カズオ・イシグロのレビュー一覧
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自分の領分において他人との境界含め自分の関与すべき物事を徹底的に分別して、努力次第で自分の掌中に収まる目の前の物事をコツコツと行い、穏やかな生活を維持していくスティーブンス。
自分の範囲を限定するのではなく手を伸ばす意欲を持てば政治においても人間関係においても多くに触れられて自分で舵を切れるという見方もあるかもしれないが、自身の環境はコントロール不能な側面が多いため、知識の補填や強い意志でどうにかなるものではない(3日目夜ハリーの語る品格への疑念)。スティーブンスはあまりに頑固で枠内に収めることに気を取られすぎているので、関与すべき、関与できる範囲を自ら狭めているような気もするが。
ああすれば -
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小説を読む限りは、佐知子は実在した人物で、過去の悦子にとってはその価値観に腹の底からは承服しかねる異質の存在だったように解釈していたが、映画ではそれは実は悦子そのものであり、そういう人物がいたかのように二キに嘘をついていたと最後にネタバレをして終わるように脚色されていた。原作に対してあまりにも分かりやすく説明し過ぎであり、火曜サスペンス劇場のような単なるエンタメサスペンス映像になってしまっており、舞台のセットや俳優陣は豪華であるものの、映画としてみると☆1。
記憶を無意識に変えずしては思い起こすこともはばかられるような過去を抱えながら、強く生き抜いてきた当時の人々の人生が思い起こさせられる。 -
Posted by ブクログ
『「浮世の画家」でいることを許さないのです』という小野の言葉。モリさんは歓楽(耽美主義)に美しさを見出し、「浮世」を描くが、時代が進むにつれて小野は師の「浮世」への考えに対して自分の考えを表す。ただ、小野の当時の作風について改めて考えると、小野が導き出した精神主義的な作風もまた、大きく見ると「浮世」だと言える。小野自身もまた時代に翻弄された「浮世」の画家なのでは。
小野に限らず、この作品の時代背景も、紀子の縁談も、一郎の好むヒーローも、時と共に流動的に変化している。浮世の中で人々は時代に合わせて生きている。
小野の語りからは、古風かつ独善的で自己を正当化しようとする性格が滲み出ている。当時を思