相場英雄『イグジット』小学館文庫。
これは、経済ホラーサスペンス小説と言っても良いのかも知れない。
はっきりとした結末は用意されておらず、前半で自殺した地方銀行の女性行員についても深堀りは無く、どうにもスッキリしない。ただ日本政府と日銀への不満と日本経済の未来に不安を煽るだけの小説であった。
今年、ついに日本はドイツにも抜かれ、GDPで世界4位に転落する見込みである。円安は止まらず、昨日1ドル150円台に突入した。バブル経済崩壊後、30年間も経済成長に伸び悩み続け、世界一の財政赤字を抱える日本に出口はあるのだろうか。
出版社の言論構想社で営業を担当していた池内貴弘は急な異動で出版社の顔とも言える月刊誌の経済担当になる。なかなか記事を書けずに戸惑う中、都内に住む叔母から不動産運用に関する相談を受ける。叔母の元に池内のかつての恋人で仙台の地方銀行に勤める千葉朱美が叔母に家の裏の空いている土地にマンションを建てることを勧めると言うのだ。
池内は千葉朱美と面会し、不動産運用の内容を確認すると、その直後に彼女は自殺してしまう。池内は周辺取材から地方銀行で彼女が置かれた苦境と過酷なノルマがあったことを知る。そして、彼女が最後に頼ったと言う金融コンサルタント会社コールプラニングの古賀遼という人物と面会する。
金融界の掃除屋と呼ばれる古賀遼は何故か池内を気に入り、池内の日本経済の疲弊の裏側をレクチャーし、池内の友人の実家の危機に手を差し伸べる。その後、池内は古賀遼が政界の重鎮の命を受け、日銀総裁人事にも関与していたことを知る。
先週、タイに出張することになり、円をバーツに両替するついでに4年前の中国出張で余った人民元を円に両替したところ32.000円にもなった。確か4年前は20,000円程度だったはずだ。今回の出張費が丸々浮いたのは助かったが、如何に円が弱くなったかを実感した。
最近、値上りを痛感するのが書籍の価格だ。少し前まで1冊700円程度で購入出来た文庫本が今では1冊900円である。海外翻訳物だったら、1冊で1,200円から1,500円は覚悟しないといけない。上下巻なら2,400円から3,000円だ。もしかしたら、本を買って読むという時代は終わったのだろうか。
また、銀行も金利など殆どゼロなのに休日だ、深夜だと言って、ATMの利用料をやたらと取り始めた。また自分が利用している岩手の地方銀行に至っては外資に身売りしてしまい、ダイレクトメールなどは熊本の会社にアウトソースしている。その地方銀行にはかなりの額の定期預金をしていたので危機感を覚え、解約した。熊本からのダイレクトメールに高齢者の間は詐欺ではないかとちょっとした騒ぎになったようだ。
バブル経済崩壊後に政府と日銀は企業ばかりを優遇し、見掛けだけの経済成長を演じて来た。そこに東日本大震災という自然災害と原発事故が重くのしかかり、ひと息ついたところに新型コロナウイルス感染禍が始まり、アベノミクスなる愚策が経済成長にとどめを刺した。散々無駄金をばら撒いた安倍が退いたと思ったら、何を言っているのか解らない菅が後を継ぎ、何も出来ぬままに消えてしまう。
そして、次に現れた史上最悪の岸田という税金の海外バラマキ無駄遣い男が火に油を注ぎ、日本経済を大炎上させた。そんな岸田を支持する国民が居るというのだから全く不思議だ。
瀕死状態の日本にはかつてのような繁栄は望めない。頼むから自分が死ぬまでの後20年か30年ばかりは何とか保てって欲しいと願うばかりだ。
本体価格930円
★★★★