あらすじ
「世界中に火種はあるが、一番ヤバいのは日本だ」!
月刊誌「言論構想」で経済分野を担当することになった元営業マン・池内貴弘は、地方銀行に勤める元・恋人が東京に営業に来ている事情を調べるうち、地方銀行の苦境、さらにこの国が、もはや「ノー・イグジット(出口なし)」とされる未曾有の危機にあることを知る。
金融業界の裏と表を知りつくした金融コンサルタント、古賀遼。バブル崩壊後、不良債権を抱える企業や金融機関の延命に暗躍した男は、今なお、政権の中枢から頼られる存在だった。そして池内の元・恋人もまた、特殊な事情を抱えて古賀の元を訪ねていた。
やがて出会う古賀と池内。日本経済が抱える闇について、池内に明かす古賀。一方で、古賀が伝説のフィクサーだと知った池内は、古賀の取材に動く。そんな中、日銀内の不倫スキャンダルが報道される。その報道はやがて、金融業界はもとより政界をも巻き込んでいく。
テレビ・新聞を見ているだけでは分からない、あまりにも深刻な日本の財政危機。エンタテインメントでありながら、日本の危機がリアルに伝わる、まさに金融業界を取材した著者の本領が存分に発揮された小説。
日経ビジネス連載時から話題となった作品、待望の書籍化。
果たして日本の財政に出口(イグジット)はあるのか!
編集者からのおすすめ:著者の代表作の一つである『不発弾』に登場したダークヒーロー、古賀遼が再び登場。過酷な運命を背負った男の生きざまに、ぜひ、触れてください。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
日経ビジネス連載時から単行本になったら読もうと思っていた作品。いつもながらの相場節全開で現実とほぼリンクしたスタイルは読み応え十分。直近の政治経済状況を知る上で教科書に用いてもいいような内容でありながら、確りとエンタメ要素も盛り込んで読み易くしており、一気読みさせていただいた。
Posted by ブクログ
コロナ禍が続く中、エムエムティー理論と財政規律、消費税など日銀による国債の無尽蔵な発行、株式の買い付けによる価格維持策、様々な問題を含みながら、出口戦略を探し続けていると言われているが、答えはどこに見つかるのだろうか?
Posted by ブクログ
この国には出口戦略がない。
なにか事を始めたら、終わりがないまま突き進み、いつかくる強制退場というExitにぶち当たるまでは止まらない。
不発弾に続くシリーズの位置づけの本作で主軸となるのが、営業から経済記者への急遽の転属となった新米記者の池内と、前作不発弾で金融会のフィクサーの古賀。
地方銀行の銀行員の自殺を端に発し、リフレ派に舵を切った日銀の国債発行の弊害について、池内が古賀に迫っていく。
高校時代の彼女が訪問し、今は駐車場の土地にマンションを建てないかという営業に来たと、叔母から池内に連絡があった。
仙台の地銀に務め、今は殆ど連絡をとっていないのに、なぜ吉祥寺の叔母のところへ。
メガバンクに務める友人に事の顛末を話すと、地銀によるなりふり構わない営業実態を聞くことになる。
そして彼女の話を断るよう叔母に伝えた数日後、その彼女が自殺した。
出版業の営業から経済記者に配置換えされて早々、この地銀の営業について取材を続けるうちに、金融史の節目で暗躍するフィクサーの存在にたどり着く。
小説であるが、背景はすべてこの2,3年に起こったことを元にしている。
「この国には考えることを放棄した人が多すぎる。言い換えれば、馬鹿ばかりです。もはや修正不可能です」
相場英雄はこういう重厚な経済小説のが読み応えがある。
Posted by ブクログ
日本経済全体のヤバさ、衰退ぶりを明確に示した本。平成から始まる超金融緩和政策により、日本の政策金利は0%台を維持し、果てはマイナス金利まで導入した。これが意味することは、金融機関が顧客へ融資する際の貸出金利も下がり、日本国債の利回りも下がる(国債価格は上がる)ことにより、もはや金融機関は金利の利ざやで収益を支える事が不可能になった。顧客基盤を地域に根ざしている、地銀・第二地銀・信用金庫などは、かつては日本国債の利回りで濡れ手で粟の儲けがあったが、人口衰退で地域の産業基盤が崩壊しつつあるフェーズでは、融資で稼ぐことは難しい。そんな地銀がスルガ銀行のシェアハウス融資のように、到底価値のない商品を不正に顧客へ販売するようなモラルハザードも理解できる。
もはや貸出では儲からない金融機関は民間への資金供給を渋り始め、結果的に民間の資金繰りを悪化させ、不況に拍車をかけてしまう。
更に事態を悪化させるのがコロナウイルスだ。コロナによる急激な受注減で苦しむ中小企業を救済すべく、政府は中小企業の返済延期と繰り延べを実施している。一見すると、中小企業の資金繰りを支援しているが、倒産すべき企業を政府が国債で存命させたとも言える。
膨張し続ける国債の受け皿は日銀だ。約1055兆円の日本国債残高のうち半分を日銀が保有している。これはアベノミクスと黒田総裁によるタッグで、異次元の金融緩和を実施し、日銀が国債を積極的に買い入れし続けたからだ。もし、仮に、国際市場が日銀の国債保有率の高さを指摘し、日本円の信認が揺らげば、日本円の価値は一気に下落する(日本国債の値段は下がり、利回りは急上昇する)。日本円の価値下落に伴い、、ハイパーインフレが起き、国民生活が崩壊するという最悪のシナリオも想定される。
膨れ上がった国債残高、金利が吹き飛んだ日本の金融市場、独立性を失い政府の要望通りに国債購入を維持する日銀、加えて、コロナによる不景気。この状況を打開する手段は一朝一夕には見つからないが、まずは本書を手に取り、日本経済が薄氷の上にあることを学ぶことが第一歩だと思った。
Posted by ブクログ
日銀の多額の国債買い入れや超低金利施策による異次元の金融緩和、ETF買い入れによる株価維持施策はいずれ国債の暴落や日銀の債務超過を招き、日本経済が破綻する。そろそろ「出口」を探らなければと思う人も多いが、新型コロナウイルス感染拡大が経済を直撃、「出口」への議論がしぼんでいるのが実状。
この小説は、そんな日本経済が抱える現状に焦点をあて、実在の首相、大臣や日銀総裁をモデルにした人物や架空の金融コンサルタントなどを登場させ、かなり過激な展開で描く経済エンターテイメント作品になっている。
主人公の池内は人事異動で初めて経済分野を担当することになった雑誌記者。仙台の地方銀行員で東京に営業に来ていた元恋人が自殺したことから、彼女が訪れていた金融コンサルタントの古賀に接触する。古賀は、バブル崩壊後、不良債権を抱える企業や金融機関の延命に暗躍し、政権の中枢から頼りにされる伝説のフィクサーだった。
池内は取材活動を進めるうち、金融界や政治家の裏と表、日銀の内部抗争、日本経済が抱える闇の部分を知ることになる。
安倍首相、麻生副総理、日銀の白川前総裁、黒田現総裁をモデルにした人物たちが限りなく実像に近い姿で描かれたり、アベノミクス、森友問題や桜を見る会などの事件も取り上げられているのが興味をそそる。特に麻生氏のモデルである磯田副総理が古賀を利用したり、裏工作をする様子はさもありなんと思わず笑いが込み上げてきた。
公定歩合という呼び名や金利の概念が消えたこと、中小企業金融円滑化法(モラトリアム法、平成の徳政令)が2019年3月末まで延長されゾンビ企業が増えたこと、金融界の裏側で経理や帳簿をごまかしきれいにする「掃除屋」が存在すること、ハイパーインフレ、金融機関の生き死にに関わる問題は報道機関もおいそれと記事にするわけにはいかないことなど、勉強になることも多々あった。
主人公・池内が経済に関しては素人であり、初歩的なことから取材に入ったので、経済通でない自分も同じ目線で金融政策の一端を知ることができたことが良かった。
Posted by ブクログ
今日の日銀の政策決定会合。上限無く国債買い入れられる大規模金融緩和策継続だけではなく一段の金利引き下げも可能に!EXIT出口はますます遠く。でもメディアは本質伝えず…小説の形借りた、お勉強本。相場さん、あらゆる媒体使って警鐘鳴らしてくれないとホント日本沈没!
Posted by ブクログ
大量の国債発行がもたらす財政破綻、ハイパーインフレがテーマのフィクション小説。大規模金融緩和で銀行の経営が厳しくなり、不正融資やリスクを伴う投資をするようになる。営業ノルマに追われた銀行員の自殺がリアル、、、
『現代の徳政令』で生き残るべきではない中小零細企業をも救済していたことは知らなかった。
財政破綻の危機が本当にあるのかどうかは疑問。
過去これだけお金をばら撒いてもインフレは起こっていなかった(直近のコストプッシュインフレは除く)。
不発弾のようにいつかいきなり爆発するリスクがあるということなのか?正しい答えは多分誰にも分からないが、皆が考え続けることが重要。
Posted by ブクログ
44かなり専門的に債権や株の動きと経済を物語にして読み応えのある作品でした。赤字国債ってよく聞くけど、結局誰が返すの?ということに気がつかない。大国の言いなりの金融政策でいいのかな。疑問を持つことの重要性を再確認しました。
Posted by ブクログ
流石の筆致。専門用語が多くなかなか難しかったが読み応えは抜群。平成の徳政令を自画自賛してる亀井静香に読ませたい。金融緩和政策の先にこんな展開が待っているなんて一般人にはわからないだろう。ただ株価が暴落した後に一転して高騰している現状に対する描写がないのは惜しかった。『考えることを放棄した人が多すぎる』まさに現代日本を表現した一文だと思わずにはいられない。
Posted by ブクログ
異次元の金融緩和、行き過ぎた財政出動にコロナ禍が追い打ちをかける。月刊誌記者の池内が取材を進める中明らかになったのは、業界や選挙ばかりを気にする政治家、彼らに迎合する日銀、何より政治や経済に目を向けない愚かな国民の存在だった…。はたして日本に出口(Exit)はあるのか…。問題提起としてはいいが、小説としてはマスコミ、地銀の問題、中小企業支援広がりすぎて収集つかなくなった印象。
Posted by ブクログ
・表紙が常盤橋の交差点から日銀の風景。
掃除屋と新米記者の二軸で物語が展開。
時事ネタと合わせた展開に、現実にも裏があるのかもと妄想するのが楽しい。
・前作「不発弾」を読んだ後の方が、人物の背景をより理解でき、楽しめる。
・「日本にとって、新型ウイルスは意図せざる形で援軍になった」今は日本にとってチャンスタイムかもしれない。
Posted by ブクログ
アベノミクス、黒田バズーカなどと称される日銀の異次元の金融緩和をテーマにした小説。日銀の金融緩和がどういう問題を孕んでいるかを簡単に知りたい人は本書を読むと良いかもしれない。
主人公?の記者から諸悪の権現のように言われる古賀は根っからの悪人ではないというか普通の良い人の一面もあって、勧善懲悪、二項対立のよくある小説とは違って、その分、人間味的な部分でのリアリティはあったかなと思う。その反面、ドラマチック性には欠けるけど、それは仕方ないかなと。
ボリュームは結構ありますが、手軽で読みやすい一冊でした。
Posted by ブクログ
最初の感想は本が分厚い
そして経済用語が難しかったです
その所々出る経済用語の所は
なんとなくで読んでしまいました
小説と現実がリンクしてそうな感じを得ました
Posted by ブクログ
危機感をもってもどうすることの出来ない現実。
誰にでもわかるように政治・経済を描いているがそんなに単純じゃないことの裏返しか。
それにしても、こんな狡猾・万能な副総理・政治家が存在するのなら、まだ出口は見えるのか、あくまでもフィクションなのだ、小説は・・・
スマホで検索するシーンがやたらと多いのには閉口した、わざと狙ったシーンなのかもしれないが。
Posted by ブクログ
小説の形を借りた、現在の財政についての勉強本。と考えるとわかりやすいか。映画化とかしやすそう。
コロナが蔓延し始めたあと、各国が一気に金を擦りまくって金融緩和したのはモラルハザードだなと思う。一度緩和した財政を引き締めるときにバブルが崩壊するのが世の常。どうなることか。
永久国際についてちょっとだけ触れらていて、
Posted by ブクログ
国の経済のひっ迫状況を描く社会経済小説。
安倍政権下を彷彿させる現在進行的な物語で、連載時機を見ると途中から新型コロナの影響も取り入れていると思われます。
国債のマイナス金利は衝撃的なニュースではありましたが、それをベースにここまで物語を膨らませるのはさすがだと思います。
主人公の一人の古賀は「不発弾」から繋がっているので続編とも言えます。
営業部門から編集部門に移動になった出版社の池内が経済素人なので、読者にも金融危機についてかみ砕いて説明されるのでわかりやすいと思います。
あの宰相の孫の財務大臣は優秀だと思っていましたが、この小説ではちょっと持ち上げすぎかも。
古賀の年齢も年齢だけに続編は難しそうかな。
Posted by ブクログ
ここ数年の政権の意向、経済の実態のリアルな部分にフィクションを組み合わせた小説。超低金利で商売が行き詰まった地銀、金融緩和を日銀にあの手この手で強制する政権。副総理兼財務大臣から裏の仕事を頼まれるフィクサー古賀と経済をネタにしようとする月刊誌記者池内を中心に物語は進む。
既に知っていることが少なくなかったので「ガラパゴス」のような衝撃はなかったけれど、日銀や地銀の現実、フィクサーは本当にいるのかも知れないと思わせてくれた。小説としてはまあまあ。
ただ、副総理は現実の人物に似ていて、もしかしてこの人はこんなに優秀なのかと、(誤解?させてくれた)