推理作家が書くミステリパスティーシュと見れば手に取らずにはいられません。しかもそれが、かつて胸躍らせたルパンを題に取ってるとあれば尚更!
ルパンと密室、鬼貫とアリバイ、H・Mと犯人消失、意外なラスト物、極めつけは芦部拓先生とのカー対談と、二階堂先生オリジナルのカー作品全作品論という、お腹いっぱいのフルコースです。ごちそうさまです。
「本格推理を愛するすべての人に捧ぐ」という言葉通り、特にカー通な人ほど楽しめる作品です。私は彼の作品は5冊程度しか読んでないので、カー論は今後の指標としてざっと目を通しただけですが、読破してる方には自分のカー作品ランキングと照らし合わせながら楽しめるんじゃないでしょうか(^O^)その境地まで至ってみたいわ~
パスティーシュ作品もそれぞれ「らしい」雰囲気がしっかりあって非常に面白く読めたのですが、「密室」「犯人消失」「意外なラスト」というドンピシャで大好きな要素の中に入ってくると、やっぱり「アリバイ物」はあまり好きじゃないトリックだなという実感がますます強くなりました。
自分でも理由がよくわからないのですが、やっぱりイマイチ楽しめないんだよなあ。探偵の謎解き部分でも、「ふーん」としかならない。物理トリックがあまり好きじゃないからかしらとも考えたんですが、よく考えたら密室だって物理トリック多いもんね…うーん、謎だ。
◎ルパンの慈善・・・ルパンが犯行を予告した当夜、完全密室から聖なる燭台が消えた!扉の前ではガニマール警部が張り込み、敷地内に警官達が巡回していたにも関わらず、燭台はいかに盗まれたのか?
◎風邪の証言…高名な作家が何者かに殺害された。容疑者は、彼の莫大な遺産を狙っている甥3人。ところが、彼らにはいずれも堅牢なアリバイがあった。
◎ネクロポリスの男…一年に一度、「冷凍睡眠処刑」から目覚めることを許された囚人である男。彼はいつものように年に一度の覚醒を楽しもうと、一夜を過ごす娼婦を所望するが…。
◎素人カースケの世紀の対決…自分の嗜好や気分に合わせたぴったりのミステリを見繕ってくれる「読むリエ」。恋人と共に最高級のサービスを味わわせてくれる「読書ラン」に赴いたカースケは、そこで慇懃無礼な態度のミステリ評論家に腹を立て、彼と目利き対決をすることになってしまう。
◎赤死荘の殺人…三人の人間が次々と入っていった屋敷の中で、殺人事件が発生した。横たわる死体の隣には、気を失った男が一人。ところが彼は、何とH・Mのボズウェルとも呼ぶべきケン・ブレークその人だった! 屋敷の周囲を警察官が見張っていたにも関わらず忽然と姿を消した第三の男を追って、マスターズは捜査を開始するが…。