相場英雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「ゼロ打ち」(相場英雄)を読んだ。
時事ネタがらみの社会派エンタメですかね。
投票締切と同時に当確速報を出す『ゼロ打ち』というより各社鎬を削る開票速報の裏側にメスを入れるという感じかな。
ただ、大和新聞がNHR(日本放送連盟)に取って代わるためのカラクリがもうひとつ弱くないか。
ゼロから選挙事務所を立上げていく場面とか新人候補者が臨戦しながら意識が変わっていく様とか遊説場面とか選挙そのものの臨場感は素晴らしいな。
ゼロ打ちのストーリーと微妙に絡むある都議会議員の不審死を追う顛末がありきたりな気もするけど。
なんだかんだ言いながらも楽しく読みました。 -
Posted by ブクログ
相場英雄『マンモスの抜け殻』文春文庫。
コロナ後の介護業界の闇を描く社会派ミステリー。
『都心の限界集落』、『マンモスの抜け殻』とは言い得て妙である。今の日本では、少子高齢化、空き家問題、介護問題が騒がれている。高齢化が進み、介護施設に入所させようにも、比較的安い特養老人ホームはどこも一杯で入所待ちが数百人というのもざらだ。
本作では一つの殺人事件を切っ掛けに、こうした社会問題の裏側に潜む闇を描いている。なかなか真相が見えぬままに進行するストーリー。結末は予想を大きく裏切り、遣る瀬無い思いが去来する。
高齢化と人口減少が進む都心の限界集落と呼ばれるかつてのマンモス団地、富丘団地で83 -
Posted by ブクログ
ネタバレ居酒屋強盗事件の未解決事件を田川刑事が追う話。地取り鑑取りのスペシャリストによる地道な捜査、いつどこで繋がるのか、手帳が膨れるごとに期待も膨らむ。この強盗事件が巨大スーパーによる地方破壊と食の安全に繋がるとは。他人事とは思えず日本社会のことを考える。こんなの加工肉食べたくなくなる(多分すぐ食べてる)勉強不足でBSEに感染した牛が震える、というタイトルの単語を知らず読みながら驚愕した。
田川刑事が職人すぎて格好良い、田川家の雰囲気もめちゃくちゃ好き。
にしても宮田さん!?え、めちゃくちゃ好きだったよ途中まで。田川刑事を買ってる良い上司だと思ってたよ、途中まで。ねぇ宮田さん!? -
Posted by ブクログ
ネタバレ裏表紙の「『メモ魔』の異名を持つ田川は……」を見た瞬間にその設定にそそられて読んだ。ミステリにおいてこういう設定は鉄板ながらもやはり強い。
証言が取れるまでかなり時間がかかること、田川による綿密な捜査に反して犯行計画が稚拙で杜撰なため事件の真相に肩透かし感があること、文章そのものがやや淡白なことなどは気になるが、そうは言ってもコツコツと地道に証言を取っていく様子は楽しんで読み進められた。
終盤で突然上司の腕時計の詳細な描写が入ったので首を捻りながら読んでいたら直後にどんでん返しが起こって内容的には笑えないのに笑った。
BSE問題からかなり時間が経ってしまったので、もっと以前に読んでいたらより新 -
Posted by ブクログ
政界の裏工作よりも、掴んだネタに振り回される主人公たちのサスペンス劇場になっている2作目。これは期待できない流れか、と思っていたらラストはきっちり与党の頭上に爆弾が落ちる豪快なオチ。それだけでなく、未来も導いてくれそうな素晴らしいストーリーだった。これ、上下巻でも良かったくらい。
仲間だったのに裏ボス感をにおわせる官房長官。その一言がなかなか奥深い。
── この国は低成長ながら均衡を保っています。政治が腐敗していようと、人心が乱れたりしていない。平穏な暮らしを少しずつ変えていくつもりだった─
これが与党目線か。不祥事をもみ消しまくって何をのたまっとる!と拳を固めることもなく、裏金なんて他 -
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トップリーグとは官邸付きの記者の中の、選ばれし数人のことを指すらしい。ラグビーかと思った。
ニュースだけでは薄っぺらに見える閣僚の動きが窺い知れる。ブンヤ目線のためヒリヒリした時間感覚で話が進み、まるで疾走するように読み終わった。
──日本は先進国の中でも一番成熟した国家となりました。(中略)誘導する利益や利権がなくなった途端、かつての派閥は急激にその機能を失ったのです。(中略)負の対応を押し付け合うのが、現在の政治の最大のテーマです─
高齢化によってセンセ方のつな引きはさらに空虚を増しているという見方。現実でも裏金と増税メガネのニュースしか見ない。池上彰さんの言葉では税金の使い道を決める