【感想・ネタバレ】共震のレビュー

あらすじ

『震える牛』『ガラパゴス』著者の原点!

大和新聞東京本社の遊軍記者である宮沢賢一郎は、東日本大震災後、志願して仙台総局に異動する。沿岸被災地の現状を全国の読者に届けるため、「ここで生きる」というコラムを立ち上げた。そんななか、宮沢とも面識のある県職員が、東松島の仮設住宅で殺害された。被害者の早坂順也は、県職員という枠を越えて、復興のために力を尽くしてきた人物だった。早坂は亡くなる直前まで、被災地の避難所の名簿を調べていたという。
舞台は、石巻、釜石、陸前高田--。著者渾身の鎮魂と慟哭のミステリー。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

解説に、ミステリー作家がミステリーの要素を「付け足し」と言ってしまうほどの現実。とあった。帯には「これを書かねば、一生前には進めないと思った。」という相場さんの言葉。震災からもうすぐ9年、未だに復興半ばの被災地の皆さんの幸せを願わずにはいられない。

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2020年01月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「日付は止まったまま。日付が変わらずとも、沿岸の人間はなんとか生きていかなければならんのです。」

物語の主人公と同じように、被災地を自分の足で歩き回り、自分の目で見、被災者に寄り添って、被災者の言葉に自分も同じように傷つきながら筆者が集めたエピソードの数々は、とてもリアルで胸にずしりと来るものがある。東日本大震災という一個の事実に対し、被災した人の数だけの真実があることをひしひしと感じた。
絶望し、打ちのめされて、途方に暮れてもなお、懸命に前を向いて行こうとする被災地でさえ、容赦なく貧困ビジネスや詐欺、役人の不正や私欲に走るNPO団体が横行するのは、本当に許しがたい。
ミステリーとしてはいまいち、的なレビューが多いが、「ノンフィクションの震災関連書籍の売れ行きが芳しくない」今、ミステリーというエンターテインメントの要素は間口を広げるための手段に過ぎず、少しでも多くの日本人に手に取ってもらい、薄れかけた被災地への気持ちを、再び震わせたいとの狙いがあるのではないか。

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2024年09月17日

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ネタバレ

文庫版を再読。東日本大震災の被災地で震災復興を支えるベテラン県庁職員が殺害された事件を発端に明らかになる被災地を食い物にする詐欺事件。震災から5年が過ぎ、震災の記憶も風化していくなかで多くの人に読んでもらいたい作品。
文庫版あとがきに書かれた東京オリンピック決定の知らせを聞いた著者の「もしかしたら、オリンピックの選手村の方が復興住宅よりも早くできるかもしれない」という冗談混じりの言葉が現実になってしまいそうで、このままではいけないのではと改めて実感した。

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2016年03月18日

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東日本大震災をもとにした、社会派犯罪小説。小生は、日本で大震災を経験していないので、フィクションであれ、相場さんが後世に記憶を繋いでくれたことに、大変感謝しています。

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2024年08月30日

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まもなく震災から10年経ちますね。私は当時東京で経験はしましたが、津波被害や原発事故に直面された人と見れば悲愴感はないと思います。トリック事態はまずまずでしたが、実際に、他人の不幸でお金儲けする輩はいるのでしょうか。それを知らしめるためにも読む価値はあると思いました。

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2020年12月19日

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ネタバレ

 東日本大震災の復興に尽力する宮城県震災復興企画部の課長が東松島市の仮設住宅で殺害され、大和新聞記者の宮沢と、警視庁刑事部捜査二課の田名部管理官が被災地を歩き回り、その真相に迫る話。
 災害廃棄物、被災家屋の解体、高台移転に伴う用地確保などの膨大な復興予算を狙い、あらゆる復興事業に闇社会が手を伸ばしていることは被災地ではよく知られているので、本作のテーマそのものは被災地の人にはあまり目新しくない。
でも、本作に出てくる被災者の言葉や、宮沢記者と田名部管理官が感じる葛藤の様子に、単なるミステリーとしての一作品ではなく、震災の復興、被災者の心の復興を心から願う作者の熱意が伝わったし、読み応えがあった。現地も細かく取材されていると思ったら、作者は元々記者で、震災前にも石巻市を訪問したことがあったとのことで納得した。情景や感情の描写が鮮明で、被災地の情景がよく浮かんだ。特に、石巻市は生々しい被災状況が伝わってきた。
 被災地の様子や復興の実態を知らない東北沿岸以外の人たちも引き込まれるミステリー性とドキュメンタリー性の両方がある作品だと思う。あとがき、解説も素晴らしい。

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2019年11月21日

Posted by ブクログ

 いまだ東北は震災復興からは程遠いという現実がある。
 日本人はそのことを完全に忘却している。

 震災復興に携わっていた県職員が毒殺された。
 大和新聞の宮沢賢一郎は独自に事件を追う。
 一方、警視庁捜査二課の田名部は震災復興費に絡むブラックマネーを追っていた。
 宮沢と田名部の追う先に、震災を食い物にする組織が明らかになっていく。

 3月11日のあの日、日本の広範囲で大地震と複合災害に震え上がったはず。
 しかし、忘れやすい日本人は東北の現実を見ていない。知らない。
 作者の「震災復興の現実を見ろ」という声が伝わってくる。

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2018年09月01日

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大和新聞東京本社の遊軍記者である宮沢賢一郎は、東日本大震災後、志願して東北総局に復帰した。コラム「ここで生きる」を立ち上げ、沿岸被災地の取材を続ける宮沢のもとに、東松島市の仮設住宅で他殺死体が発見されたとの一報が入る。被害者の早坂順也は、宮城県庁震災復興企画部の特命課長。県の枠を飛び越えて復興に尽力してきた人物だった。早坂は亡くなる直前まで、各被災地の避難所の名簿を照合していたという。これは、本当にフィクションなのか?

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2018年11月25日

Posted by ブクログ

犯人を追う刑事と、事実を世に伝える新聞記者との関係性をベースに進む推理小説的要素よりも、東日本大震災の現地の事をつぶさに伝え、風化させないというメッセージが多分に含まれている物語。

東北地方に訪れる機会がなく、現地のことは今も昔も殆ど知らないのですが、阪神大震災のときには大阪に住んでおり神戸の惨状も身近なものとして感じた記憶が蘇ります。

復興を支える県職員が殺害される事件を負う中で、被災地の状況だけでなく、被災者の皆様の声などもお聞かせいただき、ご家族やお仲間を失われた方の辛い思いを伝える著者の現地に対する気持ちが強く感じられました。

無責任な頑張れという言葉、言葉の使い方の難しさが一番心に残りました。

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2017年05月30日

Posted by ブクログ

登場人物たちの人間関係に違和感があると思っていたら、シリーズものでした!
そんなシリーズものなのに、東日本大震災を下敷きとしたミステリー。
しかし、とくにミステリーとして面白いところはなく、物語の主軸は東日本大震災の復興に伴うところ。
それがあまりにリアルで、ミステリー要素はおまけです。
トリックなんかも、なんだかなって感じ...

震災の復興に尽力してきた宮城県庁の課長の早坂が他殺体で発見されます。
恨まれることなどなかった早坂がなぜ殺されることになったのか?

大和新聞の遊軍記者の宮沢賢一郎がこの事件を追うことに。さらに、早坂のメモには、警視庁捜査二課の田名部の名前が残されていました。

で、田名部と宮沢が事件の真相を追っかけることになっていきます。
そして、復興予算を食い物にする組織の存在が明らかになっていきます。

殺害のトリックはおいておいて、被災地の真実、事情、苦悩、被災者の想いがリアルに語られています。
それだけでお腹いっぱいの物語。そして胸が熱くなる物語。

もう、あれから10年以上。風化させていはいけない!

お勧めです

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2025年01月11日

Posted by ブクログ

 東日本大震災を背景にした社会派ミステリー小説とのことですが、本書の読後感として、フィクションとノンフィクションの比重、バランス、両立など、いろいろと考え込んでしまいました。

 震災を背景にした小説は他にも読んでいますが、本書の特徴は、(被災2年後の)改善されない圧倒的で生々しい描写のリアルです。これらは、実際に現場に何度も足を運び、取材を重ねなければ絶対に書けない部分だと思います。

 これに対し、被災地復興に尽力する県職員が殺害されるミステリー部分は、少し奥行きに欠けるような印象を受けました。「虚構を遥かに超越した現実」の扱いが強過ぎた感が歪めません。読み手の感想が分かれるところではないでしょうか。

 発刊が震災2年後で、著者が伝えたかったのが「東日本大震災の傷がまだ癒えない被災地の現状」だとすれば、ノンフィクションで十分伝わったのでは、と思いました。ただ、被災者の弱みに漬け込んだ不正・詐欺は断固許さない!という怒りの感情をミステリー仕立てにしたとすれば、それも十分頷けます。

 被災者に寄り添った描写、当事者の本音、被災地の書店やグルメ情報など、惹かれる要素も多くありました。単行本解説の作家・石井光太さん、文庫版解説のさわや書店・松本大介さんの文章もよい味を出しています。

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2024年03月13日

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ぼちぼちですかね。
題材は嫌いではないが、トリック、犯人探しが普通にドラマ仕立てで。なんとなく今どきないいかたではないけどご都合主義的に解決していった感じで。ちょっとしんどかったですね。

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2022年07月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

震災当時やその後の様子がありありと目に浮かぶ...。石巻や南三陸など震災から約3週間後に目にした光景は、未だに脳裏から離れない。
当事者同士だから分かり合えるものがある。そうした意味では自分は無能だ。
ミステリーとしては、様々な社会問題や犯罪行為を織り交ぜつつ、真相に迫っていくが...。これで落ちるのかなぁ...。

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2019年06月02日

Posted by ブクログ

『震える牛』がすこぶる面白かった相場英雄。単発ものだと思って読み始めたら、みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎シリーズでした。東日本大震災の被災地で起きた殺人事件。宮城県庁震災復興企画部の特命課長が殺害され、被害者と面識のあった宮沢が事件を追う。被災地の義捐金目当ての詐欺の真相に迫るという本作は、実際にあってもおかしくはない話。ただ、事件の舞台に無理やり被災地を当てた感が強く、ならば純粋に被災地を描く小説を書き上げてもよかったのではないかと思ったりもして。しかも犯人が最初から怪しすぎるのはいかがなものか。が、トリックはそれなりに面白く、被災地を舞台にして何か書き上げることはできないかと考えた著者の心意気にも感じ入るところはあります。

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2017年05月10日

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