スティーヴン・ハンターのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
狙撃手ボブ・リー・スワガー(Bob Lee Swagger)シリーズ第4弾です。書評を読むとこれがもう目を覆いたくなるほどの酷評。読んで良いものかどうかちょっぴり迷ってしまいましたが、シリーズの大ファンの私として読まないわけにはいかない、ハンター氏を信じて地獄まででもついて行くのだ、と本書を手に取りました。
読んでみてどうだったか……。なんと”釘打ち師”「ボブ・ザ・ネイラー(Bob the Nailer)」の異名を持つ伝説の狙撃手に銃を持たせず、チャンバラをさせてしまいました。あぁ……、なんと言うか、やってしまいましたねーって感じです。(笑) つまり日本人が読むとディテールに違和感があるんですね。日本を舞台にしており、侍をテーマに日本人の精神世界にまで入りこんで書かれているだけに、当の日本人にすれば「それは違うだろ!」とツッコミを入れたくなるところがたくさんあります。加えて、日本人以外の読者に読ませることを前提にしているので、やむを得ないことながら、日本特有のものについてはくどくどと説明がついてくる。例えば207Pの文章に次のような一節がある。
敵が、刀の血をはらう儀式的な行為、血振りをしているのが
見え、そのあと、修練を積んだことを物語るかろやかな動き
で、刀を鞘におさめる儀式的な行為、納刀をするのが見えた。
これをもし日本人向けに書くならシンプルにこう書けば済む。
敵は血振りをすると刀を鞘に納めた。
これは訳者が悪いのではない。訳者は出来るだけ原文に忠実に訳すことを心がけたに違いないのだから。では、ハンター氏がなぜこのようなくどい表現をしたかといえば、日本人以外の読者にはこのような書き方をしないと解らないからだということは明らかであろう。日本オタクで時代物映画を熱心に観ていればともかく、普通の外国人は人を斬った後血振りが必要なことなど知らないし、納刀の際の儀式的な動き、すなわち、左手を鞘の口に添え、鍔に近い刀の背を左手に当て、その刀を左手の上を滑らせながら切っ先まで引いて鞘に納める一連の動作を思い描くことなど出来ないからである。
そのような違和感を我々日本の読者に感じさせはするが、そこには目をつぶって読み流し、むしろハンター氏の持つ「侍あるいは日本人の精神世界に対する畏敬の念」を感じながら物語を読み進めると良いでしょう。実際にハンター氏は多くのサムライ映画を観ているようです。ハンター氏による謝辞にも、氏が最近のアメリカ映画のていたらくを嘆き、サムライ映画『たそがれ清兵衛』を賞賛するくだりがある。本書を読めば、氏が日本的なものにかなり傾倒していることがありありと判ります。本書は「スティーヴン・ハンター版・忠臣蔵」です。黒澤明監督の『七人の侍』をジョン・スタージェス監督が『荒野の七人』としてリメイクしたように、ハンター氏はボブ・リー・スワガーを主人公にしたサムライ映画を作りたかったに違いありません。我々は『荒野の七人』を観るように、この小説を楽しむべきなのでしょう。 -
Posted by ブクログ
「ダーティーホワイトボーイズ」で登場した人物たちがキーマンとして再登場。これから読む人は、「ダーティーホワイトボーイズ」を読んでからの方がより楽しめますよ。
とはいえ、過去と現在が入り組んで語られるので、状況を把握するのに時間がかかるのも事実。一度状況や人間関係が理解できれば、面白さは倍化してゆきます。
下巻も楽しみです。
PS.
警察本部と警官が無線で連絡し合う場面で使われる「Negative」を「否定的だ」と不自然な日本語に訳しているが(P93他)、これは航空管制官なども言い間違いや聞き間違いを防ぐために、「No」の代わりに使われているのも知らない(⁉)翻訳者って…ここは素直に「ダメだ」でOKでしょう。 -
Posted by ブクログ
「極大射程」以来のスティーヴン・ハンター。
以下はネタバレありの感想。
文庫本32章700ページを超える分量にも度肝を抜かれるが、6章(150ページ)あたりで正義側の主要登場人物のほとんどが殺される。(と、思わされる)
罪悪感を持たぬ殺人者と罪悪感に苛まれる刑事が出会うという設定もナイス。
そして本書の魅力は、トンデモナイ悪人を描きながらもリアリティぎりぎりの人物造形と彼らの内なる心の葛藤や気持ちがなぜか共感もしくは理解出来るという作者の職人技にある。
本書の主人公、悪の権化ラマーは凶暴だがバカではない。無理矢理脱走犯仲間にされたリチャードは彼を以下の様に狡猾な無秩序の天才と称する。「ラマーは常に考えている。何か課題を与えたら、彼は真っ先に、しかも正しくそれを解決するだろう。とはいっても、それは普通の人間のやり方ではない。他人より自分が多くを得られる様に解決するのだ。それが彼の唯一の道徳律であり、何の後ろめたさも疑問も持っていない。彼は情熱的かつ揺るぎない確信を持ってその道徳律を行使する」
解説の鵜條芳流氏の言葉。「悪い男に限って人の心を捕らえて離さない。華麗な悪の前では、正義さえも霞んで見える時がある。アメリカンヒーローを描いて来た男は、どうやらそれに気付いてしまったようだ。悪が栄えた試しなし。だが、栄えないからこそ刹那で美しい」
一方の正義側キャラは48歳のハイウェイパトロールの巡査部長パド。妻子がありながら部下の奥さんと不倫、再び良き家庭を取り戻したいと願いながらも、目先の欲望に負けて自己嫌悪に陥る日々。
そして、前半の魅力的キャラは人質となった老夫婦。リタイアして狩猟が趣味だった夫は、悪にも怯まない。巨悪に対して卑屈にならず勇敢にも対峙しようとする。
分厚い文庫本を終始飽きさせることなく引き付ける筆力は流石です。 -
Posted by ブクログ
スティーヴン・ハンター『銃弾の庭 下』扶桑社ミステリー。
ドイツ軍の狙撃兵とアール・スワガーの攻防。
退屈な時間。スティーヴン・ハンターらしい銃火器や兵器の描写ばかりが目立つだけで、消化不良のストーリーに、期待した面白さはなかった。
今月の扶桑社ミステリーは、キム・オンス『野獣の血』も期待外れだったし、一体どうしたことか。
陸軍少佐に昇進し、ロンドンに飛んだアール・スワガーは、戦略事務局のジム・リーツ中尉とともに対ドイツ狙撃兵作戦の立案にあたる。準備が整い、海峡を渡って最前線へと身を投じたスワガーとリーツが目にしたのは、過酷な戦地の現況だった。
定価1,320円
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Posted by ブクログ
ハンターは好きな作家で、ほとんどの訳書は読んでいる。
上巻だけで読後感もおかしいが、ちょっと書いておく。
ボブ・リー・スワガーは、ジューバ・ザ・スナイパー(『狙撃手のゲーム』のターゲット」をはじめ、過去に政府のために行った狙撃についてその罪を問われることになった。
告発したのは「マザー・デス」と呼ばれる下院議員。BLM(ブラックライヴズマター)の動きに乗って、狙撃の根底に有色人種に対する差別があるというものだ。選挙を有利に進めるためのいいがかりに過ぎないが、ボブは「非道危険行為(ウォンントン・エンデインジャメント)」として票決を受けることになる。