Posted by ブクログ
2018年07月20日
「ガラパゴス(下)」
これは本当にフィクションか。
エディション通商(旧スキルビズ)に向かう交通の手段として、田川は妻・里美が乗り心地が悪いと愚痴っていたレンタカーを選ぶ訳ですが、何故乗り心地が悪いのか、燃費が悪いのかが明らかになっていきます。エコカー減税、クリーンエネルギー自動車補助金を持ち出...続きを読むして自動車産業を保護。浮いたお金でパーツをつけまくる。無駄なコストが減税という名の補助金で業界にばら撒かれるというファンドマネージャー・小島のレクチャーは、フィクションとは思えない。
何より強烈なのは、小島の言う「日本人は騙されている」という台詞です。相場氏は「ガラパゴス」の中で、何か気になるワードがあったらぜひ検索してほしい。そこで自分なりにキュレーションしていくしかない。現代は自分で防衛をしていかないと、本当に誰も守ってくれないと言っていますが、その意味が強烈に分かります。
そして、派遣労働者から伝わってくる静かで深い絶望。使う側と使われる側、正規社員と非派遣社員の間にある深い溝。本来はあってはならない溝が、全ての根本になっています。一言で片付けられない闇の深さは、犯人の動機にも垣間見える。田川が感じたように自己責任という言葉だけでは片付けられない。
解説では「日本のエコカーは詐欺であることや格差社会、ガラパゴス化の実情をレクチャーさせることで学びの妙を盛ることも忘れていない」と書いてありますが、まさにその通り。田川の目を通じて日本の現状を穿つこのシリーズは実に読み応えがあります。