スティーヴン・ハンターのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ伝説のスナイパー、ボブ・リー・スワガーが前回の戦いに勝利したが、議会の公聴会に呼ばれ訴追の恐れが出てきた。最近の過剰なコンプライアンス感覚にアイロニーを織り交ぜながら、物語は進行する。このまま彼は収監されるのか?これが『囚われ』の意味か?
並行してラフオペレーションが進行する。麻薬を運ぶトラックが強奪された末の、組織暴力の覇権抗争だ。
上巻の終盤、だしぬけに並行する二つの物語が衝突し、一つのストーリーに収斂する。ザ・スナイパー、ボブ・リー・スワガーが囚われの身に陥ったのだ。
と、ここまでが上巻。
男前な価値観のもと、みんな待ってたぜ!ボブ・リー! -
Posted by ブクログ
かつてパソコン通信で冒険小説フォーラムを運営していた頃、極めて人気の高かったスティーヴン・ハンター。作家歴は長く、数々の話題作を提供してくれ、とりわけアール・スワガー、とその息子のスナイパーであるボブ・リー・スワガーという二人の主人公による、二つの時代に物語を紡いできた力業は、未だに忘れ難い印象を残す。
本編は、珍しく長編小説にしては短く、スピーディで、しかもテンポの良い独特の面白さを持ったもので、これまでのハンター作品の重厚さに対し、第二次世界大戦下の工作員の物語であるにも関わらず、どこか軽妙でリズミカル、かつスピーディな展開を見せる。
英国工作員ベイジルを送り出す側の言わば<承前>に当たる作戦会議のシーンと、潜入工作からスタートしたヨーロッパでの作戦実行シーンが交互に現われる。ベイジルは、ぎりぎりでスリリングな展開の中に身を置き、都度、スリリングなすり抜けを繰り返しつつ、当初の目的に向かって進んでゆく。
ラストのラストまで意外性に富んだエンターテインメント・アクションは、どこか70年代のヒギンズを思わせるようなクラシック性と、安定のリーダビリティと、どんでん返しに満ちていて面白い。ダイナミックな展開により、語られぬ部分でのベイジルの動きなども想像性に満ちた世界であり、じつに娯しい。
残念なのは日本語訳が固すぎてリズミカルな展開を妨害している。ハンターの翻訳者でありながらいつもはあまり感じない固さがブレーキを踏んでしまっているようで、とても残念であった。ハンターが固いのか、訳者が固いのか、真相はわからないが、提示された日本語文章は、小説としては少し障害が多すぎるきらいがあって残念であった。
この作品はエンタメ系の名編纂者オットー・ペンズラーのアンソロジー収録の原作短編を、ペンズラー自身の勧めでハンターが長編化したものだそうである。そのため、短くシンプルかつスピーディでテンポの良い展開の本作が出来上がったというわけである。ハンターファンならずとも、この作品の必読の面白さに是非チャレンジして頂きたい一冊である。 -
Posted by ブクログ
スティーヴン・ハンター『ベイジルの戦争』扶桑社ミステリー。
スティーヴン・ハンターの新作はスワガー・シリーズではなく、どこかユーモラスな雰囲気もある1943年の戦時中のヨーロッパを舞台にしたスパイ冒険活劇小説だった。
冒頭に描かれた主人公が少し緩い感じで一抹の不安を覚えたが、次第にエージェントとしての凄腕を発揮する。初期作品の『真夜中のデッドリミット』のような感じの作品であった。しかし、オチがあるのはどうかな。
主人公の英国陸軍特殊作戦執行部のエージェント、ベイジル・セントフローリアンは、無類の酒好き、女好きだが、任務に当たらせれば並ぶ者のない凄腕だった。軍部に緊急招集されたベイジルは、ナチスの書籍暗号を解読する鍵となる聖職者の幻の写本を入手するためにナチス支配下に置かれたパリへの潜入命令を受ける。
英国からのエージェントがパリに潜入したことを知ったナチスはエージェントを捕縛すべく動き出す。果たして、ベイジルは四面楚歌のパリで写本を手に入れ、ナチスのツィタデル作戦を阻止できるのか……
定価1,155円
★★★★ -
Posted by ブクログ
やっぱりスワガー・サーガは面白い。それが第一の感想だ。
今作のスワガーは70歳を超えた老人で、もはや激しい銃撃戦では前線に立てない、というか周りが必死に止めようとする。それはそうだろう。いかに鍛えていても、70歳の老人が特殊部隊とともにヘリボーンをしようと言い出したら誰だって止める。結局ヘリボーンはしてしまうのだけど。
そんな本作で主題となるのは、アメリカ国内に潜入したテロリストの発見だ。作者自身の銃への深い造詣をベースに、現代社会ならではのガジェットを駆使した捜査の様子は一級品のサスペンスとなっている。
詳細はネタバレとなるので伏せるが、鍵となっているのはAccuracy InternationalのAW338というライフルだ。普段はドラグノフを愛用するテロリストが、超・長距離狙撃を成功させるためにAW338を使うという設定から、スワガーの知識と経験を総動員してテロリストを追い詰めていくという寸法になっている。
作中でも述べられているが、このライフルは実際に英国軍のクレイグ・ハリソンが当時の最長狙撃記録を打ち立てており(英軍での登録名はL115A3だが、この辺りは気にするとキリがないため、作中と同じくAW338で通す)ハンターも長距離狙撃については相当に調べたことが窺える。銃器知識があるとより楽しめること請け合いだが、銃器知識がなくとも楽しめるだろう。そう、スワガー・サーガではおなじみのM700が出てくるのだから。出る場面については読んで確かめて欲しい。 -
Posted by ブクログ
久し振りにベタベタの冒険小説を読む。
男の憧れ最高のタフガイの話。
絶対に助からない、既に人間の域を超えてる。なのに不死鳥の様に、都合良く復活する。
どんなに、後付けで理由付けをしても無理でしょ!ありえないでしょ!と言っても強引に筆は進む。
結局、読者は諦めて、そうなるのねとシブシブ納得しながら
読むしかない(笑)
この世界観に素直にハマればこよなく気持ち良い。
主人公はどんなに窮地に立っても、間違いなく乗り越えて行くのだ!我らがヒーローボブ!!!
ハラハラドキドキなんか全然しないぞ、安心して読めるぞ。
僕は大好きだ!!
「戦えば勝つ、必ず」(宇宙怪人ゴースト) -
Posted by ブクログ
盆と正月が来たみたいだという言い方があるけれど、冒険小説ファンにとっては今秋がそれにあたるのではないだろうか。8月にグレイマンシリーズ『暗殺者の追跡』、9月に本作、ボブ・リー・スワガーシリーズ『狙撃手のゲーム』発刊だ。秋の入り口で十分に楽しませてもらった。
動のグレイマン、静のスワガーといった対比ができるだろうか。理詰めで敵対するスナイパーを追い詰めていく様はスリリングで、気持ちよく読み手を先に進ませる。少しづつ距離を詰めていき、最後に両者が邂逅し決着がつく・・・大団円・・・拍手・・・幕・・・。
『狙撃手のゲーム』では精密射撃の世界が丁寧に書かれており、僕くらいの年代の人たちは、40年ほど前に月刊『Gun』誌でレポーターをしておられたT.高野さんを思い出した方も大勢いらっしゃったのではないだろうか。当時は地味なレポートだなと思っていたけれど、今となっては、その奥深さが理解できる。本作を読んでいると、当時のリローディングの記事が脳裏に蘇るから驚いてしまう。40年前の雑誌の記事が記憶の引き出しに仕舞われていることに、だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ久々に「スワガー・サーガ」を読んだ。いつものハンター節で描かれるのは、なんとボブのおじいちゃん、チャールズ・スワガーである。
舞台は1934年、世界恐慌の余波が残り、禁酒法が終わり、イタリアン・マフィアの全盛期にも陰りが見えてきた頃で、その影響で裏社会の秩序も乱れている。
銀行強盗が盛んに行われたこの時代の、実話を下敷きにして、チャールズ・スワガーの活躍劇が描かれる。
スワガー一家のマッチョぶりは、このチャールズも変わらず(というか、遺伝的には先)なんだが、彼には第一次世界大戦を退役して以降、大きな秘密を一つ抱えていて…とこれは主筋から離れていることなのだが…圧倒的強さを誇るチャールズが、後半どうなっていくのか?「悪徳の都」で出てきたアールの冴えない父親像に、どういう風につながっていくのか。
銀行強盗団(パブリックエネミーズ)達との息詰まるガンファイトが圧倒的魅力にあふれている裏で、こういう登場人物の葛藤を描く技法もいいなぁ。そしてさらに、その秘密を追う現代のボブの描写も複層的な効果があって面白い。
基本的には荒っぽいガンファイト系アクション小説なのだが、重層的な構成を読み解いていく楽しみも含まれていて、一筋縄ではいかない小説。ただその重層さが単純にガンアクションを楽しむには少々クドく感じられてしまう部分もあったのは若干残念だった。 -
Posted by ブクログ
【上下巻のレビュー】
新たなボブ・リー・サーガへの序章
今回、ボブはスナイパーとしてライフルを持つことはない(なんとスポッター!)。これまでのようなスナイパーアクションとは趣を変え、良く練られたポリティカルサスペンスに仕上がっている。彼以外の登場人物はバンバン撃っているだけに、やはりファンとしてはボブのシューティングが見たかったところ。特に場所をアメリカ国内に移してからというもの、ばらばらだったパズルが一つ一つ組みあがっていく構成には唸らされる。また、ある意味では人の入れ替えが行われたシリーズ転換期といえよう。
それにしてもボブもさすがに年をとった(還暦過ぎのおじいちゃん!)。シリーズ初期にはベトナム戦争でドラグノフを巡ってソ連と攻防を繰り広げていたのに(それも今作品のポイントとなる!)、今や戦いは戦場から離れた場所から指示が出されリーパーのような無人機がいとも簡単に人を殺すような時代になった。そんなものを目の当たりにしてボブは何を感じたのか。それでもやはり人が人を殺すのだと歴戦の勇士ボブは諭すのだ。そのあたりの達観振りがやはり彼の魅力とも言えよう。
今回は今までにも増して映画ネタが多く、特に香港映画ファンの私は「男たちの挽歌」のチョウ・ユンファが引き合いに出された時には思わずニヤリとしてしまった。