西條奈加のレビュー一覧
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時代が変わっても人の営みは一緒。頑固、意固地な性分、わかっていても変えられない徳兵衛さん、分かる。隠居暮らしが存外難しいのも…「慣れぬお手玉をを三つも四つも手にしているよう。ひとつ放り投げても、また一つ手に返ってくる。身内や周囲の悶着はまさにお手玉に似ている。ただ安穏と無縁だったからこそ達者でいられたのかも。安穏に身を置けばたちまち腐り出す。それもまた一つの真理」「日常のそこかしこに諍いの種は落ちていて、隙があればたちまち芽吹く。ひとつずつ丹念に摘み取っていくのが、長く営む唯一の秘訣かもしれない」「調子のいい者は、嘘やへつらいを紛れ込ませるために口達者にならざるを得ない」人生訓もたっぷり。
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御師の手代見習い、弥五郎は助けたことが縁で、材木商の
巽屋清兵衛のお伊勢参りに用心棒として、同行することに。
訳ありの弥五郎と清兵衛の道中には、様々な事件が待ち受ける。
第一話 旅立ち 第二話 小田原 第三話 浜松
第四話 桑名 第五話 松坂 第六話 伊勢
最終話 大和
参考文献有り。
伊勢講の御師の手代たちの道中での仕事や様子が知りたいと
思っての読書でしたが、物語自体が面白かったです。
行く先々での事件の連続、立ち回り、恋愛、ミステリー、
事情を抱えた人物たちは如何に?な、エンターテイメント。
登場人物それぞれの個性が光り、その心情も切ない。
特に、弥五郎と清兵衛の、双方の事 -
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大好きな西條奈加さん♪
今作は万両店「飛鷹屋」のお話。
一代で財を成した廻船問屋の主人・鳶右衛門
正妻の子・鵜之助
妾達の子・お瀬己、お日和、お喜路の三姉妹
主人公の鷺之助は末っ子の十一歳ながら個性豊かな三姉妹に振り回されて疲れる毎日をぼやきながら送っています。
「姉さん、また事件ですか⁈」の帯にあるようにちょっとした事件を起こしたり、巻き込まれたり…
西條さんらしく読みやすくてテンポ良く暖かい。
三姉妹の個性は大店の娘特有の鼻持ちならない嫌な女達と思いきや、話が進むにつれ好感が持てる。
鷺之助が自分の事を「鷺はね…」なんて言うからもう可愛いです(⑉︎• •⑉︎)
その鷺の出生にまつわ -
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主人公の鷺の介(さぎのすけ)は11歳。
日本橋の廻船問屋『飛鷹屋(ひだかや)』の末っ子である。
父親の鳶右衛門(とびえもん)は行商人から成り上がり、一代で身代を築いた。
うなるほど金がある。
さて、鷺之介は三人の姉たちに振り回される毎日にうんざりし、早々に三人とも嫁に出して、静かな生活を送りたいと望んでいる。
彼が尊敬するのは、「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」を商人の心得と教えてくれた、長兄の鵜之介(うのすけ)だ。
姉たちに反感を抱くのは、11歳という年齢になって、鷺之介が自分の頭で考えることに目覚めたためかもしれない。
たとえば、金持ちの家に生まれた自分と比べ、そうでない同年代の -
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廻船問屋「飛鷹屋」の末っ子、鷺之介は、齢11。
クセが強過ぎる三人の姉たちに振り回される日々を過ごす。
万両店での事情、身分の違い、男女の事情、そして謎解き。
・螺鈿の櫛・・・お瀬己の嫁ぎ先で大事な櫛が行方不明に。
知るのは家の事情と男女の心の行き違い。
・ふういんきり・・・芝居小屋で仲良くなった五百吉は、怪しい
男たちに狙われていた。事件の原因は、封印切!
・箍の災難・・・箍回しを小僧の根津松に教わるが、侍に難癖を
付けられてしまう。根津松の決心とお日和の心情。
・とりかえばや・・・戯作者に弟子入りしたい、お喜路に付き添う。
が、訪ねた一刻 -
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人の変化、子どもの成長、そういったものがしみじみと心に迫る感じのいい時代小説でした。
主人公となるのは代々続く糸問屋の主人だった徳兵衛。店を息子に任せ悠々自適にすごそうと考えていたものの、趣味も見つからず暇を持て余す日々。そんな中、徳兵衛の元に孫の千代太が訪れるようになり、徳兵衛の周囲はにわかに騒がしくなっていきます。
まず徳兵衛の心理の書き方が絶妙。引退を引き留められるかと思いきや、思ったほどの反応は得られず、自分より女将さんのほうが頼られる瞬間に悶々としたり、そんな女将=妻にどこか遠慮がちになったり。
隠居する徳兵衛のこの年ならではの悲哀、というほど大げさなものではないけど、自尊心と