Posted by ブクログ
2018年11月18日
うーん。なんとも複雑な気持ちで読み終えることになった。犯人を許すことはもちろんできないが、犯人がこうなった背景を考えると、必ずしも犯人だけを責めることはできないと感じてしまった。
連続して殺人事件が起こる。犯行の手口と凶器は一緒だが、被害者に共通するものがなく、また防犯カメラが設置されていない...続きを読む場所を狙って犯行を繰り返す用意周到な確信犯だ。
捜査一課でその事件を担当することになった田伏と長峰。田伏は以前、少女誘拐事件を追っているさ中、善意の高校生に事件内容と田伏の顔写真をネットに流され、結果、少女が殺されることになってしまい、「ダメ刑事」のレッテルを貼られ、心を病んでしまった過去を持つ。一方、長峰はネットの専門家で中途で刑事になった変わり者。最初は人と接することが苦手で態度も悪い長峰とのぎくしゃくしていた関係も事件を追うごとにどんどん絆が強まっていく。
なんの手掛かりも見つけられないまま、「ひまわり」と名乗る犯人によって第3、第4の事件が起こってしまう。
ひまわりに近づくには、被害者と、そしてひまわりの共通点を見つけることが必要だ。田伏と長峰のコンビはひまわりに辿り着くことができるのか。
私は、東日本大地震と関東・東北大豪雨共に被災した経験がある。被災者は本当に辛い毎日を過ごすことになる。被災者の中には確かに家に戻れる状態になっても、しばらく仮設住宅で暮らす人もいる。しかし、本当に戻れない状態の人も。
私は福島県民ではないので、直接誹謗中傷されることはなかった。でも、実際、福島県の食べ物は、しばらくは風評被害に遭っていたと思う。私の周りにも実際そういうことを口にする人もいた。それで生活を失った人もいるだろう。また、自分が福島県民だからというだけでイジメに遭ったり自殺した人もいたのだろう。もし、自分がそんな目に遭ったなら。家族がそんな目に遭ったなら。誹謗中傷する人間を恨まずにはいられなかっただろう。ただ、実行に移すことはないとは思うが。
ひまわりの気持ちが凄くよくわかった。気づけば被害者よりも、加害者であるひまわりに肩入れしている自分がいる。第2のひまわりを生まない世の中にしていきたいと、切に願う。