カズオ・イシグロのレビュー一覧

  • 忘れられた巨人

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    母の本棚に残されていた一冊。
    「何を忘れ、何を記憶するのか」によって人や共同体の考え方は大きく影響される。読みながら、頭の中をモヤモヤとした霧がかかった中を少しずつ物語が進んでいく。少し読みにくい文章ではあるが、それもまたこの物語の雰囲気にあってたような気がする。
    自分の記憶しているものの上で、自分の人生は進んでいく。同じ事実でも記憶により別の人生が生まれる事を認識させてくれた作品。

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    2019年03月25日
  • 充たされざる者

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    ネタバレ

    ライダーは著名なピアニスト。中欧のこの国のある街に演奏会の招待できている。街をあげての記念式典だそうだ。タクシーでホテルに到着したが、迎えにでる人もなく、運転手がとまどうばかり。ようやくポーターが出てきたが、本来は支配人が出迎えるべきなのに申し訳ないと何回も詫びる。これから先もライダーは色々な人に用事を頼まれ、それを成し遂げようと努力するごとにまた不思議な出来事にさえぎられるということが続く。不思議な霧の中でお話がすすむような感じを受ける。

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    2018年10月19日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    マルセル・プルースト「失われた時を求めて」
    に影響される。
    語り手の思考の流れや漂流に従って話を展開する。

    個人の記憶と、国家や共同体の記憶。
    それらは同じか、違うのか。

    作家にとってのターニングポイントは、
    静かな花火としてやってくる。

    世界は正せない。
    せめて、文学という狭い世界からだけでも発信していこう。
    文学の多様性を保っていこう。

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    2018年09月01日
  • 充たされざる者

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    人々は自分の理由をしゃべり、空間は自在につながる。

    名を成したピアニストのライダーは「木曜の夕べ」というコンサートに出演のため、ヨーロッパのある町にやってきたが、出会う人々からいろいろな相談を持ち掛けられ打合せもままならない。

    ホテルのポーター、ポーターの娘とその子供、ホテルの支配人、支配人の息子の若いピアニストなどが一方的に事情を話し出す。またそれに丁寧に応えてしまうライダー。またレセプションの会場、カフェ、ポーターの娘の部屋、写真撮影の建築物などががぐるぐると、あるいはドアからドアへとふいに現れ、途切れ、繫がる。

    ポーターの娘とその息子ボリスのアパートに行くあたりまでの7,80ページ

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    2018年08月30日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    丁寧な文を書く人だし、丁寧に話す人だ。こんなジェントルマンな風情の作者も若い頃はたくさん迷いがあったんだなあと。若者は意外と社会のムードとか流行とか空気とかにとらわれすぎていて、真に追い詰められないと自分の本当にやりたいことや欲していることが見えないことがある。この方にとってのそれは、自分の記憶の中の日本をそれが消えてしまう前に書き残すことであり、それが道しるべとなって作家の道を歩き出した。でも作家デビュー後も常に新しい表現対象や方法を思索しチャレンジする姿勢にはこの方の人生に対する真摯な態度が見て取れます。とてもしなやかでしっかりした人だなあという印象を持ちました。

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    2018年06月19日
  • 充たされざる者

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    この作家は、読者に霧のなかを歩かせる。名声高いピアニスト、ある街のリサイタルに招かれるが、住民の厄介ごとに巻きこまれ....。テーマは家族愛だろうか。最後救いあるけど、仕事人間のお父さんへのペーソスを感じる。どこの国、時代、家庭にもありそうな不条理。読み終えるのが難渋で、再読はしたくない。

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    2018年06月25日
  • 忘れられた巨人

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    静か。だ。霧が深いところも。霧が晴れてしまった後も。
    忘れるべき記憶とか、思い出さない方が良い過去とか、そういうのがテーマらしい。ある意味政治的ともいえる主題と、それに付随する読者のあーだこーだな五月蠅い解釈を、越え、貫かれる一本のしんとした静謐に、ただただ心を打たれた。

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    2018年06月14日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    ガスオ・イシグロのノーベル文学賞受賞記念講演を書籍化したもの。英語と日本語の対訳式なのは嬉しいが、99ページしかない本(つまり日本語はその半分)で1404円はさすがに高い。元を取るため英語でも読み直そうかな。
    ただし中身は短いながらも充実したもの。彼を日本人作家のように扱う風潮は批判されて当然だが、同時に彼の文学の根幹をなすものが「記憶の中の日本」というファクターであることが、本作を読むとよく分かる。創作に関わる面では、タイトルにもなっているハワード・ホークスの映画『特急二十世紀の夜』にからめ、「登場人物」にも増して「登場人物同士の関係性」が面白くないと、物語は面白くならないことに気づくくだり

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    2018年04月30日
  • 忘れられた巨人

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    世界観がすごい、というか、とにかく壮大だった。
    読んでいて思わず上橋菜穂子作品を読んでいる錯覚に陥りそうになる。壮大なファンタジー作品というべきか。
    老夫婦が遠方に住む息子を訪ねて旅に出る。その道程で出会った様々な人々や生き物。様々な風景。様々な出来事。
    人物の交わす会話の中に、文章の中に、いろんな意味や暗示が込められている。愛と復讐と裏切りと恨みと。。。それらを逃さず読まなきゃと一語一句必死で読み進めていたらやたらと時間がかかってしまい大変だった(笑)
    結末は、何とも言えない複雑な気持ちが残った。

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    2018年04月09日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    カズオイシグロ氏のノーベル賞受賞講演を翻訳、書き起こしたもの。左に英文、右に日本語訳が載っている。受賞時期にネットに毎日新聞の訳文が載っていたが、やはり本の方が読みやすく、文もこなれている感じがして購入。訳者はイシグロ氏の本を多数訳した土屋政雄さんだった。

    20代、30代、40代、の区切りをつけながら、小説を書くに至った経緯や書きながらの分岐点などが語られ、氏の歩んできた道と、文学に対する信頼や希望が語られ、改めて氏の人となりに好感を持った。

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    2018年08月30日
  • 忘れられた巨人

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    日本語タイトルは「忘れられた巨人」ですが、原語の意味は少し違うようです
    それは、今の日本そのものなのかもしれません

    訳本なので原作はどうか分かりませんが、とても読みやすい物語です
    舞台はあの有名ファンタジーを彷彿とさせますが、内容は作者の今までの作品との共通性を感じさせます
    物語の結末が明解にされないところもそうですね

    様々な人物が登場し、そちらの方が大きく変化していくのですが、主人公たちはどこか坦々と自分たちの人生を歩んでいきます
    しかし、その人生にも紆余曲折があったことが明かされていきます

    何かを得たようで、何を得たのか分からないそんな話でした

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    2018年03月08日
  • 忘れられた巨人

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    とうとう読みましたよ!
    今までのカズオ・イシグロさんの中では、一番読みやすかった。
    みんなで竜退治をしよう!というファンタジー。
    いや、もちろんディストピア小説ではあります。
    希望を持って読み進めていくんだけど、まただんだんいやーーな気持ちに(苦笑)

    「忘れられた巨人」とはなにか、わかったときにどーんとまたいやーーな気持ちに…

    浅いレビューですみません。(あずきこ)

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    2018年02月03日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

    購入済み

    話題作

    ドラマ化され、世界的な有名な賞をとり、
    初めてですが読んで見ることにしました
    最初は、なんだか話がよくわからないなあ、、なんて
    思ってましたが、途中からページをめくる手が止まりませんでした
    自分には程遠い世界と思いがちですが、実際に起こっている世界とだといいことを
    認識していたいと思いました。一度は読んでおきたい作品だと思います

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    2017年10月16日
  • 忘れられた巨人

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    ネタバレ

    アーサー王伝説の舞台を借りたファンタジー。人々が物忘れをするようになり、おぼろげに息子のことを覚えている老夫婦が息子の住む村に向けて旅立ちます。旅の過程で、物忘れの原因を突き止め、断ち切ることに成功します。その結果記憶は戻ってきましたが当然幸せなことばかりではなく。そして「巨人」の意味も分かります。
    Buried giantが「忘れられた」に訳されているけど、これは読んでみて初めてわかるネタばれ。
    相変わらずイシグロらしい独特のじれったい語り口です。

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    2018年11月05日
  • 夜想曲集

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    Nocturnes(2009年、英)。
    音楽をメインテーマとした短編集。チェーホフを彷彿とさせる哀切感漂う3編(奇数章)と、アメリカンコメディーのような2編(偶数章)で構成されている。

    「降っても晴れても」が一番好きだ。著者の作品としては例外的に軽妙に笑える。とはいえ、根源にあるのはやはり哀愁なのだが…。全編を通して私が最も好きな登場人物が、この物語の主人公、レイモンドなのである。他の人々が自分の才能を人に認めさせようと躍起になる中、彼だけは自分のアドバンテージを自ら放棄して、親友夫妻のために道化役を演じるのだ。それが本人の意図を超えて、何もそこまでやらんでも、というほど必要以上に道化になっ

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    2022年09月06日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    やっぱりカズオ・イシグロの本。情景描写が上手くてどんな風景を見ているのかよくわかる。あと登場人物が時々出てくるやつとかが多くてあれ?こいつ誰だっけと思うことがあったり。あなたも当然知ってるよねのスタンスで新キャラを出してくる。
    話はかなりグレーな感じだけど、やっぱり落ち着いた雰囲気を出しながら読者に考えを出させようとする。
    ほんの中には答えがありそうでない感じ最高にカズオ・イシグロ

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    2026年05月20日
  • 日の名残り

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    真面目な執事の生涯を綴った物語。執事としてのプライドと、仕事第一が故に見過ごした男女の機微。
    豊かな情景描写と細やかな心の動きの表現が淡々とした日常を鮮やかに思い浮かばせる。

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    2026年05月14日
  • 日の名残り

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    イギリスの歴史本を借りたのでせっかくならイギリス文学を、と一緒に借りた本。

    「この人、執事としての矜持にこだわり過ぎて生きにくそうだなぁ」と思いながら読み進めていたが、最後はとても哀愁を感じる終わり方だった。

    当時のイギリスの貴族文化がどんなものだったのかわかっておらず、教養のなさが浮き彫りになるような感想しか浮かばなかった。
    解説でこの作品の読み方を学んだ。

    この作品から味わえることの半分も味わえてない気がしている。

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    2026年05月06日
  • クララとお日さま

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    静謐
    映画化良さそうじゃねと思った、、
    明言せずに設定を雰囲気とか背景で匂わせてくる本だった

    『でも、カパルディさんは探す場所を間違ったのだと思います。特別な何かはあります。ただ、それはジョジーの中ではなく、ジョジーを愛する人々の中にありました。』

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    2026年04月29日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    ノーベル文学賞受賞記念講演を文庫化したもの。
    イシグロ作品、2020年くらいまでに日本語で出版されたものについては全て読んでいるので、作品に関するちょっとした解説のようなものもご本人の口から聴くことができてとてもありがたかった。私なりの作品に対する解釈が大きく外れていないことも嬉しかった。
    イシグロ作品はどれも、語り手である主人公が根本的な部分で嘘をついていて、それ分かるとき深淵が顔を出す…という内容なのだけれども、どうしてこのスタイルで小説を描こうと考えたか、ヒントを得た別の作品(音楽や映画など)についても紹介しながら解説されていてとても面白かった。
    彼の中での『日本』という国についても言及

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    2026年04月05日