あらすじ
オクラホマ州立マカレスター重犯罪刑務所に収監されていた終身囚ラマー・パイはシャワールームで黒人受刑者を殴り殺した。黒人たちの逆襲を恐れた彼は看守を脅し、子分二人をつれて脱獄に成功する。迷いなく邪魔者を殺して進む、生まれながらの悪の化身ともいうべきラマーとその一行は銃を手にいれ、車を奪い、店を襲い、警察を嘲笑するかのように、ひたすら爆走し、破壊しつづける!スティーヴン・ハンタ―が圧倒的な筆力で描く、驚異の悪漢バイオレンス超大作!
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最初はラマーのことが酷いやつと思っていたのに、途中から偉大な男を見るようになっていた。ラストでそれがピークになった。
700ページくらいあるけどバドの壮大な不倫の物語と思うほど40代の男の心情がいっぱい書かれていてリアルすぎて少しへこんだ。ラマーの影が途中から薄くなる。すけべ親父のバド。途中このままバドの不倫相手をラマが殺して一件落着みたいになったらどうしようと思ったけどそうならずに男のケジメを付ける感じになって良かった。
結構シリアスな場面でちょこちょこふざけたジョークが入ってきてそこも面白い。
スワガーのことが数行書かれていたのでこの後のシリーズでどういう風に書かれてくるのかそこも楽しみ。
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スティーヴン・ハンターによるボブ・リー・スワガーシリーズの番外編。
本作だけ読むと、ボブ・リーの物語との関連性をほとんど見つけることができず、それゆえか日本語版は本作が最初に刊行されたという。この物語は確かに本作だけで完結しており、他の作品を読まなくても問題なく楽しめる。
とはいえ、前作「極大射程」を読んでいれば本作の中に本当にチラッとだけ現れるシリーズとの関連性に、思わずニヤリとなるだろう。本作中に前作との関連性を見出せるのはここのみであるのだが。
本作はタイトル通り、白人のワルどもの物語である。脱獄囚のラマー一味と不本意ながらもそれを追う羽目になるハイウエイパトロールのバドが、お互いの知恵を比べながら、追いつ追われつを繰り返す。
前作とは異なり、かなり下品で、バドもコンビを組む若手巡査の妻と不倫をしているなど、お世辞にも正義の人とは言えない側面を持っている。だからこそ、生々しく、生き生きと描かれているのだろう、登場人物たちの行動や考え、悩みなどが直に伝わってくるようでのめり込む。
ラマーは完全に悪党であるが、切れる頭を持ち、時折見せる優しさなど人間味あふれる側面もあるため、なんとも憎めない。
前作とは趣の違う形で読者を虜にする作品である。この物語がどのように次作以降に関わってくるのか、それもまた楽しみの一つである。
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悪党たちが形成する奇妙な家族関係
ささやかなパーティ
食パンのケーキ
キャンドル
ライオン ──とうちゃん!
暴力描写は激しいし、ラマーは酷い悪漢だ。
なのに彼らが愛しくなって涙が出た。
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最初全然面白くなかったけどバドが車のタイヤ痕調査で家に行ったあたりからかなりおもしろい。そこからは続き気になって一気に読んじゃった。描写がかなり生々しくてつらいとこもある。リチャードが第二のラマーになっちゃった。こいつ出所したら大変だ。
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例えばランボーみたいな映画を見て、やべー戦争怖いわー、ランボーが突然日本にやってきてばかすか撃ちまくったらどうしよう、なんてなかなか思わない。これが現在の米国での話になっても、でもやっぱりまだ現実感が無いというか、米国って怖いのねーって思うくらい。
という大前提のもと、この話は純粋に面白い。悪いやつだって馬鹿じゃないんだし、何も考えずに生きてるわけじゃないし、って当たり前の事なんだけど、主人公をランボーとするなら、巨大組織の警察に立ち向かう孤独なヒーローの話ってところなんだろうか。
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ボブ・リー・スワガーシリーズの第二作。といってもボブ・リーは登場せず。まあ、関係は次作をお楽しみにということのようだ。
登場する悪漢が何とも凄まじいワルなのだが、これが家族愛に満ちた人物だったりする。登場人物の殆どが家族に関する問題を抱えている、まさに家族がテーマなのだ。とはいえスピード感あふれる筆致は前作同様迫力がある。翻訳のまずさが指摘されているが、私はさほど気にならなかった。
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バドをどうしても好きになれない。
対するラマー。彼を全肯定する事はできないけど、バドと対比して非常に男らしく見える。個人的にはラマーに軍配を挙げたい
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ラマーパイはワルなんだけど、なかなか魅力があり、あまりの運の悪さに、そこまでいじめなくても、と同情すら覚えてしまう。ピューティーといったいどっちが主役なのかわからなくなるほどで、実はラマーのほうがスワガーなのかと思ってしまったくらいだ。でも面白かった。
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「極大射程」以来のスティーヴン・ハンター。
以下はネタバレありの感想。
文庫本32章700ページを超える分量にも度肝を抜かれるが、6章(150ページ)あたりで正義側の主要登場人物のほとんどが殺される。(と、思わされる)
罪悪感を持たぬ殺人者と罪悪感に苛まれる刑事が出会うという設定もナイス。
そして本書の魅力は、トンデモナイ悪人を描きながらもリアリティぎりぎりの人物造形と彼らの内なる心の葛藤や気持ちがなぜか共感もしくは理解出来るという作者の職人技にある。
本書の主人公、悪の権化ラマーは凶暴だがバカではない。無理矢理脱走犯仲間にされたリチャードは彼を以下の様に狡猾な無秩序の天才と称する。「ラマーは常に考えている。何か課題を与えたら、彼は真っ先に、しかも正しくそれを解決するだろう。とはいっても、それは普通の人間のやり方ではない。他人より自分が多くを得られる様に解決するのだ。それが彼の唯一の道徳律であり、何の後ろめたさも疑問も持っていない。彼は情熱的かつ揺るぎない確信を持ってその道徳律を行使する」
解説の鵜條芳流氏の言葉。「悪い男に限って人の心を捕らえて離さない。華麗な悪の前では、正義さえも霞んで見える時がある。アメリカンヒーローを描いて来た男は、どうやらそれに気付いてしまったようだ。悪が栄えた試しなし。だが、栄えないからこそ刹那で美しい」
一方の正義側キャラは48歳のハイウェイパトロールの巡査部長パド。妻子がありながら部下の奥さんと不倫、再び良き家庭を取り戻したいと願いながらも、目先の欲望に負けて自己嫌悪に陥る日々。
そして、前半の魅力的キャラは人質となった老夫婦。リタイアして狩猟が趣味だった夫は、悪にも怯まない。巨悪に対して卑屈にならず勇敢にも対峙しようとする。
分厚い文庫本を終始飽きさせることなく引き付ける筆力は流石です。
Posted by ブクログ
ボブ・リー・スワガーシリーズの外伝ということで『ブラックライト』を読む前に読んでみた。序盤はなんだかだらだらそれほど緊張感のない逃走劇という感じを受けたが、後半になるにつれ気付けば引き込まれていた。
不倫をやめられないパドのだめっぷりに腹が立ち、反面ラマーの仲間思い(?)な所になんだかほっとする。でも悪役なんだよなと思う。愛着が沸くわけでもないし、頑張れとも思えない。ただパドもそうとも思えない。複雑な気持のまま最後まで読んで、結果としてはまぁ楽しめた。
ボブ・リー・スワガーに関しては本当に2~3行、彼の父親がラマーの親父を殺したとか何とかで出てくるだけ。この作品が『ブラックライト』にどうつながるか楽しみ。