スティーヴン・ハンターのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
前作『第三の銃弾』でダラスを舞台にJFK暗殺の可能性としての新説を試みたハンターという作家。狩猟を趣味とし銃器に造詣が深い作家ということでオリジナルな道を歩んでいる昨今であるが、そもそもが傑作『真夜中のデッド・リミット』に代表されるような本質的には冒険小説作家である。強い権力に反発し、弱く、庶民の側であり、無名のヒーローに、命がけの活躍物語を与えることを得意とするのがハンターの神髄であると、ぼくは見ている。
ボブ・リー・スワガーが名うての射撃手としてベトナム戦争を闘ったが、今では作者の分身のように60歳後半の老境でありながら、老いに逆らい今でも好んで冒険を求めて、歴史の謎に迫ってゆく。今回は第二次大戦中、独ソ戦において活躍した女性スナイパーの存在について個人的に惹きつけられるものを覚え、彼女の痕跡が消えた土地ウクライナへとスワガーは向かう。
女性スナイパーは別名<白い魔女>と呼ばれる金髪碧眼の美女。彼女の存在については、モスクワ在住のジャーナリスト、キャシー・ライリーがスワガーに持ち込んできた。二人はウクライナで謎の妨害に合いながらも真相を求めて危険な追跡行を展開してゆく。彼らの捜査行と並行して交互に語られるのが過去の白い魔女の時代1944年の夏の物語だ。現在と1944年を交互に行き来しながら語られる物語は、ドイツ側のユダヤ人虐殺に深く関わる上位指導者の暗殺や、大物スパイの存在へと近づいてゆき、スリリングである。
独ソ戦でのスナイパーを描いた映画『スターリングラード』を観ていたので、<白い魔女>の登場シーンであるスターリングラードでの市街戦の様子は鮮やかに眼に浮かぶようだった。そしてヨーロッパがナチに蹂躙され、ソ連がスターリンの粛清に怯えながらも、東部戦線は累々と屍の山を築いている頃の話だ。あまりに情報の少ない国、ウクライナを舞台にした本編は、伝説のスナイパーの人生を辿りつつ、鏡のように時代を超越してシンクロナイズしてゆくスワガーという名スナイパーの現在の冒険とクロスして、一発の銃弾という一点にすべてのエネルギーを集約させてゆく。見事なクライマックスである。
そしてこの架空ではあるが、そんな存在があったとしてもおかしくない1944年の英雄、<白い魔女>は周囲の巨大な陰謀やスパイを巻き込んで、驚くべき結末を見せる。さらに現代にも、イスラエルの情報機関モサドの分析官のもとに、この物語と関連するであろう遠い事件が襲来して、それらが挿話として各所に挟まれているが、これまたハンターの仕掛けである。
やはりこの作家は銃器を専門とした物語を紡ぎながら、基本的には名もない一人一人の人間の知られざる活躍を描くのが何とも巧い。ホロコーストの恐怖と時代への怒りを登場人物たちに投影しながら、作者は平和への勇気と名もなき兵士たちの命がけの行動への祈りを捧げているのだろう。
作者あとがきで明らかになるが、実際にハンターはウクライナに赴き、キャシー・ライリーという実在で同名のガイドに連れられ、あの時代のことを丹念に足で調べたという。68歳という巨匠の熱い心は今なお健在である。 -
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前作『第三の銃弾』でダラスを舞台にJFK暗殺の可能性としての新説を試みたハンターという作家。狩猟を趣味とし銃器に造詣が深い作家ということでオリジナルな道を歩んでいる昨今であるが、そもそもが傑作『真夜中のデッド・リミット』に代表されるような本質的には冒険小説作家である。強い権力に反発し、弱く、庶民の側であり、無名のヒーローに、命がけの活躍物語を与えることを得意とするのがハンターの神髄であると、ぼくは見ている。
ボブ・リー・スワガーが名うての射撃手としてベトナム戦争を闘ったが、今では作者の分身のように60歳後半の老境でありながら、老いに逆らい今でも好んで冒険を求めて、歴史の謎に迫ってゆく。今回は第二次大戦中、独ソ戦において活躍した女性スナイパーの存在について個人的に惹きつけられるものを覚え、彼女の痕跡が消えた土地ウクライナへとスワガーは向かう。
女性スナイパーは別名<白い魔女>と呼ばれる金髪碧眼の美女。彼女の存在については、モスクワ在住のジャーナリスト、キャシー・ライリーがスワガーに持ち込んできた。二人はウクライナで謎の妨害に合いながらも真相を求めて危険な追跡行を展開してゆく。彼らの捜査行と並行して交互に語られるのが過去の白い魔女の時代1944年の夏の物語だ。現在と1944年を交互に行き来しながら語られる物語は、ドイツ側のユダヤ人虐殺に深く関わる上位指導者の暗殺や、大物スパイの存在へと近づいてゆき、スリリングである。
独ソ戦でのスナイパーを描いた映画『スターリングラード』を観ていたので、<白い魔女>の登場シーンであるスターリングラードでの市街戦の様子は鮮やかに眼に浮かぶようだった。そしてヨーロッパがナチに蹂躙され、ソ連がスターリンの粛清に怯えながらも、東部戦線は累々と屍の山を築いている頃の話だ。あまりに情報の少ない国、ウクライナを舞台にした本編は、伝説のスナイパーの人生を辿りつつ、鏡のように時代を超越してシンクロナイズしてゆくスワガーという名スナイパーの現在の冒険とクロスして、一発の銃弾という一点にすべてのエネルギーを集約させてゆく。見事なクライマックスである。
そしてこの架空ではあるが、そんな存在があったとしてもおかしくない1944年の英雄、<白い魔女>は周囲の巨大な陰謀やスパイを巻き込んで、驚くべき結末を見せる。さらに現代にも、イスラエルの情報機関モサドの分析官のもとに、この物語と関連するであろう遠い事件が襲来して、それらが挿話として各所に挟まれているが、これまたハンターの仕掛けである。
やはりこの作家は銃器を専門とした物語を紡ぎながら、基本的には名もない一人一人の人間の知られざる活躍を描くのが何とも巧い。ホロコーストの恐怖と時代への怒りを登場人物たちに投影しながら、作者は平和への勇気と名もなき兵士たちの命がけの行動への祈りを捧げているのだろう。
作者あとがきで明らかになるが、実際にハンターはウクライナに赴き、キャシー・ライリーという実在で同名のガイドに連れられ、あの時代のことを丹念に足で調べたという。68歳という巨匠の熱い心は今なお健在である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公は退役した海兵隊員、ベトナム戦争の英雄ボブ・リー・スワガー。銃を持てば右に出るものなしの天才スナイパーです。
巧妙な罠に嵌ってしまったボブの戦闘を描く、いかにもアメリカ的な、ハリウッド映画さながらのアクション小説。
が、そんじゃそこらのよくあるアメリカンヒーロー物と一緒にしちゃあいけません。
ボブの老練の渋さに痺れて一気読み間違いなしの超ド級のおもしろさ。
高度な頭脳戦も繰り広げられ、単純なドンパチ物ではないのです。
そして、これは徹頭徹尾「銃」の物語でもありました。
銃というものがこれほどまでに哲学的に描かれているのには驚きました。
銃についての薀蓄が満載で分からないながらも楽しい。慎重に事前準備を重ねるボブの仕事っぷりがとても地味なのも意外。
ハリウッド映画のような派手なアクション、弾丸飛び交う展開が満載ながらも、ボブの静かで冷静なプロの姿勢によって、静謐で緊張感ある雰囲気が常に漂います。
脇を固める登場人物たちも素晴らしい。敵も、仲間も、犬や鹿でさえも!
ボブの無実を信じる人々がボブを信じる理由というのが、「あの男が失敗するはずがないから」というのがなんともかっこよかったです。
銃に魅せられた男の、銃による銃の為の銃の物語。
銃という力の象徴に人間の生き様が映る、渋くて熱くて、そして爽やかな大作でした。
ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まさか最後は法廷で決着をつけるとは。
最後の最後も銃で締めるというのが気持ちいい。
最初から無実の証拠を持っていたとなれば、ボブはまさしく汚名返上の為だけに行動していたのだと気付きます。
法廷で惨めな思いをするニックに向けてのボブの破顔一笑にはワクワクしました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレボブ・リー・スワガーの最新作は、何とJFK暗殺の謎に迫ります。
何で今更JFKなのかというと、今年は暗殺後50周年だから、ということのようです。
日本人にとってはあまりピンと来ない事件でしたが、アメリカ人にとってはトラウマとも言える出来事だったのでしょう。
丁度日本人にとっての赤穂浪士討ち入りのようなものでしょうか。
(そういえばスワガー・シリーズには赤穂浪士を題材にしたような作品もありましたw)
実は本作の大きな部分を、暗殺の真犯人の独白手記が占めます。
謎を犯人自らがバラすのってミステリとしてどうよ?と思って、前編を読んだ時点での星は2つにしました。
しかし後編になると真犯人vsボブの構図が鮮明になって、単にJFK暗殺の謎解きだけに終わらないところが、流石と言うべきでしょう。
とはいえ、見所のアクションシーンは最後の最後にチョロっと出てくるだけなので、アクションシーンを期待する向きには不満かもしれません。
(そしてミステリとしては、先に書いたように真犯人が謎をバラしちゃうので・・・・)
シリーズのファンとしてはこんな作品があっても許せる気はしますが、小説自体としては若干低調な出来という気もします。