江上剛のレビュー一覧
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人生の折返し。
子曰く、50にして天命を知り、60にして耳順う。
還暦前後の中年男性たちの短篇集。
定年まであと少し。早期退職か、嘱託として残るか。
実家が三代続く老舗の豆腐屋、自らは四代目になる気はなく40代で大手銀行の取締役に就任する直前、三代目の父ちゃんが危篤に。
悲哀と慈愛に満ちた一冊でした。
しかし、こう読み終えると男性はいつの世も仕事に翻弄されながら、人生の機微を感じるものか。
家庭だ、育児だってのは一編も出てこなかったな。
主夫の生涯みたいな小説があれば読んでみたいものだ。
医療技術の進歩により、人生百年となった現代では、50で天命を知るには随分と早いな。 -
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音楽専門学校を卒業後、プロになれるわけでもなく、フリーター生活を過ごし、気付けばフラフラと五年の月日が流れる。
そんなある日、ハンバーガーチェーンの正社員になることに。
悲劇の始まりである。前半は、採用の出会いから、詰め込みマニュアルの洗脳研修、そして店舗実地。
職場での出会い、正社員としての安定した生活への期待と展望。
後半に差し掛かる中盤、店舗での主人公を含めた正社員の店長。優しく、頼り甲斐のある、良き店長。
が、死ぬ。過労死で。店内清掃をしている最中、モップを握りしめ。
後半は、訴訟から、ネット炎上へと。
『ブラック企業』今野晴貴著で記された実態がママリアルに描かれる。
特に、ブラッ -
Posted by ブクログ
合併によってできた巨大銀行で生きる女性の物語。
プロローグ
第一章 風のささやき
第二章 炎のゆらめき
第三章 街のきらめき
第四章 谷間のおののき
第五章 森のとまどい
第六章 水のやすらぎ
第七章 万物流転
合併によって誕生したミズナミ銀行に総合職として勤める日未子は、旧銀行同士の派閥争いに巻き込まれ、不倫相手の上司も、その権力闘争に身を投じていき、男性組織に嫌気がさしてくる。
自分の生き方を模索する日未子は幸せになるのか?
日未子が開き直るところがなんか腑に落ちない。
不倫していたからには、そういう結末でも仕方ないのではないかと。 -
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2010年に経営破綻し、その後、カリスマ経営者稲盛和夫を会長に据えて、着実に再生への途をたどったJALをモデルにした小説。
会社全体で思いを一つにするということの重要性はよくわかった。また、職場を超えてフラットにミーティングをするというのも良い試みだったのだろうと思う。
そして、稲盛(小説中では佐々木)イズムの浸透に当たっての当初の社内のとまどいがよく伝わってきた。ただ、そこから稲盛イズムが浸透していく過程に、あまり納得感がなかった(いつの間にか反対していた社員も稲盛イズムに染まっているような印象)。正直、自分も、小説中で言われているように、「ちょっと宗教っぽいな」とか「こんなことで会社が復活