カズオ・イシグロのレビュー一覧
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お話としての面白さはそれはそうとして、読んでて印象的だったことが色々とあったので書いてみる
・読み始めた日に仕事で調べたことがあって、出てきたパソコン知恵袋みたいなページの質問者の名前が主人公の名前だった。キャシーH。これ、すさまじい偶然じゃない?しかもそれに答えてるのがAIっぽいのがまた面白すぎる。読んだことある人だったのかな?ユーザーネームとしてめっちゃセンスある。巡り巡ってこんな偶然が知らないところで生まれてるわけだし。
・1ページ目読んだ途端に、前読んだ執事のおじいさんの話の情景が浮かんできて、まぁそれは同じくカズオイシグロが書いた「日の名残り」なんだけど、
「日の名残り」とそのお -
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カズオ・イシグロは好きで何冊も読んできたが、なぜか読んでいなかったクララとお日さま。ノーベル文学賞受賞でものすごい話題になってからの第一作目で、推しがとんでもなく有名になりすぎてなんだか距離が…みたいな感覚?
ようやく文庫版を手に取る。読み始めたらもう一気に読んだ。相変わらず静謐でシンプルな素敵な文章。「私を離さないで」のような、読者に隠されたままの世界の秘密(今回はとうとう最後まですべては明かされなかった)。そして、人工知能ロボットという、人間の世界を学習中の、語り手として信頼をしきれない主人公クララ。読者は足元がぐらつき、視野が制限されたまま、クララの目を通して、クララの主であるジョジー -
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確か『わたしを離さないで』を読んだ時にも感じたことなのだが、ずーっと感じる不安感、不穏な感じがここにもある。
読んでいると次第に悦子が佐知子と重なってくる。
そして、バサっと終わってしまう。
池澤夏樹氏の解説がとてもいい。
「人間は互いに了解可能だという前提から出発するのが哲学であり、人間はやはりわかりあえないという結論に向かうのが文学である。」
「それでも、われわれは日本語でこれを読みながらでも、これがあくまでも英文学、むしろ英語文学の作品であることを忘れない方がいい。訳がいかに巧みで、会話が日本語としていかに滑らかに流れていても、登場するのがすべて日本人でも、これは日本文学ではない。」 -
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時代の移り変わりとそれが生む歪み。被害者というのは語感がやや強すぎるのだけれど、時代の流れに、パラダイム・シフトに晒され、翻弄された人々。その生き様。
メッセージを読み取るのが難しい作品だったけど、解説を読むと色々なことがしっくりくる感じがした。
佐知子と万里子、藤原さん、緒方さんという他人についての回想が全編を占めるにも関わらず、全ての要素が今の悦子に帰結していく点で、この物語の構成は爽快感すらある。イギリスへの移住と景子の自死、その詳細が語られることはほぼ無いのにも関わらず、回想とのシンクロ性が、悦子の人生に纏わり付く陰の輪郭をぐっと強めている。
集団的なトラウマ、というのがこの小説の主 -
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ネタバレなかなか残酷で悲しいお話。表紙だけ見ていると、正直こういう話だとは全く予想していなかった。
何と言えば正しいのだろう。物語が淡々と進み、淡々と悲しい事がたくさん起こる。そこに諦念や怒り、憎しみも感じづらく、年頃の子達がよくある悩みや不満をぶちまけている様子が物語の大半だ。
こういう子ども時代を過ごせることは幸運なのか、幸運とも言えるかもしれない、ただ、そもそも臓器提供をする為だけに産まれてきた子達がいる事が衝撃ではないか、その視点からみると、エミリ先生たちが行った事は、自己満足の欺瞞かもしれない。それに翻弄されたキャシー達は一体何なのか。まだ自分の中でうまく感想が言えない。
読み手によっ -
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ネタバレクララはユア・フォルマの通常アミクスのようではなく、自律的に思考する感情のある存在だったので、あのラストにはうーんとなってしまった。そんなことある?
ラストでクララが廃棄場にいる時に店長さんが話しかけてくるシーン、あれってこれから廃棄されるクララたちAFにまた会えて嬉しいってどうなの。普通感情移入しない? ジョジーも、本当の親友って言いながらこれから廃棄されるクララに手を振りますか?
人と見分けのつかない形をしているのかはわからなかったけれど(登場人物たちがクララをAFだと迷いなく判断していたので割とメカっぽいのかも?)、今まで幼少期に寄り添ってくれた存在をここまでぞんざいに扱えるものだろうか -
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ネタバレ後悔と過ちの日々。ただその一切はすぎていく。
品格のために執事の服を常に脱がずにいたスーティーブンスが、最後に「自分で決断しなかったこと」を悔いて泣いてるシーンがとても印象的だった。
いままでほぼ全編にわたってスティーブンスの仕事の素晴らしさ、正しさを説かれていた身としては冷や水をかけられる思いだった。
ただ、後悔した先の、過ちを犯した先の日々が目の前にはただ広がる。もし過去に戻ってそこ後悔を解消したところで、自分の望む未来が手に入るなんて確証はない。
「これでよかったんだ」と、ただただ明日に向かって歩いていく事。明日をより良いものにするために、ジョークの勉強をしようと決めるスティーブン -
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ネタバレ目的がわかりやすく終盤に配置されていて、読み進めるほどに何が起きるのか期待させられてしまう物語だった。はじめ、スティーブンスはたいへん有能な執事かのように見えるのだが、だんだんと信頼できなくなっていく。どうも仕事一辺倒で、他の面が疎かになっているのではないかと。だが全てがスティーブンスの語りゆえに、その疑念が読者に伝わっているのは、だんだんとスティーブンスの自信が揺らいでいることの表れでもあるという構造がおもしろい。
物語終盤、スティーブンスのこれまですべての自信が一気に崩れ落ちてしまう。そこから終わりまでがあまりにも短いのもこの物語の特徴のように思う。だから、「昔ほどうまく仕事ができない? -
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カズオイシグロのデビュー作。
娘が自殺した女性が、過去の長崎での日々を回想する物語。とても面白いのだが、ストーリー展開的な面白さというより、登場人物たちの会話や、主人公の感覚に違和感を感じて先が気になる、そんな読み方をしたように思う。
読み終えたときに、佐和子は自分自身で、万里子は景子を投影してるのかなと感じたのだが、解説があったことでよりわかりやすくなった。解説を踏まえてもう一度読みたくなった。
どうして今、自分はこの記憶を思い出すのか?そんな視点を持って読むと、わかりやすくなると思う。語られないストーリー、語られない思いが多くあるけれど、何を見るのか、読者に託された余白の部分がイメージとし -
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ネタバレカズオイシグロの信頼できない語り手はデビュー作から健在だった。信頼できなさでいったら今まで読んだ中でもトップ。
結局彼女の回想やこの物語は何を言いたいのか、
全てはぼんやりとしか見えないのだが、言葉にできない印象にあふれている。
戦前の価値観を引きずる「緒方」、典型的な昭和の親父の「二郎」。彼らは悦子にとっていつのまにか足にからまる縄のような存在だったのだろうか。佐知子の行動は悦子のイギリス行きに影響したのだろうか。佐知子と万里子はその後どうなったのだろうか。悦子は日本を棄てたことを後悔しているのだろうか。
新しい時代への希望、家父長制への怒り、敗戦国の人間のプライド、女性の自立、殺人