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Posted by ブクログ
本書では、農業技術を「技能」と「技術」に分けて論じている。
「技能」と「技術」の違いを一口で言えば、「マニュアル化できるか」ということらしい。
譬えるならば、「専門店で板前が握る寿司」と「スーパーで売っているパート労働者が作るパック寿司」の違いということである。
また本書の中では、「名人」と呼ばれるような農家が持つ技術を「技能」と呼び、過去のデータからの分析や、農学等の科学的な手法、演出や宣伝といった小手先のマーケティングを「技術」と呼び、区別している。
本書で「どちらか一方が正しくて他方が間違っているなぞという極論をしようとしているのではない」とあるとおり、本来であれば農業には「技能」と「技術」の両方が必要なのであるが、率直な感想で言うと、本書の論調は「技能」に偏りすぎている感じがした。
「技能」は確かに「マニュアル化できない」ものなのであるが、「技能」と「技術」の切り分けができていないために、マニュアル化できる技術、マニュアル化すべき技術まで、マニュアル化できない「技能」であると分類してしまっているところにも問題があるのではないか。
「技能」と「技術」の問題は、農業だけではなく、製造業など他の業界でも同様の問題が起きている。
製造業ではまさに、技術伝承の放置が問題となっている。
製造業の現場の全てがオートメーション化されているというのは誤りで、実際には、特に設計・開発の工程や、鉄鋼やゴムなど素材産業の製造現場では、技術者の暗黙知に頼りきりになっている場合が多い。
本書でいう「技能集約型農業」が必要なのは分かるが、「専門店で板前が握る寿司」が滅多に食べられないのと同じように、「技能集約型農業」により作った作物を、一般家庭で毎日食べるのは現実的ではない気がする。
それよりも、「技能」のうちマニュアル化できるものはマニュアル化して、「スーパーで売っているパック寿司」を作る「パート労働者」の「技能」を高めて、「マニュアル依存型農業」の品質を高めていくことのほうが現実的な気がする。
批判する気持ちは分からなくはないが、批判の先に何があるのか。
絶望したとして、絶望の先に何があるのか。
何もなくてもよいが、少なくとも本書は「正しい」絶望法ではないのではないだろうか。
近年の農業について、「「大東亜共栄圏」だの「神国日本」だの「神風」だの、虚偽の繁栄論がマスコミと「識者」によって流布された」というのは、確かにあったのかもしれない。
過度な期待は持つべきではないが、過度に絶望する必要もない。
ほどほどに期待して、ほどほどに絶望するのが、日本農業に対する「正しい」態度なのではないだろうか。
TPPなど外部環境の変化もあり、農業に注目が集まる今だからこそ、過度な期待も絶望せずに、ありのままの中立的な視点で農業を見るために、読んでおくべき一冊。
Posted by ブクログ
今まで有機栽培に対しての懐疑や、生産者の顔写真についての疑問はあったが、基本的に企業の農業参入や農作物の増産については肯定的に見ていた。
しかし、この本を読んで効率化による増産や企業の参入ではどうにもならない日本農業の問題が理解できたと思う。
それは日本中どこへ言っても変わらない、無秩序な風景と繋がっている。
自分たちの住む地域をどうしたいのか?地域の土地をどう利用するか?という将来を見据えた計画を立てることを、していない事が農地の問題でより深刻に浮き彫りにされている気がする。
私有財産としての土地と地域社会という公共の財産としての土地の概念のすり合わせを、将来を見据えてしていくことが、農業に限らずこれからの日本にとって必要なことだと考えます。
Posted by ブクログ
企業参入が進み、有機栽培がもてはやされ、農業は成長産業と言われているが、実際には技能をもった農業者が減り、マニュアル通りにしか作れない素人農業者が増えているため、日本の農業は衰退しているという話。農業も製造業と同様分業化・機械化が進んでいること、および消費者の舌が鈍化していることがその原因とのこと。内容には極めて同意。品質で勝負できなくなると、日本産の作物は、労働力の安いアジア地域産とどう差別化するのか。日本の売りは、農業・工業ともに技能だ。それは日本人の誇りだ。それが失われつつある。日本が生きていく術について本気で考えていかなくてはいけない。
Posted by ブクログ
日本農業の崩壊の一因に「味覚の劣化」をあげている点には非常な違和感を覚えるが、基本的には著者の悲憤慷慨と対策案については賛成。
「昔の野菜は美味しかった」とか「現代人は味覚が劣化している」とかは嘘だと思う。以前の日本で美味しい野菜を食べたり味覚を追求できるような食事をしていた人はほんの一握りだし、品種改良や冷蔵配送技術の向上で平均的な水準はあがり美味しい野菜と食事を楽しめてる人の絶対数は増えていると思う。ひと昔前の群馬や長野の食事なんて塩分過剰で現代人には食べられたものでは無いという話もあるし。ずいぶん上の水準か季節限定の旬の時期の農村の話じゃないかね。
あと技能向上が農業の肝だと言われても、実際問題として対策が難しい気がする。
農家の実質所得は都市住人と比べて高いという現実認識とWTOルールに則った補助金政策の転換、情報公開を活かした農地保全の転用規制が両輪な気がします。
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