カズオ・イシグロのレビュー一覧

  • 浮世の画家〔新版〕

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    ある一人の男の意識の流れ。この作品に漂う静けさ。ドラマを見たせいもあり、主人公の小野は、渡辺謙さんだった。

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    2019年06月13日
  • 忘れられた巨人

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    母の本棚に残されていた一冊。
    「何を忘れ、何を記憶するのか」によって人や共同体の考え方は大きく影響される。読みながら、頭の中をモヤモヤとした霧がかかった中を少しずつ物語が進んでいく。少し読みにくい文章ではあるが、それもまたこの物語の雰囲気にあってたような気がする。
    自分の記憶しているものの上で、自分の人生は進んでいく。同じ事実でも記憶により別の人生が生まれる事を認識させてくれた作品。

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    2019年03月25日
  • 充たされざる者

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    ネタバレ

    ライダーは著名なピアニスト。中欧のこの国のある街に演奏会の招待できている。街をあげての記念式典だそうだ。タクシーでホテルに到着したが、迎えにでる人もなく、運転手がとまどうばかり。ようやくポーターが出てきたが、本来は支配人が出迎えるべきなのに申し訳ないと何回も詫びる。これから先もライダーは色々な人に用事を頼まれ、それを成し遂げようと努力するごとにまた不思議な出来事にさえぎられるということが続く。不思議な霧の中でお話がすすむような感じを受ける。

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    2018年10月19日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    マルセル・プルースト「失われた時を求めて」
    に影響される。
    語り手の思考の流れや漂流に従って話を展開する。

    個人の記憶と、国家や共同体の記憶。
    それらは同じか、違うのか。

    作家にとってのターニングポイントは、
    静かな花火としてやってくる。

    世界は正せない。
    せめて、文学という狭い世界からだけでも発信していこう。
    文学の多様性を保っていこう。

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    2018年09月01日
  • 充たされざる者

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    人々は自分の理由をしゃべり、空間は自在につながる。

    名を成したピアニストのライダーは「木曜の夕べ」というコンサートに出演のため、ヨーロッパのある町にやってきたが、出会う人々からいろいろな相談を持ち掛けられ打合せもままならない。

    ホテルのポーター、ポーターの娘とその子供、ホテルの支配人、支配人の息子の若いピアニストなどが一方的に事情を話し出す。またそれに丁寧に応えてしまうライダー。またレセプションの会場、カフェ、ポーターの娘の部屋、写真撮影の建築物などががぐるぐると、あるいはドアからドアへとふいに現れ、途切れ、繫がる。

    ポーターの娘とその息子ボリスのアパートに行くあたりまでの7,80ページくらいまでは普通に事が進んでいくようだったが、人間関係と建物の位置関係がだんだん歪んで来て、しかし内容は人々のライダーへの一方的な相談が延々と続く。

    いつのまにかポーターの娘と息子のボリスがライダーの妻と子供になっていて、会話の内容も過激に、絵具を全色塗りたくったようなものになってゆく。いいかげん人々の独白に飽きて、ライダーがリハーサルできないのにいらいらしてくるが、だんだん混沌としてくるあたりから、ウォン・カーウァイあたりの映像でやったらけっこういいのでは、などと思い始めると、物語世界を楽しめた。

    全939ページ、厚さ3.5cm。上下にしたらきっと下を買う人は半分以下かも。1冊で重かったが途中斜め読みしてしまったが、なんとか読み終えた。

    カバー絵の黄色い街灯に照らされたこげ茶の建物と路地が内容にぴったりだ。一点透視の路地の先は歪んだ時空間に続くようだ。

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    2018年08月30日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    丁寧な文を書く人だし、丁寧に話す人だ。こんなジェントルマンな風情の作者も若い頃はたくさん迷いがあったんだなあと。若者は意外と社会のムードとか流行とか空気とかにとらわれすぎていて、真に追い詰められないと自分の本当にやりたいことや欲していることが見えないことがある。この方にとってのそれは、自分の記憶の中の日本をそれが消えてしまう前に書き残すことであり、それが道しるべとなって作家の道を歩き出した。でも作家デビュー後も常に新しい表現対象や方法を思索しチャレンジする姿勢にはこの方の人生に対する真摯な態度が見て取れます。とてもしなやかでしっかりした人だなあという印象を持ちました。

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    2018年06月19日
  • 充たされざる者

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    この作家は、読者に霧のなかを歩かせる。名声高いピアニスト、ある街のリサイタルに招かれるが、住民の厄介ごとに巻きこまれ....。テーマは家族愛だろうか。最後救いあるけど、仕事人間のお父さんへのペーソスを感じる。どこの国、時代、家庭にもありそうな不条理。読み終えるのが難渋で、再読はしたくない。

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    2018年06月25日
  • 忘れられた巨人

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    静か。だ。霧が深いところも。霧が晴れてしまった後も。
    忘れるべき記憶とか、思い出さない方が良い過去とか、そういうのがテーマらしい。ある意味政治的ともいえる主題と、それに付随する読者のあーだこーだな五月蠅い解釈を、越え、貫かれる一本のしんとした静謐に、ただただ心を打たれた。

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    2018年06月14日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    ガスオ・イシグロのノーベル文学賞受賞記念講演を書籍化したもの。英語と日本語の対訳式なのは嬉しいが、99ページしかない本(つまり日本語はその半分)で1404円はさすがに高い。元を取るため英語でも読み直そうかな。
    ただし中身は短いながらも充実したもの。彼を日本人作家のように扱う風潮は批判されて当然だが、同時に彼の文学の根幹をなすものが「記憶の中の日本」というファクターであることが、本作を読むとよく分かる。創作に関わる面では、タイトルにもなっているハワード・ホークスの映画『特急二十世紀の夜』にからめ、「登場人物」にも増して「登場人物同士の関係性」が面白くないと、物語は面白くならないことに気づくくだりが特に印象的。

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    2018年04月30日
  • 忘れられた巨人

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    世界観がすごい、というか、とにかく壮大だった。
    読んでいて思わず上橋菜穂子作品を読んでいる錯覚に陥りそうになる。壮大なファンタジー作品というべきか。
    老夫婦が遠方に住む息子を訪ねて旅に出る。その道程で出会った様々な人々や生き物。様々な風景。様々な出来事。
    人物の交わす会話の中に、文章の中に、いろんな意味や暗示が込められている。愛と復讐と裏切りと恨みと。。。それらを逃さず読まなきゃと一語一句必死で読み進めていたらやたらと時間がかかってしまい大変だった(笑)
    結末は、何とも言えない複雑な気持ちが残った。

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    2018年04月09日
  • 特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

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    カズオイシグロ氏のノーベル賞受賞講演を翻訳、書き起こしたもの。左に英文、右に日本語訳が載っている。受賞時期にネットに毎日新聞の訳文が載っていたが、やはり本の方が読みやすく、文もこなれている感じがして購入。訳者はイシグロ氏の本を多数訳した土屋政雄さんだった。

    20代、30代、40代、の区切りをつけながら、小説を書くに至った経緯や書きながらの分岐点などが語られ、氏の歩んできた道と、文学に対する信頼や希望が語られ、改めて氏の人となりに好感を持った。

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    2018年08月30日
  • 忘れられた巨人

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    日本語タイトルは「忘れられた巨人」ですが、原語の意味は少し違うようです
    それは、今の日本そのものなのかもしれません

    訳本なので原作はどうか分かりませんが、とても読みやすい物語です
    舞台はあの有名ファンタジーを彷彿とさせますが、内容は作者の今までの作品との共通性を感じさせます
    物語の結末が明解にされないところもそうですね

    様々な人物が登場し、そちらの方が大きく変化していくのですが、主人公たちはどこか坦々と自分たちの人生を歩んでいきます
    しかし、その人生にも紆余曲折があったことが明かされていきます

    何かを得たようで、何を得たのか分からないそんな話でした

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    2018年03月08日
  • 忘れられた巨人

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    とうとう読みましたよ!
    今までのカズオ・イシグロさんの中では、一番読みやすかった。
    みんなで竜退治をしよう!というファンタジー。
    いや、もちろんディストピア小説ではあります。
    希望を持って読み進めていくんだけど、まただんだんいやーーな気持ちに(苦笑)

    「忘れられた巨人」とはなにか、わかったときにどーんとまたいやーーな気持ちに…

    浅いレビューですみません。(あずきこ)

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    2018年02月03日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

    購入済み

    話題作

    ドラマ化され、世界的な有名な賞をとり、
    初めてですが読んで見ることにしました
    最初は、なんだか話がよくわからないなあ、、なんて
    思ってましたが、途中からページをめくる手が止まりませんでした
    自分には程遠い世界と思いがちですが、実際に起こっている世界とだといいことを
    認識していたいと思いました。一度は読んでおきたい作品だと思います

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    2017年10月16日
  • 忘れられた巨人

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    ネタバレ

    アーサー王伝説の舞台を借りたファンタジー。人々が物忘れをするようになり、おぼろげに息子のことを覚えている老夫婦が息子の住む村に向けて旅立ちます。旅の過程で、物忘れの原因を突き止め、断ち切ることに成功します。その結果記憶は戻ってきましたが当然幸せなことばかりではなく。そして「巨人」の意味も分かります。
    Buried giantが「忘れられた」に訳されているけど、これは読んでみて初めてわかるネタばれ。
    相変わらずイシグロらしい独特のじれったい語り口です。

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    2018年11月05日
  • 充たされざる者

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    ネタバレ

    英ブッカー賞受賞作家にして既にノーベル文学賞受賞のカズオ・イシグロ。

    彼の1995年発表の第四作目の作品。

    これはねぇ、難解というか、シュールというか、マジックリアリズムというか、不条理小説というか。。。訳者あとがきを入れて948ページはちょっとした拷問!?といっても過言ではなかったと思います。

    ・・・
    裏表紙のあらすじも読まずに読み始めたんですが、読書のちょうど中ごろで、物語の行き先がどうなるか皆目見当がつかず、一旦最後の訳者による解説等を読みました。それで何とか落ち着き、ようやく読み通しました。

    このピアニストのライダーが本当に色々なところでこの町の市民に予定(と調子)を乱される。慇懃なようでいて、ひょっとしたら悪意があるかのような市民たちから、祭り上げられるようにしてヨイショされ、なんだか分かったような分からないようなお願いをされる。それでもうコンサートの日取りが近いというのに、右にいったり左にいったり。

    その間、高校時代の友人と突然再会したり、離れて住む奥さんと子どもたちとの紐帯を回復しようと躍起になったり(しかも奥さんも子どものことも忘れていた)、あるいは宿泊したホテルの一室は昔自分が母と叔母とで住んでいた場所だと思い出したり。

    しかもこのライダーというのは英国育ちなのですが、どうやら舞台となっている場所はドイツ語圏!?近くのような印象。

    コンサートがあるこの“町”の救世主?かのようなライダーですが、町もおかしければ、ライダー自身も優柔不断で、もめごとを増幅させている気がしました。

    予定が常に狂い、会話も常にオブラートに包まれ歯切れ悪く、読んでいて気持ち悪いことこの上ありません。
    私、実はこれ、狂った元ピアニストの想像(夢)だったのでは、と思いましたが、一応そういう終わり方ではありませんでした。徹底して実験的な展開を突き通して完了した、という印象です。

    ・・・
    解説でも述べられている通り、賛否両論だったようですね。

    他方、イシグロ氏は、商業的成功を手にして以降、「これこそが書きたい作品だ」とのたもうたとか。

    個人的にはやっぱり得意ではないですね。

    分かりやすさを求めるわけではないのですが、まどろっこしさや婉曲さにきりきり舞いしてしまい、結局何が言いたいのか分からなくなりました。また長すぎて途中で読むのに飽きてしまったかなという感じです。

    ・・・
    ということでイシグロ作品でした。

    そういえば『クララとお日様』が映画化されるみたいですね。上映が始まる前に原作を読んでおきたいなあ。

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    2026年10月05日
  • 日の名残り

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     「執事」というお仕事について、不勉強であまり知らなかったので、そんな状況で読み進めていて、なかなか物語に入っていけなかったのが残念です。
     でも、とても綺麗な日本語で翻訳されていて、心地よく読むことができました。
     イギリスについて、その文化や歴史を学んでから、また再読してみたいと思います。

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    2026年10月02日
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

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    映像を見て言葉にしているかのように鮮明でリアリティのある一方で、題材は空想のようであり現実と地続きのような話だった。
    海外文学だからなのか、主人公にとっての親友が特別気の合うひとにも大切にしたいと思えるような人物像にも思えなかった。

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    2026年09月26日
  • 夜想曲集

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    音楽をめぐる短編集。全編通して、才能があることと、それを活かせる場があることは別次元か、という問いかけが浮かぶ。歌う人、聴く人、作る人などを通して、音楽そのものが語る言葉にも興味をひかれる。

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    2026年09月08日
  • 日の名残り

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    英国の屋敷を支えてきた誇り高き執事の視点で描かれる物語。理想の執事像と主人への盲目的な献身に固執するあまり、同僚女性からの好意や衰えゆく父親への情、主人の過ちを直視する理性など、人生においてより大事なものを取りこぼしていく。
    社会全体の忠誠から個人の幸福へと価値観が移り変わる時代に取り残され、職務にすべてを捧げた男が黄昏時に振り返る人生が切ない。

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    2026年09月11日