福田和代のレビュー一覧
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ネタバレ表紙のタイトルが気に入って読んだ。短編物は一般小説を読んでいるとどうしても物足りなくて、かといって短編だけど、一つ一つが最後につながって..といったものもそろそろ読み飽きてって思ってましたが、いい意味で裏切られました。一話一話はボリュームがないはずなのに奥深くていろいろ考えさせられる、それでいて、結末に驚かされる。決して小粒ではない短編なのに読み応えのある大粒の傑作集でした。女性作家が集まって作られた作品ということもあり、優しく包み込まれるような話ばかりで、一気に読むよりは一日一話づつちょっとづつ読むのがいいのかもしれません。
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Posted by ブクログ
これまで様々な人あるいは場所が標的のテロを、題材にした小説はあるが、本作品は物流がテロの標的になるということで画期的。
時は、オリンピックを目前に控える2021年の東京。単行本では2000年が舞台となるが、コロナ渦により1年延期となったことにより、文庫化にあたっては、2021年に変更されている。
まず、配送トラックを狙った青酸ガステロ事件が起きる。オリンピックの警備の隙を突き、続けて高速道路や鉄道が破壊され、交通が分断。東京圏に物資が届かなくなり、スーパーやコンビニで商品が次第に品薄に。
犯人から届く犯行声明。
「これから、TOKYOは孤島になる。心ゆくまで楽しめ」
人びとは食料品や生活用品を求めて、恐慌を来し始める。
「TOKYOが空っぽ(ホロウアウト)になってしまった」
著者は執筆の動機を、東日本大震災での出来事だと、あとがきで記している。宅配の人に東北の友人へ物資を届けてもらおうと依頼するが、危険な場所へ行ってもらうにもかかわらず快く引き受けてくれた。その時、ものを運ぶ仕事に就く人の職業意識と誇りに感銘を受け、いつか小説に書こうと。
本作品には、新聞記者や刑事、鉄道作業員にスーパーの店員等々、種々雑多な仕事に携わる人物が登場するが、やはり主役となるのは、配送を受け持つトラック運転手とその仲間たち。
物流テロというこれまで経験の無い困難に、自分たちの役割を果たさんと、トラック運転手たちは果敢に挑み、そのセリフがカッコイイ。
「俺たちは、単にモノを運んでるわけじゃない!俺たちが運ぶのは、信頼だ」
インフラの分断により、さらに忘れてならないのが、廃棄物処理。本書のもうひとつのテーマはここにあるのだろう。
物流は、人間の血管のようなもの。必要なものを必要な場所に届けるのが動脈なら、廃棄物を処理するのが静脈。静脈が詰まれば人は死に瀕する。
現代日本でも、放射性廃棄物の最終処分所ををどこにするのか決まらず、押しつけられるのは地方。何かを作るなら、それが役割を終えて捨てられるところまで考えなくては。
テロを起こす動機が、産業廃棄物の不法投棄にあることがわかり、犯人を追い詰めてゆく。ここで活躍するのがまた、トラック運転手たち。
「ローマの皇帝は、市民の目を政治から逸らすため、パンとサーカスをふんだんに与えた。現代のこの国も、オリンピックを利用して同じことをやっている。あんたは腹立たしくないのか?」
犯人の言葉に、我々もどう応えられるだろうか。 -
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ミステリー小説家のアンソロジー。
長編にできそうなネタを惜しげもなく短編に仕上げている作品もあり、とても楽しめた。
特に下記三作品が面白かった。
近藤史恵「未事故物件」
乙一「沈みかけの船より、愛をこめて」
新津きよみ「女の一生」
●近藤史恵「未事故物件」
引っ越したアパートの上の部屋から午前4時に洗濯機の音が聞こえてくる。しかし部屋は空き家だという。騒音に悩まされた主人公は音の正体を探り始めるが…。
●福田和代「迷い家」
泥酔して他人の家に上がり込んだ主人公。食卓に用意された鍋を食べ、食器を1つ持ち帰る。後日、その屋敷の住人が行方不明になったと耳にする。しかも主人公が迷い込んだ日だとういう。知り合いの警察に相談するが…。
●乙一「沈みかけの船より、愛をこめて」
離婚する両親のどちらと暮らすか。主人公の女子中学生は冷静に判断するため、父母の状況を調べ始めるが…。
●松村比呂美「置き去り」
一大決心をしてジャングルツアーに参加した主婦。途中のトイレ休憩で置き去りにされてしまう。いったいどうなるのか…。
●篠田真由美「迷い鏡」
●新津きよみ「女の一生」
赤ん坊を事故で亡くした主婦。夫とも離婚することになり実家に戻るが兄嫁と折り合いが悪くなるり、アパートで一人暮らしを始める。そんな時、河原のホームレスと親しくなり、アパートへ招くのだが…。
●柴田よしき「迷蝶」
妻を亡くした定年退職者の主人公。唯一の趣味である蝶の写真撮影で知り合った老人と話すうち、過去の記憶が蘇る…。
●大沢在昌「覆面作家」
評判の覆面作家は誰なのか?小説家の主人公は古い友人のことを思い出す…。 -
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ネタバレ近藤史恵「未事故物件」
一人暮らし始める前に読まなくてよかった。
ホントに怖いのは生きてる人間。
でも、毎日4時に洗濯機回されたら発狂しそう……
福田和代「迷い家」
舞台は現代日本だけど、導入はほんのり日本昔話テイスト。
優しいお出汁のお鍋食べくなっちゃった。笑
最後のオチはちょっと強引な気もするけど……。おちょこに指紋ついてるくらいなら、他のものにもベタベタついてるでしょって。
乙一「沈みかけの船より、愛をこめて」
自分の両親も主人公と同年代くらいの頃に離婚しているからか、感情移入がはんばない。しかも4つ下の弟がいるのも一緒!
両親のどっちについていっても良いよって、子供の気持ちを尊重してくれてるのは分かるけど、その実ひどく酷だよね。特に父も母も好きなら。どっちかを選ぶってことは、どっちかを選ばないってことだよね……分かりみが深すぎる。
でも、父母が仲良くない空気の中で過ごす家庭はひどく心がしんどいので(この描写も分かりみ!)離婚してくれて良かったとも思ったなぁ……などと昔のことを色々思い出した。
松村比呂美「置き去り」
オチまでキレイにまとまった作品。
慣れない外国、しかもジャングルになんて置き去りにされたら……考えるだに恐ろしい。時間にルーズな私は団体旅行には行けないな。
登場する女性がみーんなこの「置き去り」経験があるって言うのはなんか笑っちゃった。
篠田真由美「迷い鏡」
すごく少女漫画チックなお話。少女漫画にしたら映えそう。古い洋館とか、樹木の迷路とか。
最後がなんかふんわりで、個人的にはもちょっとアクの強さがほしかった。
新津きよみ「女の一生」
パラレルワールドは存在するかもしれないんだよ。観測されてないだけで、ないとは言いきれない。
とすると、最後の部分は主人公が自殺してしまった世界と、隣に立った男性が自殺したせいで主人公が自殺できなかった世界が、重なったのかも。同じフィルムに2回写真撮ったみたいに。
柴田よしき「迷蝶」
あーん、やられた。
できすぎなくらい偶然が重ならすぎ…って途中まで思ったけど、それは思惑の元に起こったものだったという。こういう展開、大好き。
自分の何の気なしの行動がどこかで重大な事態(そしてそれはとてつもない悲劇かもしれない)を引き起こしている可能性は誰にでも常にあるなぁって。
風が吹けば桶屋が儲かる、の類似のことわざ?バタフライエフェクトから(もともとは物理用語?)、この話の核に蝶を据えたのかしらとか考えたり。
大沢在昌「覆面作家」
大沢先生の作品は学生の頃から好きだったので、この短編ももちろん好きでした。
それぞれ作家とゲームクリエイターになったかつての親友(と呼んでいいのか?となっていましたが)、それぞれが知らないところでそれぞれの作品のファンにひっそりとなっている…っていうエピソードで妙に泣きそうになった。
あとがき/福田和代 -
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ネタバレ感謝する場面が多く、人と人が支え合うことで社会が成り立っていることを改めて感じた。
満たされた生活ができている喜び、当たり前すぎてありがたさに気づけないでいた。一つのモノにどれだけ多くの人が関わっているのかを認識した。物流のありがたさ。無駄がない分脆弱な現代。東京が空っぽになってしまう恐怖。地方と都市の関係。
「空っぽになる」と「溢れる」ことの2つの問題点が浮き彫りになり、考えさせられる一冊。
人々の大量生産と大量消費の豊かな生活が、誰かを苦しめていることがある。また、その生活の代償は巡り巡って自分に帰ってくる。
コロナ禍でより一層浮き彫りになったごみ問題。ごみを引き取ってもらう価値について考えた。捨てることにも金と手間がかかる。あまり目を向けられない職で働く人がいることが寂しい。
「ローマの皇帝は、市民の目を政治から逸らすため、パンとサーカスをふんだんに与えた。」という文が印象に残った。 -
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ネットの中で、自分ではない自分が生まれ、育っている。肌に粟が立つ感覚がした(p34)
ディープフェイク(AIによる画像合成技術)をテーマとした福田和代さんの最新小説。「鉄腕先生」と呼ばれ、テレビで活躍する教師・湯川が、女生徒とのホテル密会写真を週刊誌で報道され世間は大炎上、写真がディープフェイクだと分かった湯川は犯人を見つけるべく独自捜査するが、周辺でいろいろな事件が起きていく… 一人の有名人が1枚の偽造写真の拡散だけで社会的地位を失い、追い詰められていく姿がリアルに描かれる。完璧に法整備されていない現在のネット社会で誰でも起き得る話であり、最新のネット犯罪系に興味ある人にオススメの一冊。 -
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ディープフェイク(AIによる画像合成技術)で精巧につくられた動画がネット上で拡散され、見に覚えもない教師が追い詰められていく…
そういうくだりから始まり、ネット上の中の自分が自分なのに自分でない…訳がわからないまま名声も仕事も家庭も失われて。
追いつめられる恐怖感は半端なくこちらちも伝わってくる。
読むスピードが止まらない。
早く、早く解決してほしい一心で一気読み。
しかし、なぜ人は理性的な情報には動かないのに怒りや悲しみや同情などの心を揺さぶる強い感情には動かされやすいのか。
悪意に満ちた誹謗中傷を簡単にするのか。
AI技術が発展しても道を間違えない良い方向へと進んでくれたらと願う。