相場英雄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
相場英雄『血の雫』幻冬舎文庫。
500ページ超えの社会派警察ミステリー小説。2021年10月新刊の幻冬舎文庫ミステリフェアの1冊。
元SITのベテラン刑事と元IT企業のSEという変わり種新人刑事のコンビが、インターネットを駆使し、劇場型犯罪を繰り広げる狡猾な犯人と対決する社会派警察ミステリー。途中までは傑作の予感もしたのだが、またまた東日本大震災の原発事故の避難民問題が描かれると一気に気持ちが冷めてしまった。
途中までは良い調子でストーリーが展開し、これは傑作ではなかろうかと読み進めば、前触れも無く唐突に『ひまわり』の正体が明らかになり、さらには無理矢理こじつけた感のある原発事故の避難民の苦難と犯人の関係が描かれると、さすがにちょっとねぇ……
著者がご苦労にも東日本大震災以降、何度も被災地を始めとする東北地方に足を運んでいるのを知っているが、それを小説のテーマとしてしつこく何度も利用するのは如何なものだろう。まるでネタに困った時は東日本大地震を利用すれば上手くいくだろうみたいな感じで、まるで被災地がバカにされているように思えてしまうのだ。
そして、消化不良のラスト……
かつてSITに所属し、女児誘拐事件の捜査を行っていたベテラン刑事の田伏は、捜査情報と共に顔写真がネットに拡散されたことが切っ掛けで犯人に女児が殺害されるという大失態を犯し、心を痛め、しばらく現場から離れていた。現場に復帰した田伏は、元ブラックIT企業勤務のSEだったという変わり種の新人刑事・長峰とコンビを組むことになる。
その頃、東京都内ではモデルの女性の刺殺、タクシー運転手の刺殺と同一犯による犯行と思われる殺人事件が発生していた。2つの事件を捜査する田伏と長峰は被害者の共通点やSNSでの裏の顔を知る。
その後『ひまわり』と名乗る犯人はマスコミ各社に秘密の暴露と次の犯行予告を書いた警察への挑戦状をメールで送り、ネットは騒然となる。
田伏と長峰は『ひまわり』の正体を突き止め、殺人を止めようとするが、『ひまわり』は警察を嘲笑うかのように第三、第四の殺人を決行する……
それにしても、今月の幻冬舎文庫から刊行されたミステリフェア作品の新刊は500ページから600ページ超えの分厚い作品が多いな。面白そうなので、本作を含めて4冊も購入してしまったよ。
本体価格830円
★★★ -
Posted by ブクログ
東京都知事選を間近に控えた東京。
そんな中、外資系大手広告代理店のオメガエージェントに勤務する矢吹はバンクーバーで、ケビン坂田と会い、60憶の契約を締結して来ることを会社から厳命を受けていた。
たった数ヶ月の仕事で、60憶。仕事の内容は矢吹には一切明かされず、無事契約は成立し、ケビン坂田は来日する。
ケビン坂田が命名したプロジェクトネームは「レッドネック」。意味は「米南部の保守的な貧困白人層」。
彼は日本にも多く存在する低所得低学歴の人々を、SNSなどを駆使し、都知事選の投票数を操作しようとしていた。
これまで、様々な社会問題を取り上げて来た作者。
前作は巨大マーケット企業の闇を取り上げていたが、今作ではITによって操作される人間の心理を巧みに描いている。
日々ネットやSNSに流される情報だけで生きている現代の日本人。その情報の真理など全く気にしていないように思う。
正直、ネットニュースのタイトルの流し読みしかせず、SNSも利用しない自分には、ケビン坂田のやろうとしている情報操作だけで、そんなに結果が変わるのか、よく分からないところもある。
他の方のレビューにあるように、矢吹の無知は酷過ぎるが、SNSなどを全く見ない自分も矢吹に近い部分はあるかと思う。
テレビのニュースや新聞でさえも、ネットやSNSで集めた情報に頼っている部分もあり、何が正しい情報なのか分からない世の中になったと常々思う。
この作品では、決して情報に流されることなく、自分の頭で考えることをやめてはいけないと言うことを伝えたかったのではないだろうか?
奇しくも、この作品を読んだ時期は自民党の総裁選真っ最中。総裁選に国民の投票の権利はない。日本のトップを決めるのに、国民の意が反映されない。国民の意は反映されないのに、ニュースの多くの時間にこの話題が割かれる。この矛盾に違和感を感じるのは私だけだろうか?
コメンテータの勝手な予想を垂れ流すニュース番組。どんなに予想を聞いたって、決めるのは国民と関係のないところ。そんな情報を流すのならば、もっと必要な情報がたくさんあるのではないか?
ネットも怖いが、報道の在り方自体、何だか間違えると思う。
そこにもケビン坂田のような存在がいるのかも…と考えると、鳥肌が立つ… -
Posted by ブクログ
国の経済のひっ迫状況を描く社会経済小説。
安倍政権下を彷彿させる現在進行的な物語で、連載時機を見ると途中から新型コロナの影響も取り入れていると思われます。
国債のマイナス金利は衝撃的なニュースではありましたが、それをベースにここまで物語を膨らませるのはさすがだと思います。
主人公の一人の古賀は「不発弾」から繋がっているので続編とも言えます。
営業部門から編集部門に移動になった出版社の池内が経済素人なので、読者にも金融危機についてかみ砕いて説明されるのでわかりやすいと思います。
あの宰相の孫の財務大臣は優秀だと思っていましたが、この小説ではちょっと持ち上げすぎかも。
古賀の年齢も年齢だけに続編は難しそうかな。 -
Posted by ブクログ
ここ数年の政権の意向、経済の実態のリアルな部分にフィクションを組み合わせた小説。超低金利で商売が行き詰まった地銀、金融緩和を日銀にあの手この手で強制する政権。副総理兼財務大臣から裏の仕事を頼まれるフィクサー古賀と経済をネタにしようとする月刊誌記者池内を中心に物語は進む。
既に知っていることが少なくなかったので「ガラパゴス」のような衝撃はなかったけれど、日銀や地銀の現実、フィクサーは本当にいるのかも知れないと思わせてくれた。小説としてはまあまあ。
ただ、副総理は現実の人物に似ていて、もしかしてこの人はこんなに優秀なのかと、(誤解?させてくれた) -
Posted by ブクログ
田川信一 警視庁捜査一課継続捜査班
木幡祐治 鑑識課身元不明相談室、田川の同期
矢島達夫 警視庁特命捜査対策室理事官
鳥居勝 警視庁特殊犯捜査係業務上過失致死担当
根来正一郎 城東美容外科クリニック
田川里美 田川の妻
梢 田川の娘、新潟で初孫を出産
松崎直樹 トクダモーターズ社長
佐藤亜由美 日本実業新聞記者
小松幸彦 トクダモーターズ研究開発役員
原野 トクダモーターズ総務部長
近藤正 竹の塚の団地の自治会長
森喜一 総合人材サービス会社を起業、鳥居と同郷
パーソネルズ社長
野村 竹の塚署地域課
903 竹の塚団地で自殺とされた身元不明死体
西 沖縄伊是名島出身、竹の塚の居酒屋店主
川満歩 沖縄県警宮古島署刑事課
高橋修三 元警視庁捜査一課長、元新宿署署長
小島孝夫 証券会社ファンドマネージャー
仲野定文 903、34歳、優しい人柄、優秀
三浦光輝 鳥居の後輩、鑑識係
宮国教諭 伊良部島在住、定文は教え子
高見沢紅美 森の秘書兼愛人、元銀座の女
有吉宏二郎 仲野の高専の親友、ソラー電子社員
浜田丈吉 国会議員、高見沢の元パトロン
木口 田川の近所の精肉店店主
工藤 長らく派遣、木口の紹介で正社員に
辻良平 系列の派遣会社東海営業所所長
宮崎晴夫 仲野と働いていた派遣労働者
脇田朱美 仲野と働いていた派遣労働者
清村 派遣労働者からパーソネルズ正社員に
三村警部補 鳥居の5期上の先輩、生活安全課
久保警部 鳥居の3期上の先輩、岩手組対4課
武田 トクダ車体人事課長
若宮 工業高校の教師、学生時代の清村を知る
コバヤシ ブラジルショップ店主
長内保 ソラー工場の派遣労働者で仲野の友人
後藤 鑑識課の若手
吉岡達雄 ベルン証券アナリスト、自動車界出身
野田公二郎 ベルン証券自動車部品アナリスト
宮城島拓真 会計士、車体780816を所有していた
堀合圭介 岩手県警
高田 警部、監察
稲垣圭祐 弁護士、元東京地検特捜部検事
高橋 新宿署の元署長、元捜査一課長