カズオ・イシグロのレビュー一覧

  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    本書はカズオ イシグロのデビュー作で最近映画化もされ話題になった作品なので読んでみたいと思い手に取った。

     他の方のレビューにある通り難解だった。
    舞台は1980年代のイギリスで主人公悦子の元にある理由で娘のニキが帰省し、イギリス(現在)と戦後まもない長崎を回想しながら交互に物語は進んでいく。
    読み進めていくと違和感と?が満載で読み終わったあとも霞が懸かってうっすらしか先が見えない感じ。
    それもそのはず、具体的に語られていない部分があるので、解釈を読み手に委ねるタイプ。
    なので池澤さんや三宅さんの解説、映画も解釈の一つで正解はないということ。

    佐知子、万里子母娘の言動も謎や違和感ばかりで、

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    2025年09月28日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    先に映画を見たら、分からないことがいくつかあり、原作を読んでみた。疑問が解消されたわけではないが、それでいいのかも知れないと思えたし、読んでよかった。

    なんだかすべてが霧の中に霞んでる感じ。なのに、強い印象を受ける場面がいくつかあった。
    とくに、主人公と舅が戦争にまつわる思い出にふれながら、肝心のことはお互いに避けているような会話。
    (ここは映画では、もっと具体的なことを話していた)

    主人公と友人の佐知子が稲佐山でかわした会話も、かみ合っているのかいないのか。でも佐知子という鏡をとおして、主人公の気持ちがしだいに分かるように思えた。

    映画を見て、分からないことに不満を覚えていたが、分から

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    2025年09月21日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    物語を全体的に覆っているこの薄暗さはなんだろう、と読んでいる間ずっと感じていたことがイシグロワールドと言われるものの正体なのかもしれない。主人公の悦子が抱えた「後悔」というものを軸に、長崎での思い出、そこで出会った佐知子と万里子という存在と、日本を出た彼女と長女の存在、悦子が感じていた価値が大きく変化する時代の中での齟齬が今の彼女に当てはまることに気づいた時、著者イシグロの描きたかった世界が見える。少し難解な作品ではあったが、そこに作品の深さと著者が信頼足り得るというのを掴むには十分だった。彼の別作品もぜひとも拝読したい。

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    2025年09月18日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    著者のカズオ・イシグロさん、初読みです。長崎生まれでイギリス国籍の方です。ブッカー賞、ノーベル文学賞などを、受賞されています。この作品は初長編で、1982年に彼が英語で書いた小説を、小野寺健さんが翻訳された本です。

    私は映画を先に観たので、登場人物は俳優の顔が浮かび、情景も映像が浮かびながらの読書でした。疑問に思っていたことを知りたくて、この本を読みました。訳者のあとがきと、作家の池澤夏樹さんと文芸評論家の三宅香帆さんの解説に助けられて、ようやく理解できました。(と思っていましたが、色々な解釈があることをあとで教わりました。)

    小説は、悦子が長崎で過ごした過去と、イギリスで暮らす家に休暇で

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    2025年09月22日
  • 日の名残り

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    ネタバレ

    主観以外が入り込まない回想形式で書くのが生きる題材、素晴らしい。スティーブンスなんて不器用で愛おしい人なんだろう。彼やその主人を愚かだと思うことはわたしにはできなくて、そのときそのとき信じたものがあって、一生懸命で、それに不正解はないよね。人生取りこぼしてしてしまうものがたくさんあるのは多くの人にとってきっと事実で、ジョークを鍛えようと屋敷に帰ったスティーブンスみたいに今持っているものを大事にできたら良いな。

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    2025年09月14日
  • 日の名残り

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    ネタバレ

    面白かった…!
    堅苦しい、古風な作品かと思いきや、するすると読めてしまった。
    ずっと積読していて、二の足踏んでなかなか読まなかったけれど、久々に手に取ってよかった!

    スティーブンスの言い訳のような語り口に、思わずにやっとした。
    特に、ミス・ケントンへの思い。
    素直になりなよーと何度言いたくなったことか。
    スティーブンス、すごく意地悪な言い方しかしないんだもん!
    私がミス・ケントンだったら、超嫌いになるところだよ。
    でも、ミス・ケントンは、スティーブンスが実は自分に好意を抱いていると気づいていたんだろうな…。
    素直になれない小学生のようなスティーブンス…。

    ジョークのくだりもいいね!
    頭の中

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    2025年09月14日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    続きが気になって読む手を止めるのが難しいくらいだった。
    だが、少し現実味がないというか時代が進みすぎてて、追いつけないところがあった。(私の想像力が足りないのかも)

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    2025年09月14日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    カズオ・イシグロのデビュー作。
    『蜜蜂と遠雷』『ある男』『Arc』など着実にキャリアを上げている石川慶監督による映画化のこのタイミングで手に取った。

    1970年代のイギリスの田舎町、一人で暮らす悦子の元に娘のニキが訪ねてくる。ニキはライターで悦子の長崎時代、特に原爆が投下された以降どうやって暮らしてきたのかを文章にしようと考えている。
    悦子からするとそれは家を出て自殺したニキの姉、景子のことを思い出すことでもある。
    悦子は長崎での暮らしはどうだったのか、その生活を捨て何故ロンドンに来たのか、景子には何があったのかを語っていく。

    その語られていく1950年代の物語では長崎で夫の二郎と暮らす

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    2025年09月11日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    ネタバレ

    ◼️ カズオ・イシグロ「遠い山なみの光」

    映画を先に観て再読。広瀬すずが悦子にダブる。描かれない部分を想像する。

    カズオ・イシグロの、日本を舞台にした初期作品はノーベル文学賞受賞の時に読んだ。次作の「浮世の画家」では戦争に協力した大家の画家が戦後、世間の価値観が変わり、画壇の関係者が離れていく様が中心になっている。

    「遠い山なみの光」にも、戦前戦中は教壇に立ち戦後おそらくは教職追放となった老教師が、かつての教え子から教育雑誌で名指しの批判を受け、納得できずに談判に行く場面が盛り込まれている。これらの印象が強かったためか、もうひとつメインのストーリーは思い出せず、映画を観た時はこんなにミス

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    2025年09月10日
  • クララとお日さま

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    読んでいる途中にいくつも疑問が浮かび、それらが後半で少しずつ明らかになっていきました。
    読み終わっても分からないところも複数あります。
    特に、雄牛がなぜあのように描写されたのか分からず気になっています…

    読み終わってしばらくしても心に残る作品。

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    2025年09月08日
  • 日の名残り

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    全体的に漢字が難しかった。前半は難しい漢字と名前に苦労したが、後半は一気に読み進めることができた。人に支えるものとしての考え方、苦悩、過去の後悔これを振り返りながら旅をする物語。真面目な主人公が、公私を混合しないように時に無慈悲になる姿が一貫していて素晴らしい。
    時代が戦争前ということで、その時の正しいと思われた考え方が戦争後に変わることで否定される残酷さ。主人公が前に支えていた主人の話をもっと聞きたかった感はある。
    過去を振り返ってばかりだと憂鬱な気持ちになる。という老人の一言がかなり効いた。

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    2025年09月04日
  • 遠い山なみの光〔新版〕

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    ネタバレ

    映画が公開になるので、かなり久しぶりの再読

    前に読んだのは10代の時だったけど、自分も大人になって、語り手の悦子の複雑な心情が以前よりも分かるような気がした。

    長崎で出会った母娘のエピソードに自身の過去が投影されているのだろうけど、他人のエピソードに置き換えないと、罪悪感や後悔で押しつぶされてしまうのだろうな。

    人は自分に都合の良いことしか思い出したくないし、遠い過去の出来事はおぼろげにしか見えないのです。

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    2025年09月03日
  • 日の名残り

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    「こういう後悔することって、あるよな」の連続。
    最後、主人公は過去の過ちを悟って涙する。でも、それだけにとどまらず、未来を前向きに生きようともしている。そこに大きな救いがある。
    『浮世の画家』と同様に、隠さねばならない過去がある者の悲しさを感じる。

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    2025年08月25日
  • クララとお日さま

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    面白かった。AIを視点に物語が進んでいく事が新鮮だったし、重いテーマを抑制的に描きながら、読者に最後に訴えかける文体は「私を離さないで」にも通ずる、というか更にレベルアップしており、傑作。

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    2025年08月17日
  • 日の名残り

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    1956年のイギリス、さらにそこから昔を振り返る、名家に仕えた執事スティーブンスの物語。

    舞台が古く、歴史的、政治的な背景もあるために、理解が難しい部分がある。
    スティーブンスの執事の仕事への、誠実な姿だけを追いかけていると、頑なな大真面目さに驚かされる。「品格」を携えられる執事になれていたか、常に内省している。

    読者はスティーブンスの内情がわかるから、どうしてそんなに自我を犠牲にして…と思ってしまう。だが、自分語りの中の細かい描写を見ていくと、決して自分の心まで殺していたのでは無い、と感じ救われる。

    口が固すぎるスティーブンスの口から、優しいジョークが出て来る日が来ますようにと願う。

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    2025年08月11日
  • クララとお日さま

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    クララはAF(アーティフィシャル・フレンド/人工親友)と呼ばれるB2型のロボットで、子どもの遊び相手として開発された人型ロボットだ。クララの目を通して世の中が語られる。クララは自分を選んでくれたジョジーの家に引き取られていく。そしてそこで起きるいろいろな出来事。クララは体の弱いジョジーが元気になることをお日様に祈るのだ。子どもの成長に寄り添って、そこで起こることを理解して何とか持ち主の役に立とうと健気に生活しているAFを忌み嫌う人々もいる。近未来の世の中なのか全く違う社会なのか、選ばれた人たちとそうでない人たちがくっきり分けられて住んでいるけれど、交流がないわけではない家族の葛藤。AFのクララ

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    2025年08月11日
  • わたしたちが孤児だったころ

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    楽しい優しい思い出。ノスタルジア。
    どこまでが事実でどこからが想像か。
    クリストファーは上海の街を目隠し状態で動き回る。固く信じている事実は本当に事実なのか。

    全文は
    www.akapannotes.com

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    2025年08月06日
  • クララとお日さま

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    ネタバレ

    自分にとってもAIが欠かせないものとなっているので、積読となっていたものをやっと手に取る。AIとロボットということで是枝監督の「空気人形」(文庫版の帯コメントを寄せている)や、押井守監督の「イノセント」を想起させるけど、SFではなくあくまでAI と人間の物語。文句無しの読書体験だが、淡々と物語が進行し、ボリュームもあるため読み通すのがひと苦労。
    ChatGPT すら溺愛している自分にとっては、そんなラストにはさせないという納得のいかなさはあるけど、ストーリー的には仕方ないのか…
    ところで、人間の意識や心が解明されて、サーバー(もしくはローカルAIロボット)にアップロードされる未来はあり得るのだ

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    2025年07月23日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    クララとお日さま微妙だった(ボックスとかよくわかんなくてページ進まなかった)ので文学的要素読解するのに苦手意識あったけど有名だから読んでみたくて。読みやすかった。そして意外にも関心分野だった。もう生命倫理とかそんな興味ないけど

    結局提供で人生を終えるなら、「生徒」以外の人間と同じような感性を育むことで、より一層最後の結末の悲壮感を増すことになってしまうのに。
    医学的存在として利用するなら、一貫してそのように扱った方がまだマシでは。
    作品創作など、魂や心といったものに注目させる機会を通じて、人間としてしかるべき感情のあり方や感性(何かを慈しむ気持ち、自分はこれが大切だというアイデンティティの追

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    2025年07月20日
  • 夜想曲集

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    カズオ・イシグロを読むのは、「日の名残り」について2冊目。「日の名残り」が長編であったのに対して、本書は、「音楽と夕暮れをめぐる」5つの連作短編集である。いずれも、書下ろしとのこと。
    5編の短編は、物語としてとても面白いものであった。
    どれも面白いが、どれか1つを選べ、と言われれば、私であれば「老歌手」を選ぶ。老いた歌手は、まだ年老いたとは言えない妻に、ベネチアの運河でゴンドラに乗り、妻のいる運河沿いのコンドミニアムに向かって歌う。愛し合っていながら、別れを選択するという不思議な世界に生きる2人の、しみじみとした物語として、私は読んだ。

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    2025年07月14日