あらすじ
冷たくて鋭い氷のペンと、熱くて甘い毒入りのインクで――。
木爾チレンが描き出す、少女たちのこの残酷な謎物語(ミステリー)はきっと、読む者の心に属性を超えて突き刺さり、その深みを掻き乱すだろう。
――綾辻行人
この小説は私の黒歴史であり、これからの黒歴史になるだろう。
――著者
辛い現実を生きられなかった少女たちが、誰にも言えない恋に縋ったゆえの、禁断の黒歴史ミステリ。
最愛の父は、エベレスト登頂間際で猛吹雪に巻き込まれ凍死した。学校では陰湿ないじめを受け、家に帰れば義父に性的暴力を振るわれる。氷織の唯一の生き甲斐はアイドル・四宮炭也の推し活だけだった。だが感染病流行によって推しのライブが中止になったことをきっかけに、氷織は推しの「なりきり」とのやりとりにのめり込むようになる。顔を見たこともない相手への恋――。それがすべての悲劇の始まりだった。
前作『みんな蛍を殺したかった』に引き続き、「女による女のためのR-18文学賞」優秀賞受賞者である著者が、少女たちのこころの中に巣くう澱みを鮮烈な感性で抉り出す。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
きなチレンさんの「みんな蛍を殺したかった」に続く黒歴史シリーズです。きなチレンさんは大好きな作家さんでサイン会にも参加したことがあるんです!
今回はアイドルの推し活が次第にヒートアップした人など、、、私から見ても正直痛いなと思う人ばかりがでてきて、もう引き返すことは出来ないという感覚になっていきました。ラストはちょっとある意味予想外だったかもです!次の作品にも期待です!
Posted by ブクログ
色んなこおりが…
途中で…ん?ってなることも多かったけど、こういうやつに多めのあの人とこの人が知り合いで何年後に別の人と知り合ってそれがあの人と繋がりあって同じ事を繰り返す、みたいなタイプ。
ただ、最後が救われて良かったなぁ…
Posted by ブクログ
1人のアイドルを推した様々な人の話。
現実と偽りの現実の中で生きがいを探し続けている話だが途中はなかなかの展開で。。
でも、最後は現実世界で生きたいと強く思ったあたりで泣かされました。。最後の親子のシーンは良かった。。
これは現実世界でもある話なんだろうと思う。
Posted by ブクログ
薄い膜が割れないように生きていた少女の頃とは違う、分厚い氷に覆われた私の心は今、どんな問いかけがあろうと傷つくことはない。(p.12)
「ほらね」とでも言い出しそうな清々しい顔をして、適当な分量で作ったホットケーキを焼いてくれた。表面は美しい色をしていたけれど、裏側は焦げていて炭の味がした。あれはきっと、母の気持ちをそのまま表していた。(p.43)
相手が傷つかないようーそれは結果的に自分が傷つかないように、私は嘘を吐いてしまう。
本当の言葉は心の中で凍らせてしまう。(p.47)
少しでも時間があればスマホの画面に触れ、落ち込むことがわかっているのに、わざわざ輝いている誰かの投稿を見にいってしまうのはなぜだろう。
喜びや悲しみを、知らない誰かと共有したくなるのは、なぜだろう。(p.51)
自分よりも不幸な人間が一人でもいることに、心のどこかで安堵していた。
いつからこんなに冷たい人間になってしまったのか。(p.56)
私もいつか自分を好きになれるだろうか。
登山家になる勇気はないが、はやく大人になって、自由になりたい。
誰が炎上したとか、推しに会えないとか、どうでもようなるほど遠くへ行きたい。
そう願うが、現実は皮肉なほどに、SNSだけが私を現実ではない遠い世界へと連れて行ってくれる存在だった。(p.56)
言葉さえあれば、こうして愛し合えることを。
心だけで繋がるからこそ、実際に身体を重ねる以上の快感を得られることを。(p.76)
ラムネに閉じ込められたビー玉のような円らかな瞳で、まっすぐに私の目を見据え、真司は続けてそう言った。(p.78)
誰かが先に絶望していると、もう一人は絶望する権利が与えられない。(p.98)
「幸せになりたい」
願うたびに、どんどん不幸になっていくようなきがするのは気のせいではないのだろう。(p.110)
きっとどこの学校でも、女子がいる限り、必ずカースト制度が存在して、それは選抜テストが決まるわけでもなく、誰にレベルを決められるわけでもなく、生まれ持った容姿やコミュ力で自動的に振り分けられる。(p.156)
悲しいほど、みんな、淋しさを抱えて生きている。(p.238)
こうして家から離れた遠い場所に来れば、食べ物や、暖かさや、灯りのありがたさを全身で感じられる。だが、ひとたび元に戻れば、そんなありがたみなんてすぐに忘れてしまう。人間なんて、結局そういう生き物なのかもしれない。(p.241)
果てしない暗闇だった空に、朝陽が昇ってくる。
目の中に、目薬みたいに差し込んでくる。眩しい。眩しくて、たまらない。
「きれいやな」
ただ、それだけを思う。
それだけで十分だった。(p.244)
追い払われるように診察室を出て、待合室で待つ。
どうして宿った命を失ってまで、お金を払わなければいけないのだろう。(p.256)
嶺依が死んだことに対し、今になって悲しみが込み上げてくるのは、彼女が愛されるべき人間だと知ったからなのだろうか。(p.261)
私もそっと、いいねをつけた。
そのー本物の友情にいいねをつけた。(p.262)
本物の愛が詰まった心は、決して凍ったりしない。(p.275)
推しの背後と文通交際をするなんて、現代的だななんて思った。孤独から救ってくれるのは誰かの言葉であり、「いいね」やフォロワーは自分の存在意義のようになっている。それが例え、他人が、流れ作業のように行っていたとしても、自分のことを認めてくれる存在だと思ってしまうのは私だけではないのだろう。
登山家の父との思い出と現在の悪夢のような生活、氷織が求めていたのは本物の愛であり、自分を愛してくれる存在だったのではないのだろうか。義父から性的虐待をされ、登山家の父の死で、学校でも避けられていて、生きる理由が見つからなかった氷織を救ったのは推しの背後だった。しかし、背後がいるのは「推し」という存在があるからであって、「推し」がいなくなった途端、背後は誰なのか?自分が愛していたのは、愛されていたのは誰なのか。身元不詳の存在に全てを捧げる恋愛をするなんてなんてリスキーなのだろうと思う。でも、例え、表面上であっても心が満たされればそれで良いのだと私は思う。自分を見失わなければ。
34歳になっても祖母と生活をし、配信をして自分を偽って稼いでいた嶺依もまた、孤独だった。現実と理想の狭間で迷い、理想でしか生きられない自分にもどかしさを感じていた。私自身、SNSや配信をするのは、自分がいかに幸せな人間であるか偽るためであると思っており、時には何かの原動力になったりもする。自己の存在が不透明だからこそ、分からない自分という人間を証明したいのかもしれない。
氷織に隔てなく接し、まっすぐな思いを伝える真司が素敵な人間だと思った。
氷織の母も、郡明日香も山田嶺依も宮田飛鳥も皆、孤独を抱えて生きていた。孤独から這い上がるのか、それとも落ちるのか。出会う人によっても変わってくると思うが、何より1番なのは、生きたいという気持ちを強く持っている人だと思った。
Posted by ブクログ
父親を登山事故で亡くした氷織は義父から性的虐待を受け、家でも学校でも居場所がない。唯一の癒しは男性アイドルの炭也。ネットで、炭也のなりすましと疑似恋愛をする日々。
同じ悲劇が繰り返されているから繋がった時気持ちいい。
Posted by ブクログ
黒歴史シリーズ。『みんな蛍を殺したかった』がイヤミスとして独特の読後感で、また読みたくなって購入。
『みんな蛍を殺したかった』を読んでからこちらの作品を読むことを勧める。地続きでちょっとした関連があり、その部分の味が違ってくる。
周りにも自分にも絶望した人たちが、運命のいたずらとも言える縁に振り回されながら、希望を感じたり、また絶望したり。
誰かに助けてもらえるわけもなく、事態が好転する見込みも全くない中で、自分を冷静に俯瞰することで絶望的な状況を受け流そうとしたり、やり過ごそうとしたり、乗り越えている。その健気さに“がんばれ”とか“頑張ったね”と声をかけてあげたくなる愛おしさを感じた。
男性アイドルの推し活動や腐女子に関する部分が多く、女性だと違った感じ方をする本だと思う。
さあみなさん、今日も地獄の時間がやってきました
からの数ページは本当に救いがなく、嫌な気持ちになった。読者の心もどんどん氷になる。
結果的に死につながってしまった事件もあるが、“生きている限り希望がある”エンディング。絶望する氷織の世界の外からずっと声をかけ続けてくれた彼が、氷織にとってずっと救いの手だった。絶望する世界の中で生きるのではなく、いつでもその手を握って外へ出れば良かった。そういったところに著者のメッセージがあると思った。
本物の愛が詰まった心は、決して凍ったりしない。
ニュース速報のことを考えると、嫌な結末後を想像してしまう。助かってないかも・・・
Posted by ブクログ
木爾チレンさんのこれまでに読んだ作品は、3冊でこれが4冊目になります。この作品を読む前に「みんな蛍を殺したかった」の作品を読むことをオススメします。木爾チレンさんは、若者向け作品が多く、内容も現代社会をテーマにしている作品が多いので、そういった方には特にオススメです。適度なボリュームで、6時間前後で読み終わります。
Posted by ブクログ
こちらも一気読み。
前作「みんな蛍を殺したかった」よりも、更に、濃くて暗い病みな話しだった。
他人から愛される為の、黒歴史。
文字だけの、なりきりの、恋愛。
運命と絡まって知る、現実。
展開と繋がりに読み応えがあった。
Posted by ブクログ
コロナ禍を描く小説が増えてきた今、コロナ禍だからこそ生まれる小説もある。
ネット社会、スクールカースト、コロナ、、、様々な社会問題を織り込みながら、そして読者の予想を裏切りながら、話は進んでいく。読み始めたら止まらなかった。
Posted by ブクログ
みんな蛍を殺したかったから繋がるところがあるので、蛍→氷で読んでもらうのがオススメ
5人組国民的アイドルグループ『雹』の『四宮炭也』にちょっと笑っちゃった(笑)
これって実はチレンさんが推してたんじゃないかな?
推しの結婚報道とかかなりショッキングですもんね。
違うかな(笑)
エヴァとかアイドルとか現実に存在するのもがそのままとかそれっぽく出てくるんで、なんか不思議な感覚でした。
Posted by ブクログ
「みんな蛍を〜」から読んだ方がいいと聞いていたけど、その通りでした。読んでなくても支障はないけれど、世界観が繋がってます。
黒歴史すぎて(あとはオタク文化の専門用語多すぎて)、読むのがしんどすぎました。
が、ラストは良かった。
読み終わってここの感想を読むまで全く気づかなかったのですが、登場人物に某国民的アイドルグループをなぞってるらしく、どんな扱われ方であれファンとしては嫌な気持ちになるんじゃないかな。
Posted by ブクログ
ネットで誰かに恋をしたり、言葉や妄想だけでドキドキしたりそんな夢みたいなことが現実になるって幸せな事のはずなのに、そうじゃないなって思い直した本だった。姿や顔が見えないって、正体が分からないって怖いなって。でもその一方でそういう人を愛することのできる純粋な心を持つのも幸せだったりするんだろうとも思えた物語だった。
視点がよく変わるので理解が難しいところも多かった。
Posted by ブクログ
なりきり、推し、Vチューバー、若いというかはじめて読む感じの雰囲気で最初とまどった。
おもしろかったんだけど、なんか全体的に暗くてちょっと病む。
Posted by ブクログ
心の奥底に隠していた少女達の闇を暴き出す黒歴史ミステリ。
これは相当エグい。
主人公は容姿端麗な女子高生・絢城氷織。
名の知れた登山家だった最愛の父が遭難死した事で彼女の人生の歯車が狂い出す。
転入した高校での壮絶なイジメ、母の再婚相手からの性的虐待。
唯一の生き甲斐はアイドル・炭也の推し活だったが、コロナウイルス拡大によりライブは中止。
それを機にSNSで炭也の「なりきり」との交流が始まる。
もう危険な香りしかしないがネットの中に救いを求め彷徨う彼女達から目が離せない。
SNS全盛時代の今、リアルにありそうで恐ろしい。
Posted by ブクログ
最愛の父を亡くし、学校では虐められ、義父に性的被害を受けて心の拠りどころがないという描写をしっかり描いているので、アイドルの「なりきり」だと分かっているのに依存してしまう突拍子もない展開も納得してしまいます。結構リアルな危うさだと感じました。
ネット社会やSNSを題材にしたミステリ的趣向は今となっては手垢が付いているので予想の範囲内でしたが、人物相関図は意外なところで繋がりを見せてくれたので楽しめました。
Posted by ブクログ
え…これ出版していいの?笑。フィクションで、創作だとしても、ちょっと際どいというかアウトじゃないでしょうか。。。苦笑。
まんま現在活動休止中の某Jの国民的アイドルのNですよね、、モデル。
アイドルをモデルにするのはいいと思うんだけどその結婚相手までまんまなんだけど。元美人アナウンサーっていう設定もアカンよね。
なんでこうまでして寄せたのか気になる、、
訴えられたり抹消されたりしないか心配になる…チレンちゃん好きなのに。
Posted by ブクログ
ある理由で声を発せなくなってしまった氷織、
そんな氷織の心を優しく溶かしてくれたのがあるアイドルの存在・・・しかし・・・。
最初は”推し活”や、”なりきり”といった世界が未知だった私は戸惑いと驚きがありました。
登場人物が様々な闇(氷)をかかえており、読んでいて苦しくなりつつも、
それぞれの最後にはどんな形であれ心の氷が溶けていってくれたと思いたいです。
今作もミステリー要素がありつつ、とても読みやすい文章の構成でスラスラと一気読みができる作品です。
また前作の「みんな蛍を~」に登場する小説や人物が登場した時はなんとも言えない嬉しさがありました。
この小説を通して新しい世界を知ることができました。
Posted by ブクログ
推しにのめり込む女性の心情を巧みに描いているように感じました。推しにのめり込む作品ですと、「推し、燃ゆ。」などが有名ですが、本作はもっとニッチで現代的な作品であると感じました。
主人公はとある女子高生で、些細なきっかけから仲良くなった、推しのアイドルのなりきりをしている人に恋するという、稀有な設定でした。
ここまでの設定でありながら、単純に恋愛ものとして昇華するのではなく、ミステリー要素を入れ、読者を楽しませる仕掛けがされていました。しかし、文体や演出の仕方、題材が若年層向け過ぎてイマイチ乗り切れなかったこともあり、評価としては星3くらいかなぁと。
Posted by ブクログ
2022/09/22リクエスト 1
同じ名前がいくつが出てきて、例のごとく途中から混乱して、相関図的なものを書いて読んだ。
氷織の父は、エベレスト登頂間際で凍死した。学校でいじめを受け、家で義父に性的暴力を受ける。
氷織の生き甲斐はアイドル・四宮炭也の推し活。
コロナで?ライブが中止になったことで、氷織は推しのなりきり、とのやりとりにはまる。
顔を見たこともない、なりきりへの恋愛疑似感情がどんどんヒートアップ。
様々な事情で、なりきりと一緒に住むことになり…
売れっ子vチューバーの顔を持っていた、なりきりは、なりきりが17歳だった頃、親友になりたかった女のコが自殺した家で、同じような方法で自殺する。
氷織に、ここで死んでしまうことをお許しください、とメッセージを残して。多分とんでもない金額のお札をベッドに置いて。
それで、氷織はエベレスト登頂に挑む。
最後に意識が薄れながらも、17年前の父を見つけるのは、やっぱりお話だな、とは思うものの、ラストは少しだけ救いのある終わり方。
背後、なりきり、ロル、わからない用語が多数で、私がターゲットの本ではないと思ったが、最後まで読み切った。
表紙のイラストは、とても凝っていると思う。内容にぴったりの絵柄。