二階堂黎人のレビュー一覧
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先日読んだ『御城の事件<西日本編>』がなかなか面白かったのでこちらも読んでみた。
この<東日本編>はどちらかと言えば時代物という枠を超えた感があるが、『御城の事件』という枠は守っているので良いか。
高橋由太「大奥の幽霊」
<もののけ>シリーズで有名な作家さんだが読むのは初めて。
『大奥で赤子の幽霊が泣いておる。成仏させてくれぬか』
将軍家綱の命により大奥を探ることになった主人公の忍びが行き着いた真相とは。
てっきり明るいもののけ物だと思っていたら、意外な顛末だった。
山田彩人「安土の幻」
幻の安土城を描いたという襖絵を写しとるために絵師の芳永がやって来たのは、豊臣方の軍勢に水攻めを受けている最中の大志城。
写し取った安土城の姿絵を水没しつつある城からどう持ち出すのかという作戦を立てるのが、盲目でツンな姫君というのがワクワクする。
この姫君と芳永のやり取りの楽しさでテンポ良く読めるが、そこに輪をかけて興味を引いたのは安土城の姿を写し取った芳永の、安土城は城ではないという結論。
では安土城とは何だったのか、そして信長の狙いは。
この作品が一番印象に残った。
松尾由美「紙の舟が運ぶもの」
幽霊物やファンタジー物がお得意の作家さんだが、時代物は初めてらしい。
藩主の妻からの依頼で城内の野鳥を調べている主人公が出会ったのは、子供の幽霊。
そして朝になると堀に紙の舟がどこからともなく現れる事件が起きて…。
幽霊と主人公の交流が、距離感が程よくてほのぼのする。謎解きの方も大ネタではないが、松尾さんらしくて面白かった。
門前典之「猿坂城の怪」
石垣修理中の城内で、堀に渡した仮橋に座って城を描いていた絵師が殺される事件が発生。
当時は霧が立ち込めていて橋の手すりや床板の夜霧の粒に乱れはなかった。つまり橋の上には殺された絵師以外はいなかったことになるのだが…。
変則的密室事件にもそそられるが、それ以外にも読んでいて色々違和感がある。その謎は終盤に一気に明らかになる。
何とも様々な仕掛けが施された作品だが、最後の一文で更に違和感が。結局これは時代物ではなかった?
霞流一「富士に射す影」
城内の六地蔵の一つが持ち去られていたり、牢から逃亡した罪人が殺されて山の穴の中で餓死させられていたり、小姓頭が石垣に激突死していたり、男の生首とイタチの胴体が繋げられた死体が見つかったり、連続する奇怪な事件の意味は…。
肝は何故こんなことをしたのか、ということだが、今も昔も宮仕えは大変だなという印象。
全体的にはもう少し史実と絡めた話を読みたかったかなという感想。単純に御城と事件という組み合わせを読みたい方には良いと思う。 -
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タイトル通り、城を舞台にした事件の話五編。
「幻術の一夜城」黒田研二(墨俣城)
秀吉が一夜で築いたとされる墨俣城の謎を解く家康。さらに彼はそこに一瞬で天守を造りだすと言う。
秀吉の一夜城の謎は何となく聞いたことのある内容だったが、家康の幻術はさて? ここまで上手く行くのか疑問ではあるが、天下を取る者はこういうことも味方に付けるということか。
「小谷の火影」岡田秀文(小谷城)
信長が今にも攻めて来ようとする浅井長政の小谷城で、牢に閉じ込めた筈の曲者が脱出し、そこから連想して事件が起こる。
こんなお市の方は見たくない! というお市の方ファンの悲鳴が聞こえそう。お市の方は悲劇の女性かはたまた…。真実はいかに、
「ささやく水」森谷明子(船上城)
三方を海や川に守られた城内の、水が入って来ない場所で見つかった溺死体。水のない場所でどうやって溺れ死んだのか。
トリックはともかく、キリシタンの光と影にスポットを当てた点は興味深い。
恥ずかしながら高山右近は初めて知った。調べると現在放送中の大河ドラマの主人公とも少なからず縁があるようで、ますます興味が湧いた。
「影に葵あり」安萬純一(小浜城)
忍びによる秘密の巻物争奪戦かと思いきや、いつ来るとも知れない命令を待ちながら巧妙に小浜城に入り込んだ男の悲哀のような部分も。
「帰雲城の仙人 伊賀の忍び 風鬼/雷神」二階堂黎人(帰雲城)
大地震で城下町ごと消えたという帰雲城に隠された埋蔵金と、不老不死の仙人、そして忍者たちの壮絶な闘い。
ページの大部分が忍者同士の闘いシーンだったが、結局のところ不老不死なんて楽しいものではないということか。
邪馬台国の新解釈があるのかと期待したが、それほど真新しいものではなく物足りなかった。
今回読んだのは〈西日本編〉だが、〈東日本編〉もあるようなので、そのうちに読んでみたい。 -
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「ロシア館の謎」「密室のユリ」「劇薬」
3作のなかでは、「ロシア館の謎」が個人的に一番好き。
正直にいうと、詳細に描かれた人間模様が逆に邪魔をしてしまっている印象。どのようなどんでん返しがあるんだろうと思っていたところに期待の割にはと思ってしまいます。
トリック自体はどの作品も大きな驚きはないけれど、「ロシア館の謎」はトリックだけではない驚きの結末があったので、読み終わった後に満足感。
難しい話ではないので、推理小説の入り口としてもオススメの作品です。
蘭子の存在が薄いのは短編集だからでしょうか。
他の方が書いているように長編も読んでみたいです。 -
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本格ミステリーに対する気負いが著者にあったのかもしれない。
20年以上も前の物語でもあるし、多少の古さは仕方のない面もある。
それにしても、このうんざりとするほどの注釈の多さは何だろう。
読んでいて気になってしかたがなかった。
トリックはミステリー慣れしている人にとっては驚くほどのものではない。
何よりも伏線の張り方がわかりやすすぎて、真犯人が容易にわかってしまう。
ミイラ男の登場だけでも「えっ?」と思っていたのに、限られた登場人物の中に犯人がいると考えればおのずと真犯人の姿が浮かんできてしまう。
妙に浮いてみえた惨殺方法も、横溝的な雰囲気を出したかったのだろうか。
犯行の動機やアリバイなどに大きく関わるものではなかっただけに、何故殺害方法をあれほどまでに残虐にしたのかよくわからなかった。 -
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ネタバレ〇 概要
旅行会社の課長代理職を務める長身で美形のオタク,水乃サトルが探偵役を務める短編ミステリ集。「ビールの家の冒険」,「「本陣殺人事件」の殺人」など,過去のミステリのパロディ的な作品も含まれる。ややミステリマニア向けの作品集である。
〇 総合評価 ★★★☆☆
ミステリマニア向けと思われる短編集。「ビールの家の冒険」と「「本陣殺人事件」の殺人」は,パロディ元を知っていないとあまり楽しめないだろうし,「ヘルマフロディトス」と「空より来たる怪物」も,ある程度ミステリを読んでいないと「何これ?」と思ってしまうだろう。逆に,ミステリマニアであれば,読みやすい文章も相まって,軽く読めるし,十分楽しめた。傑作と言えるような作品ではないが,「ヘルマフロディトス」は,「かとり」を「かをり」に偽装するというなかなか面白いプロットの作品だった。読む前の期待値が低かったこともあって,思った以上に楽しめた。★3で。
〇 ビールの家の冒険 ★★★☆☆
西澤保彦の「麦酒の家の冒険」をモチーフとした作品。トイレを借りるために不法侵入した家に,多量のビールが隠されていたのはなぜかという謎が示される。真相は,隠されていた缶ビールの缶は全て金であり,偽のビールだったというもの。銀行強盗が盗んだ金の延べ棒を溶かし,ビールの缶に偽装して隠していたのだ。荒唐無稽なシナリオのバカミス。謎はそこそこ面白いが真相は陳腐。ただ,文章は読みやすく,軽いミステリとしては十分楽しめた。
〇 ヘルマフロディトス ★★★★☆
「かとりさん」と「かをりさん」が,女子高生の書く手書きの文字だと偽装しやすく,「かとりさん」を「かをりさん」と偽装することで,自分の犯行を隠そうとした「鹿取ユリア」という女子高生の話。水野サトルのところに,大学の先輩で,刑事の馬田が相談をしたという設定。話全体が軽くて読みやすく,プロットも面白い。この短編集ではベストの作品かな。★4で。
〇 「本陣殺人事件」の殺人 ★★★☆☆
本院殺人事件のパロディ。本文庫の解説でも書いてあるが,単なるパロディというより,「本陣殺人事件」の金田一耕助の推理の矛盾を指摘し,別の推理を紹介している。これは,「本陣殺人事件」に思い入れがある人ほど面白く感じると思われる作品である。「本陣殺人事件」は読んだことがあるが,そこまで思入れがないので,この作品を読んでも「ふーん」としか思えなかった。「本陣殺人事件」をベースとした推理部分のデキはともかく,短編小説のデキとしては,やや冗長に感じてしまう。そこそこのデキか。★3で。
〇 空より来たる怪物 ★★★☆☆
UFOの襲撃により殺人がされたと思わせるような記述があるミステリ。警察は,水乃サトルの大学の先輩である「宇宙人侵略対策地球評議会」というサークルに入っていた二茂滋という人物を容疑者として捜査をする。真相は,「セキセイ院固教」という新興宗教が,皆神山の洞窟の兵器貯蔵庫から兵器を探し出し,その秘密を守るために火炎放射器で殺人をしていたというもの。密室のトリックは,コテージそのものががけ崩れで転がり,天井の窓を利用して外に出ることができたというバカミス的トリック。UFOについてのうんちくもあり,それなりに面白い作品。ばかばかしい作風が好きなら楽しめる。結構好き。★3かな。 -
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アンソロジーは、初読みの作家さんを手に取るきっかけにもなるのだけど、今回は、お馴染みの作家さんに大軍配な感じ。
「ウシュクダラのエンジェル」
他の国の宗教や慣習を安易に批判・否定するわけではないのだけど、なんとも切ない展開だった。そういうお話に、京介の語り口がやけに似つかわしい。
「禁じられた遊び」
ずっと綸太郎パパの入院話で、どんな事件に関わるのかと思ったら。
あの映画を一ひねり二ひねりした展開はさすが。
でも、名探偵の本領発揮はなかったような(笑)
「詩人の死」
なんていう毒を含んだ作品なんだろう。
いかにも葉村晶、いかにも若竹七海。
「バルーン・タウンの裏窓」
懐かしのバルーン・タウン。
どこかユーモラスな展開にほっとする。 -
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ジョン・ディクスン・カーのパスティーシュ二編、特別付録の【吸血の家[短編版]】、カーに関するエッセイ二編を収録したカー好きには堪らない一冊。
表題作の【亡霊館の殺人】は、短剣や目張り密室などカーらしいネタが盛り込まれておりパスティーシュとしても楽しめますし、トリックも良い出来で作品の質が高いです。
エッセイの【カーは不可能犯罪ものの巨匠だ!】は、二階堂黎人による作品のランク付けと、「意外な犯人」、「密室」、「足跡のない殺人」など分野別に紹介されています。大変参考になりますが、個人的に気に入っている『皇帝のかぎ煙草入れ』が佳作扱いなのと、カー初心者に『火刑法廷』を薦めるのはちょっと違うんじゃないかなと思います。
【吸血の家[短編版]】は焼き直し作品なので何とも言えない感じです。これならもう一編パステーシュを読みたかったです。