相場英雄のレビュー一覧
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相場英雄『トップリーグ(2)アフターアワーズ』ハルキ文庫。
政界ミステリー小説シリーズ第2弾。タイトルの『トップリーグ』とは、総理大臣や官房長官、与党幹部に食い込んだごく一部の記者を指す。
現実の政界を巡る疑惑とフィクションとが見事にリンクし、非常に面白い。前作で決着したと思われた昭和の大疑獄事件を巡り、本作では全く予想外の展開をみせる。
大和新聞の松岡直樹は官房長官のトップリーグに登り詰め、史上最年少で特別編集委員となる。一方の週刊新時代の酒井祐治はあの事件後に引退し、京都で小さな学習塾を開いていた。
新たにトップリーグを目指す若手女性新聞記者・灰原美樹。酒井と共に松岡への復讐を目論 -
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先月読んだ「トップリーグ」に続きがあるとは知りませんでした。「トップリーグ」が不完全燃焼な終わり方で、がっかりしていたのが「トップリーグ2」で凄い展開になって予想を上回る興奮と満足感で読み終えることができました。
前作から5年後の設定になっており、酒井と大畑を裏切った形で政界疑獄事件を記事にしなかった松岡は、総理番のトップリーグ記者となり、新聞社の特別編集委員に出世していた。一方命を取り止めた酒井は週刊誌記者を辞め、京都で小学生相手の塾をやっていた。
裏切った松岡を許さない大畑は復讐に燃え、松岡の新聞社に入社した大学の後輩、灰原美樹を取り込み、政界の暗部に食い込み暗部を暴き、松岡の失脚を狙う。 -
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本作は、好評を博したという雑誌連載が単行本化され、更に文庫化された作品で、作中世界は極々近年の状況をモデルとしている。作中世界に出て来る政治家や、様々な事件等は「あの人が?」とか「アレのこと?」というようにぼんやりと思い浮かぶような例が非常に多い。勿論、作中のモノに関しては、飽くまでも「作中世界に出て来る要素」として愉しめば好い訳だが…
本作には「政治部の記者の仕事」というモノが、「一定程度、実態を反映している」と思えるような感じで描かれている。そして、その世界の「表と裏」も伺わせる…非常に興味深い。
タイトルになっている“トップリーグ”とは?作中世界の、新聞政治部の業界用語なのだが、これの意 -
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「震える牛」でファンになった相場英雄さんの作品。
やっぱり好きだわ~。
ネット社会と言われる現在
匿名性を盾に垂れ流される愚痴と罵詈雑言
事件の始まりは全く共通点のなさそうな3人の殺人事件
事件を担当したのは中野署の田伏刑事
実は彼はある事件からネットにトラウマを抱えていた
そしてバディとなるのは生安から移動となった長峰
ネットに詳しいが少々難あり…
真相を探る2人だが、犯人はネットを使った前代未聞の「公開処刑」を実施し…
犯人も被害者なのか?
そして本当の被害者は誰だったのか?
読み終わったら、どうしようもないやるせなさがふつふつと沸き起こります。
世界を震撼させたあの災害と人災
無責 -
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刑事部と公安部の公開殴り合いに発展する展開が凄まじい。特にプロローグでのやり取りが終盤で効果的に明かされる場面は鳥肌ものです。
元警官二人の殺人が不正な株取引や上席のスキャンダルを孕む展開でどんどん深みを増していくストーリー。兎沢の食券の件はちょっと脇甘過ぎで違和感があるかな。組織安泰の為に殺人犯を逃がす公安部は酷いが、公安のスキャンダルをネットに暴露する刑事部もやり過ぎですね。刑事部サイドは内田副総監の犯人との癒着スキャンダルの暴露で一石二鳥だったかもね。
警察の主要人物達が不幸に見舞われる中でのラストの志水と兎沢の掛け合いがとても印象的。ストーリー中の主人公2人が殴り合い要素がありそうなラ -
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「一万円選書」第6冊目!
6冊目にして、やっと自分の好みの作品と出会えた。感謝。
WOWOWドラマWで以前見た『震える牛』の原作者による続編が本書。続編といっても、主人公が同じだけで、内容は全くの別物だ。
ドラマW版『震える牛』は映像だったせいもあり、あまり自分の好みではなかったが、本書『ガラパゴス』は全く逆。あまり上下巻ものはダラダラしていて好きではないが、あまりの面白さに長さを感じず、いっきに読んでしまった。
いろいろな登場人物にスポットを当て、ストーリーが進んでいく点で、池井戸潤『空飛ぶタイヤ』に似ている感じ。『空飛ぶタイヤ』が好きならば、きっと気に入ると思う。
また、きっとこ -
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派遣労働者の実態、そして液晶ディスプレイやハイブリッドカーなど日本の製造業が直面した問題をミステリーとうまく絡めて読み応えのある作品だった。
「震える牛」でもそうだっだけど、ストーリー展開上に現代社会・企業の問題を織り込みつつもそれぞれの登場人物が丁寧に描写されているのでヒューマンドラマとしても没入しやすく、直ぐにのめり込めた。
扱われている問題についても、色々と改めて考えさせられるコトが多かったかと。。。
特に派遣労働については記事等で読んだりして厳しい実情って程度の理解は持っていたものの、残念ながら実態に直面する機会がなかったので実感が湧いてなかったってのが現実。リアリティの有無はともか -
購入済み
本を持っているのに出先でどうしても読みたくなり買ってしまいました。
面白さは皆さんが書かれている通り、折紙付きです。
ネタバレにならないと思いますが、何かを食べながら読まない方が良いです。 -
購入済み
震える牛も凄かったですが、こちらも凄かったです。語彙と表現力が足りないので、この衝撃をうまく文章に出来ないのが歯がゆいです。
自分の知識がニュースで何となく知った気になっていただけだった事がよく分かりました。
今、仕事があって健康保険を使えて住む所がある事の有り難みをすごく感じました。 -
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相場英雄『ガラパゴス 上』小学館文庫。
あの社会派ミステリーの傑作『震える牛』に続く、シリーズ第2作。
今回、取り上げられるテーマは『雇用』である。タイトルの『ガラパゴス』と『雇用』とがどう結び付いていくのか、この先が興味深い。また、埋もれた他殺事件の背後に見え隠れする大企業と急成長した人材派遣企業、悪徳刑事の姿……こちらはさらに気になる。
切れ者であるが故に窓際に追いやられた警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一は同期の木幡祐司の依頼で不明者リストに目を通すうちに自殺処理した案件が他殺だと看破する……
作中に登場する自動車メーカーや電機メーカーはあそこだろうなと容易に連想出来る。今や多 -
Posted by ブクログ
相場英雄『復讐の血』実業之日本社文庫。『鋼の綻び』を改題、大幅加筆修正、文庫化。警察小説と金融小説とが見事に融合した面白い作品。さらに日本人が決して忘れることの出来ないあの大事故までもが物語に絡み、思いも寄らぬ展開が待ち受ける。
新宿歌舞伎町で起きた金融ヤクザの惨殺事件から物語は始まる。殺人を教唆した金融ブローカー・矢吹巽と加害者のホストは『棄民』という言葉でつながる。一体、何に対する復讐なのか、どういう手段で復讐を果たそうとするのか。
相場英雄の小説は、市勢の人びとをないがしろにする巨悪の正体を静かな怒りをもって描いたものが多く見られる。この作品もまた『棄民』として政府に切り捨てられた市