【感想・ネタバレ】地獄の奇術師のレビュー

あらすじ

十字架屋敷と呼ばれる実業家の邸宅に、ミイラのような男が出没した。顔中に包帯を巻いた、異様な恰好である。自らを「地獄の奇術師」と名乗り、復讐のためにこの実業家一族を皆殺しにすると予告をしたのだ。「地獄の奇術師」の目的は何なのか? 女子高生で名探偵、二階堂蘭子の推理が冴え渡る、本格探偵小説!

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二階堂黎人の長編ミステリー。作者のデビュー作であり、二階堂蘭子シリーズの最初の作品。

登場人物や役割の明記も丁寧にされており、これぞミステリー小説と言える出来栄え。作風は江戸川乱歩や横溝正史の様な恐怖心もあるサスペンス的な部分もふんだんにあり、少し突飛な部分もあるが設定が魅力的で王道だと思った。蘭子自身はまだ未熟な部分もあり、完全なる探偵ではない様に見えるが、彼女の閃きや頭脳明晰さは随所に見る事ができる。黎人も「ワトソン」的な立ち位置にはなりきっていないが、高校生である事の溌剌さなどは随所に発揮される(蘭子含め子供っぽさは一切ないが)

舞台は十字架屋敷と呼ばれる敬虔なカトリック教徒の一族が暮らす屋敷が舞台。蘭子、黎人と同級生である暮林英希の一族を巡る物語。暮林一族が住む十字架屋敷の周辺に奇妙な格好をした人物が現れるようになる。彼は「地獄の奇術師」と語り、暮林家に復讐をすると告げる。蘭子、黎人、英希の三人は、「地獄の奇術師」に奔走されながら、悍ましい事件へと巻き込まれていく。

今シリーズはやはり蘭子の探偵として超人的な頭脳で事件を解決していく爽快感が魅力であるわけだが、一部において彼女の推理に破綻が生じてしまうシーンがあり、そもそも元々蘭子の助言や彼女達を取り巻く環境において警察も彼女の発言を受け入れているはずなのに、あの様な形で違った方向性の推理をした事に対してのダメージが少ない事に違和感を感じてしまった。
(時代背景もあるかもしれないが、近代では犯人では無い人物を犯人と言及してしまえば一貫の終わりだ。だから探偵は真相を究明出来るまで謎を明かさないし、確たる証拠がなければ戯言に終わってしまう。)

登場一族がカトリック教徒である理由が、雰囲気を作るために留まらず、実は大きな意味を持っていたことはミステリーの構成として素晴らしいと感じた。しかし、一方でエピローグが何度も続く様な締め方であり、事件解決後からの話が少し長ったらしく思ってしまった。

否定的な部分を二つほど書いたが、作品としては最初にも書いた様にとても面白い。僕は中学生の頃に江戸川乱歩の作品を幾つか読んでいたのだが、あの頃の純粋に小説にワクワクしていた気分を味わう事が出来た。
登場人物達の活躍について、一部の人達は物足りない印象だったが、ダワン神父や暮林梅女、義彦などはいい味を出していた。嫌な奴が幸せになる様な、悪がのさばる様な作品はあまり好きでは無いが、ある意味今作で一番ひとでなしである人物は相応の報いをうけたように思った。真相がわかればあるある程度爽快感を感じるが、反面、ここまでの大犯罪をする程の動機たりえるかは疑問だった(真犯人について)登場人物のなかでも八植教授の役回りは見事。また、僕は幾つか蘭子シリーズを読んでいたため、改めて黎人、蘭子のバックボーンを知ることが出来たことは嬉しかった。

 お約束である、素人である探偵に警察が協力してくれないというもどかしさを排除している事が良い意味でスパイスになっていると思う。

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2024年12月29日

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当時新本格派なんて知らずに読みふけったなかの1冊! 綾辻行人先生や有栖川有栖先生、歌野晶午先生、我孫子武丸先生を呼んでたらあとがきに必ずでてくる作家に二階堂黎人先生の名が!
デビュー作品を読んだらノックアウト!オドロオドロした雰囲気がよく名探偵二階堂蘭子がまたよくてね!
あの当時は幸せな読書体験だったな〜

はやく蘭子事件簿読みたいね〜

ぜひ〜

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2024年02月14日

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黎明期の二階堂蘭子。
その友人、黎人が書き手となり、連続殺人事件の謎を解き明かす。

描写にぞっとするところもありなかなか読み進められず日数がかかってしまったけれど。

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2015年07月18日

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犯人の一人は途中でわかってしまったし、トリックもわかりやすかったけど、久しぶりにのめり込んだミステリー。この作者の他の本も読んでみたい!多分、横溝正史っぽい雰囲気が気に入ったのだと思うけど、ドキドキしながら読めて、面白かった!ただ、最後に明かされた、犯人の真意は、ちょっとこじつけっぽくて、よくなかった。

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2012年10月06日

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ネタバレ

ミステリ談義が面白いですね(笑)ただ少しきわどいというかネタバレが・・・。江戸川乱歩のような雰囲気が好きです(笑)「地獄の奇術師」って名前も(笑)初期にあった「二階堂家の崩壊」って設定が崩れてしまったそうですがそこも気になりますね(笑)とりあえず蘭子には早く復活していただきたいです(笑)

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2025年09月20日

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ノリがいかにも昭和的な感じで、乱歩的な展開。全体的によくできているなあと思いつつも、鍵のトリックがビジュアルでないためにわかりにくく感じたり、またこれは仕方ありませんが、警察の無能ぶりが、どこか古臭さを感じさせたりと、終盤の展開も、どうして警察に言わないのかとか、ツッコミどころも多く、不満点も多々あった印象です。「人狼城」が凄すぎるだけに期待しすぎなのかもしれません。

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2025年06月01日

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地獄の奇術師 二階堂黎人
読みました。
面白かった。
シリーズ物最高です。
次回作を明日から読みたい。

推理小説、探偵小説、ガイドが参考になる。

まだまだ知らない作家作品がある。
入手したい本がまた増える。
順番待ちの本がまた増える。
すべて読むため長生きしなければいけない。
いい本しか読みたくない。
時間を無駄にしたくない。

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2022年07月10日

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二階堂蘭子シリーズの1作目にしてデビュー作、僕と同い年のミステリ。
序盤から漂う乱歩を想起させる奇怪さは古き良きミステリを思わせ心躍る。蘭子や黎人のキャラクターも良く、ストーリー展開も飽きさせず読みやすい。
謎解き面については、犯人は当たったがトリックは一部判らなかった。しかしそもそもトリック自体はあまり良くできているとは言えない。フーダニットが判るとハウダニットのいくつかは予見できるが、ハウダニットの作りが弱く古典的過ぎてやや拍子抜けする。但しそれがある意味本格の気風を表現していて物語としては面白い。
犯人の動機については大好きだった。謎解きとしてのホワイダニットではなく、物語としてのホワイダニットが秀逸。終盤で評価が一気に上がった。最終章の伏線回収には舌を巻く。
蘭子の探偵としての資質は正直未熟だと思ってしまったが、ここから始まる蘭子の名探偵としての事件の最初の1ページとして読むと話は別。蘭子の成長を見たいと強く思わせる1作目だった

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2018年02月25日

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『お前の力なぞ、悪魔の力の前にはまったく無力なのだ。お前は今、こうして悪魔と戦って死ぬのだをお前の体を突き抜けたこの燭台の形を見てみろ。ちょうど十字架のようではないか。お前はここで、愛する神と共に地上より滅びるのだ?』

こういうセリフがなぜか懐かしく感じる。もう25年以上前の作品なんだな。二階堂黎人は『聖アウスラ修道院の惨劇』しか読んでないから、他も読みたくなった。
やっぱ、名探偵、不可能犯罪、無駄な猟奇性は外せない構成要素だな。

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2018年01月08日

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蘭子さんデビュー作、良くも悪くも懐かしいというか…。いろいろぶっこまれまくりです。青春ミステリとも言えそうだし、乱歩のような怪奇的要素。うん、いろいろ乱歩だ(笑)作中では古今東西の名作に触れられ、二階堂氏のミステリ愛のようなものを感じます。おかげで読んだことない物の、ネタバレを食らった気も。先ほども言ったとおり、ミステリ愛が強すぎて乱歩を筆頭に作品の背後に先達の方々が見え隠れしているように感じました。とはいえ、この古めかしい雰囲気も結構好き、蘭子のムカッとこさせる言動もかわいいし、もう少し追跡です。

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2016年01月03日

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【背表紙】
十字架屋敷と呼ばれる実業家の邸宅に、ミイラのような男が出没した。顔中に包帯を巻いた、異様な恰好である。自らを「地獄の奇術師」と名乗り、復讐のためにこの実業家一族を皆殺しにすると予告をしたのだ。「地獄の奇術師」の目的は何なのか。女子高生で名探偵、二階堂蘭子の推理が冴え渡る、本格探偵小説。

度重なる不可能犯罪。
複雑な人間関係。
読み応え十分の作品。
このシリーズも集めよう。

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2015年01月07日

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序章からして面白いです。ワクワクするような始まり方。
二階堂作品って予想がつかなくて好きです。
もしかしてこうかな?と思っていると、トンでもない方向に向かったり。
そういう意味では読者を裏切らない作家さんです。
二階堂蘭子シリーズも正統的な本格ミステリの道を進み、そこを二階堂兄妹がいい味を出しながら事件を解決へと結びつけます。
本書でも私の好きなディティールがいっぱい!
館、一癖も二癖もある実業家の一族、謎の怪しい男。
やはり基本的にはこういう正統派の本格を読むのが私はやっぱり好きなんだなぁ~と再確認しました。
舞台が昭和40年初頭というのも楽しめた要因かもしれません。
蘭子さんシリーズは大作が多くて、本当に読み応えのあるシリーズです。

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2014年09月30日

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乱歩調の雰囲気が漂う。
密室トリック自体は凄く驚く内容ではないが、他の伏線などはフェアでよかった。
シリーズデビュー作という事で、失敗エピソードが発生したりして、次作以降も読みたくなった。
最後はこじつけの様な…

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2011年04月30日

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だいぶ昔に読んだのであらすじほぼ忘れていたのでもはや初見。その間色々読んできたからか犯人が予想できるようになって成長を感じた。昔の話なのでありがちと言えばありがちだけれど、テンポよく起こる殺人と真相は力入れて作り上げた感じで嫌いではなかった。

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2025年04月19日

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二階堂黎人さんの作品は、本作品が始めてとなります。
若干情景描写で細かすぎる印象を受けましたが、全体的には読みやすかったかと思います。
「地獄の奇術師」を名乗る神出鬼没な犯人による連続殺人を、女子高生探偵二階堂蘭子が解き明かしていくといった流れとなりますが、地獄の奇術師の正体をストーリー的には、そのようにするしかなかったのかもしれませんが、一歩やりすぎているなと感じました。

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2024年08月12日

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ネタバレ

『人狼城の恐怖』が面白かったので、二階堂黎人の初期作をまとめ買い。でも、本作は後にE・クイーン『十日間の不思議』を読んだら、動機も手口もそっくりじゃない? って思ってしまったのである。

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2023年09月15日

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ミイラのような異様な格好をした人物が
自宅周辺に現れた。

一体どういう男で、何の目的が…という
分かりやすい所から始まった、と思ったら
ものすごく絡み合って不可解な事件に。

言われてみれば、と振り返るところもありますし
そうだったのか、と驚く場面も。
今と違う、戦争終わってちょっと、という時代なので
こんな複雑な人間関係ができた、ともいえるかと。

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2022年04月06日

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江戸川乱歩風の探偵小説。
面白いけど漫画。動機がおどろおどろしくて意味不明。トリックを楽しむ探偵小説。

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2021年08月04日

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横溝。乱歩。クイーン。カー。怪奇。探偵。密室。あらゆる要素を詰め込みました。でも、そんなにうまく行きませんでした!!な作品。
トリックは一部関心するところもあり、クイーンやカー好きなら、( ̄ー ̄)ニヤリとする展開や設定は好き。
最後に駆けての神がかりな展開を許容できるなら、むしろハマりそう。私は笑いました。嫌いじゃない。

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2018年03月06日

Posted by ブクログ

本格ミステリーに対する気負いが著者にあったのかもしれない。
20年以上も前の物語でもあるし、多少の古さは仕方のない面もある。
それにしても、このうんざりとするほどの注釈の多さは何だろう。
読んでいて気になってしかたがなかった。
トリックはミステリー慣れしている人にとっては驚くほどのものではない。
よりも伏線の張り方がわかりやすすぎて、真犯人が容易にわかってしまう。
ミイラ男の登場だけでも「えっ?」と思っていたのに、限られた登場人物の中に犯人がいると考えればおのずと真犯人の姿が浮かんできてしまう。
妙に浮いてみえた惨殺方法も、横溝的な雰囲気を出したかったのだろうか。
犯行の動機やアリバイなどに大きく関わるものではなかっただけに、何故殺害方法をあれほどまでに残虐にしたのかよくわからなかった。

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2017年02月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

犯人に意外性は感じず、想定していた人物でした。余韻がある終わり方が個人的には気に入りました。蘭子と黎人にとって事件で失った人物がどういった存在であったのだろうかと考え、少し切ない気持ちになりました。

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2015年12月18日

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二階堂蘭子シリーズ、第1弾。
まぁまぁでした。最後にはどんでん返しもあったし(ま、最初から見当はついたけど)、動機付けも悪くなかったと思います。
シリーズものみたいなので、続けて読んで行きたいと思います。

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2013年03月20日

Posted by ブクログ

二階堂蘭子シリーズ一作目。
異様な風貌の地獄の奇術師。
次々と殺害される暮林一族。
いくつもの密室殺人。

ボリュームはかなりあります。
途中、間延びはするけど、最後まで読みきれました。

蘭子がツンツンな感じがまだ好感が持てないけど
次作も読んでみるつもりです。

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2012年09月13日

Posted by ブクログ

二階堂蘭子、初の推理。犯人が二転三転する楽しみはあった。正直、自分の読みが外れた。しかし、本格ミステリの弱点である人物像の描写がやはりあまりなく、頭の中で人物がイメージしづらかった。「人間が描けていないのではなく、本格ミステリにおいては、あえて描かないのだ」と、以前誰かが言っていたが、それは推理やトリックの面白さで勝負するということだろう。その面白さがなく、かつ人間もまともに描けていないようじゃ、娯楽としての推理(探偵)小説として、申し訳ないが、読む価値はないと思う。と、話はズレたが、この小説、前半は地獄の奇術師との攻防が面白く、冒険小説的な要素があったが、後半はトリックへの推理が冗長で、リーダビリティに欠けた感が否めなかった。

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2011年09月05日

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雰囲気は乱歩か横溝を思わせる。こういうけれん味たっぷりの話も結構好きだけれど、犯人がわかりやすくて、驚きがないのが残念だった。

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2011年02月21日

Posted by ブクログ

懐かしい乱歩の匂いがしてすっごいわくわくする! 注釈には賛否両論のようだけどミステリガイドにもなってるので自分は楽しめた。

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2010年07月21日

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十字架屋敷周囲を徘徊するミイラ男は、自らを「地獄の奇術師」と名乗り、屋敷に住む一族に復讐すると予告した。その言葉通り、一族の者が次々と奇術師に殺されていく。しかも現場は警察の監視の目があり、内側から施錠された完全密室だった。奇術師は如何なる方法で本懐を遂げたのか?


古き良き乱歩ワールドを彷彿とさせる作品。なかなか古めかしい設定です。ミステリィを読みこなしてる方には物足りないですが、初心者に勧めるのは不親切な感じ
ミステリスキーへのサービスのような注釈が多いですが、ちょっと多すぎかな?ああいうのは分かる人だけがニヤッとできるくらいがいいですね。私はほとんど分かりませんでした^^悲…

犯人当ては簡単ですが、新本格と呼ばれる作品には見られない奇々怪々のオールドファッションな雰囲気が充溢しています。この空気に魅了された人達が、新本格の興隆に関わっていったんでしょうねー
惜しむらくは人物。魅力を出し切るには至らなかったという感じ。シリーズの出だしとしては不完全燃焼かな

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2011年04月01日

Posted by ブクログ

二階堂蘭子のデビュー(デビューという言い方は
変だけど)と言う事で読んでみました。
しかし描写がグロいね。。。
ここまでえぐい表現にしなくてもいいと思うのですが。。。
とりあえずシリーズを読み続けて人狼城まで
いきたいです。

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2009年11月25日

Posted by ブクログ

二階堂蘭子シリーズ。

十字架屋敷と呼ばれる邸宅に現れた骸骨のような男。
『地獄の奇術師』と名乗る彼は何者なのか?
蘭子の名推理が冴え渡ります。

内容自体はおもしろかったですが、
蘭子の出す海外ミステリーの例が私には全く分かりませんでした;

そこが分かればまた違ったおもしろさが出てくるのかもしれませんネ。

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2011年11月05日

Posted by ブクログ

いまごろですが初・二階堂です。もっと詳しかったらもっと面白かったんだろうなぁと思うと自分の知識の狭さが悔やまれます。
やっぱり探偵ものっていいな。これはここから始まるシリーズなのかな?これから読めると思うと楽しみです。
でもこの人が犯人っていうのはあまり好きじゃなかったです。

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2009年12月31日

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