋敷が全盛を誇った頃に同じ屋敷で働いていた元女中頭のミス・ケントンに会いに行くことになる。

    昔の回想と今を行き来しながら、スティーブンスが色々なものを犠牲にして、重きを置いてきた品格とは何だったのかを問う内容になっている。

    相手への配慮というか直接的な表現を避ける独特な言い回しで、訳文なのにとてもイギリスっぽさを感じる。
    人によって好き嫌いはあるかもしれないが、個

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    2025年09月08日
  • クララとお日さま

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    AIロボットと人間の関係や、家族の在り方、知識の意味、人とAIの違いとは何かなど考えさせられることが多い本であった。
    AIは本当に人間になりうるものなのか、違いは何なのか、脅威となりうるものなのか。
    最近では、技術の進歩によって、自然に発生したものを改善する方法が多くでてきている。
    そのような技術に向き合い、どのように扱っていくのか、これから人間に課された大きな課題であると感じた。

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    2025年09月02日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

    「わたしを離さないで」について

    ノーベル賞作家のカズオ・イシグロが端正な筆致で綴る、ある女性の人生の物語。

    提供者を慰める介護人の職に長くついていた女性。彼女が職を辞めるにあたり、自分のこれまでの人生、特に生まれ育ったヘールシャムで仲間と過ごした日々を回顧する。

    提供者、介護人など説明なく出てくる言葉の意味が、女性の回想から次第に明らかになってくるにつれ、世界の残酷な姿が浮かび上がってくる。
    この世界の真実は、SF小説のファンならばすぐに見当がついてしまうだろう。

    読みどころは、むしろ小説としての巧さ、人間描写の厚みの部分だ。大きな状況に翻弄される主人公たちが、小さな人間関係にすがる姿がなんとも哀しく映るのだ。

    #切ない

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    2025年08月29日
  • クララとお日さま

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    ネタバレ

    初めて読んだカズオ・イシグロ作品です。

    自分が非常に遅読なのもあり、主人公であるクララの(おそらく瞳の)「箱」で描写される風景を想像をするのに時々苦労してゆっくり読んでいました。

    少年少女の心に寄り添い支えるための人工親友=AF(Artificial Friend)であり本作の主人公でもあるクララ。
    彼女の目を通して一人の少女とその周りのことが語られていきます。

    「向上措置」やそれに関係する差別ともいえる風景などが垣間見えるディストピアのような世界観。
    クララが寄り添う少女ジョジーに忍び寄る死の影、ジョジーの母親クリシーの穏やかならぬ心、ジョジーの親友で措置を受けていないリックの将来・・

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    2025年08月26日
  • 夜想曲集

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    老歌手からもうすでにいい。構成とキャラ設定、ストーリーの流れ、全部拍手喝采。行を追うのが止まらない。

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    2025年08月19日
  • 夜想曲集

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    翻訳ものは誰が翻訳したかによっても評価が分かれると思いますが、とても読みやすかったです。訳されることを前提に書いていると知った時は驚きました。
    音楽をテーマに5つの短編が収録されていますが、一つ一つ異なるテイストで楽しく、すぐに世界に引き込まれました。
    余韻のある読後感も心地よい一冊だと思います。

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    2025年08月10日
  • クララとお日さま

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    「私を離さないで」を読んで深い感動に打ちのめされた私は、「クララとお日さま」が「私を離さないで」に共通した点があることに嬉しさを感じながら読み終えた。
    AIと人間を扱う小説や映画はすでに数多くあるが、AI側の視点に立った小説は異彩を放っている。
    綿密に計算された語り口はカズオ・イシグロ・ワールド全開だ。見事に「私を離さないで」と同類の感動を与えてくれた。

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    2025年07月20日