カズオ・イシグロのレビュー一覧
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英国貴族のダーリントン卿と、その名家に仕える執事のスティーブンス、ミスケントンの3人を中心とした物語です。スティーブンスの回想録になっていて全て口語調で書かれています。そのため読みやすく、当時のダーリントン家で行われている会合や執事として働いている情景が鮮明に浮かんでくるため、没入感が素晴らしかったです。とにかく真面目で堅物なスティーブンスの人柄も良い味が出ています。
この物語の最大の魅力としては、3人ともが自らの「人生」と深く向き合っていることです。それぞれが自らの信念のもと進む道を決断・選択しているのですが、上手くいかずに後悔、そして苦悩・・・といったシーンが描かれています。そのため、「 -
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ネタバレ主人公の女性は、本当にできた人だと思った。舅にも優しく、逆らわず、古い価値観にとらわれていることも受け入れて相手を立てている。自分勝手な知り合いの頼みごとも断らず、わがままな言動にも怒らずに付き合う。お金まで貸してあげる。とにかく怒るということがない。そういう姿に「なんてできた人なんだろう」と思った。
でも、今の彼女の状況を知ると「あれ?」と思う。離婚し、外国人と再婚している。ピアノ教師には意地悪な嘘までつく。あの時、舅に合わせていたのも本心じゃなかったのかもしれない。夫との離婚の理由も、恵子に何があったのかも明かされないままだ。
それでも、ニキの新しい価値観には理解を示していて、そこには相変 -
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ネタバレ読み終えた正直な感想は、「しんどい」だった。
物語は主人公の一人であるキャシーの語りで進む。
キャシーの主観での語りという不安定さもあるし、端々に小さい違和感があったり、「ご存知ですよね?」という感じでサラッと語られる怖い事実があり、読んでいて「これ、この中の世界はどうなってるの?」と思わされて、まるで見通しの悪い霧の中にいるようだった。
人間関係の描き方が細かくて、人間の嫌で面倒なところがすごく表されている。
最後に「しんどい」と思ったのは、救いが無いからだ。
運命は決まっていて、希望が見えて抗ってみようとするけど、やっぱり運命に逆らえない。
無力感、脱力感に襲われる読後感だった -
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この小説を読み終わった後で、何か大きなものに突き放され、しかしすがるような気持ちで思ったことは、「キャシーの人生を意味づけたものは何か」ということである。
小説を読み終わると、このキャシーの回想は、トミーとルースの提供が完了した後に、一人おそらくどこかのセンターの病床でなされたものであることが分かる。
そこでキャシーは過去への未練が全くない。キャシーを意味づけるものは、例え臓器が提供され肉体が完了しても、普遍に残る3人の記憶。そして、例え2人が既に失われたとしても、記憶の残る限り、それを否定する必要はないという矜持である。
小説の最後で、キャシーは「甘え」と称して一度だけその記憶を変容さ -
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ネタバレある屋敷に長年執事として勤めた人物の回想と現在、これからの話。
屋敷の主が亡くなり、スティーブンスは新しい主人の執事となったが、ノリがうまく合わずジョークすらうまくできないと思い悩んでいる。その主人の勧めで小旅行をすることなり、屋敷が全盛を誇った頃に同じ屋敷で働いていた元女中頭のミス・ケントンに会いに行くことになる。
昔の回想と今を行き来しながら、スティーブンスが色々なものを犠牲にして、重きを置いてきた品格とは何だったのかを問う内容になっている。
相手への配慮というか直接的な表現を避ける独特な言い回しで、訳文なのにとてもイギリスっぽさを感じる。
人によって好き嫌いはあるかもしれないが、個 -
「わたしを離さないで」について
ノーベル賞作家のカズオ・イシグロが端正な筆致で綴る、ある女性の人生の物語。
提供者を慰める介護人の職に長くついていた女性。彼女が職を辞めるにあたり、自分のこれまでの人生、特に生まれ育ったヘールシャムで仲間と過ごした日々を回顧する。
提供者、介護人など説明なく出てくる言葉の意味が、女性の回想から次第に明らかになってくるにつれ、世界の残酷な姿が浮かび上がってくる。
この世界の真実は、SF小説のファンならばすぐに見当がついてしまうだろう。
読みどころは、むしろ小説としての巧さ、人間描写の厚みの部分だ。大きな状況に翻弄される主人公たちが、小さな人間関係にすがる姿がなんとも哀しく映るのだ。
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ネタバレ初めて読んだカズオ・イシグロ作品です。
自分が非常に遅読なのもあり、主人公であるクララの(おそらく瞳の)「箱」で描写される風景を想像をするのに時々苦労してゆっくり読んでいました。
少年少女の心に寄り添い支えるための人工親友=AF(Artificial Friend)であり本作の主人公でもあるクララ。
彼女の目を通して一人の少女とその周りのことが語られていきます。
「向上措置」やそれに関係する差別ともいえる風景などが垣間見えるディストピアのような世界観。
クララが寄り添う少女ジョジーに忍び寄る死の影、ジョジーの母親クリシーの穏やかならぬ心、ジョジーの親友で措置を受けていないリックの将来・・ -
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さぁ、どうしよう?
ブッカー賞である
ノーベル文学賞である
お前らみたいなもんは、どうせこの世界的名作は敷居が高いだろうから、読んだ気になるレビューを書いてやろうかと思ってはみたが、外気温が35度を超えているので、ちょっと無理かも
語り手はイギリスの著名人に仕える「執事」のスティーブンス
このスティーブンスが、昔の同僚に会いに行く小旅行の中で、その同僚との思い出なんかを思い出しながら「過去語り」をするというストーリー
まずは控えめな語り口ながら、わたし仕事出来ますよ感を全身から発してきます
はいはい、一流の「執事」なんですね、え?一流じゃなくて超一流?あーそうね、そうですね、超一流の「 -
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三宅香帆さんのYouTubeで、一番好きな作家がカズオ・イシグロと知り、読む順番のおすすめとしてはこの「日の名残り」が一番目ではないんだけど、とりあえず家に積んであったのでこれから読んでみることに。
だって「あの文芸評論家」の三宅さんが一番好きな作家なんて言われたら、読むしかなくない?!笑
YouTubeで三宅さんが言われていた「信頼できない語り手」って何のこと?と思っていたんだけど、これを読んで体感した。
語り手であるイギリスの執事、スティーブンスのバイアスがかかりまくりで話が進み、「偏ってるな〜」とは思いながらも、読者はしっかり中立的に、客観視しながらストーリーを追えるから不思議。