カズオ・イシグロのレビュー一覧
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ネタバレ静かで悲しい話だった。
主人公が半生を振り返る口調がたいへん抑制がきいてきて冷静で、あとルースが嫌なやつすぎて、そして長くて、ページをめくる手が鈍った...けど、ラストスパートのヒリヒリとした切実さは胸に迫るものがあった。運命が悲しいし、やるせないし、おそろしい。
マダムとエミリ先生の、無自覚な残酷さ(むしろ人格者だくらいの自負すらある)、こわい。
ふたりの運動によって主人公たちに豊かな感情が生まれ、そして絶望する。もし大きな変化の波の中にあっても「私たちの人生はこれがすべて」...。変えられない運命なら期待を持たせるような教育自体が悪なのでは?いやそれでも彼らに大切な人とあたたかい記憶ができ -
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ネタバレカズオイシグロの信頼できない語り手はデビュー作から健在だった。信頼できなさでいったら今まで読んだ中でもトップ。
結局彼女の回想やこの物語は何を言いたいのか、
全てはぼんやりとしか見えないのだが、言葉にできない印象にあふれている。
戦前の価値観を引きずる「緒方」、典型的な昭和の親父の「二郎」。彼らは悦子にとっていつのまにか足にからまる縄のような存在だったのだろうか。佐知子の行動は悦子のイギリス行きに影響したのだろうか。佐知子と万里子はその後どうなったのだろうか。悦子は日本を棄てたことを後悔しているのだろうか。
新しい時代への希望、家父長制への怒り、敗戦国の人間のプライド、女性の自立、殺人
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『ミス・サイゴン』だと思った。戦後の痛みと、混乱のなか、世の中が「変化」していくことを嘆き、もがく旧世代の緒方さん(=悦子の義父)と、「停滞」する日本にいてはいけないと信じて、アメリカへ渡ろうとする佐知子。やがて同じように、離婚を経てイギリスに移民した、悦子。佐知子も悦子も、子どもを連れて越境する。本作において、ヒロインたちはとにかく自分を時代の前へ前へ、駒を進めようとする。子どもを巻き込んで。
ミス・サイゴンでは、ヒロインのキムは我が子に未来を切り拓くため、自分の命を犠牲にして、我が子をアメリカに渡らせた。
何が人を越境させるんだろう。海を渡った先に、約束された未来、少なくとも今よりもい -
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この作品は、大きな事件もなく、執事スティーブンスの日常が淡々と描かれていますが、その静けさの中に彼の過去や現在、そしてこれからの人生への深い思索が込められています。
特に最終章では、自らの人生を振り返り、これまでの生き方やこれからの在り方を静かに見つめる姿に強く心を打たれました。
読後、自分自身の人生とも重なり、「これまでの人生は何だったのか」「これからどう生きていくのか」という問いが胸に残りました。
年齢を重ねるほどに、仲間の死や老いに直面し、生きる意味を考える機会が増えます。
ただ日々を過ごすだけでは満たされないもどかしさや、今の現状を変えるにはなにか怖気付いてしまうという思い―― -
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ディストピア的世界。
大きくネタバレになるけど、臓器ドナーのためにクローン人間として生まれ、育てられた人達の話。
やがて臓器は提供され、使命を終えていく。
正直、SFとしては、突っ込みどころが色々あったり、胸糞悪い展開で、決して好きな物語ではなかった。
カズオ・イシグロの作品を初めて読みましたが、しかし、なんと人の心情を読み、描くのが上手なんだろうと思いました。
作中での人間社会は、クローンの人間性に目を向けようとしませんが、紛う事なき人間描写です。
おじさんであるはずの作者が、よく女の子の心情をここまで描けるなと思いました。リアルすぎて、辟易するぐらいに。
終盤に向かうに連れて、作中の -
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本書はカズオ イシグロのデビュー作で最近映画化もされ話題になった作品なので読んでみたいと思い手に取った。
他の方のレビューにある通り難解だった。
舞台は1980年代のイギリスで主人公悦子の元にある理由で娘のニキが帰省し、イギリス(現在)と戦後まもない長崎を回想しながら交互に物語は進んでいく。
読み進めていくと違和感と?が満載で読み終わったあとも霞が懸かってうっすらしか先が見えない感じ。
それもそのはず、具体的に語られていない部分があるので、解釈を読み手に委ねるタイプ。
なので池澤さんや三宅さんの解説、映画も解釈の一つで正解はないということ。
佐知子、万里子母娘の言動も謎や違和感ばかりで、 -
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先に映画を見たら、分からないことがいくつかあり、原作を読んでみた。疑問が解消されたわけではないが、それでいいのかも知れないと思えたし、読んでよかった。
なんだかすべてが霧の中に霞んでる感じ。なのに、強い印象を受ける場面がいくつかあった。
とくに、主人公と舅が戦争にまつわる思い出にふれながら、肝心のことはお互いに避けているような会話。
(ここは映画では、もっと具体的なことを話していた)
主人公と友人の佐知子が稲佐山でかわした会話も、かみ合っているのかいないのか。でも佐知子という鏡をとおして、主人公の気持ちがしだいに分かるように思えた。
映画を見て、分からないことに不満を覚えていたが、分から -
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著者のカズオ・イシグロさん、初読みです。長崎生まれでイギリス国籍の方です。ブッカー賞、ノーベル文学賞などを、受賞されています。この作品は初長編で、1982年に彼が英語で書いた小説を、小野寺健さんが翻訳された本です。
私は映画を先に観たので、登場人物は俳優の顔が浮かび、情景も映像が浮かびながらの読書でした。疑問に思っていたことを知りたくて、この本を読みました。訳者のあとがきと、作家の池澤夏樹さんと文芸評論家の三宅香帆さんの解説に助けられて、ようやく理解できました。(と思っていましたが、色々な解釈があることをあとで教わりました。)
小説は、悦子が長崎で過ごした過去と、イギリスで暮らす家に休暇で -
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ネタバレ面白かった…!
堅苦しい、古風な作品かと思いきや、するすると読めてしまった。
ずっと積読していて、二の足踏んでなかなか読まなかったけれど、久々に手に取ってよかった!
スティーブンスの言い訳のような語り口に、思わずにやっとした。
特に、ミス・ケントンへの思い。
素直になりなよーと何度言いたくなったことか。
スティーブンス、すごく意地悪な言い方しかしないんだもん!
私がミス・ケントンだったら、超嫌いになるところだよ。
でも、ミス・ケントンは、スティーブンスが実は自分に好意を抱いていると気づいていたんだろうな…。
素直になれない小学生のようなスティーブンス…。
ジョークのくだりもいいね!
頭の中 -
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カズオ・イシグロのデビュー作。
『蜜蜂と遠雷』『ある男』『Arc』など着実にキャリアを上げている石川慶監督による映画化のこのタイミングで手に取った。
1970年代のイギリスの田舎町、一人で暮らす悦子の元に娘のニキが訪ねてくる。ニキはライターで悦子の長崎時代、特に原爆が投下された以降どうやって暮らしてきたのかを文章にしようと考えている。
悦子からするとそれは家を出て自殺したニキの姉、景子のことを思い出すことでもある。
悦子は長崎での暮らしはどうだったのか、その生活を捨て何故ロンドンに来たのか、景子には何があったのかを語っていく。
その語られていく1950年代の物語では長崎で夫の二郎と暮らす -
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ネタバレ◼️ カズオ・イシグロ「遠い山なみの光」
映画を先に観て再読。広瀬すずが悦子にダブる。描かれない部分を想像する。
カズオ・イシグロの、日本を舞台にした初期作品はノーベル文学賞受賞の時に読んだ。次作の「浮世の画家」では戦争に協力した大家の画家が戦後、世間の価値観が変わり、画壇の関係者が離れていく様が中心になっている。
「遠い山なみの光」にも、戦前戦中は教壇に立ち戦後おそらくは教職追放となった老教師が、かつての教え子から教育雑誌で名指しの批判を受け、納得できずに談判に行く場面が盛り込まれている。これらの印象が強かったためか、もうひとつメインのストーリーは思い出せず、映画を観た時はこんなにミス