相場英雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
日銀の多額の国債買い入れや超低金利施策による異次元の金融緩和、ETF買い入れによる株価維持施策はいずれ国債の暴落や日銀の債務超過を招き、日本経済が破綻する。そろそろ「出口」を探らなければと思う人も多いが、新型コロナウイルス感染拡大が経済を直撃、「出口」への議論がしぼんでいるのが実状。
この小説は、そんな日本経済が抱える現状に焦点をあて、実在の首相、大臣や日銀総裁をモデルにした人物や架空の金融コンサルタントなどを登場させ、かなり過激な展開で描く経済エンターテイメント作品になっている。
主人公の池内は人事異動で初めて経済分野を担当することになった雑誌記者。仙台の地方銀行員で東京に営業に来ていた元恋人が自殺したことから、彼女が訪れていた金融コンサルタントの古賀に接触する。古賀は、バブル崩壊後、不良債権を抱える企業や金融機関の延命に暗躍し、政権の中枢から頼りにされる伝説のフィクサーだった。
池内は取材活動を進めるうち、金融界や政治家の裏と表、日銀の内部抗争、日本経済が抱える闇の部分を知ることになる。
安倍首相、麻生副総理、日銀の白川前総裁、黒田現総裁をモデルにした人物たちが限りなく実像に近い姿で描かれたり、アベノミクス、森友問題や桜を見る会などの事件も取り上げられているのが興味をそそる。特に麻生氏のモデルである磯田副総理が古賀を利用したり、裏工作をする様子はさもありなんと思わず笑いが込み上げてきた。
公定歩合という呼び名や金利の概念が消えたこと、中小企業金融円滑化法(モラトリアム法、平成の徳政令)が2019年3月末まで延長されゾンビ企業が増えたこと、金融界の裏側で経理や帳簿をごまかしきれいにする「掃除屋」が存在すること、ハイパーインフレ、金融機関の生き死にに関わる問題は報道機関もおいそれと記事にするわけにはいかないことなど、勉強になることも多々あった。
主人公・池内が経済に関しては素人であり、初歩的なことから取材に入ったので、経済通でない自分も同じ目線で金融政策の一端を知ることができたことが良かった。
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Posted by ブクログ
PodcastトレンドウォッチでWOWOWのドラマが紹介されてて、面白そうだったので、原作小説の方を読んでみた。
主人公の松岡は、とある経済部の新聞記者。とある事情で政治部に異動となり、右も左も分からない状態から、いきなり官房長官番に抜擢される。
一方、松岡の元同僚で週刊誌記者の酒井は、政界の闇に迫るデカいネタをつかむ。
二人の物語が交互に語られ、次第に核心へと迫る語り口に、のめり込んでしまいました。
が、半沢みたいな話に、政治って結局こうなのかよ!とツッコミを入れざるを得ないです。。
トップリーグと呼ばれる、政権主要人物に特別に取材が許可された人たち。他社が取れないネタをもらえる一方で、批判しづらくなる、そんなジレンマがあったように思います。権力なんてロクなもんじゃないですね。 -
Posted by ブクログ
田川によって身元不明死体から、殺人の被害者として見出された903、仲野定文は、宮古島の模合から借金して九州の高専を卒業した優秀なエンジニアだったが、推薦された就職先ソラー電子を親友に譲るために面接を欠席した為、指導教師の反感を買い、就職できなかった。
派遣労働者として、過酷な労働条件の下、地方の工場を転々としながらも、周辺の人物には優しい人柄で慕われていた。トクダモーターズの部品工場で働いていたときに車体鋼板が安全性を欠くほど薄いことに気づき、ネット上で告発しようとした矢先、殺されたのだった。
ハンドルネームはガラパゴスの住人。ガラパゴスとは。島国日本では優れた製品として知られるが、国際的な競争力がなく、やがて廃れていく運命の産業のこと。
ガラケー、液晶パネル、ハイブリッド車がここでは挙げられる。
トクダを重要顧客とする人材会社パーソネルズの森、高見沢は、森の後輩で警視庁勤務の鳥居のアドバイスを受け、正社員の身分を欲する派遣労働者、清村、長内を実行犯として仲野を殺害したのだった。
地道な捜査で全貌を暴いた田川だが、政治家がらみによる警察上層部の判断により、トクダモーターズ社長、パーソネルズ社長の逮捕は見送られた。
田川の地道な調査から、派遣労働者の過酷な労働環境やガラパゴス化する日本産業の姿がよくわかった。 -
Posted by ブクログ
震える牛に続いて面白い。
今回は身元不明遺体から自動車業界と派遣労働者にスポットを当て、前作同様「力を持つ側」の欺瞞を描く。
この作品が書かれてから5年弱が経ったものの、依然として厳しい状況は変わらないだろう。
規制も進んで以前ほどの無法地帯よりはマシになったと聞くが、それでも不安定なことに変わりはない。
今年のようにコロナで業績が悪化してしまうと、真っ先に切られてしまい、首が回らなくなってしまう。
SNSで犬探しの情報はどんどん集まるのに、何百人分もある身元不明者の情報が全く集まらない歪さへの指摘が興味深い。
各警察署で身元不明者の写真、情報が公開されているが、果たしてどの程度情報が集まってくるのだろうか。 -
Posted by ブクログ
面白いと噂には聞いていましたが、予想以上。
「トップリーグ」とは、総理大臣や官房長官、与党幹部に食い込んだごく一部の記者。
先日、一緒に仕事をしたことがあり、現在は国政をカバーしているD紙のI記者が、コラムで「トップリーグ」に触れていました。
実在するのでしょう。
さて、本書は、大手紙「大和新聞」の経済部から、畑違いの政治部に異動となり、直後に官房長官に気に入られてトップリーグ入りする中堅記者の松岡が主人公の一人。
そして、もう一人の主人公が、かつて松岡と同期で大和新聞に入社し、現在は退社して特大のスクープ報道を売り物とする週刊誌で記者をしている酒井。
この2人の視点で物語は進みます。
松岡は、政権と癒着する政治部の風土に違和感を覚えつつ、自らも官房長官に取り込まれていきます。
一方、酒井は、かつて日本を震撼させた一大疑獄事件の「クラスター事件」(今は異なる響きを持つ名称ですね)の謎を追います。
この2人が交錯して以降、特に終盤は一気読み必至と言えましょう。
クラスター事件は、「ロッキード事件」をモデルにしていると見られ、非常にリアルです。
いや、クラスター事件だけではありません。
本書は徹頭徹尾、リアルです。
それもそのはず、著者は時事通信社の元記者。
現場の微妙な空気感まで伝わるのは、その場に身を置いたからこそでしょう。
結末は……読んでのお楽しみ。
私は、○○○は×××したと思います。
「ノンストップ政治エンターテインメント」との惹句は決して大げさではありません。
久々にお腹一杯になる小説でした。