「女にだけわかる狂気」って何?ドロドロ系?わからなかったら? うーん、最近の帯過激じゃね?
タイプの違う冴理と天音、2人の女性作家の才能と嫉妬を中心に、各視点で描かれる物語です。
2人の対比が、光と影、羨望と嫉妬、希望と絶望‥と、相反する(表裏一体の)ものとして象徴的に描かれます。狂気とまで
...続きを読むは思えませんでしたが‥。
一つの事象の捉え方は人により違い、言動の伝わり方等で誤解を招くことはままありますね。それが魂を削るように生み出す作品世界だと、とりわけ複雑で過剰な思いに駆られるのかもしれません。
本作を読みながら、三島由紀夫の『金閣寺』と映画『アマデウス』を思い出していました。
『金閣寺』は、金閣寺の美に憑りつかれた学僧が、それに放火するまでを、告白の形で綴った物語(実際の事件をモチーフ)でした。
美に対する嫉妬や参拝者への反感が、呪いと執着の心理に変貌する辺り、さらには、本作の2人が独白や手記の形で語られ、放火場面もあるので相通じる気がしました。
『アマデウス』は、モーツァルトの圧倒的な才能にサリエリが嫉妬し、その才能を潰すため策略に打って出る内容(毒殺を含め事実は不明)でした。
この設定を、女性作家2人の関係に落とし込んでますね。また、人の名前、章立ての楽章、13/33の年齢だけど拍子記号、モーツァルトの言葉の引用、同人誌や小説タイトル‥。モーツァルトへのオマージュと音楽的要素が、実にたくさん散りばめられていました。
内容は妬みや憎悪が渦巻いているものの、小説という作品への深い愛情・想いを感じさせる物語でした。