カズオ・イシグロのレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
人生の黄昏
一部ご紹介します。
・「わしはあんたの言うことが全部理解できているかどうかわからん。
だが、わしに言わせれば、あんたの態度は間違っとるよ。
いいかい、いつも後ろを振り向いていちゃいかんのだ。
後ろばかり向いているから、気が滅入るんだよ。
なんだって?昔ほどうまく仕事ができない?
みんな同じさ。いつか休む時が来るんだよ。
わしを見てごらん。隠退してから、楽しくて仕方がない。
そりゃ、あんたもわしも、必ずしももう若いとは言えんが、それでも前を向き続けなくちゃいかん」
「人生楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。
みんなにも尋ねてご -
ネタバレ 購入済み
人生の尊厳
一部ご紹介します。
・「あなた方は教わっているようで、実は教わっていません。
形ばかり教わっていても、誰一人、本当に理解しているとは思えません」
「あなた方の人生はもう決まっています。これから大人になっていきますが、あなた方に老年はありません。
あなた方は一つの目的のためにこの世に産み出されていて、将来は決定済みです。ですから、無益な空想はもうやめなければなりません」
「みっともない人生にしないため、自分が何者で、先に何が待っているかを知っておいてください」
・「絵も、詩も、そういうものは全て、作った人の内部をさらけ出す。作った人の魂を見せる」
・すぐにも行動を起こさないと、機会 -
Posted by ブクログ
ネタバレこういう感想文を投稿するのは初めてなのでご容赦ください。以下の感想は読み終わったばかりの勢いで書いています。
最初から最後まで、画家・小野の視点で描かれている。『価値観の変動』と『生き方』に焦点を当てた作品だと感じた。私がこの本から受け取ったメッセージを以下に示す。
《価値観は時代とともに移ろい行くものだから、誰しも後になって自らの過ちに気がつくかもしれない。しかし、『自分の信念に従って、全力で生きた』ならば、それの信念が間違いであったとしても後悔はしないであろう。》
また、この作品では、とかく何かを明言するのを避ける傾向にある。しかし、多数の場面を組み合わせて、人の心の動きを -
Posted by ブクログ
この本はすごい。ほとんどもしくはすべての登場人物が自分のことしか考えられない。もどかしい思いで何度も本を閉じたのだが、読みきったあともう一度それぞれのエピソードを読んでみると、噛めば噛むほど味が出てくる。吸い尽くせないほどに。頑張って読み切る価値がある。
自分は果たして本当に誰かのことを知りたいと思ったことがあったのか? そう思っていたと感じていたときでも、ただ自分のことを誰かがどう思っているかを知りたかっただけではなかったのか? 時に誰かに優しくすることはできるが、結局いつも自分のことばかりだったんじゃないか? そんなことを思う。
最初は荒唐無稽で夢のような世界の話だと思うのだが、読み終 -
Posted by ブクログ
2回目。いつも素晴らしい小説をありがとう。
初めて日の名残りを読んだ時はたまげたけど、テーマほんとうにそっくり。
日の名残りの方が華やかさと鮮やかな色彩感があって好きだけど、地味で淡々としていて暗いこちらも良い小説。
主人公のやるせなさや辛さも、周囲の気まずさや不満も、どちらも手に取るようにわかるから、読んでて少ししんどくなる部分すらあった。
今主人公を責める周りの人たち、すなわち二人の娘や素一や三宅家の人たちは、戦争中は何を考えてどう行動してたの?
主人公が先陣切ってやったことが戦後的価値観に照らし合わせれば良くない行いだとしても、当時彼ら周囲の人たちはそれを支持して尊敬したんじゃない -
Posted by ブクログ
巻末の解説によると、発表当初から賛否が大きく分かれたという本書。デビューからそれまでに寡作ながらいずれも高い評価と栄誉ある賞を得た作家が、本当に書きたかったものを書いたそうです。
出だしから登場する人たちの長いセリフ、それに続く非現実な場面転換。序盤から、読み進める側は、この奇妙な小説をどう受け止めていいのか、戸惑います。否定的な感想を持つ人は、おそらくこの戸惑いを消化できなかったのではないでしょうか。そうした気持ちも当然と言えるほど、風変わりな小説です。
自分は、その風変わりさが、ルイス・キャロルのファンタジー小説に通じるものとして呑み込み、非現実な進行も含めて楽しむようになり、中盤から -
Posted by ブクログ
カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』が面白いと話題なので読んでみようかと思ったのだが、そう言えば『充たされざる者』が未読だったのを思い出して、読んでみた。
時間も空間も歪んだ世界で、登場人物は何重にも重なり、悪夢のような(というか悪夢そのものの)不条理が延々と続くが、個々のエピソードが魅力的でグイグイと読ませる。大きな話の筋は世界的ピアニストのライダーが「町の命運は音楽藝術の解釈次第にかかっている」と信じられている町に招かれて演奏と講演を行うというストーリー。その枝葉として、やがて彼の義父であることが明らかになるポーターのグスタフとその娘ゾフィーとの不条理な関係、その関係と相似する名指揮者グロ -
Posted by ブクログ
イギリスの名門の家に仕えていた執事による人生の黄昏時の回顧録
執事のスティーブンスは、執事だった父や同業者と「偉大な執事とは何か?」「執事の品格とは?」について語った事がある
そんな、執事としての矜持を常に背負った人生の晩年
これまでの主人であるダーリントン卿が亡くなり、身内が誰も屋敷を相続しなかったため、屋敷を購入したアメリカ人の新しい主人のファラディ氏に仕えている
使用人達もそのまま残れる事になっていたが、次々と辞めていき、現在は屋敷の管理が満足には立ち行かないほどの少数でなんとか回している
そんな中、かつて女中頭を務めていたミス・ケントン(現在は既に結婚してベン夫人)から手紙が届く
夫 -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白いよりすごいなって作品
印象に残ってるのは、最後にエミリ先生とキャシーが話すシーン。人間はどんなに正義を掲げても理念があっても、良いことをしているつもりでも1つの立場をとって発言したり行動すると、一気にエゴになるんじゃないかと思わされました。あの人たちは確かに善人で、ヘールシャムの生徒に一種の幸せを与えたと実感している。でも、求めてるのはそれじゃない。人の勝手な善意に振り回されるキャシー達を見て、絶望と虚無感と、終わりを迎えることに変わらない彼女達にとってあの人達の善意は何の意味もないと思わされるのがすごい作品だなと。
それでも思い出のヘールシャムと仲間は確かに存在はしているのに。 -
Posted by ブクログ
第一次大戦後、ドイツが重い賠償責任を負っていた時代に、そういう責任の負わせ方は紳士的ではないと考えていたダーリントン卿と、彼に忠誠を尽くすスティーブンスが執事という役割に徹する姿は、いかにも英国的で読みごたえがある。
品位とは何かを突き詰め、「公衆の面前で衣服を脱ぎ捨てないこと」という比喩で表現している。それが父親や女性に対する感情を押し殺した対応につながり、人生の岐路でもしかしたら過った選択をしたかもしれないという、スティーブンスの後悔につながっていて、この物語の大きな軸を作っているように見える。
大まかに受けた印象では、そこに至った思考回路はどうであれ、卿はやはり第一次大戦後から、第二次大 -
Posted by ブクログ
以前読んだ『文学効能事典』に本作が載っており、気になったので今回読みました。
正直、読み切れるか不安がありました。
というのも、以前イシグロさんの別の作品を読んだ時に読みきれず途中で断念してしまったからです。
しかし、本作は楽しく、そして心地よく読むことができました。うれしいです。
その理由を考えてみると、
小説では珍しく文章が丁寧語で読んでいて心地よさがあること、また執事という仕事を通して「品格」「偉大さ」「紳士」とは何かについて一緒に考えるのが楽しかったからだと思います。翻訳が良かったというのもあるのかもしれません。
品格について、スティーブンスの父(父も執事)の
怨みを抱いている指 -
Posted by ブクログ
ネタバレ良かった!!!さすがカズオイシグロ、全然裏切らない。
病気の子どもをAIロボットに学習させて、もしも死んでしまったらそのロボットに成り切ってもらおう、という計画。その計画を巡って、その人たらしめる唯一無二の何かはあるのか?という疑問の答えが、その人自身にはないかもしれないけど、周りの人からのその人への想いは、絶対何にも代えられないものだ(だからロボットには代替できない)、という結論だったのが、何となくわかる気がするし、ジーンとしみじみ良いなあと思う。
あとカズオイシグロの書く子どもは、ただ可愛いだけの存在ではないところが好きだ。子ども同士の微妙な関係とか、他の人の前では別人になってしまうところ