中山祐次郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
驚きである。
何がというと、30代でガンなどの病気でこの世を去ってしまう方がこれほど多いとは。1万人に1人というレベルではなく、数百人に1人というレベルなのだ。
少し振り返ってみると、0代で大学の後輩を無くし、古くは40代で叔父を亡くしている。得てして男性は弱いところがあるだろうが、これは男性に限ったことではないことを、この本を読んで知った。
後悔ない人生を送ることができるのかはわからないが、この世を去るということは、いつなのかが分からないということを改めて思い知ることとなった。
生の中に、死が内包されている。そのことが分かるまで、いったいどれくらいの時間が必要なのだろうか。それも、限られた時間の中で。 -
Posted by ブクログ
都立駒込病院で大腸外科医師として勤務する、現役医師の著者が書いた『死』についての一冊。
『レバレッジ』シリーズで有名な本田直之さんがFacebookで紹介していたこと、何より1980年生まれで同世代の、現役医師の死生感ってどんな感じなんだろうということに興味をひかれた。
中世のヨーロッパの教会には、『メメント・モリ(死を想え)』と書かれた札が掛けられていて、その意味は時代によっていろんな解釈をされる。
疫病が流行るような時代には、あなたは死にますが、来世で救われるから神を信じなさい。という解釈になり、いつ敗北して死ぬかわからないような戦闘が続く時代には、おごれるものは久しからずというような解釈、現代では、死を想うことで今生きていることを実感し、喜び、自身の生き方を今一度考えよ。という解釈になる。
『死』は時代によって違う。
そして、現代の日本のような平和な時代でも、ある日突然、死を宣告されることがある。
あなたは、今日自分が死ぬかもしれないと考えたことがありますか?
または、今日突然、死の宣告を受けるかもしれないと考えたことがありますか?
ほとんどの人が、ぼんやり『死』について考えたことがあったとしても、本気で自分の死について考えたことはないと思います。
しかし、事故や病気で若くして亡くなる方は、決して少なくありません。
ずっと健康に過ごしてきて、毎年2回の定期健診でも異常なし、なんか怠いなて思って、病院にいくと疲れがたまっているんでしょうと薬を処方される。薬を飲むと治った気になっていたけど、やっぱり怠いので、他の病院に行ってみると、大きな病院を紹介される。予約をとって大きな病院で診察をされると、突然余命を告げられるような死の宣告をされてしまう。
そんなトントン拍子の死の宣告は、日常茶飯事あっていることです。みんなまさか自分がと思っています。
よく、「いつ死んでも後悔しない生き方をしよう!」と言われるけど、後悔しないタイミングっていつなんだろう?好きなことを一生懸命している途中、大切な人を残して死ぬとき、後悔しないでいられるのか?それなら、「いつ死んでも後悔する生き方をしよう!」と思い、何にでも一生懸命取り組む、好きなことをするっていうことのほうが自然なんじゃないか。
そして『幸せな死』とは、誰にとっての『幸せ』なのか。本人にとって痛みを伴わず、眠るように、あるいは一瞬で、苦しむこともなく死ぬことが『幸せな死』なのか?
著者は、『幸せな死』とは、後に残される家族にとっての言葉だと考える。それは、本人が死んだあと、故人との楽しい思い出がいくつもあり、お金で苦労することもない、そんな死後の家族の姿は、きっと本人にとっても『幸せな死』なのではないか。
人は必ず死ぬ。今まで長い歴史上、生き返った人は一人もいない。(キリストが生き返ったのは別の話として。)それなのに、なぜ死ぬのか、いつ死ぬのか、死んだらどうなるのか、何もわかっていない。だからこそ、死を生の一部と思い、死を想うことで、死んだ後に残される家族のことも含めて、今の自分の生き方を振り返って、今を楽しんでいこうと思う。 -
Posted by ブクログ
研修医を終え、晴れて新人外科医となった雨野隆治。まだ手術に立ち会わせてもらい、開腹などを経験しながら必死に勉強している段階だが、現場で「命を託されている」重圧や自分の技術の拙さを実感する瞬間は多い。その等身大で青くさい葛藤は、誰もが一度は通る無力感や成長のプロセスそのものだ。
今作では、水辺さんとのやり取りをはじめ、隆治が患者やその家族と向き合う中で生まれる物語がとにかく胸に迫り、感動的な展開を見せる。
コミュニケーション能力に長けた凛子の立ち回りの見事さや、同僚・川村の良い意味で肩の力が抜けた言動を、当の隆治は少しも羨ましく思っていない。その不器用で頑なな姿勢に少々歯痒い思いもするのだが、こんな時代だからこそ、隆治の「誠実で優しい」という一途な真面目さこそが一番の武器であり、人々の救いになるのだと感じる。
一方で、ミステリアスで正体不明な雰囲気を持つ、はるかには、完全に自分のペースを乱され、すっかり振り回されている隆治の姿が可笑しくもあり、物語の絶妙なアクセントになっている。
何より圧巻なのは、現役外科医の著者だからこそ描けるリアルな現場の空気感だ。外科医にとって「手術前の手洗い」は、単なる衛生上の作業ではなく「人を切る覚悟を決める数分間」なのだという表現にはハッとさせられた。
物語終盤、主治医として患者やその家族に厳しい選択や問いを重ねてきた隆治が、鹿児島の実家からの突然の知らせによって、まったく同じ問いを「自分自身」に向けられることになる展開には息をのんだ。
要領よく立ち回れなくても、不器用でもいい。どこまでも命に誠実に向き合い続ける雨野隆治の姿に、大きな勇気と感動をもらえる一冊です。