カズオ・イシグロのレビュー一覧

  • 日の名残り

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    初めて手にした時には、展開の乏しさに、あえなく挫折。今回、リトライして、完読。引き込まれるには、かなり読み進める必要がある。
    時は1956年、舞台はイングランド。執事スティーブンスの6日間の小旅行、そこに15~35年前の出来事の回想がはさまる。
    スタイルがやや型にはまりすぎている気もする(執事らしさの演出なのかもしれない)。途中、ドーリントン邸での秘密裏の国際的会合など、どこかモームを思わせるところもある。何度も出てくる執事の品格の議論では、お茶大のあの先生の顔が浮かんでしまった。
    解説は丸谷才一。イギリス文学史とイギリスの時代的変化の文脈で本作品を論じている。恋愛小説として読んでしまったが、

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    2026年04月15日
  • 日の名残り

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    ネタバレ

    めっちゃ面白かった。一気に読んでしまった。
    三宅かほさんがYouTubeで言っていた、「カズオイシグロは時代に取り残された人の小説(ニュアンス)」の意味が分かった。
    言ってしまえば何も起こらない小説。
    翻訳が素晴らしかった。

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    2026年04月13日
  • クララとお日さま

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    AFという新たな存在が、成長段階の子どもに寄り添い家族全体のお守りをするという発想。薄々感じているが、ゲームやパソコンから移行しつつある何かがやはりAIでよいのか。人間同士では不可能なのか。人間に失われた信仰心を設定し、神秘的な秘密裏の行動をAIが成せるのか。思いもしなかった内容に引き込まれた。
    恋愛相談をAIにするという冗談のような話に笑っていられない。

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    2026年04月12日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    ネタバレ

    全く前知識なく読んだ方が良いです。
    これは。
    読めば読むほど、そういうこと?!と、
    色々なことが分かっていって、読むのが止まらない。
    本当に止まらなくなります。
    どんどん心の鉛が増えていく感じもあるけど、一生私の中に残り続けるだろうなという印象深いシーンもどんどん出てきて、カズオ・イシグロさんの天才的な表現力を痛感します。

    私の今年に読んで良かった本ベスト10に入ると思います。
    それどころか、もし誰かに「どういう本が好きなの?」と聞かれたら、「土屋政雄訳、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』」とまず答えてしまうかもしれないです。
    それくらい良かった。面白かった。
    本ってすごい。
    バケモノ

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    2026年04月11日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    豚や牛といった家畜が人間に食われるために生きていることを考えて暗い気持ちになりますが、この小説もそれに劣らぬ真っ暗な読後感を持ちました。読み終えて6年以上経つが、思い出して震えが止まらなくなる怖さがある。

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    2026年04月08日
  • 日の名残り

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    ネタバレ

    先日読んだ『わたしを離さないで』から2冊目のカズオイシグロ。免疫(?)がついた状態だったので語り手をかなり疑いながら読んでいました笑

    スティーブンスの自己イメージは完璧主義なプロフェッショナルなんだと思うけど、それとは裏腹に人間らしいところが垣間見れてなかなか愛おしいおじさんだった…ミス・ケントン惹かれていたらしい(スティーブンスの独白によるとだけど)のも理解できるかな。

    ラストのシーンは閉鎖的だった空間がひらけてふっと風が通り抜けるような感覚があり、かわいそうとも尊いとも笑いともつかない、色々な感情がないまぜになり泣けてしまった。

    イギリスとナチスドイツの関係やスエズ危機など、歴史に疎

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    2026年04月09日
  • クララとお日さま

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    個人的に、カズオイシグロ作品で1番好みの一冊。

    主人公であるロボットから語られる世界からは、穏やかながらも残酷に、確かに、すぎていく時の流れを感じます。
    またクララが太陽を頑なに信じる姿は、人間で言うところの信仰にも近いものを感じます。人とロボットの境目なんて考えようによっては、もはや存在しないのかもしれないですね。

    映画化が楽しみ!

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    2026年03月28日
  • 浮世の画家〔新版〕

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    令和になって共感者がなお増えるのでは

    主人公・小野益次が自分の過去の記憶を辿る真面目な姿勢に好感を持つ。なぜだろう。
     漱石の『こころ』の主人公・先生は、明治の精神に殉死した。その死は衝撃的で、読者への問いかけはあまりにも大きく、先生は「先生」という神になり読者に越えられない存在となった。
     その点、読後の小野は身近だった。戦前は耽美主義的な絵を習い、戦時中にかけ軍国主義を煽る絵を描いて名声を得、戦後は画家を引退したが、時代の大きな変わり目を迎え、先生と呼ばれなくなっても、殉死せず生き続けている。過去を振り返る姿勢は、ある時は自分に厳しいが、ある時は自分の行動を肯定し美化する。信念に従って生

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    2026年03月27日
  • 忘れられた巨人

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    愛と平和は、雌竜が吐く霧によって保たれている。夫婦の愛と社会の平和は、忘却によって保たれている。
     雌竜の霧。いい表現だ。
     それはともかくカズオ・イシグロが導き出す現実は、身も蓋もないぐらいに厳しい。『私を離さないで』を読んだ後、目の前が真っ暗になるような思いをしたが、この『忘れられた巨人』も同様の読後感を持った。アーサー王物語も古代ブリテンの歴史も知識がほとんどないまま、ファンタジー的な物語なのかと思って読み進めていたが、終盤の終盤に一気に心が鬱になりかけた。
     夫婦の旅の目的地は、三途の川の向こうの死の世界だ、と私は読んだ。結局、死は一人で迎えるしかないものである。最後の場面、主人公の決

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    2026年03月29日
  • クララとお日さま

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    病弱な少女のために神頼みをするAIクララ。終始悲壮感が漂っていて切ない物語だった。 クララの意図を理解して協力してくれた父親に好感を抱いた。

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    2026年03月27日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    ネタバレ

    孤児という、一見ネガティブな題名から、これまで手に取っては来なかったけれど、ロンドンの社交界の逸話から、上海租界での子ども時代の鮮やかな思い出、友情などひかれる内容でついつい先を急いでしまう。そして、父母を捜し回る上海での戦場の場面もまた印象深い。彼のどの時代の話もそれぞれに意味深く歴史に名を残す作家さんなのだと改めて納得できた。

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    2026年02月27日
  • クララとお日さま

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    ネタバレ

    自分のためじゃくてジョジーのためだけに全てを尽くすクララが持ってるのは、果たして人間的な心なのか。思いやりや憐憫は確かに心の一側面ではあるやろうけど、保身、嫉妬、依怗みたいな醜い感覚が排除されてるそれを心と呼んで良いのかは難しい。
    とはいえそんなクララが、人間を特別たらしめるものを看破してるのが何よりも尊い。

    お日さまとの約束とかいう、信仰に近い論理に心からの希望を見出してる感じ、映画『A.I.』と同じくSF作品の中でファンタジーに解決策を見出す矛盾と無力感があった。このパターン心が苦しいからやめて欲しい。

    最後の店長の「B3型には愛情を感じられなかった」という言葉、人間に近づき過ぎたもの

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    2026年02月21日
  • 夜想曲集

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    人生って、誰か一人を愛することよりずっと大きいんだと思う。あなたはその人生に出ていくべき人よ、スティーブ。あなたみたいな人はその他大勢と一緒にいちゃだめ。わたしをご覧なさい。この包帯がとれたって、はたして二十年前に戻れるかどうかわかりゃしない。それに独身だったときなんて、もう大昔だしね。でも、わたしは出ていって、やってみる。

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    2026年02月21日
  • 充たされざる者

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    振り回され続ける主人公にイライラして何度もやめたくなったけど、そのうちクセになって逆にやめられなくなった。
    一筋縄じゃいかない、すごい小説。

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    2026年02月18日
  • わたしたちが孤児だったころ

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     上海租界で少年時代を過ごしたイギリス人クリストファー。その地には隣家の日本人少年アキラとの楽しい思い出もある。しかし、父親の失踪、それに次ぐ母親の誘拐という事件を経て孤児となり、イギリスの叔母のもとに引き取られることとなる。この少年が、長じて優れた探偵として名を馳せるようになり、満を持して上海に舞い戻り、消えた両親の謎の解明に挑む。
     真実を知りたい、という気持ちで読んでいけるミステリー小説のような推進力がありながら、そこで描かれる世界に立ち込める闇は深い。ってその世界とは私たちの住むこの世界である。途中途中、ウィキペディアなどで世界史のおさらいをしながら読み進めた(アヘン戦争、上海租界、日

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    2026年02月07日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    冒頭は1930年代で主人公クリストファー・バンクスは20代なかば。ロンドンで、子供の頃からの夢だった探偵として認められつつある。
    クリストファーは子供時代を上海の租界(外国人居留地)で過ごした。父親はイギリス貿易会社の社員で、母は上海の人々がイギリスが売りつける阿片で苦しんでいることを許せずにいる。そして自分たちの不自由のない生活には中国人たちを阿片付にしていることで父を責める。
    クリストファーの一番の友達は日本人一家のアキラだった。二人とも異国で暮らしているのだが、自分の国は上海だと思っている。子供なりに人生を見つめる独自の理論や哲学、自分を保つための嘘もある。
    だがクリストファーの父が、次

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    2026年02月01日
  • クララとお日さま

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    悲しい終わり方。クララに感情移入してしまった。そこは筆者の力技ともいうべきか。映画A.I.に近い筋立てだが、こちらは、人間の心の核というものを掘り下げている。登場人物は、現代と変わらない心の浮き沈みがあり、そこの描写も面白い。

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    2026年01月23日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    なんだろ、ファンタジーを歩いているようなふわふわした感覚がありながら、後に残る感情は妙に生々しいものがある、という感じだった。
    すべてはパフィンの夢だったのではないかとも思えるような子供じみた奇妙な展開がところどころにあるが、読み終えてみると、実は全てこうなることは最初からクリストファー自身が分かっていたかのような感覚を受けた。そのアンバランスさがこの時代背景や孤児ということをより際立たせているように感じた。少しミステリーぽい要素もあり、スラスラと読めた。

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    2026年01月16日
  • クララとお日さま

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    カズオ・イシグロさんの『クララとお日様』を読みました。

    物語は、AF(人工親友)であるクララの視点で語られます。
    最初は聞き慣れない用語が多く出てきて少し戸惑いますが、丁寧な筆致を読み進めるうちに、徐々にこの世界の輪郭が見えてきます。

    ハッキリとは描かれていませんが、科学技術が進歩しすぎたことで様々な分断が生まれている、そんな「ディストピア」な社会であることが想像できます。

    そんな厳しい世界の中で、常に人に寄り添い、優しくあろうとするクララ。人間よりも、信仰心を持ち続ける彼女の方が、よほど人間味を感じられる点がとても印象的でした。最後にクララが見出した、「人間を人間たらしめるものは何か?

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    2026年01月17日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    ノーベル文学賞を受賞したカズオイシグロ氏のデビュー作とのことです。
    今イギリスで生活している女性の人生について、戦後の長崎で生活していた時の記憶を交えて描かれています。

    「遠い山なみの光」というタイトルは、主人公の女性の記憶にある戦後まもない長崎の風景と当時の将来への希望を表したものであると思います。

    ストーリーですが、主人公の悦子はかつて戦後まもなくの長崎に夫と二人で生活していて、初めての子供を妊娠して幸せに暮らしていました。女の子を出産後、理由は描かれていませんが当時の夫とは別れ、二人目のイギリス人の夫と共に娘(景子)を連れてイギリスに渡り、現在はイギリスの田舎で生活しています。

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    2026年01月13日