カズオ・イシグロのレビュー一覧

  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    ネタバレ

    2017年12月7日ストックホルムでの
    スピーチを左ページに英語、右ページに翻訳
    を載せた本。

    1979年秋24歳から始まり、子供時代、
    自分の心の中の日本とそれを書くこと、
    プルーストや歌手などから作品に影響を受けたり、
    人間間の関係を書くことの大切さに
    気付いたり、現在の世界の状況を憂い、
    自分がその一助となれるか、若い作家への
    期待と希望、文学は多様になるべき、など
    が語られています。

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    2020年10月30日
  • 日の名残り

    mac

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    人生の黄昏

    一部ご紹介します。
    ・「わしはあんたの言うことが全部理解できているかどうかわからん。
    だが、わしに言わせれば、あんたの態度は間違っとるよ。
    いいかい、いつも後ろを振り向いていちゃいかんのだ。
    後ろばかり向いているから、気が滅入るんだよ。
    なんだって?昔ほどうまく仕事ができない?
    みんな同じさ。いつか休む時が来るんだよ。
    わしを見てごらん。隠退してから、楽しくて仕方がない。
    そりゃ、あんたもわしも、必ずしももう若いとは言えんが、それでも前を向き続けなくちゃいかん」
    「人生楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。
    みんなにも尋ねてご

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    2022年09月30日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

    mac

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    人生の尊厳

    一部ご紹介します。
    ・「あなた方は教わっているようで、実は教わっていません。
    形ばかり教わっていても、誰一人、本当に理解しているとは思えません」
    「あなた方の人生はもう決まっています。これから大人になっていきますが、あなた方に老年はありません。
    あなた方は一つの目的のためにこの世に産み出されていて、将来は決定済みです。ですから、無益な空想はもうやめなければなりません」
    「みっともない人生にしないため、自分が何者で、先に何が待っているかを知っておいてください」
    ・「絵も、詩も、そういうものは全て、作った人の内部をさらけ出す。作った人の魂を見せる」
    ・すぐにも行動を起こさないと、機会

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    2022年09月30日
  • 浮世の画家〔新版〕

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    ネタバレ

     こういう感想文を投稿するのは初めてなのでご容赦ください。以下の感想は読み終わったばかりの勢いで書いています。


     最初から最後まで、画家・小野の視点で描かれている。『価値観の変動』と『生き方』に焦点を当てた作品だと感じた。私がこの本から受け取ったメッセージを以下に示す。

    《価値観は時代とともに移ろい行くものだから、誰しも後になって自らの過ちに気がつくかもしれない。しかし、『自分の信念に従って、全力で生きた』ならば、それの信念が間違いであったとしても後悔はしないであろう。》


     また、この作品では、とかく何かを明言するのを避ける傾向にある。しかし、多数の場面を組み合わせて、人の心の動きを

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    2020年05月05日
  • 充たされざる者

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    この本はすごい。ほとんどもしくはすべての登場人物が自分のことしか考えられない。もどかしい思いで何度も本を閉じたのだが、読みきったあともう一度それぞれのエピソードを読んでみると、噛めば噛むほど味が出てくる。吸い尽くせないほどに。頑張って読み切る価値がある。

    自分は果たして本当に誰かのことを知りたいと思ったことがあったのか? そう思っていたと感じていたときでも、ただ自分のことを誰かがどう思っているかを知りたかっただけではなかったのか? 時に誰かに優しくすることはできるが、結局いつも自分のことばかりだったんじゃないか? そんなことを思う。

    最初は荒唐無稽で夢のような世界の話だと思うのだが、読み終

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    2020年04月19日
  • 夜想曲集

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    なんかこう切ない雰囲気がとても好き。

    イシグロさんって、淡々と進む情景描写に、綺麗な色の哀愁を乗せるのがとても上手な作家なんだと思う。たぶん、情景と感情の絵をいつも思い描いている人。うまく色が溶け合わさせて、読者を癒してくれる。
    この本はそれがすごく出てる。

    サンマルコでいつかこんな音楽家に会えますように。

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    2020年03月28日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    イギリスと上海(中国)の間を行き交い、事件解決と共に、アイデンティティを追求する男の物語。

    「戦争」が絡む文学を手にすると、そこに人間への希望と失望を必ずやみることになる。
    そして、戦争と平和が、こんなにも「隣人」であることに衝撃を受ける。

    本を閉じたとき、嗚咽ではなく、心の襞を静かに潤わす涙が出た。

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    2020年03月17日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    後半からは、一気に最後まで読みました。
    というより、読まずにはいられませんでした、先が気になって。

    どういったらよいかわからない気持ちです。
    幼い日の、当時の自分には責任はないし、気付くはずもない小さな判断が自分と周囲の人の運命を変えてしまったかもしれないという罪悪感、無力感。
    正義感、責任感、向上心、愛情を持っていたからこそ訪れてしまった家族の悲劇、知人の悲劇、世の中の悲劇…。そして、それを利用して生き延びる人々もいる。

    ひとつの事実によって、これほどまでに、自分の思い出や自尊心や家族や知人への印象・想い、経験したことの意味が変わってしまうということがあるのでしょうか。
    自分がこの主人公

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    2019年11月24日
  • 浮世の画家〔新版〕

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    2回目。いつも素晴らしい小説をありがとう。

    初めて日の名残りを読んだ時はたまげたけど、テーマほんとうにそっくり。
    日の名残りの方が華やかさと鮮やかな色彩感があって好きだけど、地味で淡々としていて暗いこちらも良い小説。
    主人公のやるせなさや辛さも、周囲の気まずさや不満も、どちらも手に取るようにわかるから、読んでて少ししんどくなる部分すらあった。


    今主人公を責める周りの人たち、すなわち二人の娘や素一や三宅家の人たちは、戦争中は何を考えてどう行動してたの?
    主人公が先陣切ってやったことが戦後的価値観に照らし合わせれば良くない行いだとしても、当時彼ら周囲の人たちはそれを支持して尊敬したんじゃない

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    2019年07月28日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    カズオ・イシグロの小説を読んでいるときのこの胸をしめつけられる感じは結局なんなのだろうか、と考えてみると、個人的にはやはり「取り返しのつかない過去」について、否応なく気づかされることの切なさではないかと思うのだ。
    「日の名残り」にせよ、「私を離さないで」にせよ、描写は基本的に「回想」なのだが、その中で頻繁に「あれは今思えば」とか「後で考えてみると」といった説明が差し込まれる。そしてそれがストーリーを追うごとにひたひたと積み重なっていく・・・

    「わたしたちが孤児だったころ」は第二次大戦期前夜に上海で少年時代を過ごした主人公が、かの地で次々と失踪した父と母とを探す物語。孤児として母国イギリスに戻

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    2019年01月03日
  • 忘れられた巨人

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    やはりカズオ イシグロの作品はとても面白いですね♪
    記憶が霧に消されている時代の老いた夫婦が息子を訪ねる旅に出るところから始まった物語は不思議な臨場感を伴いながら読者をブリテンの神話世界に誘うけど門外漢の私達にも違和感無くいにしえの世界を旅させて呉れる。「忘れられた巨人」との邦題になっているけど原題(埋められた とか葬られた)のほうがピッタリな気がする。それにしても面白かった!

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    2018年12月14日
  • 充たされざる者

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    巻末の解説によると、発表当初から賛否が大きく分かれたという本書。デビューからそれまでに寡作ながらいずれも高い評価と栄誉ある賞を得た作家が、本当に書きたかったものを書いたそうです。

    出だしから登場する人たちの長いセリフ、それに続く非現実な場面転換。序盤から、読み進める側は、この奇妙な小説をどう受け止めていいのか、戸惑います。否定的な感想を持つ人は、おそらくこの戸惑いを消化できなかったのではないでしょうか。そうした気持ちも当然と言えるほど、風変わりな小説です。

    自分は、その風変わりさが、ルイス・キャロルのファンタジー小説に通じるものとして呑み込み、非現実な進行も含めて楽しむようになり、中盤から

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    2018年11月01日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    これは驚いた。今年一番の当たり本。
    時は1920〜30年代。イギリス人の探偵クリストファー・バンクスはロンドンの社交界で有名になっていく敏腕な探偵。彼は幼少期を上海の租界で過ごし、隣に住んでいた日本人アキラとよく遊んでいた。健やかに育っていたはずの子供のクリストファーはが、とある日を機に両親から引き離されてしまう。ここから話が急展開。。。
    人種、恋愛、戦争、子供の成長、自我、アヘン、そして親の愛。色々なものが詰まったサスペンス小説。

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    2018年08月19日
  • 充たされざる者

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    深い動揺と混乱を得た。
    夜見る夢をこんなにも緻密に具現化したものは見たことがない。恐ろしい。悪夢である。

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    2018年01月19日
  • 忘れられた巨人

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    忘れられた巨人

    ともかく、読んで下さい
    全ての描写に感動する筈です

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    2017年10月12日
  • 充たされざる者

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    カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』が面白いと話題なので読んでみようかと思ったのだが、そう言えば『充たされざる者』が未読だったのを思い出して、読んでみた。

    時間も空間も歪んだ世界で、登場人物は何重にも重なり、悪夢のような(というか悪夢そのものの)不条理が延々と続くが、個々のエピソードが魅力的でグイグイと読ませる。大きな話の筋は世界的ピアニストのライダーが「町の命運は音楽藝術の解釈次第にかかっている」と信じられている町に招かれて演奏と講演を行うというストーリー。その枝葉として、やがて彼の義父であることが明らかになるポーターのグスタフとその娘ゾフィーとの不条理な関係、その関係と相似する名指揮者グロ

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    2018年05月17日
  • 充たされざる者

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    丁寧な物言いなのに無遠慮な、愚かしい悩みを延々と聞かされる。昔だったらつまらない、と読めなかっただろう。愚かしい悩みが他人事でなくなってくる歳だから読めたと思う。

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    2016年09月17日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    まずページを開いた印象、文字多い。。端から端までびっしりと文字で埋め尽くされている。

    正直かなり読み辛かったが、ページをめくる手が止まらないという不思議な読書体験。

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    2025年12月03日
  • クララとお日さま

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    ネタバレ

    クララはユア・フォルマの通常アミクスのようではなく、自律的に思考する感情のある存在だったので、あのラストにはうーんとなってしまった。そんなことある?
    ラストでクララが廃棄場にいる時に店長さんが話しかけてくるシーン、あれってこれから廃棄されるクララたちAFにまた会えて嬉しいってどうなの。普通感情移入しない? ジョジーも、本当の親友って言いながらこれから廃棄されるクララに手を振りますか?
    人と見分けのつかない形をしているのかはわからなかったけれど(登場人物たちがクララをAFだと迷いなく判断していたので割とメカっぽいのかも?)、今まで幼少期に寄り添ってくれた存在をここまでぞんざいに扱えるものだろうか

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    2025年12月03日
  • 日の名残り

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    ネタバレ

    後悔と過ちの日々。ただその一切はすぎていく。

    品格のために執事の服を常に脱がずにいたスーティーブンスが、最後に「自分で決断しなかったこと」を悔いて泣いてるシーンがとても印象的だった。
    いままでほぼ全編にわたってスティーブンスの仕事の素晴らしさ、正しさを説かれていた身としては冷や水をかけられる思いだった。

    ただ、後悔した先の、過ちを犯した先の日々が目の前にはただ広がる。もし過去に戻ってそこ後悔を解消したところで、自分の望む未来が手に入るなんて確証はない。

    「これでよかったんだ」と、ただただ明日に向かって歩いていく事。明日をより良いものにするために、ジョークの勉強をしようと決めるスティーブン

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    2025年11月30日