カズオ・イシグロのレビュー一覧
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ネタバレ時代は第二次世界大戦の後,1950年代。
執事スティーブンスは、現在はアメリカ人の主人に仕えているのだが、主人が帰省する間、かつて同僚だった女中頭に会いにいくことになった。かつてかれらは、有力貴族ダーリントン卿に仕えていた。物語は大半は、旅中で想起される戦前の出来事(1920〜30年代くらい)が中心となっている。
ダーリントン卿は、政界にコネを持ち、その屋敷は幾度のなく国際政治上の密会の場となっていた。そして、スティーブンスは主人に心酔していた。彼は、ダーリントン卿がいかに偉いか、ということを何度も回想している。
と同時に、そのように高らかに誇張されることによって、その陰にあった(が実 -
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AIが身近なロボットとして富裕層の家庭が手に入れられる時代があるならば、まさにこういう未来があるのではないかと非常にリアリティのある内容を、AI親友ロボットの一人称視点で語られる物語。
今の世のAIが質問に何とか答えようとして情報を寄せ集め嘘をついてくることや、よく想像される人に取って代わるというような、興奮性の刺激となる流れでない。淡々と、静かに、しかし確かな川底に流れる熱さをもって、世や人間の美しさや不思議さ、愚かさ、差別、またAIのこころや信仰のような思考の波をとりあげていく。
冒頭で、ショーウィンドウにいるAIロボットのクララが “コーヒーカップのご婦人とレインコートの老人” を見、 -
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ネタバレなんて悲しい話なのか、と思いながら読んだ。主人公であるキャシーらは、臓器提供のために育てられたクローン人間である、という設定はそれ自体大変ショッキングな内容だが、読者としては、物語が進むにつれ、直接な言及はなくともなんとなく察せられるようになっていて、いつの間にかそれを知っている、ということになっている。それはまるで、主人公たちが、知るともなしにその事実を知って、いつのまにかその事実を受け入れているというストーリーをなぞっているようだ。そういう体験を、実に周到に用意しているように思う。そして、そのこと、つまり、自分たちがいつのまにかその事実を受け入れてしまうということが、とても残酷なことだと気
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子供の良きAF(人工親友)になるべく開発された人型AIクララを語り手に、病弱な少女ジョジーとの出会いから別れまでが描かれる。
クララは観察眼に優れ勉強熱心で優秀なAFだけど、人の心の機微には疎く淡々とした言動の描写からやはり人間とは違う存在なのだと改めて感じさせられる。観察と学習を繰り返した末に、人の心や感情は模倣できるのか。
終盤、人間に作られた存在であるクララが文字通り自身を犠牲にして主人であるジョジーを救おうとする健気さに心打たれた。
AIは人間の道具なのか、パートナーなのか。心とは、優しさとは。
近い将来、こんな未来がくることもあり得るのだろうかと考えさせられる結末だった。
機械が -
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英国貴族のダーリントン卿と、その名家に仕える執事のスティーブンス、ミスケントンの3人を中心とした物語です。スティーブンスの回想録になっていて全て口語調で書かれています。そのため読みやすく、当時のダーリントン家で行われている会合や執事として働いている情景が鮮明に浮かんでくるため、没入感が素晴らしかったです。とにかく真面目で堅物なスティーブンスの人柄も良い味が出ています。
この物語の最大の魅力としては、3人ともが自らの「人生」と深く向き合っていることです。それぞれが自らの信念のもと進む道を決断・選択しているのですが、上手くいかずに後悔、そして苦悩・・・といったシーンが描かれています。そのため、「 -
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ネタバレ主人公の女性は、本当にできた人だと思った。舅にも優しく、逆らわず、古い価値観にとらわれていることも受け入れて相手を立てている。自分勝手な知り合いの頼みごとも断らず、わがままな言動にも怒らずに付き合う。お金まで貸してあげる。とにかく怒るということがない。そういう姿に「なんてできた人なんだろう」と思った。
でも、今の彼女の状況を知ると「あれ?」と思う。離婚し、外国人と再婚している。ピアノ教師には意地悪な嘘までつく。あの時、舅に合わせていたのも本心じゃなかったのかもしれない。夫との離婚の理由も、恵子に何があったのかも明かされないままだ。
それでも、ニキの新しい価値観には理解を示していて、そこには相変 -
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ネタバレある屋敷に長年執事として勤めた人物の回想と現在、これからの話。
屋敷の主が亡くなり、スティーブンスは新しい主人の執事となったが、ノリがうまく合わずジョークすらうまくできないと思い悩んでいる。その主人の勧めで小旅行をすることなり、屋敷が全盛を誇った頃に同じ屋敷で働いていた元女中頭のミス・ケントンに会いに行くことになる。
昔の回想と今を行き来しながら、スティーブンスが色々なものを犠牲にして、重きを置いてきた品格とは何だったのかを問う内容になっている。
相手への配慮というか直接的な表現を避ける独特な言い回しで、訳文なのにとてもイギリスっぽさを感じる。
人によって好き嫌いはあるかもしれないが、個 -
「わたしを離さないで」について
ノーベル賞作家のカズオ・イシグロが端正な筆致で綴る、ある女性の人生の物語。
提供者を慰める介護人の職に長くついていた女性。彼女が職を辞めるにあたり、自分のこれまでの人生、特に生まれ育ったヘールシャムで仲間と過ごした日々を回顧する。
提供者、介護人など説明なく出てくる言葉の意味が、女性の回想から次第に明らかになってくるにつれ、世界の残酷な姿が浮かび上がってくる。
この世界の真実は、SF小説のファンならばすぐに見当がついてしまうだろう。
読みどころは、むしろ小説としての巧さ、人間描写の厚みの部分だ。大きな状況に翻弄される主人公たちが、小さな人間関係にすがる姿がなんとも哀しく映るのだ。
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ネタバレ初めて読んだカズオ・イシグロ作品です。
自分が非常に遅読なのもあり、主人公であるクララの(おそらく瞳の)「箱」で描写される風景を想像をするのに時々苦労してゆっくり読んでいました。
少年少女の心に寄り添い支えるための人工親友=AF(Artificial Friend)であり本作の主人公でもあるクララ。
彼女の目を通して一人の少女とその周りのことが語られていきます。
「向上措置」やそれに関係する差別ともいえる風景などが垣間見えるディストピアのような世界観。
クララが寄り添う少女ジョジーに忍び寄る死の影、ジョジーの母親クリシーの穏やかならぬ心、ジョジーの親友で措置を受けていないリックの将来・・