相場英雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
怪事件に挑む捜査員達、現代社会の問題、その現代社会の中で生きる人達の問題、そういうようなモノが交錯し、所謂「ミステリー」の枠を踏み出した、独自な大きな存在感を放つ小説かもしれないと思った。
冒頭、何人かの男女の日頃の様子を綴ったプロローグが在る。そして本編に入って行く。
本編冒頭、警視庁捜査一課の捜査員である田伏刑事が特捜本部の会議に出ている。中野坂上で25歳の女性が刺殺された事件の捜査会議である。事件発生から数日、捜査の進捗が芳しくない。捜査会議に捜査一課長の上田が現れ、捜査員達を督励する。その上田が田伏に声を掛けるのだが、田伏の事情が示唆される。事情で田伏は現場を少し離れていて、今般の一件で本格的な復帰ということになっていたのだった。
そうした中で田伏は所轄の若手、若宮刑事と捜査に勤しむ。女性の関係者に丹念に当たる“鑑取り”に勤しむ。簡単に事件に結び付くような情報はなかなか得られずに苦戦している。そこに若い捜査員の長峰刑事が連れて来られ、上田課長は田伏刑事に長峰刑事と組んで活動するように指示する。長峰刑事はIT業界から警察に転職してサイバー捜査の担当だったのだが、今般は現場に入るということになったのだった。
やがて高円寺で、45歳の男性が刺殺体が発見された。杉並区の警察署にも特捜本部が立ち上げられた。やがて視察に用いられた今日気が同じモノであるらしいということになり、2つの特捜本部が連携することになった。田伏と長峰のコンビは、両本部の中で遊軍となって動くことになった。
25歳の女性はモデル等をしていて、45歳の男性はタクシー運転手で、両者の関係性が判らない中で、同一犯による連続と見受けられる犯行である。事件の謎が深まる。やがてインターネットを駆使した犯行声明が出て、事件は劇場型犯罪の様相を呈し、更に被害者が生じてしまう。
現場を離れる羽目になった大きな“傷”を負ってしまった、40歳代半ばの田伏刑事と、警察官の世界とは違う背景で過ごして転職した若い長峰刑事というコンビが、事件の謎、犯人の意図を探ろうと奮戦する。「訳アリ」な故に特捜本部内でやや敬遠されるような空気感の田伏刑事と、他の捜査員とぶつかりそうになる独特な長峰刑事とは「水と油」のような感じで、戸惑いながら動き始める。が、次第に職人的な刑事の仕事を教えるようにして推理を巡らせる田伏刑事と、持っている知識を活かして独自の発想で事件の真相に近付こうとする長峰刑事は好いコンビニなって行く。
田伏・長峰コンビは残忍な殺人を続ける犯人の、犯行の背後に在る悲しみや怒りを次第に明らかにして行く。田伏も過去の「訳アリ」な一件を何とか乗り越えようとし、長峰も新たな仕事や出逢いの中で自身に向き合う。何か夢中になった。或いは?この田伏・長峰コンビが新たな事件に挑むような作品でも登場すれば読んでみたい。 -
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所謂「就職氷河期」というような頃に社会に出た人達の中に見受けられる、過酷な情況と、その過酷さが拡がり深まるような様、そういう様子に翻弄される人達という様に、田川刑事達は出遭ってしまうことになる。「非道?」というやり方まで出て来る。本当に「何時の間にかそういうことになってしまった?」という様子である。
捜査活動中に耳目に触れた事柄は、殆ど悉く手帳に書き記し、ドンドン分厚くなってしまう手帳の頁を繰りながら考えるという流儀で、田川刑事は丁寧に事件を、そして仲野定文の来し方を探る。そして話しの発端に関わった木幡刑事も活動に参加し、仲野定文の身に何が起こったのかを探って行くことになる。そして家電や自動車というような、日本をリードして来たような業種が何処か「ガラパゴス」な様相を呈し、労働慣行も何やら「ガラパゴス」になってしまい、安心して心豊かに暮らすことが叶う人が少なくなって行くというような様相も見受けられる様が作中世界に展開する。これは凄く考えさせられた。
丁寧に謎が解かれる刑事モノであるが、同時に「何時の間にかこういうことに?」を提示するような感じの作品だ。広く御薦めしたい。 -
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『ガラパゴス』というのは少し不思議な語感の題名かもしれない。
ガラパゴス諸島―「ゾウガメの島々」という意味らしい…―という南米の東太平洋上の島嶼が在って、大陸と陸続きになった歴史を持たず、島々の生物は飛来したか海を渡って漂着したものの子孫に限られ、他では見受けられない固有種になっている様子が多く見られるのだという。但し、主に19世紀頃から多くの人々が入り、外来の生物も持ち込まれ、様子が変わってしまったということも在るようだ。
このガラパゴス諸島の名から転じて「ガラパゴス」という言い方が在る。周囲から隔絶した環境の中で独自に進化しているかのように、様々な国や地域での基準を外れてしまったような状態に在るという意味で用いられるようになった。主に日本の様子を、少し揶揄的な意味を込めて言う場合に使うのかもしれない。独自の方向で高機能化した製品やサービス、海外進出への消極的な捉え方、排他的で規制の多いマーケット等が、国際基準から離れた状態で進化してしまっているという観方だ。
本作の『ガラパゴス』は、この「日本の様子」に関する言い方から来ている。
基本的には刑事達が事件の謎を解明する物語だが、色々と考えさせられる内容が含まれている。
身元不明遺体のファイル番号「903」は、自殺と見受けられるという処理になっているが、写真を視てみれば「毒殺?」という特徴が在った。調べなければなるまいと田川刑事達が動き始める。
「903」に「仲野定文」という氏名が与えられた時、その男の身に何が在ったのかを探す動きが始まる。 -
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刺激的なタイトルだが、ITリテラシーがそれなりにあればわかる内容をエンタメ要素強めに描いている。しかし一流外資系広告代理店勤務の主人公である矢吹蛍子のIT常識の無さは荒唐無稽と言ってよく、読者に話が分かりやすくするように敢えて無知なキャラクタに設定しているのは理解できるが、少し酷過ぎて現実味が薄れた。低所得の貧困層がターゲットにされプロパガンダによって洗脳されていくことは昔からあることだが、そこにIT・AIの力が加わると加速度的に拡散し、本小説のストーリになることも非現実的ではない、まさにトランプがそうだったし。。低所得の貧困層でなくても活字離れがすすみ、読解力が低下し続けている現在の状況が更に格差を拡げていく現実を知るには読み易いこともあって良い教科書。といっても本当に読むべき方々は400頁弱の小説なんて絶対読まないよね。。
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相場英雄『ファンクション7』実業之日本社文庫。
北朝鮮、韓国、日本を舞台に描かれた社会派サスペンス小説。『越境緯度』を改題、文庫化。
プロローグに、新宿で起きたVXガスを使った無差別テロと北朝鮮から姉弟を残して韓国に亡命したイ・スーフンの2つのドラマが描かれるが、本編ではどのような展開になるのか。果たして、ヤクソクは果たされるのか……
相場英雄作品ではいつものことなのだが、ストーリーはかなり面白いのに、全体的に粗さを感じた。
日本とは文化や思想も異なる謎に満ちた韓国と北朝鮮。同じ韓民族なのにアメリカとソ連により北と南に分断されるという不条理。両者の中でも北朝鮮は日本人拉致問題に始まり、日本海域へのミサイル発車訓練など暴力的な異常行動が目立つ危険な存在である。そんな北朝鮮の最高指導者を盲信する国民の異常さはカルト宗教団体にも似ている。
北朝鮮から韓国に亡命したイ・スーフンはやがて韓国を代表する巨大企業のトップとなり、生き別れた妹との約束を果たすために北朝鮮の解放を画策する。
一方、北朝鮮は最高司令官の理想を果たすため、日本の大学にテロリストのリ・ソンスを留学生として送り込み、無差別テロを断行。大学でリ・ソンスを担当する元日銀社員で出世の道を絶たれた大田原教授は次第に北朝鮮を巡る事件に巻き込まれていくが……
タイトルの『ファンクション7』とはそういうことだったか。
定価913円
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Posted by ブクログ
この国には出口戦略がない。
なにか事を始めたら、終わりがないまま突き進み、いつかくる強制退場というExitにぶち当たるまでは止まらない。
不発弾に続くシリーズの位置づけの本作で主軸となるのが、営業から経済記者への急遽の転属となった新米記者の池内と、前作不発弾で金融会のフィクサーの古賀。
地方銀行の銀行員の自殺を端に発し、リフレ派に舵を切った日銀の国債発行の弊害について、池内が古賀に迫っていく。
高校時代の彼女が訪問し、今は駐車場の土地にマンションを建てないかという営業に来たと、叔母から池内に連絡があった。
仙台の地銀に務め、今は殆ど連絡をとっていないのに、なぜ吉祥寺の叔母のところへ。
メガバンクに務める友人に事の顛末を話すと、地銀によるなりふり構わない営業実態を聞くことになる。
そして彼女の話を断るよう叔母に伝えた数日後、その彼女が自殺した。
出版業の営業から経済記者に配置換えされて早々、この地銀の営業について取材を続けるうちに、金融史の節目で暗躍するフィクサーの存在にたどり着く。
小説であるが、背景はすべてこの2,3年に起こったことを元にしている。
「この国には考えることを放棄した人が多すぎる。言い換えれば、馬鹿ばかりです。もはや修正不可能です」
相場英雄はこういう重厚な経済小説のが読み応えがある。 -
Posted by ブクログ
前回、政権に転ぶか、記者としての矜持を保つか、松岡がどっち選択したの!?ってのが分からず中途半端なところで終わってしまったので、もやもやしてました。
しかし、本作はそこの答え合わせから始まり、一気に陰謀ら隠蔽工作が暴かれて、灰原という新キャラや、意外な人物の関わりが見えてきて、最後は二転、三転、四転と、目まぐるしい攻防が繰り広げられた後、ちゃんと決着します。
これ、1と2というよりは、上と下ですね。出版社の策略なんでしょうけど、とりあえず1だけ買った人は、間違いなく2も買うことになります。ただ、2冊買っても後悔しないことは断言します。それくらい面白かった。終盤は一気読みでした。
芦原=安倍、阪=菅として見て、こういう未来もあったのかなーとか思うと、より楽しめる気がします。