カズオ・イシグロのレビュー一覧
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ネタバレ父親の臨終に立ち会わず、道を過つ元主人ダーリントン卿を止めず、ハウスキーパー(家政婦長)だったミス・ケントンの想いに一切気付かず……。
常に「品格」を意識して「偉大な執事」たらんと長年努めてきたスティーヴンス。そうして得たのは冷淡、無関心、傲慢、空虚——傍から見ればおよそ人間的な温もりを感じられない立ち居振る舞いと半生だった。終盤にようやく少し認識できた彼のこれから先や如何に。
己の領分に留まり、そこで全うする。——程よければまっとうだが、過ぎれば世界に対して無自覚・無関心・無批判で空っぽになる恐ろしさ。世界情勢はおろか目の前のミス・ケントンの気持ちにすら暗すぎるスティーヴンスが、彼の上品 -
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ネタバレ救いようもない話だが、彼らは「不幸」だったのか?
子供時代からヘールシャム(施設)を出るまではクローンである事を除けば普通の学生達のような穏やかな青春群像だった。
時は過ぎ当時の仲間とも関係は希薄になっていきやがて「提供者」としてどんどん消えていく。
ラストで有刺鉄線を見つめる主人公が想像した世界とはどんなものだったろう。
クローンをモノとして扱う華やかな外の世界の残酷さとクローンである事も自分の運命も淡々と受け入れている彼らの対比が切ない。それでも彼らの人生には間違いなく感情という「彩り」は存在していた。「かわいそうな子たち」と切り捨てられてはたまらない。何が正解だったのか。重たい問いだけが -
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ノーベル文学賞受賞記念講演を文庫化したもの。
イシグロ作品、2020年くらいまでに日本語で出版されたものについては全て読んでいるので、作品に関するちょっとした解説のようなものもご本人の口から聴くことができてとてもありがたかった。私なりの作品に対する解釈が大きく外れていないことも嬉しかった。
イシグロ作品はどれも、語り手である主人公が根本的な部分で嘘をついていて、それ分かるとき深淵が顔を出す…という内容なのだけれども、どうしてこのスタイルで小説を描こうと考えたか、ヒントを得た別の作品(音楽や映画など)についても紹介しながら解説されていてとても面白かった。
彼の中での『日本』という国についても言及 -
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ネタバレ最初の方は読みやすくすらすら読めましたが、途中気が滅入ってしまいました。
特に、リックとヘレン、その昔の恋人とのやり取りは、この物語の中でも特に醜悪なやり取りだったと思います。
クララが純真で愛情深く謙虚なAFであるからこそ、そのやり取りがより醜く見えてしまい、そこから読み進めるのが億劫になってしまいました。
また、その反面、クララのお日さまに対するあまりにも真っすぐな感情には、「そんなことで病気が治るわけがないのに……」という苛立ちのようなものを覚えてしまいました。
なので、最後にジョジーの病気が治ったことにはとても驚きました。ご都合主義的というか、ファンタジーなシーンだと思いましたが、その -
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ネタバレ主人公の悦子は記憶の中の佐知子に自分の罪を投影していたのだろうか。それとも佐知子は本当にあんな女だったのだろうか。とにかく佐知子は愚かで嫌な母親のように描かれている。娘の万里子は完全に被害者だ。女の子の唯一の心の支えの子猫を殺してしまうシーンは本当に心が痛んだ。子供のことをよくわかっていて、誰よりも考えているようなことを言うが、結局なにも見えていない。少なくともそのように読者の目には映る。しかしそれは佐知子が本当にそういう人間だったのか、それとも悦子が佐知子を通して自分を責めていたのか、わからないままだ。
なぜ悦子は二郎と離婚し、イギリスへ渡ったのか。なぜ景子は自殺してしまったのか。そのあたり -
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『私たちが孤児だったころ』は、探偵小説の形式をまといながら、実際には“記憶”と“喪失”をめぐる静かな内面劇として立ち上がる作品だ。
物語を読み進めるほど、主人公クリストファー・バンクスが追い求めているのは事件の真相ではなく、幼いころに失われた世界そのものなのだと気づく。
記憶の“ずれ”が生む静かな痛み
クリストファーは名探偵として語られるが、彼の回想はどこか曖昧で、幼少期の上海は理想化され、現実と記憶の境界はにじんでいる。
この“にじみ”が物語の核心であり、読者は彼の語りをそのまま信じることができない。
家族の影が、沈黙の中で形を変える
クリストファーが両親の失踪を追う動機は、探偵とし -
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ネタバレイシグロカズオの信頼できない語り手モノは面白いな、と思う。主人公が信じ込んでいる、両親失踪事件の真相が、上海で調査を進めるに連れてぜんぜん思っていたのと違うことが分かっていく。
主人公の語りと、回想によって話があっちこっちに飛ぶ構成がちょっと分かりにくい。これが文学上の手法としての「意識の流れ」ってやつなんだろうな…(イシグロカズオのノーベル賞インタビューで、失われた時を求めてに影響を受けてるって話してたからそういうのを感じる)
舞台になってるのが、第二次世界大戦前後の上海、というのも好きだった。
というか、チャプター4くらいの上海回想編にたどり着くまでが面白く感じられなくて、頑張って耐え -
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ネタバレAudible
かつて、彼の作品を読んだ時に原文で読みたいと思ったほど美しい文章だった。それは、この彼の5作品目となる長編小説でも変わらない。
日中戦争中の上海が主な舞台なので、日本語を話せないという著者だが、それでも中国を苦しめた阿片と、中国を攻める日本軍のことはどのような思いで描いたのだろうと思わずにはいられなかった。それがこの物語を時々苦しくしたが、イデオロギーに固執していないのは救いだった。
上海で生まれ育ったイギリス人の少年が、相次いで両親が失踪し、故郷イギリスの叔母の元で育てられ、やがてケンブリッジ大学を卒業した後、探偵として名士になる。遺産を相続した後は、孤児を養女に取るほど