水産庁を経て大学の水産学部の教授になった筆者が、漁業と流通に関わる問題を論じている。
タイトルが「日本人が知らない」である。確かに、農業に比べれば漁業に関する書籍は少ないと思う。著者は数々の規制撤廃や認証制度などに対し、根拠を示しながら一部反対の立場を取っている。こうした制度のメリットも認めつつも
...続きを読む「そんなに単純じゃない」と批判と対案を示している。認証制度は一部企業による利益誘導の手段である、という言及は全くその通りだと思う。
流通業に関わる者として耳の痛い話題もある。流通側の効率重視の姿勢が日本人の魚離れを助長してしまっているようだ。魚の「目利き」による品揃えをしている企業が支持を得ており、消費者の嗜好の変化よりも「美味しくないから魚を食べない」人が増えていることが裏付けられる。一消費者としても美味しい魚をもっと食べたいとも思うが、しかし日々の忙しさの中で肉より手間がかかる魚に手が伸びにくくなっているのも現実だ。
読んでいて魚を無性に食べたくなる一冊。しかし、鮮魚を買い、調理する時間が無いのが残念。