あらすじ
メモ魔の窓際刑事VS多国籍IT企業!
秋田県能代市で、老人施設入居者85歳の死体が近隣の水路から発見された。雪荒ぶ現場、容疑者として浮上したのは、施設で働くベトナム人アインである。
外国人技能実習生のアインは、神戸の縫製工場で働きながら、僅かな収入を母国の家族へ送金する日々を送っていた。劣悪な労働条件に耐えかね失踪。列島を転々として東北にたどり着いた。重篤なガンを患っていた入居者に請われて、自殺を幇助したとの自供を始める。
これで解決か……。捜査官らは安堵したが、ひょんなことから捜査に加わった警視庁継続捜査班の田川信一は、死体の「手」に疑いを抱いた。捜査線上にあがったのは、流通業界の覇者として君臨する世界的IT企業サバンナだった――。
<単行本が発表されたのは2020年秋だが、果せるかな、その1年余り
後の22年冒頭から、極端な円安が進み始めた。作中で「これから、日本人が景気の良いアジアに出て、仕送りする日がくるね」と吐き捨てたアインの予言(=作者の予言)は、着実に成就しつつあるようにも思える>――藻谷浩介氏(地域エコノミスト/巻末解説より)
日本経済の末路を予言した「震える牛」シリーズ最新作!
(底本 2023年1月発売作品)
※この作品は単行本版『アンダークラス』として配信されていた作品の文庫本版です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
田川シリーズ、3作目
田川と、サバンナ側の視点から描かれます
サバンナ、YOYOはもちろんあれのもじり、虚実を折り交ぜながら社会問題を取り上げるのはこのシリーズならではです
実店舗で確認、ネットで安値買いなどはあるあるですね
便利さの、その裏側を想像してみないのは罪です
外国人技能実習制度、新聞奨学生の持つ闇に焦点があてられます
反グローバリズムが主流になりつつある現在では、受け入れられにくいのかもしれません
フェアトレードという言葉も聞かれなくなっていますね
ミステリーですが、経済小説でもあります
Posted by ブクログ
「日本は日が昇る国だと、ベトナムにいる頃思ったね。でも、とっくに日が沈んだ国、貧乏人ばかりの国だよ。」
「これから、日本人が景気の良いアジアに出て、仕送りする日が来るね。」
「国民総中流社会」も今は昔、コロナ禍以降、分厚い中間層がごっそり下流へ滑り落ち、上流と下流にニ極化する新しい階級社会へ加速度的に移行しつつある現状を次々と突きつけられ暗澹たる気持ちに。劣悪な労働環境下で働く技術実習生たちの日々は、明日は我が身、に迫り来る。
労働環境問題改善のために、大企業によるCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の取り組みが持つ重大性と意義を知る。前澤さんの「送料は無料なわけない」という言葉とZOZOの送料無料の終了は過剰な顧客サービスに走る企業とそれを当然と浴する消費者のあり方に一石を投じるものだったのだ、と今更。
社会は繋がっているのだから、どこかで生じたしわ寄せは、巡り巡っていずれ自分のもとにやってくる。
Posted by ブクログ
現在のところマイ・ナンバーワン相場英雄さん。社会派ミステリー。ベトナム人技能実習生がリアルすぎて可哀そう。旅行小説の楽しさもあり。最後しっかりハメてくれて、完成度高いです。
Posted by ブクログ
NHKのドラマガラパゴスを見て、面白いと思い〈震える牛〉〈ガラパゴス〉〈アンダークラス〉3部作を読みました。
世相も反映していて、とても興味深く、どんどん引き込まれていきました。
歩いて歩いてたくさん情報を集めて、少しずつ犯人に近づいていく昔ながらの刑事田川。
キャリアの樫山とのコンビも最高!!
とてもとても面白かったです。
Posted by ブクログ
田川警部補シリーズの最新作で3作目。このシリーズは現在の日本の社会問題を鋭く描いており、すごく読み応えがある。事件とは直接的に関係ない部分の犯人の考え方、分からんことはない。困ったことやよね。さて、日本が立ち直る日が来るんだろうか・・・
Posted by ブクログ
良書。
作者の弱者日本社会問題を扱う姿勢は一貫しており好感が持てる。今回は、巨大ネットショップの利益追求と海外労働者について。
犯人、被害者の人生を追う刑事は砂の器を彷彿させる。
Posted by ブクログ
シリーズの前作2作と同じようなテイストで、主人公のキャラに若干の飽きを感じつつ、話としては上手いので飽きさせない。
これが書かれた2020年より、さらに「アンダークラス」が示唆する事態は深刻になっているのが怖いですね。
Posted by ブクログ
いくつかの企業の名前が登場する。それは架空の名前だけど、実在の企業をモジったものだということはすぐわかる。
描かれていることが、実在の企業と同じなのかどうかはわからない。
そんなことを考えながら読んだ。
Posted by ブクログ
単なる警察小説ではなく、巨大企業と中小企業との関係や、外国人労働者の問題にもスポットを当てた社会派小説。
舞台は、東京、秋田、神戸など転々とするが、スピード感もあり、ひきこまれるようにして、読むことができました。
震える牛やガラパゴスはテレビで見ただけでしたが、小説でも読みたくなりました。
Posted by ブクログ
アジアからの技能実習生の問題や日本のアジア人への差別、賃金が低い問題などを背景にした事件の話。刑事ドラマを見ているような展開だった。
田川信一シリーズの三作目とのこと、前作も読んでみたい。
Posted by ブクログ
相場英雄『アンダークラス』小学館文庫。
『震える牛』『ガラパゴス』に続く田川信一刑事を主人公にした社会派警察小説シリーズの第3弾。
低賃金で過酷な労働を強いられる外国人技能実習生の問題を殺人事件に結び付けたのには些か強引のように感じた。勿論、低賃金労働者は日本の重大問題であるのだが。
タイトルの『アンダークラス』は下層階級を指し、派遣労働者、さらには過酷な労働を強いられながら僅かな報奨しか手に出来ない外国人技能実習生などを意味している。そして、同時に日本国民全員の近未来の姿を示しているのだ。
世界各国の労働者の賃金は上昇しているのに、日本だけが横這い、若しくは下降を示している。これには様々な要因があると思うが、利益ばかりを追求する企業が、一時の利益獲得のためにメインの事業でさえも売却したり、労賃を固定費から安い変動費に変えるため、非正規労働者を産み出し、正社員を切り捨てて非正規労働者を大量採用したことが大きな原因であろう。
低賃金の非正規雇用は若者たちの未来を奪い、結果として少子高齢化に拍車を掛けた。
秋田県能代市で、老人施設入居者の85歳女性の死体が近隣の水路から発見される。容疑者は施設で働いていたベトナムからの外国人技能実習生のアインで、老女から自殺の幇助を頼まれたと主張する。
キャリアの樫山順子からの依頼で捜査に加わった警視庁継続捜査班の田川信一は、死体の手の形を見て、自殺幇助ではなく、明らかな殺意を持った殺人の疑いを抱く。捜査を進めるうちに捜査線上に浮かび上がったのは、流通業界の覇者として君臨する世界的IT企業サバンナだった。
本体価格940円
★★★★
Posted by ブクログ
労働環境を背景とした社会派ミステリー。以前読んだガラパゴスに続いて田川警部が解決に動く。
相場英雄さんの作品なので、「アンダークラス」という表題は経済的か社会的か下層を意味する。決して教室の床下ではない。日本経済は正にアンダークラスに向かっているように感じるのは私だけだろうか?
技能実習生として外国から日本の技術を学びに来る真面目な学生も多い。日本企業の人手不足を補い、技術を出身国に持ち帰るのが本来の目的なのに、違法に安い労働力としてしか見ていない一部の会社もある。田川警部とその企業との戦いが描かれているものの、本質は制度にあるように思う。
今やベトナムの富裕層はどんどん増加している。日本人が海外で安い賃金で酷使される日も来るのかもしれない。安い賃金でないと成り立たない事業もあるのは事実なのだろう。だからといって人としての限界を超える仕事はどの国の人であってもあってはならないと思うのである。完全な制度はない。韓国や台湾の制度の方が秀逸であるなら、学びとることも厭わない姿勢が政治や官僚に求められる。
Posted by ブクログ
社会派小説第三弾。
外国人技能実習生の過酷な現実にメスを入れた作品。この手の小説にありがちなものではなく、刑事の丹念な捜査から真実を導き出すという展開。
重厚だけども読みごたえのある秀一な作品だった。
Posted by ブクログ
秋田県能代市、2月、真冬の水路で、老人介護施設に入居していた85歳の女性の水死体が発見される。
容疑者として、介護職員であるベトナム人・アインが逮捕され、『殺してくれと頼まれて、水路に落とした』と供述する…
自殺幇助なのか⁇
警視庁捜査1課継続捜査班・田川は、被害者の手が『殺しの手』であることを見抜く…
地道な捜査が始まる…
秋田・能代、神戸…
事件の裏には、劣悪な労働環境の外国人労働者問題、IT大手企業による優越的地位の濫用…
さまざまな問題が事件につながってくる。
田川の執念の捜査が実る…
上層でいるために。
娘を幸せにするために。
娘を下層にさせないために。
アンダークラス、下層…
中層、上層。
これからはAI、ロボットに仕事を奪われ、下層に転落する人が増え、ますます格差が拡大、となるのだろう。
AIに取って代わられない、技術、知識、技能を持たなければと、考えさせられる。
これが教育格差につながるんだろう。
下層に生まれると、下層から這い上がることは並大抵のことではどんどんなっていくんだろう。
神戸は、山側、海側で方角がわかるのは確か。
そこまで山側が、っていうのは、東の方で。
阪急、JR、阪神…
西の方はそこまではなく、地域ですね。