あらすじ
この男なくして、「住友」は語れない。絶対的権力者の専横、目先の利益を追う者たち……すべてを破壊せねば、再生はできない。危機に瀕した住友を救った“住友中興の祖”伊庭貞剛の、知られざる生涯に迫る感動のノンフィクション・ノベル。住友家二代目総理事として住友銀行創設などの英断を下し、“住友中興の祖”とよばれた伊庭貞剛。彼の人生は、波乱に満ちたものであった――。幕末、志士として活躍したのち、新政府に出仕して司法界に。その後、叔父であり、住友家初代総理事の広瀬宰平に招聘され、住友に入社する。しかし当時の住友は、別子銅山の煙害問題を抱え、さらには宰平の独断専行が目にあまるほどであった。住友財閥の中にありながらも、住友を破壊せんばかりの覚悟を持って改革に臨んだ企業人を描き切った、傑作長編小説。
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Posted by ブクログ
はじめと終わりは、住友林業の話から始まっている。中身は伊庭貞剛の自叙伝ですね。タイトルのように、力強く信念をもってすすめていくのは感銘を受けました。ところどころ、『貞観政要』『論語』『老子』『荘子』『臨済禄』の引用記載があり言葉の深読みができ心に響く感覚がありました。もう少し住友の歴史を知りたくなった気分です。
Posted by ブクログ
権力は腐敗する、絶対権力は絶対腐敗する
長く権力の座に居ると失敗は忌避し、成功のみを自分の実績として誇りたくなるのは人間の性
それが組織の劣化を招き、組織の自壊をもたらす
それを防ぐための工夫がされてきたのが人類の歴史
今日でも、「コンプライアンスとガバナンス」という横文字が連呼されるのは、人間の本質が変わっていないからだとも言える
逆命利君 命に逆らいて君を利する 忠という
従命病君 これをへつらいとなす
初めあらざるなし よく終わりあるはすくなし
とかく経営者は自分の器より小さき者、自分に従順な者を
後継者に選びがち
トップには構想力と決断力が必要
事業の進歩発達に最も害するものは、
青年の過失ではなくて、
「老人の跋扈である」
老人の保守と少壮の進取とはとかく相容れないもの
⇒現代の日本の病に通じる
Posted by ブクログ
日本は200年も存続する企業があるが、本書にあるこの言葉が気になった「企業は人間の組織だ。それは成功すればするほど保守的になっていく。成功は日々、過去になっていく。人は過去に執着し、成功体験を壊すことはできない。その結果企業は低迷する。成功体験を破壊する強い意志を持って行動しなければ、すぐに陳腐な企業になる」また、「事業の進歩に最も在するものは青年の過失ではなく、老人の跋扈である」という企業存続秘訣の言葉だ。政治体制も含めて古い体制、ロートルばかりでは下の者は意見すら言えない環境となり、権力と地位を守ろうとしがみつく。気がついた時には崩壊寸前、または大きな負担を次世代が背負う羽目になるのだ。そろそろ日本でも国民が納得する大改革が必須な時代になった、そう感じる。
Posted by ブクログ
住友グループの史実に基づいた小説でした。戦前にこのような人が存在したとは知りませんでした。最後に参考文献が載っているけど、これだけ調べたからこそ、重厚な内容になったのかなと思いました。
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私が、某銀行の日本橋支店に配属になり、大口現金の受け取り先が、住友銀行人形町支店でした。石作りの店と行員のエリート振に圧倒され、住友は、お客様のためになんでもする。と教えられました。貞剛イズムが浸透していたのかと、今納得しました。
Posted by ブクログ
広瀬宰平・伊庭貞剛といえば、別子銅山の近代化を実現した住友中興の祖、ぐらいの知識しか無かったが、小説形式とはいえほぼノンフィクションに近い本書で、その生い立ちや功績を知ることが出来、とても勉強になり、かつ面白かった。
伊庭が明治維新当初からの法務官僚だったことや、第一回帝国議会議員だったことは全く知らなかったし、別子銅山の公害改善に取り組んだ姿勢は、経営者としての姿勢というよりも、人間としての生き方を考えさせられる内容だった。