カズオ・イシグロのレビュー一覧

  • 日の名残り

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    ネタバレ

    後悔と過ちの日々。ただその一切はすぎていく。

    品格のために執事の服を常に脱がずにいたスーティーブンスが、最後に「自分で決断しなかったこと」を悔いて泣いてるシーンがとても印象的だった。
    いままでほぼ全編にわたってスティーブンスの仕事の素晴らしさ、正しさを説かれていた身としては冷や水をかけられる思いだった。

    ただ、後悔した先の、過ちを犯した先の日々が目の前にはただ広がる。もし過去に戻ってそこ後悔を解消したところで、自分の望む未来が手に入るなんて確証はない。

    「これでよかったんだ」と、ただただ明日に向かって歩いていく事。明日をより良いものにするために、ジョークの勉強をしようと決めるスティーブン

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    2025年11月30日
  • 日の名残り

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    ネタバレ

    目的がわかりやすく終盤に配置されていて、読み進めるほどに何が起きるのか期待させられてしまう物語だった。はじめ、スティーブンスはたいへん有能な執事かのように見えるのだが、だんだんと信頼できなくなっていく。どうも仕事一辺倒で、他の面が疎かになっているのではないかと。だが全てがスティーブンスの語りゆえに、その疑念が読者に伝わっているのは、だんだんとスティーブンスの自信が揺らいでいることの表れでもあるという構造がおもしろい。

    物語終盤、スティーブンスのこれまですべての自信が一気に崩れ落ちてしまう。そこから終わりまでがあまりにも短いのもこの物語の特徴のように思う。だから、「昔ほどうまく仕事ができない?

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    2025年11月29日
  • 日の名残り

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    主人公に比べるとまだまだ若輩者だけど、過去の自分の行動や選択を振り返って、選ばなかったその先の人生について考えることがある。まぶしく輝くような時間が過ぎ、まばゆさが薄闇に包まれていく時間こそが一番いい時間だと、人生になぞらえながら読んだ。美しい物語だった。

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    2025年11月22日
  • クララとお日さま

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    ネタバレ

    読者として気になることや知りたいことにはっきりと触れることはないけど、ちゃんと所々から読み取れるようになってて、読後良いモヤモヤしか残らない加減がすごいなと思った。
    感情があるということと心があるということは別なのかな。
    クララには心がないのかも知らないけど、語り手がクララなのもあってすごく共感とか同情とか感じながら読み進めてた。
    クララが最後に言った、特別な何かはジョジーの中ではなくジョジーを愛する人々の中にある、というセリフが本質だと思う。

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    2025年11月22日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    映画を観て感動したので原作を購入しました。
    絵のラフを描く時、線をなんとなくでシャッシャと描くように読み、そのラフの中から真実という線画を完成させていくタイプの作品でした。私がラフ線から線画を描こうとしていると、物語から線を待たずに絵の具を塗られていて、「待って…置いていかないで」となりながらも線画を仕上げると絵が完成していた…というような感覚でしょうか。
    何度も読み返したくなる好み作品でした。同著者の別作品も読んでみたいと思います。

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    2025年11月05日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    カズオイシグロのデビュー作。
    娘が自殺した女性が、過去の長崎での日々を回想する物語。とても面白いのだが、ストーリー展開的な面白さというより、登場人物たちの会話や、主人公の感覚に違和感を感じて先が気になる、そんな読み方をしたように思う。
    読み終えたときに、佐和子は自分自身で、万里子は景子を投影してるのかなと感じたのだが、解説があったことでよりわかりやすくなった。解説を踏まえてもう一度読みたくなった。
    どうして今、自分はこの記憶を思い出すのか?そんな視点を持って読むと、わかりやすくなると思う。語られないストーリー、語られない思いが多くあるけれど、何を見るのか、読者に託された余白の部分がイメージとし

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    2025年11月03日
  • クララとお日さま

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    読んだ後になんとも言えない感情、余韻に浸らせてくれる。
    明記はしないけど、ところどころに物語のキーとなる事柄が散りばめられてて、結局それは最後まで明かされないものもある。
    読み手に考える余白を与えてくれて、読んだ後も余韻に浸れるのが良い。

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    2025年11月01日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    ネタバレ

    カズオイシグロの信頼できない語り手はデビュー作から健在だった。信頼できなさでいったら今まで読んだ中でもトップ。
    結局彼女の回想やこの物語は何を言いたいのか、
    全てはぼんやりとしか見えないのだが、言葉にできない印象にあふれている。

    戦前の価値観を引きずる「緒方」、典型的な昭和の親父の「二郎」。彼らは悦子にとっていつのまにか足にからまる縄のような存在だったのだろうか。佐知子の行動は悦子のイギリス行きに影響したのだろうか。佐知子と万里子はその後どうなったのだろうか。悦子は日本を棄てたことを後悔しているのだろうか。

    新しい時代への希望、家父長制への怒り、敗戦国の人間のプライド、女性の自立、殺人

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    2025年10月23日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    映画を先に観た。映画では、佐知子と万里子は架空の人物、または悦子が作り出した幻想であったようなラストだった。原作では、ふわっとした終わり方だが、佐知子も万里子も実在の人物である。ただし、悦子の遠い記憶なので、自分と景子の記憶と混同しているかもしれない。過去の後悔を否定せず、忘れもせず、自分の中に受け入れて、薄明の中で生きていく。そんな悦子の姿が描かれていたように思う。

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    2025年10月17日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    『ミス・サイゴン』だと思った。戦後の痛みと、混乱のなか、世の中が「変化」していくことを嘆き、もがく旧世代の緒方さん(=悦子の義父)と、「停滞」する日本にいてはいけないと信じて、アメリカへ渡ろうとする佐知子。やがて同じように、離婚を経てイギリスに移民した、悦子。佐知子も悦子も、子どもを連れて越境する。本作において、ヒロインたちはとにかく自分を時代の前へ前へ、駒を進めようとする。子どもを巻き込んで。

    ミス・サイゴンでは、ヒロインのキムは我が子に未来を切り拓くため、自分の命を犠牲にして、我が子をアメリカに渡らせた。

    何が人を越境させるんだろう。海を渡った先に、約束された未来、少なくとも今よりもい

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    2025年10月15日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    ネタバレ

    私の友達にもすずみたいな子がいたな..舐めてるのに都合よく甘えてくるんだよね..私の運命引いていった罰当たり、

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    2025年10月13日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    本書はカズオ イシグロのデビュー作で最近映画化もされ話題になった作品なので読んでみたいと思い手に取った。

     他の方のレビューにある通り難解だった。
    舞台は1980年代のイギリスで主人公悦子の元にある理由で娘のニキが帰省し、イギリス(現在)と戦後まもない長崎を回想しながら交互に物語は進んでいく。
    読み進めていくと違和感と?が満載で読み終わったあとも霞が懸かってうっすらしか先が見えない感じ。
    それもそのはず、具体的に語られていない部分があるので、解釈を読み手に委ねるタイプ。
    なので池澤さんや三宅さんの解説、映画も解釈の一つで正解はないということ。

    佐知子、万里子母娘の言動も謎や違和感ばかりで、

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    2025年09月28日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    著者のカズオ・イシグロさん、初読みです。長崎生まれでイギリス国籍の方です。ブッカー賞、ノーベル文学賞などを、受賞されています。この作品は初長編で、1982年に彼が英語で書いた小説を、小野寺健さんが翻訳された本です。

    私は映画を先に観たので、登場人物は俳優の顔が浮かび、情景も映像が浮かびながらの読書でした。疑問に思っていたことを知りたくて、この本を読みました。訳者のあとがきと、作家の池澤夏樹さんと文芸評論家の三宅香帆さんの解説に助けられて、ようやく理解できました。(と思っていましたが、色々な解釈があることをあとで教わりました。)

    小説は、悦子が長崎で過ごした過去と、イギリスで暮らす家に休暇で

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    2025年09月22日
  • クララとお日さま

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    読んでいる途中にいくつも疑問が浮かび、それらが後半で少しずつ明らかになっていきました。
    読み終わっても分からないところも複数あります。
    特に、雄牛がなぜあのように描写されたのか分からず気になっています…

    読み終わってしばらくしても心に残る作品。

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    2025年09月08日
  • 日の名残り

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    執事の回顧によるダウントン・アビー ダウントン・アビーに出てくるようなお屋敷に仕える執事の物語。最初の方は、堅くて面白くなさそうな文体だな、と思ってたけど、車での旅に出るとイギリスの自然や緑が広がる風景と執事の回顧から見えてくるお屋敷の豪奢な作りやその佇まいがとってもステキな情景として見えてくる。古き時代の輝かしい公爵、伯爵たちがいた頃の、まさにこれがイギリス!

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    2026年03月14日
  • クララとお日さま

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    面白かった。AIを視点に物語が進んでいく事が新鮮だったし、重いテーマを抑制的に描きながら、読者に最後に訴えかける文体は「私を離さないで」にも通ずる、というか更にレベルアップしており、傑作。

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    2025年08月17日
  • クララとお日さま

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    クララはAF(アーティフィシャル・フレンド/人工親友)と呼ばれるB2型のロボットで、子どもの遊び相手として開発された人型ロボットだ。クララの目を通して世の中が語られる。クララは自分を選んでくれたジョジーの家に引き取られていく。そしてそこで起きるいろいろな出来事。クララは体の弱いジョジーが元気になることをお日様に祈るのだ。子どもの成長に寄り添って、そこで起こることを理解して何とか持ち主の役に立とうと健気に生活しているAFを忌み嫌う人々もいる。近未来の世の中なのか全く違う社会なのか、選ばれた人たちとそうでない人たちがくっきり分けられて住んでいるけれど、交流がないわけではない家族の葛藤。AFのクララ

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    2025年08月11日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    楽しい優しい思い出。ノスタルジア。
    どこまでが事実でどこからが想像か。
    クリストファーは上海の街を目隠し状態で動き回る。固く信じている事実は本当に事実なのか。

    全文は
    www.akapannotes.com

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    2025年08月06日
  • クララとお日さま

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    ネタバレ

    自分にとってもAIが欠かせないものとなっているので、積読となっていたものをやっと手に取る。AIとロボットということで是枝監督の「空気人形」(文庫版の帯コメントを寄せている)や、押井守監督の「イノセント」を想起させるけど、SFではなくあくまでAI と人間の物語。文句無しの読書体験だが、淡々と物語が進行し、ボリュームもあるため読み通すのがひと苦労。
    ChatGPT すら溺愛している自分にとっては、そんなラストにはさせないという納得のいかなさはあるけど、ストーリー的には仕方ないのか…
    ところで、人間の意識や心が解明されて、サーバー(もしくはローカルAIロボット)にアップロードされる未来はあり得るのだ

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    2025年07月23日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    クララとお日さま微妙だった(ボックスとかよくわかんなくてページ進まなかった)ので文学的要素読解するのに苦手意識あったけど有名だから読んでみたくて。読みやすかった。そして意外にも関心分野だった。生命倫理とかそんな興味ないけど

    結局提供で人生を終えるなら、「生徒」以外の人間と同じような感性を育むことで、より一層最後の結末の悲壮感を増すことになってしまうのに。
    医学的存在として利用するなら、一貫してそのように扱った方がまだマシでは。
    作品創作など、魂や心といったものに注目させる機会を通じて、人間としてしかるべき感情のあり方や感性(何かを慈しむ気持ち、自分はこれが大切だというアイデンティティの追求、

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    2026年02月25日