カズオ・イシグロのレビュー一覧
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『「浮世の画家」でいることを許さないのです』という小野の言葉。モリさんは歓楽(耽美主義)に美しさを見出し、「浮世」を描くが、時代が進むにつれて小野は師の「浮世」への考えに対して自分の考えを表す。ただ、小野の当時の作風について改めて考えると、小野が導き出した精神主義的な作風もまた、大きく見ると「浮世」だと言える。小野自身もまた時代に翻弄された「浮世」の画家なのでは。
小野に限らず、この作品の時代背景も、紀子の縁談も、一郎の好むヒーローも、時と共に流動的に変化している。浮世の中で人々は時代に合わせて生きている。
小野の語りからは、古風かつ独善的で自己を正当化しようとする性格が滲み出ている。当時を思わせるような人物像であり、現代では批判されそうな人物だが、これも時の流転を感じさせる。
「あら、縁談もうまくいったのね?」「なんか物語の設定からしてこういう終わり方なのか…」というのが最初の感想だったけど、イシグロはその終わり方に何かを表現しているのかな?とも思う。題名『浮世の画家』の意味とか、時代や人々の考えの変化とか、多岐にわたる考察ができて、やっぱりイシグロ作品は価値がある。読むのに体力を使うけれど、その分読後の余韻は一級品。 -
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ネタバレ『日の名残り』『わたしを離さないで』の著者、カズオ・イシグロ氏の作品。
10歳で両親が謎の失踪を遂げた主人公クリストファー・バンクスは、成長し名探偵としての名声を獲得した後、両親の失踪事件を解決するために立ち上がります。
あらすじからすると探偵小説のようですが、探偵小説ではありません。しかし前半は美しい文章と、過去の回想から浮かびあがる様々な事実にワクワクです。
…が、後半は突如として支離滅裂な行動を繰り返す主人公、品のない使い古されたチープな不幸、ありきたりで悲惨な結末にかなりうんざり。(世の中とはそういうもの、という作者のメッセージ!?)
『わたしたちが孤児だったころ』の「わたしたち」とは誰を指すのか等々、作者の意図を色々と妄想しては、考察ブログ巡りを楽しめる一作です♪
※※※ここからネタバレ含みます※※※
この小説、イギリスの方はどんな風に感じるのでしょう。
母親の犠牲の元に生活の安寧と仕事の名誉を獲得していたクリストファー、体調不良を隠していた母とバスに乗ることを楽しんでいたサラ、アヘン貿易で得た富で生活していたクリストファーの母親…この物語は、他人の犠牲の上に成り立っていた“箱庭”で幸せに暮らしていた人たちが、その後「なにか価値のあることを成し遂げなければ」という強迫観念に近い思いに縛られて苦しむ話に読めました。(この“箱庭”から出ることが“孤児になる”ことなのでしょうか。)
作中に出てくるアヘン貿易をはじめとして、イギリスには多くの他民族の権利と尊厳を犠牲にして富を得てきた歴史があります。そんな“箱庭”に暮らしてきたイギリス人は、同じような葛藤を抱えているのでしょうか?まぁ、日本の歴史も大概ですが…。
などと妄想を膨らませて楽しめるという点では素晴らしい作品でした。読み終わった後の考察ブログ巡り含めて楽しめる一作だと思います!
※個人的には『わたしを離さないで』のほうが静かに心を抉られる感じで好きなので☆3 -
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"まるでおじいちゃんおばあちゃん版のドラクエみたいだな"のレビューが気になって手にとりました♪
ドラクエと言えばFC版のドラクエⅢ
あのこわ〜い音楽に合わせて、「おきのどくですがぼうけんのしょはきえてしまいました」のメッセージが出たときのショックは今でも覚えています…w
けど、本書は大丈夫!
途中でしおりを挟んでおけば消えることはないでしょう!
安心して続きから始めれます!
ドラゴンクエスト風に
カズオ・イシグロエスト 〜忘れられた巨人〜
主人公はアクセルとベアトリスの老夫婦
遠い地で暮らす息子に会うために冒険に出かけます
冒険に出るこの大地は人の心や記憶に影響を及ぼす「奇妙な霧」に覆われている
ルイーダの酒場はありませんが、戦士や少年、老騎士たちと出会い旅を共にします
スライムは登場しないが悪鬼、悪魔犬、妖精、竜などが登場
これら魔物たちに立ち向かい次々と襲いかかる試練をクリアすることはできるのか…
そして、息子と再会することできるのか…
ほん3さん、ドラクエを紹介して頂いて…
じゃないっ!w
『忘れられた巨人』を紹介して頂いてありがとうございました♪
楽しい冒険でした(^^) -
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カズオイシグロの短編集。タイトルにある「夕暮れ」とは、サンセットタイムだけではなく、人生の夕暮れ(中年から初老の世代)とか男女関係の夕暮れ(別れの予感がある状態)を指しているようだ。熟年離婚、旅先での喧嘩、不安を感じる結婚相手など、何かしら影を感じる設定である。
登場人物はいずれも「若さ」「付き合いたての頃」「才能」への憧れを持っており、やるせなさを織り交ぜながら切ないストーリーが展開する。それでも、コメディの要素が含まれる話も2話入っていて、ユーモアたっぷりの登場人物とぶっ飛んだ展開に驚かされ、思わずクスッと笑ってしまう場面もあった。切ないストーリーでテンションが下がった読み手としては救われる。 -
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カズオ・イシグロさんの本はこれで3冊目。どれも一回読んだだけでは真意にたどり着けた気がしない、そんな底なし感がある。
この本は少年の頃、両親と引き裂かれた主人公が探偵となり、再会を果たすべく戦火の故郷を傷だらけになりながら彷徨う話だが、結局僕はどこで入り込んで良いのか分からなかった。面白くない、という意味ではなく、隙がない、そんな感じ。
入り込みどころを探ってるうちに、急激に話がエンディングに向かって進行していく。そしてまたいつから読み返そう、そう思わせて終わっていく。前に読んだ2冊も同じように感じたことを思い出してしまった。
自分の読解力のなさ、歴史に対する知識のなさ、それが本当に腹ただしい。