カズオ・イシグロのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
以前読んだ『文学効能事典』に本作が載っており、気になったので今回読みました。
正直、読み切れるか不安がありました。
というのも、以前イシグロさんの別の作品を読んだ時に読みきれず途中で断念してしまったからです。
しかし、本作は楽しく、そして心地よく読むことができました。うれしいです。
その理由を考えてみると、
小説では珍しく文章が丁寧語で読んでいて心地よさがあること、また執事という仕事を通して「品格」「偉大さ」「紳士」とは何かについて一緒に考えるのが楽しかったからだと思います。翻訳が良かったというのもあるのかもしれません。
品格について、スティーブンスの父(父も執事)の
怨みを抱いている指揮官に対しても平然と関わる姿が、非常に印象に残りました。これが「本当の品格」というものかと納得しました。
執事という仕事を忠実に、品格を持って全うするスティーブンスが素晴らしいなと思いました。
冒頭で、主人のファラディ様(アメリカの人)のアメリカンジョークになんとか応えようとするスティーブンスがとても微笑ましかったです。
ラジオを聴いて勉強するところはかわいいと思いました。
雇人がジョークで主人を楽しませるのも仕事のうち、と捉えているのが、懸命な姿勢でいいなと思いました。
お偉いさんがたの会談の内容はあまりよくわかりませんでした。イギリスの1930年前後の社会情勢が詳しくわかれば、より楽しめるだろうなと思いました。
最後に……スティーブンスへ。
終盤、カーライル医師に品格とは何かと問われた際、「公衆の面前で衣服を脱ぎ捨てないこと」と言えたあなた。
すごく成長していると思いましたよ!
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Posted by ブクログ
ネタバレ良かった!!!さすがカズオイシグロ、全然裏切らない。
病気の子どもをAIロボットに学習させて、もしも死んでしまったらそのロボットに成り切ってもらおう、という計画。その計画を巡って、その人たらしめる唯一無二の何かはあるのか?という疑問の答えが、その人自身にはないかもしれないけど、周りの人からのその人への想いは、絶対何にも代えられないものだ(だからロボットには代替できない)、という結論だったのが、何となくわかる気がするし、ジーンとしみじみ良いなあと思う。
あとカズオイシグロの書く子どもは、ただ可愛いだけの存在ではないところが好きだ。子ども同士の微妙な関係とか、他の人の前では別人になってしまうところとか、すごくリアルだし子ども社会も残酷なのよ、と訴えてくる。わかる。子どもの絶対、は絶対では無いけど、その瞬間だけは絶対だという事も描かれてて、好きなポイントの一つだなあと思う。
親になったらまた読みたいかも知れない。
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Posted by ブクログ
30年ぶりの再読。素晴らしい本でした。若い頃は、女中頭の好意にまともに応えられない執事の臆病さを歯がゆく思いながらも、品格を追求する姿勢に共感して自分もそんな風でありたいと思ったものでした。それから30年が経って品格とは程遠い自分を見ながらこの本を読むと、この執事の臆病さと愚かさは自分と変わらないと感じてしまいます。
旅に出て昔を回想しながら徐々に自分の過ちに気づき、最後に再会した女中頭との話のなかで自分の臆病さのせいで失ったものに気づいて涙する。しかし日の名残りの時こそが人生の最良の時だと思い至って、これからのことを前向きに考える。
自分の気持ちに正直に自分の人生を一生懸命に生きる女中頭のミス・ケントンと比べて執事のスティーブンスは頭でこねくり回すばかりで何が大事かがわからないのですが、それでも2人ともがとても素晴らしい人生を生きている、と感じました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ約ネバ
どんな本か忘れないためだけに書いた感想です。読まなくて大丈夫です。
提供されることが普通であると、内臓が悪くなったら“提供者”の内臓をもらえると当たり前に思えてしまう世界怖すぎる。
マダムや先生たちは、提供者たちが家畜ではなく価値のある人であることを世界に伝えるために、絵を描かせていたのね。
技術が進歩し始めた時くらい、内臓移植ができるようになったくらいの時代に、人間という、提供者という家畜のようなものが生まれなくて(日本だから知らないだけかもしれないけど)よかったと思う。
もし戦争中だったら、相手国の捕虜とかとっ捕まえて提供者にしてそうだな。
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Posted by ブクログ
日本人作家による英国文学を読むのは初めてだ。著者がノーベル文学賞を受賞した際に話題となり、読もうと思いつつも長年積読状態だったが、ようやく読み終えた。
まず感じたのは、翻訳の秀逸さである。翻訳文学特有のぎこちなさは皆無で、まるで日本語で書かれた物語を読んでいるかのようだった。
本書は、執事スティーブンスが休暇中の旅を通して、自らの半生を一人称で振り返る物語である。序盤では、自らが立派な執事であったことを誇り高く語る。しかし回想が進むにつれ、その言葉の隙間から、動揺や疑念、そして決して表には出さなかった感情が静かに滲み出てくる。それは後悔なのか、それとも取り返しのつかない人生への失意なのか。読者に明確な答えは示されない。
私はこの物語を、「仕事や信念に人生を捧げた結果、その人生は本当に幸福だったのか」という問いを投げかける小説として読んだ。
今の私には、この問いに対する答えはまだない。人生経験を重ねたときに、もう一度読み返したくなる一冊なのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
イギリスの大きな屋敷で執事をしている主人公は、雇い主からの提案で小旅行をする。
旅行中、
以前の雇い主の元での様々な出来事を思い出し、
読み手に語る。
その語り口調がイギリス上流階級の、
伝統を重んじるかんじで、
主人公の真面目さを感じた。
真面目さでいうと、
ジョークをよく飛ばす今の雇い主への対応に
気を揉んでいる様子が面白かった。
ラジオや本を読んでどう冗談を言ったらいいか
勉強して雇い主のジョークに適切に答えることを
「新しい任務」として大真面目に頑張ったり、、
冗談を冗談で上手く返して、
雇い主を楽しませられないのは職務怠慢にあたるのではと考えたり、、
架空のことをいつまでも考え続けるわけには
いかない、人並みの幸せはある、もしかしたら
人並み以上の幸せかもしれないということを
早く気づいて感謝すべきでしたわ、
という言葉が印象的だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレAF(Artificial Friend:人工親友)の女の子であるクララの目線で語られる、未来の世界の物語。
他のカズオ・イシグロ作品でもしばしば見られるように、柔らかく優しい語り口でとんでもないディストピアを描き出す。(好き!)
クララは病弱な女の子、ジェシーの家に買い取られ、ジェシー、その母親および家政婦と共に暮らすようになる。ジェシーの"親友"としての役割に邁進するクララだが、ジェシーの病状は次第に悪化し、さらに家族の仄暗い秘密も明らかになっていく。
物語の世界において当たり前に存在するらしい、優勢思想的な技術もストーリーに影を落とす。
クララは非常に優れた人工知能を有しているが、人間と比較すればその思想は単純である。それでも、登場人物の中で、彼女が一番優しく、信心深く、そして正しく感じられる。しかし、ラストシーンで彼女がハッピーエンドを迎えられたわけでもない。
知性の複雑さが正しさに直結するわけではないこと、そして正しくあることが幸せに直結するわけでもないことが見につまされる。
愛、知性、信仰、倫理観、家族、友達…どこまでが人間だけのものなのか。愛、知性、幸せとは一体何なのか。読者の心に投げかける物語。