金原瑞人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
とても良い。誤解を恐れずに言うと私はいつかちゃんと書きたいなあと思っている人間で、それが結果小説になるのか何かの評論になるのかエッセイ集になるのかは分からないし、その為の行動などは一切起こしていない。産み落とされるか分からない潜在的作家を腹に飼っているとでも言おうか。しかし現代社会においてそんな人間が殆どであるとも思う。Xでもインスタでも、諸々含めば皆何かしら書いているし。
尚且つ私はカート・ヴォネガットという作家のミーハーなファンでもある。「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」を読んで一気に恋に落ちて、「タイタンの妖女」「スローターハウス5」「青ひげ」あたりを夢中で貪り読んだ。
概ね変な話なのだが、その根本には極めて普遍的なテーマがあり、何だか笑ってしまうような人と人のやりとりと、時々ズドンと胸を撃ち抜く名言がそこに潜んでいたりして、とにかく唯一無二の、誰の本にも似ていない 最後の最後にグッと来て泣いてしまう、私にとってカート・ヴォネガットの本というのはそういったものだ。
ちなみにあまり(人数的な意味で)豊富と言えない私の人間関係内において、カート・ヴォネガットを読んだことのある知り合いはほぼゼロだ。悲しい。でも一作一作が割と長いので、おいそれと勧めづらい。
そんな人間にとってこの本は名言の宝庫であり、今まであまり触れてこなかった「人間」カート・ヴォネガットについて知る為の貴重な文献であり、また確かに「書くこと」についての もっと言えば「書くことを携えながら、より熱心に 生きること」についての、とても手厚い道標であった。
書くだけで人生は進まず、終わらず、では何が要るのかと言えば 楽しむこと、遊びほうけること、仲間をつくること、ふてぶてしくあること。
カート・ヴォネガットは若く貧しいうちから亡き姉の子供達を引き取り、自分と妻との間に生まれた子と同様に養い、育てた苦労人である。その苦労は、彼がゼネラル・エレクトリック社を辞め、文筆家を本格的に志すのとほぼ同時に生じているはずだ。
つまりキャリアが始まるよりも先に、彼には養わなければならない家族があったということになる。
この本は、かつて大学でカートの講義を受けた元教え子によって書かれている。カート本人との交流を深く持っていた彼女の語り口はさっぱりとしていて、邪魔にならないし、時折差し込まれるカートの人間らしいエピソードや、講義の様子が大変興味深く読めた。
おそらくこの著者も、カート・ヴォネガットの大ファンなのだ。ファン仲間(おこがましい)の推し語りを存分に聞けるという意味でも、極めて楽しい読書であった。
そしてまんまと、これを読んで再びカート・ヴォネガットの著作に惹かれつつある昨今。
本作にもたくさんタイトルが出てきたので、これ幸いと棚に追加しておきます。
みんなも読もう カート・ヴォネガット。
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Posted by ブクログ
一気に読んだ。この作品はフィクションで、とのことだが、本当はフィクションではない。証言と記録と記憶を再構成したもの。アウシュヴィッツでの出来事。
残酷な事実が、ストーリーの中でこれでもかというほど描かれる。あのときこんなふうに、あんなふうに“生きていた”人々が、次々と消えていく。どうなったかわからない人、目の前で“処分”される人。命を奪われるより酷い、魂を、尊厳を傷つけられる行為の数々。
そこで、息継ぎをするかのような愛を感じられるラリとギタのやりとり。ラリを取り巻く友人たちとのやりとり。
文庫本の巻末にあった、その後のラリたちの記述や写真を見て、これはフィクションではなかったと再認識する。
私たちは、収容所で起きたことを、知らなくてはいけない。そして、こんな悲しい物語が二度と繰り返されぬよう祈る。
追記
ゲイリー•ソコロフ(ラリとギタの息子)による結びの言葉の中にあった、ギタの言葉が印象に残ったので、引用する。
「何年間も、五分後には自分が死んでいるかもしれないと思いながらすごしたことがあれば、たいていのことは切り抜けられるようになるのよ。
生きて健康でさえいれば、すべてうまくいくものよ。」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ素晴らしかったです。
フィリップと別れてすぐにノラに婚約者が出来たこと。フィリップがやり直したいと思ってももう遅いこと。現実世界にありそうでやけにリアル。タイミングというか運命というか。フィリップの気持ちが想像できる。
あんなに騙され裏切られたのに、困っていたミルドレッドを助けて自分の家にいて良いことにしたのは、ダメだとわかっているのにやめられない。人間は一度ハマった執着からなかなか抜け出せない。人間の非合理的さがリアルに描かれていて面白い。合理的に考えてダメとわかるのに、非合理的な行動をとってしまう。
最後にスペインや世界旅行を捨ててサリーと結婚したのは、個人的にはそれでいいの?もっと選べるよと思ったけど、フィリップは人生に特別な意味はないことを受け入れて、結婚を選んでいるのかなと思った。これ以上探しても特別はないと感じたのか。読者としてはもっと特別な何かがあるという期待を壊された。 -
Posted by ブクログ
とても良かったー。
好み!
軽く読めるがしっかり奥深い。
一話が短く文字も大きめなので
てっきり低め年齢層からをターゲットとしている読み物なのかと思ったら、割と大人向けな印象。
長い本を読む気力は無いけれど濃いめの幻想文学を読みたいなぁ、って人にうってつけなのでは無いか。
在り方としてはカシュニッツの短編集と同じ香りがするなぁと思ったけども
あっちはもっとホラー寄りで辛辣な感じがするのに対して、コウヴィルはもっとファンタジー寄りで美しさが勝る感じですね。
個人的には「ぴっかぴかの部屋」「血の言葉」辺りが特に好きだったけれど、どれも良かった。
ブルース・コウヴィル初めて読んたが他のも読みたくなった! -
Posted by ブクログ
現代化にあらがった人の個人的な実験。
そんなふうに暮らしてみたい。この一言をえただけで、この本には価値がある。
◎我々が常に勉強しているのは、高価なものを手に入れるためではなく、時々はもっと少ないもので、満足するためではないのだろうか
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・生活をシンプルにすれば、それだけ普遍的な法則がシンプルに見えてきて、孤独は孤独で亡くなり、貧しさは貧しさでなくなり、弱さは弱さでなくなる。
・人生の本質的な部分にだけ直面する
・どうすれば、自分を偽らずに生きられるのか、自分の正しい目的を達成するための自由を失うことなく
・この世で生きていく事は、苦行ではなく遊びなのだ。シンプルに賢く、生きてさえいれば。
・私は本当の豊かさを楽しめる貧しさが欲しい
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Posted by ブクログ
ネタバレ主人公フィリップの、10歳〜30歳くらいまでの物語。幼少期に両親を亡くす不幸に見舞われながらも若さゆえの大志と自信を抱いて運命を切り開いていくかと思いきや、思うようにいかない現実を知り、挫折を繰り返しながら大人になっていく。
作品の中でフィリップは神を拠り所にしない自我を獲得していくが、主人公を見守る神のような視点から物語は語られる。
不条理の権化ミルドレッドが何度も介入し、さまざまな運命に翻弄され、自分ではどうすることもできないことがあることを知りフィリップは成長していく。
経験したことは力となり、人生を少しづつ織り重ねながら、そのときそのときに価値を感じることを大切にしていけると良いと感じた。